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ミステリの祭典

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巨大幽霊マンモス事件
二階堂蘭子シリーズ

作家 二階堂黎人
出版日2017年09月
平均点5.86点
書評数7人

No.7 5点 E-BANKER
(2023/02/18 13:29登録)
今のところ、二階堂蘭子シリーズの最新刊。ではあるが、既発表の短編集「ユリ迷宮」収録の作品「ロシア館の謎」の続編的な要素が濃い作品。(したがって同作を未読の方は先に読んでおいたほうがよい)
舞台がロシアというのも、今となっては興味深いというべきか、示唆的というべきか・・・
ノベルズは2017年の発表。

~ロシア革命から数年経ったシベリア奥地。逃亡貴族たちが身を隠す「死の谷」と呼ばれる辺境の地へ秘密裏に物資を運ぶ商隊と呼ばれる一団がいた。その命知らずな彼らさえも恐怖に陥る事件が発生。未知なる殺人鬼の執拗な追跡、連続する密室殺人、「死の谷」に甦った巨大マンモス・・・。常識を超えた不可解な未解決事件を名探偵・二階堂蘭子が鮮やかに解き明かす~

やはり「二階堂黎人はもう復活しないのか・・・」というのが偽らざる感想となった。
実は私は「双面獣事件」は未読なままである。あの頃(いつだ?)、「人狼城の恐怖」のスゴさ打ちのめされ、蘭子シリーズの続刊を待ちわびた身にとって、「魔術王事件」もそこそこ??だったけど、「双面獣事件」に至っては、連載中からそのあまりの荒唐無稽とハチャメチャ振りの伝聞&評価に恐れをなして、「もう読むのはやめよう」と思ってしまった。
そして、先に手に取った「覇王の死」を読んで、シリーズの劣化ぶりに逆な意味で打ちのめされることとなった。
そんな状況のなか、久しぶりに読むこととなったシリーズ続編(作品世界の時系列では「人狼城」の直前)。

さすがに作者も「双面獣」については反省しているのだろうか? 「巨大幽霊マンモス」というおよそ信じられない異形の存在の正体については、まぁぎりぎり常識的な水準にとどめている。(その代わり、すぐに察してしまえるが)
あとは「密室」と「作品(というか手記)に仕掛けられた欺瞞」についてなのだが・・・
正直なところ「不満」である。確かに「伏線」=読者が推理できる材料、は手記の中に仕掛けられているのだろう。特に「利き腕」の問題なんて、「今さらそこっ!」って思わざるを得ない引っ掛けがあったりする。
そう、随分時代錯誤なことをしてきたなぁーという気がしてしまう。
「死の谷」の秘密についても実に察しやすいと思う。時代背景や場所からも、アレが関わっていて、多分これが影響してるんだろうなというのが早々に察することができてしまった。

ウクライナ侵攻については作者も想定外だったと思うのだけど、ロシアという国はやっぱり理解しがたい国、民族なんだなあーというのを再認識させてくれたところは本作のよかったところか。
アナスタシアについては、島田荘司も「ロシア幽霊軍艦事件」で取り上げたように、歴史の謎という意味でも興味深い対象なのだろう。(一方が「軍艦」で一方が「マンモス」なのがスゴイ)
巻末の飯城勇三氏の解説はなかなか興味深い。二階堂黎人の特に「密室」に対するアプローチを細かく解説してくれてる。ただ、どうみても褒めすぎ!!

No.6 7点 レッドキング
(2022/10/12 08:08登録)
二階堂蘭子シリーズ第十弾。 題名からして「双面獣」類の化け物話・・ではなく、ちゃんと本格復活!
    首切り足跡トリックに、3点(満点)。※これ、足跡でなく完全密室にできたのに・・・そうしたら、
                     麻耶雄嵩「翼ある闇」のバカみすトリック完成形に成れた・・・
    雪館の皆殺し足跡トリックは、1点。
    叙述トリックに、2点。※手記「…」中で虚偽を記すのはアウトだが、手記叙述者の主体を巧妙にずらすのは、
               傑作「殉教カテリナ車輪」「首無の如き祟るもの」の如く、立派なトリック。
    怪物トリックは、1点。※ドイル怪獣物や「双面獣」の妙ちくりんなSFバケモノ話よりミステリしてる。

※それにしても、これ、一部に、短編「ロシア館の謎」を入れて、二部で、シャム多重児の首無殺人を、密室トリックに作りこむことに特化していれば、「人狼城」に次ぐ傑作になれたんじゃないか・・・実に残念

