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ミステリの祭典

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makomakoさんの登録情報
平均点:6.17点 書評数:895件

プロフィール| 書評

No.575 6点 探偵が早すぎる
井上真偽
(2017/12/17 11:19登録)
 推理小説の名探偵は事件発生を防げないという、本格推理小説のお約束事を破ったお話です。
 犯罪を犯そうとする人が次々と登場しいろいろなトリックが出てくる。名探偵はそれを事前に見破ってたくらんだ犯人へしっぺ返しする。なかなか面白い発想です。
 一応長編小説ですが、連作小説を組み合わせたような形態です。犯罪をたくらむ人物たちは、およそ人間的感情を持たない異常な人ばかり。狙われる人物は逆に感情が先走る普通のお嬢様。親戚が全員これほど多分先天的に異常な家族にひとだけまともな人間が生まれるだろうかなどとなどは思わないで読んでいけば、作者の切れ味の良い頭から作り出されたお話はまあ楽しめます。
 でもやっぱり推理小説のお約束が外れるというのは若干変な感じがしました。 銭形平次が投げた銭が外れて犯人が逃げましたといった感じです。


No.574 6点 QED ~ortus~ 白山の頻闇
高田崇史
(2017/12/07 21:30登録)
 もう終わってしまったと思っていたQEDシリーズが新たに出たということでさっそく読みました。
 QEDの愛読者なら奈々ちゃんのその後と学生時代に出会えて楽しいのですが、
そうでないならなんだか七めんどくさい屁理屈と、それを無理やり事件と合わせた内容と感じるかもしれません。
 ずっとこのシリーズを楽しんできたものにとってはそれなりに楽しめました。


No.573 5点 白い僧院の殺人
カーター・ディクスン
(2017/12/03 08:59登録)
 この小説はかなり読みにくくちょっとずつ読んでいくとなんだか意味不明となりちょっと前から読み返す、といった読み方で何とか読破しました。翻訳のせいかもしれませんが、ほかの評価にも出ていましたが、見取り図のようなものがあればもっとわかりやすかったと思います。
 江戸川乱歩が密室トリックとして評価していたとのことです。確かに雪に囲まれた密室で、足跡は発見者のものしかないとなると不可能犯罪この上ないのですが、種明かしされると拍子抜けするほど簡単な方法。でも確かにこれで無理なく密室は出来上がるのでしょう。


No.572 6点 風ヶ丘五十円玉祭りの謎
青崎有吾
(2017/11/19 08:34登録)
この短編集は作者の体育館の殺人、水族館の殺人を読んでからでないと、興味が半減しそうですので、まずこれらを読んでから手にされることをお勧めします。勿論最新作の図書館の殺人を読んでからでもよいです。大変すばらしい作品ですので本格物が好きな方は読んで損はないと思います。
 話がこれらの登場人物のキャラクターの深掘りといった趣もあるので、読んでからだと、なかなか面白く読めます。
 謎解きとしては大したことはなく軽いお話です。したがって無理な推理などと野暮なことは言わないで読みましょう。
 いつのまにか袴田妹の柚乃ちゃんがかわいくなっています。扉の絵も素敵です。こんな感覚で読むのならそれなりに面白い。
 本格推理の希望の星の作品だと思って読むとちょっと拍子抜けしそうです。


No.571 7点 図書館の殺人
青崎有吾
(2017/11/12 12:24登録)
 このシリーズも3作目となり、登場人物のキャラクターが読み初めからわかってくるにつれ、より楽しめるようになりました。
 天馬の推理は今回もさえて、悩みながら少しずつ真相に迫て行く姿はまさにクイーンといったところでしょう。さらにひとめ見て色々なことを当ててしまうのはシャーロックホームズみたい(この作者だと「みたく」)でもありますね。
 3作続けてこういった作品を書けるというのは本当にすばらしい才能と思います。
 次作がとても楽しみです。
 ただし気になっている点もあります。
 ほかの方も書いておられるように犯人が意外過ぎて、犯行に至る現実味が乏しくその後の態度もこんな状態でいるはずもないところです。いくら理論的に詰めていったといっても、この人がやったとしたらその後もっとおかしくなるんじゃないかなあ。勿論推理小説なので、態度様相の変化で簡単に犯人がわかってはいけないのではありますが、ちょっとひどすぎるように思います。この傾向はこのシリーズ1作目からも感じていたものですが、今回が一番ひどかった。
 もうひとつ。
 会話や描写が「いまふう」なのはある程度認めますが、「いまふう」というのは後の世代の人が読んだら古臭く感じるような表現となりそうです。関東の方言のような「みたく」もやめていただきたいですね。この作家は将来推理小説の古典となりうる作品を書き上げる可能性を秘めていると思いますので、あえて苦言を呈しておきます。


