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ミステリの祭典

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makomakoさんの登録情報
平均点:6.18点 書評数:862件

プロフィール| 書評

No.482 9点 災厄の町
エラリイ・クイーン
(2016/01/30 19:50登録)
 今まで読んだエラリークイーンの作品の中で最高でした。作品の出来としてはYの悲劇などが良いと思うのですが、テレビで見た後で読んだため衝撃がちょっと少なかったのです。
 それにしても文学と推理小説の合体を目指した本作品は本当に素晴らしい。当然ながら殺人はおき(ただしお話がだいぶん進んでから事件が起きる)、強烈などんでん返しもあるのですが、クイーン独特のパズル型小説ではなく論理は精緻でありつつ文学的作品に仕上がっているのです。
 登場人物も共感するところが大きく、読後感も実によい。
 1点減点なのは翻訳小説なのでやむを得ないとは思うのですが、今まで読んだクイーンものはすべて登場するエラリークイーンのことをクイーンとかエラリーとかの表現であったと思うのですが、今回はクイーン氏という表現であったため、これは偽エラリーに違いないといらん推理をして読んでいたため、あれ?と思ったところです。


No.481 6点 陽気なギャングが地球を回す
伊坂幸太郎
(2016/01/24 19:27登録)
 初めのうちは変な人間が出てきて、あり得ないお話に付き合わされそうでちょっとどうかなとも思いましたが、途中から物語は思いがけない展開となりそれなりに楽しめました。
 作者は才能があるように思いますし、本来はもっと楽しめそうな感じなのですが、私の感覚にどこか受け入れにくいところがあるようでした。
 次作を読む気は今のところしません。


No.480 5点 おしどり探偵
アガサ・クリスティー
(2016/01/09 18:03登録)
 ずい分軽いお話でした。連作集で一つの話が短いためすららと読んでしまえるのですが、内容はあまり濃いとは言えませんでした。本格推理だと思ってまじめに読んではいけないよという内容のもあります。
 トミーもタペンスもやたらに冒険好きで、大ピンチになっても全然めげないため、漫画チックで現実感に乏しいですねえ。子供のころテレビで見た少年ジェットやまぼろし探偵みたい(古いなあ。分かった人はかなりの年配の方でしょうね)。
 いろんな探偵小説のパスティーシュになっているようなのですので、当時の推理小説ファンが読めばもっと面白かったとは思いますが、私には本家本元がわからない部分がかなりあったため、充分に楽しめなかったところもあるとは思います。
 


No.479 6点 九尾の猫
エラリイ・クイーン
(2015/12/31 11:08登録)
 これは長いね。大体クイーンの長編小説はかなり長いものが多いのですが、読んでいて長さを感じさせない。無駄に長い感じがしたのはこれが初めてかもしれません。
 それというのも犯人がお話の中盤ぐらいでわかってしまってあとはそれの詰めといった感じがするため、やたら長い描写に付き合わされてしまう(ようにみえる)ためなのでしょう。
 最後まで読むと実はその長さが大切であったことがわかるのですがね。
 この小説を読む方は絶対に途中でやめてはいけませんよ。
 


No.478 6点 春にして君を離れ
アガサ・クリスティー
(2015/12/18 21:19登録)
 この作品は推理小説ではない。クリスティーも発表当時メアリ・ウェストマコットの名義で発表し、長くクリスティーの作品であることを秘密にしたとのこと。
 私はそう言ったことを知らず、推理小説であろうと読んでいて、あれ?といった感じでした。
 主人公やご主人のキャラクターは今日の日本の夫婦でも極めてありがちなことなので、しばしばわが身に置き換えて読むこととなりました。
 ご主人のロドニーの気持ちは自分もそういった環境に置かれておるところもあるのでとてもよくわかる。解説の栗本薫さんのご主人はいやなやつと感じたらしいが、私は自分不本意ではあるが、それを選ばざるを得なかった環境の中で、精一杯働いた彼は立派だと思います。成功しても本意ではないが、でも文句は自分の中に納めて力いっぱい働いて世間的には成功したのですから。
 一方主人公のジョーンはちょっと嫌いだなあ。優等生であることが人生の目標でありそれ以外は決して認めようとしない(全然見えないというべきか)。こんな人が自分を見直すことなど本当にあるのかなあ。


No.477 7点 桐島教授の研究報告書
喜多喜久
(2015/12/18 20:58登録)
小説は当然ながら文系の最たるものの一つと思いますが、推理小説部門では作者が理系、テーマも理系といった作品もさほど珍しくはない。本作品はテロメアのお話のような副題がついているので、そういったことが主として取り上げられていると思いきや、テロメアの話はほとんどない。
 いままで作者の作品は短編連作ばかり読んだのですが、これはれっきとした長編推理小説です。
 桐島教授に関しては荒唐無稽と思われる設定ですが、理系の作者が書いているだけあって理論的にありそうな気もしてくるところが作者の力なのでしょう。
 シリーズものとなりそうなので次作を期待します。


