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ミステリの祭典

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天鬼越
蓮丈那智フィールドファイル5 浅野里沙子補完

作家 北森鴻
出版日2014年12月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 5点 makomako
(2016/06/04 18:57登録)
 北森氏は好きな作家なのですが、唯一蓮杖那智シリーズはあまり好みではありません。主人公の人を人と思わない冷たい感じと、民俗学者のくせにきちんと敬語がしゃべれない(しゃべらない?)のがどうも気になるのです。でも北森氏の最後の作品となるとやはり読まねば、と思って読みました。良いのと悪いのが混在した短編集のようです。
 作品を追加した浅野氏は北森氏のために一生懸命書いてくれたのでしょう。ただ主人公の蓮杖那智は、男が書かないとこんな態度でなぜ許されるのかがうまく出せないのでしょう。美人で頭もよく、でも傍若無人。女からはどうしてこれで許されるのかが多分わからないのかも。

No.1 6点 kanamori
(2015/01/27 18:53登録)
民俗学が専門の女性大学教授・蓮丈那智が、研究室の助手・内藤三國らを伴って、地方に伝わる神事、古文書などの学術調査を行う過程で殺人事件に遭遇する-----というのが基本パターンの連作ミステリ、シリーズ第5弾。雑誌掲載のままだった「鬼無里」「奇偶論」の2編に、作者の死後、パートナー浅野里沙子氏が書き下ろした4編を加えた構成になっています。

「鬼無里」は、秋田のナマハゲに似た祭事が行われている村で男が殺される。ユニークなアリバイトリックに加え、”鬼”の正体と蓮丈が提示した銭形平次の神田明神の謎が結びつく民俗学的アプローチが秀逸。
「補陀落」は、沖に係留された衆人環視状況の船内で死体が見つかる。不可能殺人のトリックは強引な感じを受けるが、真相解明に発想の転換を要するところがよい。
「天鬼越(あまぎごえ)」は、北森氏原案のものを浅野氏が小説化したもので、村の神社に伝わる古文書が連続殺人につながる。事件の構図がどこか「獄門島」を想起させる力作。
「偽蜃絵」は、名張市の旅館でみかけた絵をもとに、昭和初期のある隠れたエピソードを謎解く。その時代とその地方、蜃気楼という三点をヒントに、ある意外な有名人物が浮かび上がる趣向が楽しい作品。ほか2編。
出来不出来のバラツキがある。浅野氏の代作は、文章の硬さやミステリとしての構成の拙さが気になったが、民俗学がらみの部分はわりと健闘していると思う。

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