No.570 6点 幻夏
太田愛
(2017/11/11 08:11登録)
 かなりの力作でした。冤罪による被害があからさまに描かれて入れ、日本の司法に対する大いなる不信を描き出していると思います。
 ただ全体にとても暗い。冤罪による家族の悲劇を描いているのですから暗くなるのは当然といえますが、それにしても暗い。救いようがない。
 読んでいると気分が落ち込みます。
 私はあまり好みではないですが、社会問題を考えるといった方にはとても良いのかもしれません。
 文章はそれなりに練れていると思いますが、気になる表現がところどころあります。
 ことにいけないのは主人公の一人の警察官である相馬が、「刑事課から交通課に左遷された」はいただけませんね。なんと解説の佐久間文子さんも同じように書いているのですが、交通課って刑事課より下で左遷なんだ。今度交通課の人が取り締まりやっていたら「あんたは刑事課から左遷されたの?」って聞いてみよう。
 


No.569 6点 サナキの森
彩藤アザミ
(2017/11/03 20:16登録)
 いきなり古い文体のお話が登場して、すぐ後から現代語となるといった展開はそれほど珍しいものではないと思いますが、されをうまく絡ませて展開しているところはなかなか良かったと思います。
 主人公が女性が書く女性で、セックスアッピールに乏い。こんな女性はわかっている男から見ればいじらしくて魅力的なのですが、もう一つそれが伝わってきません。対する美少女も目が真っ赤で気味悪いなんて。男が書けば絶対そんなャラクターにせず、奔放な美少女にするところでしょうがねえ。
 密室事件としてのトリックは単純で、確かにこういった小説を読みなれている人にとっては種がわかりやすいようにも思いますが、私としては興味深く読みました。次作に期待します。


No.568 8点 水族館の殺人
青崎有吾
(2017/10/30 20:25登録)
 作者は平成のクイーンといわれているそうですが、この作品を読むとまさにクイーンですね。
 たくさん登場人物が出てきて、ほとんど完全犯罪みたいで、手がかりは実に小さなところからであり、探偵が少しずつ論理を積み上げてついに犯人指摘に至るといったところはクイーンそのものといった感じ。
 さらに若き現代日本人が書いているので、感情の移入がしやすく、はるかに読みやすい。登場人物も探偵はともかく相手役の柚乃ちゃんなんかはかわいいねえ。ファンになってしまいました。
 こういった作品はきっと書くのが大変だと思いますが、作者は前作の体育館の殺人よりさらに強烈な殺人現場を用意したうえで、さらに精緻な論理をくみ上げています。すごい才能だと感じました。


No.567 8点 崩れる脳を抱きしめて
知念実希人
(2017/10/22 15:28登録)
これはなかなか素晴らしい。
久しぶりに一気読みしました。
ロマンチックでしかもちゃんと推理小説として成り立っており、「天久鷹央の推理カルテ」とはえらい違い。
作者を見直しました。
是非この路線で書いていってほしいですね。

この作品は医師が書いた作品であり、研修医の生活や診察の状況、カルテ記載など、ひょっとしたらこの方面の人でないとわかりにくいかもしれないが、たぶん誰が読んでも大丈夫でしょう。
同業のものから言わせていただくと、本作のトリックは医師にとってはまさかと思えるもので、そんなことはあり得ないような気もしたのですが、ぎりぎり成り立っていると思います。
私のとってははるか昔の研修医の頃が思い出され、ちょっと点数が甘くなったかもしれません。


No.566 6点 迷いアルパカ拾いました
似鳥鶏
(2017/10/22 15:09登録)
シリーズものでしたが、そんなこととは知らなかったので第3弾となる本作品を始めて読みました。
前作が後を引いているようなお話ではないので、これから読んでもほとんど大丈夫でした。
動物園は結構好きでたまに訪れたりするのですが、飼育員の話は初めてで、なるほどこんな人が飼育員なのかと納得したりしていました。
肝心のお話についてはまあこんなもんでしょうね。
悪くもないがとても良いというわけでもない。暇つぶしなら読みやすく嫌味がないのでよさそうです。
作者のあとがきはちょっとふざけ過ぎだなあ。
私には悪ノリ風に見えました。


