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ミステリの祭典

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makomakoさんの登録情報
平均点:6.17点 書評数:887件

プロフィール| 書評

No.507 7点 ポアロのクリスマス
アガサ・クリスティー
(2016/07/31 07:36登録)
 この作品で犯人をあらかじめ指摘するのはすごく難しいでしょう。後から考えるとちゃんと伏線も張ってあるのですが、若干後出しじゃんけん風でもあります。
 もちろん私にも犯人は全然当てられませんでした。ポアロの推理にびっくり仰天。まあクリスティーの作品で犯人がわかったことなんかないけどね。
 本格推理小説としてはとてもよくできたものと思います。
 殺された人物はとても嫌なやつで、その子供たちも個性的であまり感じがよくないと思われる人が多い。こういったシチュエーションでのお話は、一般にいやな感じと展開となり嫌味な小説となりがちであろうかと思うのですが、そこはクリスティーで、全然嫌な感じはなくするりとお話に入っていけます。
 遅まきながらこのところクリスティを読み始めています。だんだん古き良きイギリスになじんできました。まだまだ彼女の作品で未読のものがあるのが楽しみです。


No.506 4点 神の時空 五色不動の猛火
高田崇史
(2016/07/18 07:50登録)
このシリーズはSFと歴史推理が組み合わせて、作者独特の歴史観が読み取れるというところが魅力となっており、今回もそれはまあ認められるのですが、いつもどうりのお話ではありませんでした。

以下ネタバレ気味。
ただしこのお話はネタバレしても読むのにあまり影響はないと思います。
 このシリーズは、すべてが高村皇が怨霊を解離すことをたくらんで部下に神社仏閣を破壊させる。そしてその理由がわからず辻曲家が翻弄されるが、幽霊の火地晋に特有の歴史を教えてもらって辛くも企てを阻止するといった内容であるので、当然これもそうだと思っていたら見事に背負い投げを食らわせられました。良い意味での背負い投げではなく手抜きの背負い投げのように感じました。
 歴史推理もいまいちで、なんだかなくてもよい話のように思われます。
 こういった話を大量に作るのは難しいと思いますが、ひょっとしてマンネリを避けるための策だったのでしょうか。だとしたらあまりうまくいっていないと思います。
 高田さん大変でしょうが頑張ってください。
 私も息子も(なんと息子もこの本が発売されたらすぐ買っていました)あなたのファンなのですから。次を期待します。


No.505 6点 愛国殺人
アガサ・クリスティー
(2016/07/16 22:00登録)
 初めはやや退屈でしたが、中盤になり俄然面白くなった。最後にポアロの推理が来るのですが、内容はかなりこみ入っており分かりやすいとはいいがたい。つるつると読んでしまったが、本当は事件の真相がしっかりわかりませんでした。きちんとすじを通して読んでいかないとわからない気がします。
 昔は表にしてでも理解しようと頑張ったのですが、年のせいかこの頃はまあこれでなんだかよく分からないが解決したということでしょうといったかんじです。犯人が指摘されたらああそうですか、きっと正しい推理なんでしょうねえとすることとしています。
 でもまあ面白かったです。


No.504 7点 ウッドストック行最終バス
コリン・デクスター
(2016/07/10 10:31登録)
 モース警部の推理が二転三転して物語の途中で分かりにくいところがあるが、それでも読み通していく面白さがありました。ことに女性が魅力的。容貌や外観などがあまり述べられていないのに、モース警部が好きになったスウは素敵です。
 最後に見事な推理の勝利となり、事件は解決するのですが、私には完全に納得しにくいところがありました。
 このお話は現代の科学捜査を全く無視していると巻末を書いた新保氏が指摘していますが、全くそのとうり。指紋や血液型程度の科学捜査も全くありません。こういった設定がことに変に思えないほど、物語が巧みにつづられているともいえましょうが、もしこういった設定とするなら完全なアームチェアーデテクティブが探偵役のほうがよかったかも。
 


No.503 8点 杉の柩
アガサ・クリスティー
(2016/06/28 08:07登録)
 この作品は他の評でも言われているようになかなか素晴らしいと思います。どこを探してもこの人物以外に犯人は考えられないといった状況から、ポアロが一人ずつインタビューを行いながら謎を解いていくといった設定はまことに興味深いものでした。
 ポアロ自身ももうだめかと思ったような発言を繰り返しつつ、次第に真相に迫っていく。面白いねえ。

以下ネタバレ気味
 ちょっと問題なのは後出しじゃんけん風の真相の知られ方であることと、この殺人方法が日本では絶対無理、多分当時のイギリスでも無理だったでしょうと思えることです。こんな危ない方法を選ばなくてもよかったでしょ。失敗したら自分も危ないのですから。いくらでもほかの方法でやれるチャンスがあったと思うのです。