No.476 6点 終りなき夜に生れつく
アガサ・クリスティー
(2015/12/11 20:41登録)
 この作品は読者によってかなり評価がわかれるようです。クリスティーの最高傑作という方もおられるようですが、私はそれほどでもなかった。
 もちろんクリスティーなのですから悪いということはないのですが。恋愛小説風の書き出しで、しかもそれが当分続く。ところどころにちょっと引っかかるところがあるので、ただの恋愛小説ではなさそうと思っていたらやっぱり最後はやられました。
 どんでん返しというよりはだまされた感じが強く、自分としてはあまり面白くはなかったのです。


No.475 6点 妖婦の宿
高木彬光
(2015/11/29 19:46登録)
 犯人当ての本格推理小説は犯人がわかったためしがないのですが、これはすぐにわかりました。ヤマ勘でなくきちんと理由もわかったことはひょっとしたら初めてかもしれません。私もいやな読者となってしまったのかもしれません。
 大体推理小説で犯人がわかってしまうと読む興味が薄れる傾向にあるのですが、本作品は初めのほうでトリックがわかってしまったのですが、読む分には面白さが減じるといったことはありませんでした。小説として優れているということなのでしょう。


No.474 7点 百万ドルをとり返せ!
ジェフリー・アーチャー
(2015/11/22 08:05登録)
詐欺や相場師の話はあまり好まないのですが、友人から「これは面白いからぜひ」と勧められ、読んでみました。
 なるほど面白い。登場人物もあくどいことをやってはいるが、冷血な人物はいない。
 インチキ商法に引っかかって巻き上げられた100万ドルを、頭を使って取り返す話なのだが、精緻な計画の割にハプニングが起きてちょっとハラハラさせる。
 この辺りがなかなかよくて、読んでいて楽しかった。
 最後はどんでん返しというかとんでもないこととなるのでびっくりしましたが、作者のサービス精神にあふれたところでもあるのでしょう。


No.473 6点 正三角形は存在しない 霊能数学者・鳴神佐久に関するノート
二宮敦人
(2015/11/13 21:53登録)
 初めは心霊現象研究会などという怪しげなお話で始まるのですが、最後まで読むとこれはちゃんとしたミステリーでありなかなかの出来であると感心しました。
 物語の三分の一ぐらいまでは怪しい話で、読みやすいのだがこれはちょっとどうかなあと思っていたのですが、主人公とマイコのしりとりの場面で、あまりのおかしさにクックと笑ってしまい周囲の人におかしなやつと怪しまれました。
 このあたりから話は急激に面白くなり、終盤のどんでん返し風の展開まで楽しく読むことができました。
 オカルトを数学的に解釈するなんてことはしょせん無理と思っていましたが、こういった展開は誠に意外。無理な押し付けではなくある意味で納得しました。


No.472 5点 真贋事件簿-京都寺町三条のホームズ(2)
望月麻衣
(2015/11/10 19:26登録)
Eエスプリタミステリーランキング第1位だと帯に書かれていますが、これはどうみてもミステリーというより軽い青春ドラマといった内容でしょう。お話に推理的要素はほとんどなく、ホームズ君が推理する内容はめちゃくちゃいい加減で、当たればよかったなあといったものなのですが、このお話の中では全て的中しています。
 だからといって全くダメということなないのですが、少なくてもミステリーとして期待してはいけない。
 こんなお話はいくらでも書けそうです。多少売れているようなのでまた続編が出るかもしれませんが、私はこれで終了としましょう。


No.471 9点 鍵の掛かった男
有栖川有栖
(2015/11/07 21:42登録)
 ずっしりとした本格物です。有栖川氏の作品では学生アリスシリーズが好きで、私の中では火村英生シリーズはちょっと落ちるのですが、これはすばらしい。
 大阪中の島のホテルを舞台として、物語はゆっくりゆっくり進んでいく。自殺とされた男の正体が全く分からないが、とても不思議なお話という言わけではない。火村は当分の間脇役で、専らアリスが地味に少しずつ真相を探っていくこととなる。
 普通こんな展開では読者は退屈してしまうのだが、作者の筆力と中の島に対する愛着がにじみ出て決して退屈させない。もちろん最後まで犯人は全然わからず、でも解決のあとはすっきりしており、作者独特の悲しみも共感しました。
 このところ有栖川氏の新作が若干さえない気がしていたのですが、こんなに重厚で長いお話に出会えて満足しています。
 あとは学生アリスの最終長編を心待ちにしています。


No.470 5点 京都寺町三条のホームズ
望月麻衣
(2015/11/01 16:59登録)
 骨董品に秘められた謎を、ホームズとあだ名がつくほどの推理力のあるイケメン大学院生がさらさらと解く。それに女子高生が加わってちょっとした恋の話も、といったお話。帯には人気ナンバー1キャラクターミステリーとしてある。
 作者は電子書籍大賞受賞とありました。電子書籍らしく「って」や「んだと」がやたら多く、私のような年代にはちょっと気になりました。
 嫌味がなく読みやすい。残酷な殺人などは全く出てこない。暇なときに読むのにはちょうど良い感じです。ただホームズ君の推理は実に見事に当たるが、ちょっとご都合過ぎではないでしょうかねえ。
 若い女性が書いているようで、話が推理より恋愛のほうに傾きがちです。
 京都の風情や骨董の薀蓄など悪くはないのですが、おじさんには気恥ずかしいね。
 でもシリーズものとして次作も出ているようなので読んでみようかな。


