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ミステリの祭典

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囲碁殺人事件
牧場智久/ゲーム三部作

作家 竹本健治
出版日1980年07月
平均点5.54点
書評数13人

No.13 4点 ボナンザ
(2021/10/23 20:54登録)
意外な動機を扱った一作。古い漫画みたいな描写を入れたりととっつきやすさを重視したのかもしれないが・・・。

No.12 7点 クリスティ再読
(2021/03/30 17:27登録)
評者は、ヘボい。それでも中盤の暗号の盤面は「何がどうヘンか?」は分かるくらい。まあ周辺ファンくらいのものか。だけど一番碁に関心を持ってた時期が、本作の舞台の時期なので、なかなか懐かしいんだ。槙野棋幽は梶原武雄がモデルだろうし、挑戦者の氷室七段は小林光一あたりだろう。いや梶原武雄というと口の悪い先輩は「超一流のレッスンプロ」なんて悪口を言ってたが、「梶原の碁」とかね、技術書がアマチュア上級者にもてはやされていた時期だ(さすがにこのレベルは評者はチンプンカンプンだったから、情けない。梶原ドリル戦法!)。本作の槙野のタイトル保有の設定がファン感情を揺さぶられる。
そんな感じで「懐かしい!」という感情が先に立つからか、甘目の評価? いやいやなかなかスッキリしたいい作品で、碁とミステリの両方への愛が漏れ出している。純粋にミステリとしてのキーワードは、さすがに今はわりとわかりやすいか。だから逆に囲碁初心者の脳生理学者が事件に絡むのが、なかなかの工夫。でもその設定自体で槙野棋幽のキャラに面白味が出ているのが何より。で、碁のルールの曖昧なあたりを、さらに囲碁の象徴性に重ね合わせて...

両劫に仮生ひとつ。
軽い嘔吐感と一緒に、その言葉がぽっかり浮かんだ。何?何なの?目の前の平行線は、ぐるりとさかさまになる。石畳が天上に持ちあがる。
月光の活。

と幻想シーンもなかなか結構で、中井英夫風の味が出ている。やはり少年には幻想がよく似合う(少年愛っぽくはないんだが)。うん、好感が大きい作品である。

眼科医とかけて、棋士と解く、そのココロは?
―どちらも眼で苦労する

なるほど。座布団一枚。

No.11 7点 斎藤警部
(2020/01/16 12:00登録)
首斬り顛末のなかなかにナウい背景には膝を打ちます。 犯人像はあまりキラキラしてない(?!)、だが渋味はある。身の振り方のダイナミクスも含めて興味深い人物(ほんとはアレなわけだが、ネタバレになるから言えません)。 フーズホームズ、フーズワトソン、ワトソンにも第一と第二があるのかな、このへんの真探偵当て趣向もなかなかいい。 物語のほぼ真ん中で、前のめり過ぎるフーダニット仮説立ての煌めきが一瞬パチリ、まさか、まさかと迷路中心の妄想は羽ばたくのでありました。 『珍瓏』に込められたメッセージは頭クラクラしたな(いい意味で)。 うん、うまい構成だ。 或る二十余文字に傍点をふらない心意気だか冷徹さだかも目を惹いた。 エピローグ、まさかのグローバル展開には驚いたww アンバランスと無理は有るが、基礎の厚い面白さと不思議な狂気のスライスカットインで読ませる佳品。 「けっこう僕なんかもそうじゃないかと思うんですが」って 笑

講談社文庫併録  チェス殺人事件   
おぃおぃまさかの。。。。 その意気を買い、単独で6点かな。 本全体の採点に影響無し。

No.10 5点 虫暮部
(2019/11/18 11:40登録)
 中途半端なジュヴナイル、と言う印象。主人公が小学生だからそう感じるのか? 世界の上の方に境界線が引いてあって、ハイここまで~と規制した結果、妙に品良く収まってしまって全力で読めなかった。そしてそれが、作品に対してプラスには働いていないと思った。