No.502 4点 だましゑ歌麿
高橋克彦
(2016/06/22 21:43登録)
高橋克彦氏の浮世絵のお話と思って期待して読みました。
残念ながら歌麿の謎のようなお話ではなく、江戸時代松平定信寛政の改革のお話でした。こんながちがちの改革したのではさぞ面白くなかったといった内容が、物語の中からよく伝わってきました。それはまあ良かったのですが、肝心のお話が結構込み入っており(推理小説ではありがちではあります)興味よく読ませるというよりめんどうくさい感じとなってしまったのは、まことに残念です。
 江戸時代を舞台とした一応は推理小説としてよい内容なのですが、推理より時代劇小説といった感じはぬぐいえず、凡長であったといった感はぬぐえません。
 氏の初期の小説はとても面白かったのですが、あんな小説はもう期待できないのでしょうか。


No.501 3点 完璧な絵画
レジナルド・ヒル
(2016/06/16 21:54登録)
このお話は読むのが苦労でした。
シリーズもののため初めから読んでいる人にはおなじみの登場人物が出た来たといった感じなのでしょうが、この本から読み始めた私には人物の個性があまりはっきりせず、さらになんといってもダルジール警部があまり好みでなく、そのうえ翻訳がひどいため、楽しむといった感じからはほど遠かったのです。
まあねる前に読むとすぐに眠れましたといったメリットはあったのですが。


No.500 5点 天鬼越
北森鴻
(2016/06/04 18:57登録)
 北森氏は好きな作家なのですが、唯一蓮杖那智シリーズはあまり好みではありません。主人公の人を人と思わない冷たい感じと、民俗学者のくせにきちんと敬語がしゃべれない(しゃべらない?)のがどうも気になるのです。でも北森氏の最後の作品となるとやはり読まねば、と思って読みました。良いのと悪いのが混在した短編集のようです。
 作品を追加した浅野氏は北森氏のために一生懸命書いてくれたのでしょう。ただ主人公の蓮杖那智は、男が書かないとこんな態度でなぜ許されるのかがうまく出せないのでしょう。美人で頭もよく、でも傍若無人。女からはどうしてこれで許されるのかが多分わからないのかも。


No.499 5点 神の時空 伏見稲荷の轟雷
高田崇史
(2016/05/27 22:25登録)
神の時空シリーズ第6弾。今度は伏見稲荷のお話です。
 話の冒頭から4人の死体が千本鳥居につるされているというショッキングな内容。今度こそ本格推理と思われる滑り出しですが、結局はこの殺人も物語のメインではなく、伏見稲荷の薀蓄のお話でした。
 作者は現在学校で教えられる歴史は勝者の歴史であり、貶められた者たちは歴史舞台から故意に削られてしまっており、それを読み解いていくといった歴史推理を多く書いているが、本シリーズは推理よりファンタジー的要素がより強いお話です。
 今回も以外な歴史推理が展開されるのですが、最後のシーンがことにくどく感じられ今までのものよりちょっと評価は低めです。命が危ないシチュエーションなのに、ああもくどくどと歴史の話をしている場合ではないでしょ。QEDでは「たたる」の話が長いと作者自身も述べていますが、この小説の最後のシーンはさらにぐたぐたと薀蓄が話されちょっと興ざめしてしまう。


No.498 6点 神の時空 厳島の烈風
高田崇史
(2016/05/27 22:09登録)
 このシリーズは全編神社仏閣に封じ込まれている怨霊を高村皇という謎の人物が部下を使って世の中に送り出し世界を破壊せんとするのを、辻曲家の者とぬりかべの福来陽一が何とか防ごうとするが、怨霊の正体やなぜ怨霊となったがわからず苦戦する。そこで偏屈な幽霊の火地晋に教えを請い、何とか破壊を防止するという話のようです。その間に殺人事件が起きるのですがそれはほとんど物語のメインではありません。
 今回は厳島神社の薀蓄のお話といえます。初めて高村が辻曲一家の前(後ろだが)に現れます。ようやくといったところですが、この物語が始まってまだ数日しかたっていません。長編小説1冊が物語の中では1日ということになります。
 それにしてもこう毎日あちこちで日本を揺るがしかねない大事件が起きているのに主人公以外の一般人たちは全くそう言ったことを知らないのはちょっと変ですね。
 厳島神社に祭られている、優しい海の守り神たる三姉妹の神様もやっぱり怨霊ということになっています。そういった考え方もできるとは知らなかった。


