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ミステリの祭典

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makomakoさんの登録情報
平均点:6.17点 書評数:887件

プロフィール| 書評

No.567 8点 崩れる脳を抱きしめて
知念実希人
(2017/10/22 15:28登録)
これはなかなか素晴らしい。
久しぶりに一気読みしました。
ロマンチックでしかもちゃんと推理小説として成り立っており、「天久鷹央の推理カルテ」とはえらい違い。
作者を見直しました。
是非この路線で書いていってほしいですね。

この作品は医師が書いた作品であり、研修医の生活や診察の状況、カルテ記載など、ひょっとしたらこの方面の人でないとわかりにくいかもしれないが、たぶん誰が読んでも大丈夫でしょう。
同業のものから言わせていただくと、本作のトリックは医師にとってはまさかと思えるもので、そんなことはあり得ないような気もしたのですが、ぎりぎり成り立っていると思います。
私のとってははるか昔の研修医の頃が思い出され、ちょっと点数が甘くなったかもしれません。


No.566 6点 迷いアルパカ拾いました
似鳥鶏
(2017/10/22 15:09登録)
シリーズものでしたが、そんなこととは知らなかったので第3弾となる本作品を始めて読みました。
前作が後を引いているようなお話ではないので、これから読んでもほとんど大丈夫でした。
動物園は結構好きでたまに訪れたりするのですが、飼育員の話は初めてで、なるほどこんな人が飼育員なのかと納得したりしていました。
肝心のお話についてはまあこんなもんでしょうね。
悪くもないがとても良いというわけでもない。暇つぶしなら読みやすく嫌味がないのでよさそうです。
作者のあとがきはちょっとふざけ過ぎだなあ。
私には悪ノリ風に見えました。


No.565 7点 体育館の殺人
青崎有吾
(2017/10/15 08:38登録)
作者の作品は初めて読みました。
なかなかの力作と思います。本格物が好きなら興味津々であることは間違いない。
密室の謎、犯人の推理を少しずつ解き明かしていく過程はとても興味深い。
なかなかやるなあ、といった感じ。
ぜひこの作風を保って私たち読者を楽しませていただきたい。

以下多少のネタバレ。
気になったのは密室脱出のトリックですが、これは相当偶然が重ならないとすぐばれそう。
さらに本当はあり得ないのが、殺人の状況。
ナイフで一突き、周囲の人たちに分からないほど悲鳴すら上げさせない。しかも短時間に死体を移動する。そして平気な顔をしている。
これはゴルゴ13なみ(ゴルゴは銃で撃つので音が出るが)のプロの仕事ですよねえ。
この仮定からすると犯人はプロであり学生はほぼ除外されてしまい(学生で殺人のプロという設定ならありですが)、このお話は成り立たなくなってしまいます。
こんなことが気にはなるのですが、推理小説は基本的にお遊びということとして、楽しく読みました。


No.564 6点 巨大幽霊マンモス事件
二階堂黎人
(2017/10/08 22:26登録)
二階堂蘭子シリーズは4半世紀も続いているとのことです。初期の本格推理モノは素晴らしく、リアルタイムで読んできた私は作者の将来をおおいに期待したものです。ところが最近の作品はとんでもないものとなり果ててしまった。能力が枯れてしまったのかなあ。
そんな中ではこの作品はまあましな程度には出来上がっています。
ばかばかしいので読むのをやめようかとまでは思わず、一応何とか最後まで読めます。
でもやっぱり現実離れしたむちゃくちゃなところも多い。あり得ない確率で起きたことがいっぱい出てきて、それを蘭子がたちどころに分かるというのもどう考えても不自然だし。



No.563 4点 髑髏城
ジョン・ディクスン・カー
(2017/10/01 14:40登録)
 この作品は読むのにとても時間がかかった。すぐ眠くなってしまうのです。怪奇趣味と古いお城のお話は嫌いではないはずなのに、この作品では読むのがちょっとつらかった。
 トリックも話の内容も現代となってはいかにも古臭く、今まで読んだカーの作品よりだいぶん落ちるように思えました。


No.562 5点 プレーグ・コートの殺人
カーター・ディクスン
(2017/09/02 23:05登録)
 この作品は評価が高いが、私はあまり楽しめなかった。
 はじめのかなり長い部分が、オカルト趣味というか怪奇趣味というかといったお話が述べられているが、これはほとんど主たるストーリとは関係がない。
 この辺りでちょっといやになるのだが、全体解けそうもない密室殺人が起きたあたりからはやっと面白い展開となる。
 密室殺人のトリックはすごいなあ。でも現代なら全く通用しそうにないだろうけどね。
 第2の殺人は誰でも見破ることができるでしょう。これに騙されるような警察は当時としてもお粗末極まりないことになりそうです。
 全体としてどうもしっくりこなかったのは、殺された心霊学者が、話の中に実際に登場したことがなく、ほとんどがほかの人物から語られただけであるため、現実感が乏しい感じがするところと、初登場のH.M.が推理を組み立てていくといった感じが少ないため、名探偵の推理の過程がほとんど見えないところ。
 こういった感じなので私の評価はあまりよくなかった。