No.9 7点 Tetchy
(2018/01/23 23:23登録)
一昨年、『涙香迷宮』で『このミス』1位を獲得した竹本健治。それをきっかけに今過去の絶版となった作品や未文庫化の作品が次々と復刊、文庫化されてきている。
そしてその『涙香迷宮』でも探偵役を務めた牧場智久の初登場作が本書である。
本書が発表されたのが1980年。その時竹本氏は26歳でまだそんな年齢にも拘らず囲碁に精通している。第1作の『将棋殺人事件』でも確か詰将棋の碁盤が出てきたように思うが、本書の囲碁の対局場面といい、珍瓏という盤面全体に及ぶ詰碁に鬼の意匠を凝らしたり、また盤面に暗号を隠す、更には2ページのみだが「囲碁原論・試論」と題した囲碁に関する考察論文を挟むなど、テーマに対して貪欲なまでにミステリを加味し、またそれを可能にする深い造詣を持っていることが窺われる。本書のあとがきによれば大学時代に囲碁研究会にせっせと通い、10級で入部し、大学を辞める時には5段の腕前になっていたとのこと。その代わりに大学5年間在籍して取得単位はゼロというのだから、実に親不孝な学生である。

まず本書で驚いたのは12歳の牧場智久が犯人から危害を加えられることだ。天才少年と持て囃されて殺人事件にまで手を出していい気になるなよという犯人の、いや世間一般の常識からのお仕置きとばかりの仕打ちである。
これはつまり世間の流布する素人探偵が殺人事件に容易に首を突っ込むことに対する警告とも云えるだろう。人の死が介在する事柄は自身もまたその渦中に入ること。つまり犯人を暴こうとする行為はその者自身もまた犯人の標的となり、そして狙われる危険を呼び寄せることを意味するのだ。こんな死に目に遭うほどの仕打ちは12歳の少年にとってはトラウマになるだろう。これに懲りず探偵役を仰せつかっている牧場智久にとってこのエピソードは今後何か影響を与えているのだろうか?

物語を補強するように盛り込まれた囲碁の歴史に残る名人たちのエピソード、ルールを巡った騒動など単にゲームに留まらない囲碁を取り巻く人間模様が実に面白い。囲碁の正式ルールが昭和24年まで明文化されていなかったとは驚きだった。歴史が深い競技だと思いきや意外と近代囲碁の歴史は浅かったことが解る。それは囲碁が昔から日本人の生活と共に発展してきたことで口伝で、もしくは暗黙の理解的にルールが形成されてきたことを表しているのだが、それ故に地方性が色濃くなり、それぞれのルールが出来たことで統一ルールが必要になったのだ。それだけ囲碁の世界が発展してきたことの証だ。

さて本書で感心したのは大きく分けて2点。
まずは探偵役のミスディレクション。一連の竹本作品を読みつつ、もしくは私のように竹本作品にある一定の知識を持った読者が原点回帰的に牧場智久のデビュー作である本書を読むと驚きも一層だ。先述の通り、『涙香迷宮』の好評で数々の竹本作品が昨今復刊、文庫化されているが本書もまたその1つとなっており、逆に今読むとその仕掛けが実に効果的に読者に響くだろう。私のように。
深読みすればこの牧場智久は竹本氏から論理的に犯人を炙り出すエラリー・クイーンを揶揄するために生み出された人物ではないだろうか?若造のくせに殺人事件にしゃしゃり出る知性を売りにするエラリーと牧場少年の人物像が重なって見えるのは私だけだろうか?

次に大脳生理学の視点から犯人を解き明かすこと。実はこれは第2作の『将棋殺人事件』でもなされていたが―すっかり忘れていた―、島田荘司氏が21世紀本格として2000年以来、御手洗潔をウプサラ大学の大脳生理学教授としてこの脳のメカニズムをミステリの題材に持ち込むことに積極的なのだが、既に1980年の段階でそれを竹本氏が実践していることに驚いた。つまり21世紀どこから20世紀に彼は島田氏が積極的に取り込む新しいミステリの先鞭をつけていたのだ。

正直囲碁に明るくない私にとって詰碁や囲碁の知識を謎解きに盛り込んだ本書を余すところなく楽しめたとは云えない。
しかしそれでも本書はミステリとして小説としてなかなかに面白く読めた。たった1つの碁石で部分的には否とされていた物が全体的に見ることで有と反転する碁の深さは知識がなくとも解る。首を切られたかのように見えた鬼を模した珍瓏が全体を見ることで生を得る。それは即ちたった1つの手掛かりから全てが反転する美しいミステリを見ているかのようだ。それこそが竹本氏が本書でやりたかったことなのだろう。

No.8 5点 文生
(2017/11/09 18:20登録)
囲碁の対局中に起こった首なし殺人の謎が描かれているが、前作の「匣の中の失楽」の次に書かれた作品としてはひどくまっとうな本格ミステリに仕上がっている。
無難にまとまっていて決してつまらなくはないが、特筆すべき点もなく、出来は可もなく不可もなくといったところ。