No.565 7点 体育館の殺人
青崎有吾
(2017/10/15 08:38登録)
作者の作品は初めて読みました。
なかなかの力作と思います。本格物が好きなら興味津々であることは間違いない。
密室の謎、犯人の推理を少しずつ解き明かしていく過程はとても興味深い。
なかなかやるなあ、といった感じ。
ぜひこの作風を保って私たち読者を楽しませていただきたい。

以下多少のネタバレ。
気になったのは密室脱出のトリックですが、これは相当偶然が重ならないとすぐばれそう。
さらに本当はあり得ないのが、殺人の状況。
ナイフで一突き、周囲の人たちに分からないほど悲鳴すら上げさせない。しかも短時間に死体を移動する。そして平気な顔をしている。
これはゴルゴ13なみ(ゴルゴは銃で撃つので音が出るが)のプロの仕事ですよねえ。
この仮定からすると犯人はプロであり学生はほぼ除外されてしまい(学生で殺人のプロという設定ならありですが)、このお話は成り立たなくなってしまいます。
こんなことが気にはなるのですが、推理小説は基本的にお遊びということとして、楽しく読みました。


No.564 6点 巨大幽霊マンモス事件
二階堂黎人
(2017/10/08 22:26登録)
二階堂蘭子シリーズは4半世紀も続いているとのことです。初期の本格推理モノは素晴らしく、リアルタイムで読んできた私は作者の将来をおおいに期待したものです。ところが最近の作品はとんでもないものとなり果ててしまった。能力が枯れてしまったのかなあ。
そんな中ではこの作品はまあましな程度には出来上がっています。
ばかばかしいので読むのをやめようかとまでは思わず、一応何とか最後まで読めます。
でもやっぱり現実離れしたむちゃくちゃなところも多い。あり得ない確率で起きたことがいっぱい出てきて、それを蘭子がたちどころに分かるというのもどう考えても不自然だし。



No.563 4点 髑髏城
ジョン・ディクスン・カー
(2017/10/01 14:40登録)
 この作品は読むのにとても時間がかかった。すぐ眠くなってしまうのです。怪奇趣味と古いお城のお話は嫌いではないはずなのに、この作品では読むのがちょっとつらかった。
 トリックも話の内容も現代となってはいかにも古臭く、今まで読んだカーの作品よりだいぶん落ちるように思えました。


No.562 5点 プレーグ・コートの殺人
カーター・ディクスン
(2017/09/02 23:05登録)
 この作品は評価が高いが、私はあまり楽しめなかった。
 はじめのかなり長い部分が、オカルト趣味というか怪奇趣味というかといったお話が述べられているが、これはほとんど主たるストーリとは関係がない。
 この辺りでちょっといやになるのだが、全体解けそうもない密室殺人が起きたあたりからはやっと面白い展開となる。
 密室殺人のトリックはすごいなあ。でも現代なら全く通用しそうにないだろうけどね。
 第2の殺人は誰でも見破ることができるでしょう。これに騙されるような警察は当時としてもお粗末極まりないことになりそうです。
 全体としてどうもしっくりこなかったのは、殺された心霊学者が、話の中に実際に登場したことがなく、ほとんどがほかの人物から語られただけであるため、現実感が乏しい感じがするところと、初登場のH.M.が推理を組み立てていくといった感じが少ないため、名探偵の推理の過程がほとんど見えないところ。
 こういった感じなので私の評価はあまりよくなかった。


No.561 6点 探偵少女アリサの事件簿 溝ノ口より愛をこめて
東川篤哉
(2017/08/13 17:24登録)
 本作品は東川氏の小学生探偵少女という新しいキャラクターの始まりなのでしょう。
なかなか面白いキャラだしこの路線なら多分何作かは、楽しませていただけそうです。
 本作品は連作集となっており、それなりに本格でもあります。何でも屋の橘くんに小学生探偵有紗ちゃんがメインキャラクター。
 いつも有紗ちゃんのお父さんが国内難事件で出張する間の子守役を橘くんに頼むのだが、お母さんはさらに有名な世界的探偵で外国へ行っていることとなっている。お父さんの出張事件もお母さんの出張事件も、推理小説ファンならすぐピンとくる有名な本格推理小説の事件なのは作者のサービスなのでしょう。
 私としては一番最初の「名探偵溝の口に現れる」がユーモアが効いて一番面白かった。
 次作を期待して待ちます。