No.561 6点 探偵少女アリサの事件簿 溝ノ口より愛をこめて
東川篤哉
(2017/08/13 17:24登録)
 本作品は東川氏の小学生探偵少女という新しいキャラクターの始まりなのでしょう。
なかなか面白いキャラだしこの路線なら多分何作かは、楽しませていただけそうです。
 本作品は連作集となっており、それなりに本格でもあります。何でも屋の橘くんに小学生探偵有紗ちゃんがメインキャラクター。
 いつも有紗ちゃんのお父さんが国内難事件で出張する間の子守役を橘くんに頼むのだが、お母さんはさらに有名な世界的探偵で外国へ行っていることとなっている。お父さんの出張事件もお母さんの出張事件も、推理小説ファンならすぐピンとくる有名な本格推理小説の事件なのは作者のサービスなのでしょう。
 私としては一番最初の「名探偵溝の口に現れる」がユーモアが効いて一番面白かった。
 次作を期待して待ちます。


No.560 7点 貴婦人として死す
カーター・ディクスン
(2017/08/08 10:52登録)
 殺人か自殺か。自殺だったらバカみたいだから当然殺人でしょう。ここまではすぐわかるのですが、もし殺人としたら完全犯罪としか思えないようなシチュエーション。殺人をどうやって説明できるか見当もつかなかった。謎解きをしてみれば比較的簡単なトリックなのですが。
 登場人物も限られており犯人は分かりそうなのだが、結局全然わからなかった。
 種明かしされればなるほどとは思うのですが、これってちょっと物語を変えれば、違う人を犯人とすることは簡単にできそうな気もします。
 まあそのあたりが若干のマイナスなのですが、しっかりした本格推理小説であることは間違いないので、本格物が好きなら楽しめること請け合いです。


No.559 6点 オーブランの少女
深緑野分
(2017/07/09 07:40登録)
一番良かったのが、表題のオーブランの少女でした。
 私は不勉強にて作者のことが全く分からないのですが、名前からすると男か女かわからない。でも内容は圧倒的に女性の視点ですのできっと女性なのでしょう。外れていたらごめんなさい。ダメなやつとおしかりください。
 きれいなところが実はドロドロした歴史を持っていたという表題作はまあ面白く読めましたが、以後の作品は全然話は違うのですが、似たような感覚で、だんだん読むのが面倒になってしまいました。
 このサイトの評ではかなり好評なのですが、私はあまりピンときませんでした。


No.558 5点 樫乃木美大の奇妙な住人 長原あざみ、最初の事件
柳瀬みちる
(2017/07/09 07:32登録)
 軽いお話ですね。まあ悪くはないですが。
 いかにも女性が書いた女性からの視点にあふれた感覚で、現代の大学生が使う言葉ならこんな感じなのでしょうが、表現が年寄りには何とも違和感があります。遠い青春時代を少し思い出させてくれたのかもしれないという事としましょう。
 読んでいけばこんな表現もあまり気にならなくなり、サラサラと読めます。
 キャラクター小説大賞受賞と帯に書いてありますが、私にはそんなに際立ったキャラクターとも思えない。
 暇つぶしに読むなら適当かも知れません。


No.557 8点 ユダの窓
カーター・ディクスン
(2017/07/02 10:38登録)
 はじめの設定に驚かされました。
 こんな密室、解くのは無理でしょう。
 登場人物も少なく読みやすい。かなりの迫力があり、基本的には一発トリックの小説なのにここまで読者を引っ張り続けるのは、作者の力量なのでしょう。
 精緻な検証とまあ納得のいく結論でしたので、すごいなと思います。
 ただ精緻に傾くあまり、いろいろな考察が入り乱れてごちゃごちゃと長たらしいのは否めません。もう少しすっきりとさせた方が私にはよいのです。
 あくまでも細部までこだわって作り上げた美学なのでしょう。
でもとてもすごい作品であることには変わりありません。


No.556 5点 どこかでベートーヴェン
中山七里
(2017/06/25 18:24登録)
 名探偵でピアノの天才。岬の少年時代のお話。
 ドビュッシー、ラフマニノフ、ショパンときて今回はがちがちの本命のベートーベンです。小説内には月光、悲愴の曲が流れるシーンがかなり長く、この曲が好きで読んでいて曲が浮かんでこないと、意味が分からない描写が結構長く続くので、退屈になってしまうかもしれません。
 私はクラシックが好きなのでさほどでもなかったですが、それでもちょっと描写が長すぎたように感じました。
 それにしてもここに出てくる高校生たちは感心しないなあ。とても陰湿でいやな感じです。これが評価があまりできなかった原因の一つです。
 さらに推理小説としては意外性もあるにはあるのですが、同じ様な天災が2回起こってそれで推理がなり立つというシチュエーションは大分無理がありそうです。
 作者は非常にエネルギッシュに作品を書いておられ、素晴らしい才能とお見受けしますが、作品によって私にはどうも合わないところがあるようです。