No.497 6点 神の時空 三輪の山祇
高田崇史
(2016/05/22 18:27登録)
シリーズ第4作。
 こんなに長いのに物語の日数はまだ3日しかたっていません。これ程の大事件が次々に起き、しかも1日で収まったらめちゃくちゃにすごいことになるのですが。
 まあ、ある意味おとぎ話のようなものですので、自衛隊などの出動はないようです。
 今回の舞台は三輪山。
 またしても私の大好きなお山で、近鉄に乗ってこのお山が見えると本当に素敵だなあといつも思ってしまいます。
 やっぱり殺人は起きますが、この物語としてはこれが主題ではありません。
 これまでのお話ではとても怨霊と思えない人物やものが怨霊となって登場しましたが、この話は古代史に興味がある人にとっては、これはある意味怨霊としてもまあ許せると持っておられる方も多いと思います。
 それにしても幽霊の火地さんはすごいことをよく知っていますねえ。ただ歴史推理をする際に引用文献を出すわけにいかないため、だれだれがこういっとるといったちょっと不自然な表現が時に出てくるのはちょっと違和感があります。





No.496 5点 神の時空 貴船の沢鬼
高田崇史
(2016/05/22 18:03登録)
シリーズ第3弾。実はこの作品を最初に読んでしまった。
 物語の途中から入ってしまったが、ひどく不都合ではありませんせした。でもやっぱり順番に読んだほうがよいと思います。
 なぜこれから読んだかというと、私の本家に祭ってあった神様が貴船神社であったためという。個人的理由からです。
 読み始めてすぐには今までの高田氏の作品と違って、殺人は出てくるがそれに対する推理の要素は少なく、専ら怨霊の推理となっていたことと、重要な登場人物として猫や幽霊、ぬりかべなど出てきて、漫画チックだなあといった印象。
 でも読んでいるとそういった違和感は薄れてきてまあそれなりに楽しめました。
 歴史推理が好きなら面白いところも多いですが、がちがちのまじめな方にはちょっといけないかもしれません。
 


No.495 6点 神の時空 倭の水霊
高田崇史
(2016/05/22 17:50登録)
 このシリーズの第2弾。一冊ずつが長編小説なのですが、時間的には6冊が終わってもまだ1週間足らずということとなっている。私もその時間に沿ったように1週間足らずで6冊を読んでしまった。
 本作品は日本武尊に関するお話。殺人事件が起きるが、これに対する推理の要素は少なく歴史推理、ことに通常知っている歴史から抹殺された怨霊の話です(このシリーズ全編がある意味同じ傾向)。
 私の認識では景行天皇の皇子である日本武尊は古代史のヒーローであり、悲劇の主人公であったのですが、この作品では彼は結構姑息な手段で敵を滅ぼしており、彼のために命を懸けて海神を鎮めた弟橘姫が怨霊となったということになっています。
 うーんまあ納得とまではいかないけれどそう言った考え方もありかなあ。
 


No.494 6点 神の時空 鎌倉の地龍
高田崇史
(2016/05/22 12:19登録)
 高田氏のQEDシリーズは大変好きで、発表されるとすぐに読んでいたのですが、その後発表のものはもう一つといった感じがあり、しばらく遠ざかっていました。
 楠木正成の話が出たのを期に氏の作品を調べたら、この神の時空シリーズがなんと6冊も出ていましたのでさっそく読んでみました。
 このシリーズはどこから読んでいくのかインターネットで見る限りよくわからず、とりあえず興味のありそうな題のついているものを購入。「貴船の沢鬼」でした。これはなんと3作目であることがわかったのですが、作品の順番が題目だけではわからない。本屋で中身を見るとよいのでしょうが、インターネット購読はこの辺りがもうひとつですねえ。結局全部買って読むこととしました。
 どの作品から読んでも極端に差し支えるということはないのですが、時系列で書かれたお話ですので、本書「鎌倉の地龍」から読むべきでしょう。
 このお話は本格推理の要素は少なく、歴史ミステリーにファンタジーを加えたようなお話でした。例によって高田氏独特の歴史認識から文献的解釈を取り入れ読者に納得して読ませる内容ではあります。幽霊やぬりかべ、超能力を持つ猫などが出てくるとちょっとしらけそうですが、うまく話になっていると思いました。
 鎌倉幕府開設時のあの凄惨な陰謀合戦を氏独特の歴史観で見つめているのはなかなかのものです。
 話の中毒性はかなり強いので6冊とも次々と読むこととなりました。
 


No.493 6点 スペイン岬の秘密
エラリイ・クイーン
(2016/05/03 09:24登録)
 このお話はフーダニットとしては古典的なため、私でも犯人は分かりました。エラリーの挑戦で答えの前に分かったのは実は初めてなのです。
 ただし被害者が裸でマントのみ着ていたという理由はさっぱりわかりませんでした。
 種明かしを読んで、まあそうかとは思ったのですがーーー。
 下着まで脱がせて真っ裸にする必要はなかったのでは?
 まあこのほうが派手なのでこんな設定としたのでしょう。
 