No.560 7点 貴婦人として死す
カーター・ディクスン
(2017/08/08 10:52登録)
 殺人か自殺か。自殺だったらバカみたいだから当然殺人でしょう。ここまではすぐわかるのですが、もし殺人としたら完全犯罪としか思えないようなシチュエーション。殺人をどうやって説明できるか見当もつかなかった。謎解きをしてみれば比較的簡単なトリックなのですが。
 登場人物も限られており犯人は分かりそうなのだが、結局全然わからなかった。
 種明かしされればなるほどとは思うのですが、これってちょっと物語を変えれば、違う人を犯人とすることは簡単にできそうな気もします。
 まあそのあたりが若干のマイナスなのですが、しっかりした本格推理小説であることは間違いないので、本格物が好きなら楽しめること請け合いです。


No.559 6点 オーブランの少女
深緑野分
(2017/07/09 07:40登録)
一番良かったのが、表題のオーブランの少女でした。
 私は不勉強にて作者のことが全く分からないのですが、名前からすると男か女かわからない。でも内容は圧倒的に女性の視点ですのできっと女性なのでしょう。外れていたらごめんなさい。ダメなやつとおしかりください。
 きれいなところが実はドロドロした歴史を持っていたという表題作はまあ面白く読めましたが、以後の作品は全然話は違うのですが、似たような感覚で、だんだん読むのが面倒になってしまいました。
 このサイトの評ではかなり好評なのですが、私はあまりピンときませんでした。


No.558 5点 樫乃木美大の奇妙な住人 長原あざみ、最初の事件
柳瀬みちる
(2017/07/09 07:32登録)
 軽いお話ですね。まあ悪くはないですが。
 いかにも女性が書いた女性からの視点にあふれた感覚で、現代の大学生が使う言葉ならこんな感じなのでしょうが、表現が年寄りには何とも違和感があります。遠い青春時代を少し思い出させてくれたのかもしれないという事としましょう。
 読んでいけばこんな表現もあまり気にならなくなり、サラサラと読めます。
 キャラクター小説大賞受賞と帯に書いてありますが、私にはそんなに際立ったキャラクターとも思えない。
 暇つぶしに読むなら適当かも知れません。


No.557 8点 ユダの窓
カーター・ディクスン
(2017/07/02 10:38登録)
 はじめの設定に驚かされました。
 こんな密室、解くのは無理でしょう。
 登場人物も少なく読みやすい。かなりの迫力があり、基本的には一発トリックの小説なのにここまで読者を引っ張り続けるのは、作者の力量なのでしょう。
 精緻な検証とまあ納得のいく結論でしたので、すごいなと思います。
 ただ精緻に傾くあまり、いろいろな考察が入り乱れてごちゃごちゃと長たらしいのは否めません。もう少しすっきりとさせた方が私にはよいのです。
 あくまでも細部までこだわって作り上げた美学なのでしょう。
でもとてもすごい作品であることには変わりありません。


No.556 5点 どこかでベートーヴェン
中山七里
(2017/06/25 18:24登録)
 名探偵でピアノの天才。岬の少年時代のお話。
 ドビュッシー、ラフマニノフ、ショパンときて今回はがちがちの本命のベートーベンです。小説内には月光、悲愴の曲が流れるシーンがかなり長く、この曲が好きで読んでいて曲が浮かんでこないと、意味が分からない描写が結構長く続くので、退屈になってしまうかもしれません。
 私はクラシックが好きなのでさほどでもなかったですが、それでもちょっと描写が長すぎたように感じました。
 それにしてもここに出てくる高校生たちは感心しないなあ。とても陰湿でいやな感じです。これが評価があまりできなかった原因の一つです。
 さらに推理小説としては意外性もあるにはあるのですが、同じ様な天災が2回起こってそれで推理がなり立つというシチュエーションは大分無理がありそうです。
 作者は非常にエネルギッシュに作品を書いておられ、素晴らしい才能とお見受けしますが、作品によって私にはどうも合わないところがあるようです。

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