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ミステリの祭典

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菩提樹荘の殺人
作家アリス&火村シリーズ

作家 有栖川有栖
出版日2013年08月
平均点5.56点
書評数9人

No.9 5点 E-BANKER
(2021/06/08 20:19登録)
「火村&アリス」シリーズの数ある短編集のうちの一冊。
作者があとがきで書いているとおり、収録された四作には「若さ」という共通のモチーフがある・・・とのこと。
2013年発表。

①「アポロンのナイフ」=東京都内で起こった美少年による連続殺人事件。その美少年が大阪でも殺人事件を? という内容で引っ張るのだが、ラストは割と意外な展開に。でも、途中から火村がこの人物にえらく拘ってたから、凡その察しはついてしまう。
②「雛人形を笑え」=いかにも大阪らしい(?)。お笑いコンビ(しかも男女コンビ)の片割れが殺害される事件が発生。「オチ」が決まるかどうかがプロットの肝というところからして”いかにも”。(時期からして南海キャンディーズ当りがモデル?違うか・・・)
③「探偵、青の時代」=名探偵・火村英生の「エピソード・ゼロ」的な一編。学生時代から火村は変人だったと思わせる一方、「若いっていいよなぁー」っていうノスタルジイを感じさせる。でもそれだけと言えばそれだけ。
④「菩提樹荘の殺人」=齢53にして30代半ばにしか見えないという「アンチエイジングの寵児」が別荘で殺害される。途中から容疑者は四人に絞られるわけだが、真犯人を特定する「鍵」がまさかアレとは・・・。アレがこっそり伏線だったんだね・・・。でもそれだけと言えばそれだけ。

以上4編。
毎度ながら安定感は半端ないこのシリーズ。このシリーズ作品の書評を書くと、いつもこんな感じになってしまう。
決して突き抜けるような出来はなく、いつも平均点くらいの評価。
でもこれってかなり難しいことなのかもしれない。多くのミステリファンが安心して楽しめる短編作品。あるようであまりない(ような気もする)。
でもねぇ・・・。せっかくだから、火村にももう少し痺れるような謎解きの場を与えてあげてもいいのではないでしょうか。本作も、馴染みの大阪府警や兵庫県警の面々、そして名パートナーである有栖に囲まれ・・・っていう環境だからね。この辺からして、平均点に落ち着く原因なんだろう。
(ベストは④かな。他もそれほど差はない。本シリーズって関西の隠れた名所を紹介してくれるんで、そういう意味ではガイドブック的機能もあるように思う。今は関西行けないけどな・・・)

No.8 7点 虫暮部
(2021/05/28 12:27登録)
 有栖川有栖の文章はやはり良い。あちこちに挟まれた批評もナイス。
 「探偵、青の時代」。最後の mew の使い方がいいね。
 表題作。警察が抜いた池の水、元に戻しておいてくれないんだ……。

 余談:とあるCDを聴いていて、ふと気付いた。
 「哀愁トラベラー」作詞:高柳恋 作曲:渡辺真知子
 コマチ刑事の名前の由来はコレ? 偶然かな?

No.7 5点 ボナンザ
(2020/06/15 23:37登録)
いつもながら緩い感じで、時折作者のメッセージ入り。

No.6 5点 HORNET
(2018/11/12 21:46登録)
<ネタバレの要素あり>

「アポロンのナイフ」
 犯人ではなく、第一発見者の行動を解き明かす話だった。その行動の動機に物語のテーマがある。面白い趣向だし、うまいと思った。

「雛人形を笑え」
 ネタとしては一番チープな感じなのに、なぜか一番印象に残った。

「探偵、青の時代」
 火村の学生時代を知る女性によって語られる、当時の火村の推理譚。そう思うと小ネタっぽいが、推理は非常にロジカル。(ただこんなツレがいたらちょっと息苦しいかな…とも思った)

「菩提樹荘の殺人」
 最近テレビで売り出し中のカウンセラーが別荘の池のほとりで殺された事件。警察が事件現場の池をさらって、いろんなモノが出てきてから一気にいろんなことが明らかになる急展開だった。

No.5 5点 ボンボン
(2016/03/15 20:40登録)
著者の作品を初めて読んだ。考えていたよりキャラクター色が薄く、著者の物事に対する考え方、批評などが多めに語られていたりするのが意外だった。
4篇とも事件の真相は、シンプルでおとなしい。何でそんなことをしてしまったのかという部分で、人の心情の説明が随分素っ気ないんじゃないかと思うものもあったが、その中でも表題作は、ワクワクと前のめりで楽しめた。
全体に優しげな雰囲気が漂い、やっぱり関西弁はいいなあ、というじんわりした読後感。

No.4 7点 青い車
(2016/03/15 18:37登録)
 以下、各話の感想です。
①『アポロンのナイフ』 変則的な犯人・ホワイの意外さに驚かされる異色作。少年犯罪がテーマとなっているのも、有栖川さんがやっていそうでやっていなかった切り口で新鮮です。
②『雛人形を笑え』 ミステリーとしては小粒でやや物足りない印象。お笑い界で這い上がろうともがく若者を追う方に話が逸れ気味なのも気になります(ただし、そこもけっこう面白く読めはします)。
③『探偵、青の時代』 火村の大学生時代のささやかな活躍を描く、ファンには嬉しい一篇。彼の微笑ましい一面が見られるオチもいいですね。
④『菩提樹荘の殺人』 被害者の状態は『スペイン岬の謎』を想起させます。シンプルで明快なロジックも往年のエラリー・クイーン的。古風な素材をアンチ・エイジングという現代的な話題に乗せているのも面白いです。

 総じてなかなかの中篇・短篇がそろっています。コンセプトの「若さ」がいろんな角度から描かれておりお得感があります。ただ、一番面白かった表題作にしても長篇にするにはボリューム不足な謎解きで、中篇がちょうどよい分量です。少し前に、何かのコメントで有栖川さん自身が「最近、短篇にちょうどよいネタをよく思いつく」というように書かれているのを読みました。やはりファンからしたら長篇をもっと読みたいのが正直なところ。2016年には長篇二作(うちひとつは国名シリーズとのこと)出すのが目標らしいので期待したいです。

No.3 7点 makomako
(2016/02/21 16:19登録)
 4つの中編小説が入っていますが、「雛人形を笑え」が一番好きかな。トリックはちょっと強引なところもありますが、氏独特のやさしさと余韻があります。
 有栖川氏のこういった長さの作品だとどうしてもトリック中心となってしまい、その出来不出来によって作品の価値が変わってしまう。
 今まで読んだ中でもがっかりといったものもないわけではありませんが、ここに納められた作品はどれも暖かい余韻が漂い、私の好きな感じに出来上がっていました。

No.2 4点 mozart
(2015/01/17 19:08登録)
「探偵、青の時代」は火村の(想像通りの)学生時代の話で、そこそこ面白かったけれど、それ以外はどれも今ひとつでした。それよりも、あとがきを読んで本シリーズが「サザエさん方式」で書かれていることを改めて知りました(汗)。

No.1 5点 まさむね
(2014/08/25 23:29登録)
 そもそも昔から火村シリーズは読み心地がよくてお気に入りなのですが,この短編集の共通テーマである「若さ」の苦さが,これまた心地よかったですね。(ちょっと強引かなぁ…と思わなくもない作品もありましたが。)
 その中でも,「探偵、青の時代」に登場する,学生・火村の立ち振る舞いが最も印象に残りそうかな。

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