No.492 6点 新車の中の女
セバスチアン・ジャプリゾ
(2016/04/24 20:43登録)
 最初は実に読みにくい。翻訳文のせいもありますが、文章が実にあいまいで、その中に何か仕掛けがあるようないような。読み進むにつれて読み難さはなくなりましたが、実に変な感じの展開なのです。
 フランス物はアングロサクソンの文学と違って特有の雰囲気があると思っていますが、主人公が良くも悪くもいかにもラテン的なのです。
 すらりとした金髪の美人で、社長からサンダーバードを預かるとそれを勝手に乗り回す(日本人ではあまりないシチュエーション)。挙句の果ては遠い南のマルセイユまでいってしまう(ありえないねえ)。初めてあった男と3時間ぐらいで肉体関係を結んでしまう(いいなあ)。これが普通のフランス娘さんなのでしょうか(ちょっとフランスに生まれたかったような)。
 ところが初めていった南フランスなのですが、なぜか現地の人は昨日会ったばかりだと、サンダーバードも明らかに修理した車で間違いないといわれたりーー。
 わけがわからない展開となるが、こんな話は大体が文章にミスリードするような内容が隠されていると思うのですが、なんせ翻訳文なのでそのあたりがしっくりしない。
 翻訳がそれほど悪いとは思いませんが、フランス語で読んだらきっともっと面白いのでしょう。
 最終的にはなるほどということとはなるのですが、読むのがちょっとつらかったところを差し引いて、私としてはこの程度の評価です。


No.491 8点 ナイルに死す
アガサ・クリスティー
(2016/04/15 22:36登録)
 とても面白かった。本作品は大変有名で映画化などもされているのですが、本を読む前に絶対に見ないようにしていたものです。以前「Yの悲劇」や「オリエント急行殺人事件」を映像で見て20年以上たってから本を読んだのですが、忘れっぽい私でも犯人やそのシチュエーションを明らかに覚えていたため(それだけ映画が良かったとも言えますが)、小説を読む興味が半減したことがあったためです。
 エジプトは今まで訪れた国の中でも指折りに好きな国で、そこでこのような豪華なお話が組み立てられているというだけでも、たまらない魅力です。
 お話も実に綿密に作られていて、殺人事件がなかなか起きないのに、全く飽きさせることなく読ませてしまうのはすごいですね。

以下多少ネタバレです。
 ただ今まで読んだクリスティ-の作品で犯人がわかったことがない私ですが、この作品に限っては犯人はこれだとかなり初めからわかりました。ただしトリックが全然わからない。あらゆる本能?がこの人物と示しているのですが、犯行は絶対無理だからなのです。最後まで読んでみれば簡単で納得がいくトリックでした。
なるほどね。参りました。さすがクリスティー。


No.490 6点 軍神の血脈
高田崇史
(2016/04/10 21:18登録)
 高田氏の作品は久しぶりです。QEDシリーズは大好きで発表されるとすぐに読んでいたのですが、カンナシリーズはちょっと薄味な気がして、途中からやめてしまったのです。
 今回楠木正成に関するお話が出たと知り、再び読んでみることとしました。
 なるほど氏の歴史観はなかなかのものです。勿論これは学術書ではなく小説なのでこの内容が真実であると主張するものではないと思いますが、こんなことがあったとすれば日本の歴史はある意味で大きく塗り替えられることとなるでしょう。
 私にとっては引っかかるところも多々ありますが、ここまで考え抜いて書かれているのですから立派なものと感心しました。
 推理小説としてはまあぼちぼちですが、こういったかたちで推理小説を書き続けている作者は本当にすごいですね。


No.489 8点 白昼の悪魔
アガサ・クリスティー
(2016/04/10 21:06登録)
 いつものことですが、クリスティーには見事に騙されてしまいます。この作品は氏の作品の中では有名ではない方?にも思いますが、なかなかの名作です。
 びっくりするようなトリックではなく、でもやっぱり最後には驚かされました。
 未読な方はぜひ。おすすめですよ。


No.488 7点 幻坂
有栖川有栖
(2016/03/27 13:14登録)
 有栖川氏の作品なので当然本格物と思ってネット購入したのですが、この作品集は本格ミステリーではありませんでした。だからといってよくなかったわけではなく、むしろ作者の大阪に対する愛情やそこはかとない美しさがあり、満足でした。
 ちょうど大阪へ出張しているときでしたので、時間を作って坂と天王寺へ行ってきました。最近流行となりつつある真田幸村の戦死したところにたつ神社もありました。
 なるほど。大阪にもこんなしっとりしたところがあるんだ。

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