No.7 5点 まさむね
(2017/08/20 14:20登録)
 ゲーム三部作の第一弾ですね。「涙香迷宮」にあやかってか、講談社文庫でシリーズごと復刊され、本屋に平積みされておりました。
 正直、想像していたよりもストレートな本格作品といった印象でしたね。ただし、個人的には暗号モノに拒否感があり、かつ、囲碁にも詳しくないだけに、本当の面白さを感じ取れたのかどうか、自信がないです。おそらく、囲碁好きな方はもっと楽しめるのでしょう。
 ちなみに、収録されていた短編「チェス殺人事件」の魅力については、私は全く感じることができませんでした。誰か教えてください。

No.6 5点 makomako
(2017/05/14 08:59登録)
 この小説は囲碁がわからないとよめないということはないですが、わかっている人のほうがだいぶん楽しめそうです。
 かくいう私にしても以後はルールを大体知っているのみで、中国と日本でルールが違っていたり、最近ルールが改正されたりなんてことは全く知りませんでした。
 したがって私のこの小説に対する理解がもう一つであることは否めませんが、でもやっぱりあまり面白くなかった。
 おまけのチェス殺人事件に至っては推理小説の形を成していない、というか単に問題定義しただけで、答えはどうにでもなるといった代物のように思えました。
 ゲーム三部作だそうですが、続きはあまり読む気がしない。
 この作者とはあまり相性が良くないのかもしれません。

No.5 5点 E-BANKER
(2017/03/12 13:49登録)
「将棋-」「トランプ-」と続くゲームシリーズの第一作目がコレ。
大作「涙香迷宮」が2017年度版このミス第一位に輝き、その余波で(?)講談社文庫にて復刊となった本作。
しかも文庫版には「チェス殺人事件」まで併録というオマケ付き!
もともとは1980年の発表。

~山梨で行われた囲碁タイトル戦。第七期棋幽戦第二局二日目、<囲碁の鬼>と恐れられる槙野九段が、近くの滝で首なし死体で発見された。IQ208の天才少年棋士・牧場智久と大脳生理学者・須堂信一郎は事件に挑むが、犯人の魔の手は牧場少年にも襲いかかる。ゲーム三部作の第一弾開幕!~

「囲碁」は全くの門外漢。
他の方の書評では、ルールを知らなくても関係ない旨書かれているけど、専門用語が結構多用されているし、やっぱり知識がないと楽しめないと思った。
(特に暗号は碁面?棋面?を使ったものなのでなおさら)

それはさておき、ミステリーの本筋の方なのだが・・・
結構「粗い」というのが正直な感想。
最終的な探偵役となる須堂教授の推理も、かなりの部分直感的なもので、本格ミステリーらしいロジック等はあまり感じられなかった。
動機についても、衆人環視のタイトル戦でわざわざ事件を起こす必然性が全くないように見えるのはどうか?
まぁもともとガチガチの本格を書くっていう作家ではないだけに、そこら辺を求めるのは間違っているのかもしれない。

いずれにしても、摩訶不思議な感覚だった「将棋-」よりはマシかな・・・
首切りやら暗号やら、ミステリー好きを惹きつけるガジェットは盛りだくさんあるしなぁー
でも囲碁のルールは難しい・・・
因みに併録の「チェス殺人事件」は「モルグ街の怪事件」が思い切りネタバレされていますので未読の方(そんな奴このサイト参加者にいるか?)はご注意を!
(本作の巻末解説も法月綸太郎氏。氏の解説だけでも読む価値ありかもしれない)

No.4 4点 風桜青紫
(2016/07/17 15:01登録)
そこそこ読めるが、長編にするほどのネタか?
牧場くんのお姉ちゃんはかわいいと思いました。

No.3 4点 江守森江
(2010/06/29 00:41登録)
囲碁のルールは大雑把にしか知らないが、本格ミステリ部分の解決には影響なくスラリと読めた。
探偵のキャラも含めて非常に印象が薄く次に手が出ていない。
将棋やトランプの方が馴染みがあるだけに先に其方を読めば良かったのだろうか?

No.2 6点 ギザじゅう
(2004/05/24 23:36登録)
『匣の中の失楽』に比べ、かなり真っ当なミステリ。
フーダニットに首切りのホワイダニット、さらに暗号まで出てくるがちがちの本格!
囲碁の知識が無くても読めるので安心。
ただし犯人も動機も多少わかりやすいの、物足りないが、氏の作品の入門編としては最適。

No.1 8点 すー
(2001/04/13 00:12登録)
三部作の一。解説で中井英夫氏が書いていた「麻雀殺人事件」も読みたいなぁ。

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