No.5 5点 nukkam
(2020/09/14 20:55登録)
(ネタバレなしです) 2017年発表の二階堂蘭子シリーズ第9作の本格派推理小説です。出来事は1920年の冬から翌年春に開けてのシベリアで起こり、蘭子は安楽椅子探偵よろしく手記と伝聞から謎解きします。ソヴィエト体制下ながらまだまだ反革命勢力も抵抗して内戦状態の中、財宝が隠されていると噂の死の谷へ向かう武装商隊と、彼らを次々に血祭りにあげていく正体不明の「追跡者」との攻防を描いた冒険スリラー色の濃いプロットです。マンモスの正体の半分は蘭子の推理よりも前に明かされますが、そこには本格派の要素が全くありません。推理による謎解きはむしろ消えた足跡の方が印象的でした。部分的にはいいと思えるところもありますが、様々な要素を詰め込み過ぎて純然たる本格派とは言えないのが好き嫌いが分かれそうです。あとフェアプレーをアピールするのはいいけれど「アガサ・クリスティのように、手掛かりも与えずに読者を騙すような卑怯な手は使っていない」と自画自賛したのは勇み足では。クリスティと違う手法でアンフェアなことやっているように思います。個人的にクリスティーは大好きな作家なので私も客観的な意見を書けないのは承知の上ですが、作者にクリスティーを批判する資格はないと思います。

No.4 6点 名探偵ジャパン
(2019/07/16 00:25登録)
「双面獣事件」を経て「覇王の死」に至ったところで、本格ミステリではない遠いところに行ってしまった感のあった「二階堂蘭子シリーズ」でしたが、久しぶりに刊行された本作はなかなかに「本格」していました。
同シリーズの「ロシア館の謎」の続編という位置づけなのですが、その「ロシア館」自体が相当昔の作品のため、たぶん誰も読み直そうとはしないまま本作を読んでしまったのではないでしょうか(私もそうでした)「ロシア館」は短編で量もないので、ついでに一緒に収録してしまったほうがよかったかもしれません。

No.3 5点 人並由真
(2017/10/31 10:52登録)
(ネタバレなし)
 うーん……。微妙だなあ。タイトルロールの幽霊マンモスの謎は、現代の新本格ミステリとして普通に常識的? な範疇に収まるし。途中の不可能犯罪の謎の提示はなかなか魅力的なものの、一方で作品全体の結構なんかはある程度、早々と予見できてしまうし。
 さらに反則的な大技はその規格外れぶりを芸にしようとしてるらしいが、あまりカタルシスが得られないんだよね。それとは別のトリックと言うか真相も、かつてJ・D・カーがぎりぎりのところで使ったものを<変なミステリ横溢の新本格のなかならこういうものも許されますよね、てへっ>と、用いた印象である。

 あと作者の狙いはわかるような気がするけれど、それでもある登場人物の××××××は、読んでいてあまり楽しくない。
 先駆作である芦辺の『地底獣国の殺人』と島田の『奇想~』が悪い意味でちらつき、後発感を拭えないのもマイナスポイント。

 得点もそれなりに多い作品ではあるが、それらを相殺する要素も少なくない。そんな一冊。

No.2 6点 makomako
(2017/10/08 22:26登録)
二階堂蘭子シリーズは4半世紀も続いているとのことです。初期の本格推理モノは素晴らしく、リアルタイムで読んできた私は作者の将来をおおいに期待したものです。ところが最近の作品はとんでもないものとなり果ててしまった。能力が枯れてしまったのかなあ。
そんな中ではこの作品はまあましな程度には出来上がっています。
ばかばかしいので読むのをやめようかとまでは思わず、一応何とか最後まで読めます。
でもやっぱり現実離れしたむちゃくちゃなところも多い。あり得ない確率で起きたことがいっぱい出てきて、それを蘭子がたちどころに分かるというのもどう考えても不自然だし。


No.1 7点 はっすー
(2017/09/15 00:05登録)
二階堂蘭子シリーズの新刊
出来としてはかなり良いかと思います
特に足跡のトリックは二つとも好印象(二つ目の方が好きです)
どこかで見たことのあるようなトリックを複数組み合わせて新しいトリックを作るところは流石ですね
ただタイトルのマンモスの謎はもはや謎なのか?となってしまうレベルのものでしたので1点引きました

あとこの作品で重要なのは『ロシア館の謎』の続編であるということです
『ロシア館の謎』を直前に読んでいると楽しみが倍増します
一応自分は既読だったのですがかなり前に読んだのでトリックぐらいしか覚えてませんでした…(楽しみは倍増しませんでした…)
というよりも20年以上前の短編の続編を今さら出すとは…

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