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ミステリの祭典

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どこかでベートーヴェン
岬洋介シリーズ

作家 中山七里
出版日2016年05月
平均点4.75点
書評数4人

No.4 5点 HORNET
(2019/07/21 16:12登録)
 ミステリよりも、若者の「夢と才能」談義に多くが割かれており、青春群像ものの色が強い。ただその内容はありがちな甘ったるいモノではなく、中山氏らしい骨太の表現と内容なので、読み応えはあった。一方で、音楽・曲に関する描写も非常に多く、こういう部分をうるさく感じる人もいるだろう。ただそういう場合はその部分を読み飛ばしてしまっても、ストーリー理解には全く影響がないのでそうしてよいと思う。
 ミステリとしては、謎も推理も割と単純。真犯人は意外だったが。
 御子柴シリーズとはだいぶ色が違う。色が違うものを書けることこそ作者の力量だが、その分読者のシリーズの好みも分かれるということ。

No.3 4点 ボナンザ
(2019/05/26 19:42登録)
後半の展開まんまラフマニノフやん!
トリックといえるような代物でもない。
ミステリとして読んではいけない。

No.2 5点 makomako
(2017/06/25 18:24登録)
 名探偵でピアノの天才。岬の少年時代のお話。
 ドビュッシー、ラフマニノフ、ショパンときて今回はがちがちの本命のベートーベンです。小説内には月光、悲愴の曲が流れるシーンがかなり長く、この曲が好きで読んでいて曲が浮かんでこないと、意味が分からない描写が結構長く続くので、退屈になってしまうかもしれません。
 私はクラシックが好きなのでさほどでもなかったですが、それでもちょっと描写が長すぎたように感じました。
 それにしてもここに出てくる高校生たちは感心しないなあ。とても陰湿でいやな感じです。これが評価があまりできなかった原因の一つです。
 さらに推理小説としては意外性もあるにはあるのですが、同じ様な天災が2回起こってそれで推理がなり立つというシチュエーションは大分無理がありそうです。
 作者は非常にエネルギッシュに作品を書いておられ、素晴らしい才能とお見受けしますが、作品によって私にはどうも合わないところがあるようです。

No.1 5点 E-BANKER
(2017/06/22 21:05登録)
『ドビュッシー』『ラフマニノフ』『ショパン』のつぎは、いよいよ『ベートーヴェン』というわけで・・・
“音楽ミステリー”シリーズと名付けられたシリーズの第三弾(他に番外編あり)。
文庫版には、検事であり岬洋介の父親が探偵役となる短編(「コンチェルト」)も併録。

~加茂北高校音楽科に転入した岬洋介は、その卓越したピアノ演奏でたちまちクラスの面々を魅了する。しかし、その才能は羨望と妬みをも集め、クラスメイトの岩倉にいじめられていた岬は、岩倉が他殺体で見つかったことで殺人の容疑をかけられる。憎悪を向けられる岬は、自らの嫌疑を晴らすため級友の鷹村とともに、“最初の事件”に立ち向かう。その最中、岬のピアニスト人生を左右する悲運が・・・~

紹介文のとおり、本作は高校時代の岬洋介が主人公で、シリーズでいうところの「エピソード・ゼロ」という位置付けとなる。
既読の方ならご存知のとおり、初っ端の「ドビュッシー」から、ミステリー要素よりは音楽シーンの描写の迫力が話題となったのが本シリーズ。
もちろん、本作も例外ではない。
作中で洋介が披露するベートーヴェンの著名な交響曲「月光」と「悲愴」。
どちらも迫力満点で、文字を追いながらも、まるで本当に音を聞いているような錯覚すら覚える。
(ちょっと言い過ぎか)
ストーリーの山場となる文化祭での洋介のピアノ独奏シーン。
そこで訪れることになるある悲劇! 
これが、その後の洋介の運命につながっていくのだ(「ドビュッシー」や「ラフマニノフ」へね)。

あとは、途中、クラス担任の棚橋が、洋介の才能を妬みいじめを繰り返す生徒たちに放つ言葉!
高校生たちには残酷すぎる一面、世の中の真理を突き、ひとりひとりの心を抉るような言葉の数々が、中年を迎えた私自身へも深く深く突き刺さった!(何のことやら・・・)

で、本筋は、って?
うーん。特に語るほどのものはないなぁ。
最初からトリックは見え見えだったし、ミステリー要素は付け足しのようなもの。
やっぱり、シリーズファンでなければ、本作は面白くないってことだな。

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