No.469 6点 からくり探偵・百栗柿三郎
伽古屋圭市
(2015/10/28 20:48登録)
 謎解け乙女がなかなか面白かったので、この作品も読んでみました。これも大正時代の探偵話。連作の間にちょっとした文章が添えられてあります。「謎解け」でもこういった趣向で、単なる短編集だけでなく長編としても成り立つような二重構造となっています。
 この作家は侮れない。冗談でやっていると思ったところが、実はちゃんとした理由があったことが最後に判明して、やっぱり背負い投げを食らいました。
 


No.468 6点 魔法使いは完全犯罪の夢を見るか?
東川篤哉
(2015/10/24 15:09登録)
 推理小説に魔法使いが出てきては反則でしょう。なんせどんな密室でも魔法でとおりぬけ、瞬間移動でアリバイができたではお話にならないのですから。
 まあ本作品はこんなとんでもないことはやっていません(あたりまえか)
 倒叙型推理小説といった分類となるのでしょうか。なんせ犯人は分かっているし犯罪方法もはじめに述べてあるのですから。これをさえない刑事がマリィが魔法で解決?させたものを、現実に合わせての解決へ持ち込むといった推理小説としてあまり見たことがない筋書きとなったいます。
 第1作の魔法使いといかさまの部屋を読んだときは、大分がっかり。いつものギャグも大して面白くないし。さらに読んでいくとこの設定になれたのかまあ面白くは読めました。
 東川氏のファンとしては「謎解きはディナーの後で」がヒットする前の作品のほうが好みです。作者も売れっ子となり忙しいのか、作品の質がやや低下してきたように思われるのは残念です。


No.467 7点 帝都探偵 謎解け乙女
伽古屋圭市
(2015/10/18 09:38登録)
 なかなか大変なお嬢様と車引のお話。お嬢様が突然の名探偵宣言して、お抱え車引が陰で謎を解くという構造は、読んですぐにわかってしまう。読みやすくてまずますの感じと思って読んでいると、次第にこの物語の複雑さが披露されてくる。
 最後にどんでん返しがあり、おおなるほどと思っていたら、終章でさらにどんでん返し。ある面でうまく騙されていたことがわかる。
 作者は才能がありそうです。
 終章の話は悪くはない。確かに伏線も張ってあったのだが、こういった話にしなくてもよかったような気もします。このあたりは好みの問題でしょうが。


No.466 5点 奇岩城
モーリス・ルブラン
(2015/10/15 21:57登録)
 ルパンシリーズは有名ですが、ちゃんと読んだことはありませんでした。今回代表作とされる本作品を読んだのですが。
 まあはっきり言ってお子様向け大活劇といったところですかね。
 子供のころ読めばもっと良かったかもしれません。
 何となく怪人二十面相のような感じでした。暗号などもあるのですが、残念ながらフランス語の暗号のため私にとっては「ああそうなの」といった感じでした。


No.465 6点 化学探偵Mrキュリー3
喜多喜久
(2015/10/12 09:59登録)
 なんだかんだといって発売されているシリーズを全部読んでみましたが、「3」では舞衣が意外にもソフトボールの名ピッチャーであったことが判明する。さらにキュリー氏が全くの運動音痴であったことも分かり、ちょっとほほえましい。
 3作の中では「3」が一番良いようです。
 相変わらずすらすら読めるが、以外にも?キュリー氏が舞衣ちゃんを好ましく思っているようなこととなりました(大体わかっているけどね)。
 まだこのシリーズは続くかもしれませんがどんどんのめり込んでいくというほどの力はないように思います。


No.464 5点 化学探偵Mrキュリー2
喜多喜久
(2015/10/12 09:52登録)
 Mrキュリーシリーズの1を読んでもう一つと思っていたら、娘が3を借りてくれた。2は読んでいなかったのに3を読んだが、全然違和感はなかったが、やっぱり2も読まねばと思って購入しました。
 まあこんなもんですね。
 舞衣の図々しさはだんだん慣れたが、やっぱりやりすぎでしょう。
 慣れた分だけ安心して読めるというか、まあ暇つぶしに読むのならちょうどよさそうです。


No.463 5点 化学探偵Mr.キュリー
喜多喜久
(2015/10/12 09:46登録)
 科学探偵ミスターキュリーと、彼に厄介な話を持ち込むとんでもなくおせっかいでやたら図々しい舞衣という女の子の連作推理。
 キュリー氏も嫌がっているように見えるが、結局は舞衣の押しの強さに押し切られていやいや推理するが、これが見事に的中ばかりというある面でお定まりのお話ではあります。
 新しいところは科学探偵らしく科学にのっとった解決方法なのでしょう。
 登場人物がこんな図々しい娘というのはあまり好みではないのですが、読んでみると意外に嫌味な感じはなく、すらすら読めました。
 まあ暇つぶし程度なら悪くはないかな。

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