No.555 6点 ジュリエットの悲鳴
有栖川有栖
(2017/06/17 17:29登録)
 有栖川有栖氏がだいぶん前に書いた短編小説をまとめて一冊としたものです。シリーズものではないのでアリスや名探偵は出てきません。
 まあいろんな小説を書いていたんだというのが、読んだすぐ後の印象です。とんでもないSFの話もあります。
 作者はトリックを先に思いついてそれに合うようなシチュエーションを後から考えだしたような感じ。従ってトリックの出来不出来が作品に大きく影響しているようです。
 私は有栖氏の学生アリスシリーズや最近の長編のファンでありますが、短編に関しては出来不出来がかなり大きいように思います。
 


No.554 6点 メグル
乾ルカ
(2017/06/17 17:21登録)
 本格推理ではなく幻想小説のようなジャンルに入る内容と思います。
何となく幽霊っぽい大学のアルバイト紹介係の女性に紹介されたアルバイトのお話。
SFチックな内容のものやら怪奇小説用のものなど内容は多少このなりますが、まあ読みにくくはないですね。
 好みからいうとまあぼちぼちといったところでした。


No.553 4点 虹の歯ブラシ 上木らいち発散
早坂吝
(2017/06/11 16:47登録)
 べつにエッチな作品が嫌いではないのですが、私にとってライチは全然現実感がないので、セクシーでも何でもない。下ネタも嫌いではないのだが、こればっかりではねえ。
 皆さん結構評価が高いようですが、私は大して面白くもなかった。勿論いやな感じではないのですが。


No.552 5点 かくして殺人へ
カーター・ディクスン
(2017/05/27 18:23登録)
 映画撮影所での事件なので映画関係者が登場するのは当然なのですが、私は職の区別があまりわかっていないので、読んでいて人物がごちゃごちゃになりがちでした。登場人物が決して多くないのに。
 お話としてはちょっとそこが浅く、トリックもいまいちといった感があり、こんな評価となりました。


No.551 7点 テミスの剣
中山七里
(2017/05/20 08:04登録)
 こんなお話が現実に警察であったとすると、冤罪などいくらでもできてしまいそうです。確かに悪賢いやつはなんとでも言い逃れして結局無罪となりかねないのでしょうが、思い込み捜査はやはり問題なのでしょう。
 作者の小説にはいろいろなキャラクターが出てきてそれぞれに興味深い。ことに本作品の主人公は正義感にあふれていて、しかもそれを自分が不利となってさえ実行していくのですが、それが皆に嫌われる元となってしまって、なんだかいたたまれません。
 こんなお話では最後がつらくなりそうなのですが、最後にはほっとする景色が描かれ、読後感はとてもよくなりました。


No.550 7点 ささやく真実
ヘレン・マクロイ
(2017/05/14 09:08登録)
マクロイの作品は初めて読みましたが、面白かった。
 飲むと真実を話してしまうという、とんでもない薬が登場するので、これはちょっとと思っていたのですが、お話はなかなか興味深い展開となり、最後はきちんと犯人が指摘されます。
 すっきりとした推理小説で、読後感も悪くはない。はじめは殺された女性のあまりの性格悪さにちょっとげんなりはしていたのですが。


以下少しネタバレです
 翻訳の関係かもしれませんが、ただ単に文章を読んでいると美しい容貌の人はそれなりに分かるのですが、パッとしない人の容貌が浮かんでこない。一応文として書いてはあるのですが。これが結構後で効いてくるので、途中であれそういえばといった感じがしたのが多少の減点です。


No.549 5点 囲碁殺人事件
竹本健治
(2017/05/14 08:59登録)
 この小説は囲碁がわからないとよめないということはないですが、わかっている人のほうがだいぶん楽しめそうです。
 かくいう私にしても以後はルールを大体知っているのみで、中国と日本でルールが違っていたり、最近ルールが改正されたりなんてことは全く知りませんでした。
 したがって私のこの小説に対する理解がもう一つであることは否めませんが、でもやっぱりあまり面白くなかった。
 おまけのチェス殺人事件に至っては推理小説の形を成していない、というか単に問題定義しただけで、答えはどうにでもなるといった代物のように思えました。
 ゲーム三部作だそうですが、続きはあまり読む気がしない。
 この作者とはあまり相性が良くないのかもしれません。


No.548 6点 神の時空 京の天命
高田崇史
(2017/04/30 18:37登録)
神の時空シリーズもこれで終了。お話としては1週間足らずの時間ですが、これが8巻という大著となって、ようやく終了となったといった感じです。
このお話はおしまいはきっとこうなるということがほぼ約束されたようなものですので、意外な感じは全くありません。
まあ気分よく終わったといったところでしょう。
本格推理としたら、ずい分無理があるのでファンタジーととらえるべきなのでしょう。
すごい事件が短期間で日本のあちこちに起きているのに、何故か一般人はあまり気付いていない。こんな事件ならテレビなどマスコミは大騒ぎで一日中特番だ、といったことは言いっこなしで読めばそこそこ面白いです。
ただ火地という爺の幽霊の話はこんかいはことにくどくてめんどくさい。これが長々と書かれているのを好ましいと思うかばかばかしいと思うかで、この話が楽しめるかが決まりそうです。
私は薀蓄が好きなのでまずまずでしたが。

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