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ミステリの祭典

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makomakoさんの登録情報
平均点:6.17点 書評数:894件

プロフィール| 書評

No.674 5点 幽霊人命救助隊
高野和明
(2020/01/12 09:03登録)
帯には泣ける、ラストでボロ泣きなどと書いてありましたがそれほどのものではありませんでした。
 まじめに読んだらばかばかしい限りと思う方もおられると思いますが、こんなユーモアもありとするなら楽しめると思います。
 このサイトでの評価も結構高いのは、こういったユーモアを解するスマートな方が多いからなのでしょうね。
 読んで不快なお話ではないのですが、この手の話としてはちょっと長すぎて中だるみがする感じが否めませんでした。


No.673 7点 ミステリー・アリーナ
深水黎一郎
(2020/01/05 21:29登録)
 推理小説を読んでいると時々真犯人と違う人が犯人であっても一向にかまわないと感じることがあります。実際映画化などされたときに犯人が変わっているなんてこともあったりもします。
 名探偵が指摘する方が正しい犯人ということとなるのですが、作家さんはきっと違う犯人でも成り立つ話であることは百も承知で書いておられるのでしょう。
 本作品は犯人も解決方法もきちんとした方法で次々と指摘されるが、それが次々と否定され最終局面を迎えます。並々ならぬ才能の持ち主である作者はこうなりゃ考え付く限りの解決方法とその否定を一つのお話にいっぺんに詰め込んでしまえとばかりに書いたのでしょうか。
 ある意味ですごいお話です。
 でも読者によってはバカミスのように思えてしまうかもしれない。
 評価が分かれる作品なのでしょう。私はかなり楽しめました。


No.672 4点 屋上の道化たち
島田荘司
(2020/01/01 09:55登録)
高評価の方もおられるようですが、私はいまいちでしたね。
 謎はすごい。こんなお話にどうやって合理的な結論を付けられるかと思うほど。結構長いお話を読んでいくと読者に挑戦のようなところがあるが、私にはさっぱりわからない。
 御手洗が出てきてあっという間に真相を見破る。
 その結果がよければ誠にすごいお話なのですが。なんとこれは、バカミスにもならないぐらいあほらしい真相でした。
 これって「風が吹けば桶屋が儲かるより」さらにありそうもないでしょ。
 物理的に絶対無理なだけでなく、ばかばかしいほどの偶然の積み重ね。
 こんなトリックしか思いつかないのかねえ。大がかりなら何でもよいというものでもないと思うのです。
 私は島田氏が江戸川乱歩賞に応募していたころから読んでいます。「占星術」(これは乱歩賞取れなかった)や「斜め屋敷」などを書いたころは斬新な発想と感心したのですが、歳をとるとこんなもんなのかなあ。同年代としてそして作者が登場した時からの読者として期待しているのですが。


No.671 6点 ラプラスの魔女
東野圭吾
(2019/12/27 21:49登録)
これはSFというべき内容なのだが、作者の巧みな語り口で読んでいて現実に起こってしまうような感覚になってしまいました。そのあたりはさすがに東野氏の小説のうまさだと思います。
 ただ読みやすく誰もがある程度楽しめると思いますが、特有の冷たい感覚があることは否めません。
 多彩な作者は多くの作品を次々と発表し、ほとんどがベストセラーとなっています。確かにどの作品もまとまってはいますが、円熟というより悪い言い方をすれば薄利多売なに感じます。
 初期の作品からファンでずっと読んできたものにとっては、じっくり時間をかけて中身の濃い長編を書いてほしいなあ。


No.670 7点 不穏な眠り
若竹七海
(2019/12/20 21:14登録)
 葉村晶シリーズの最新版。今回は連作短編集ですが、なかなか楽しめる内容でした。
 一般にシリーズものは読者が主人公たちに慣れてくると読めばそれなりには楽しめるのですが、3作4作と重ねていくとどうしてもマンネリとなりがちです。ところが葉村シリーズは主人公が年を重ねるにつれだんだん円熟味を増してきて、今回の出来は初期の作品よりはるかに良いものとなっているようです。
 短編なのに、きちんと話ができています。一発トリックではなく複雑な話がコンパクトにまとめられており、その中に葉村シリーズ特有の雰囲気も味わえます。
 ただ表題の不穏な眠りは話が複雑でもう一つ分かりにくかったなあ。
 


No.669 5点 QED 憂曇華の時
高田崇史
(2019/11/20 20:10登録)
 QEDシリーズは再開したようで、新作が出ました。今回は長野の安曇野中心のお話。
 おなじみのタタル、ナナちゃん、そして小松崎君が勢ぞろいで、まさに本来のQEDシリーズです。
 お話は例によって殺人事件とタタルの薀蓄が交差することとなるのですが、今回はタタルの話がことに長くてくどい。
 私は日本史の薀蓄が好きなのですが(だからこのシリーズは欠かさず読んでいるのです)それでも今回はタタルの話はやたら長くて、はっきり言って事件との関連がとても考えられないものを強引に結び付けており、凡長である印象が免れません。作者を弁護すればより精緻な歴史考証がのべられているということとなりそうですが。
 今回は特にタタルがあまりに名探偵過ぎるようで、なんだか初めからすべての真相をお見通しな感じがあって、出来栄えはもう一つといった感じです。


No.668 4点 シューマンの指
奥泉光
(2019/11/18 18:40登録)
 私はクラシック音楽が大好きです。それでもこの作品を読むのは大変でした。
 ドイツ語の地名がたくさん出てくる。日本語で書いた方が断然読みやすいが、原語が作者の好みなのでしょうね。
 こんな小難しいシューマン論を延々とされて、しかも音楽は演奏しなくてもそのままでよいなどと言われても、おおいに感動というわけにいかないのでは?
 だいたいダヴィット同盟や謝肉祭などはかなりのクラシックファンでなければあまり聞いたことがないのではないでしょうか。
 奥の方にしまってあるダヴィット同盟のピアノを引っ張り出して聞きながらこの本を読んでみたのですが、やっぱり私の趣味には合わないようです。
 最後は推理小説となってはいるのですが、途中で大体内容が推察できてしまい、まあこんなもんだなあといった感想でした。


No.667 7点 叫びと祈り
梓崎優
(2019/11/10 08:08登録)
第1作の「砂漠を走る船の道」は久しぶりに「やられた」といった感じを受けた短編でした。
 これが抜群に良い出来と思います。本格物が好きならきっと楽しめます。好みが異なれば単にばかばかしいだけかもしれないので、推理ゲームを楽しむという方限定なのかもしれません。
 連作集ですがどの作品も主人公が同じというだけであって、お話自体はつながりがほとんどありません。最後の祈りだけが多少つながりを感じさせる程度なのである意味どこから読んでもよいといえそうです。
 いずれ劣らぬ変わったシチュエーションでの出来事で、そこでしか成立しえないお話です。よくこんなこと考えたなあ。作者の才能を感じます。
 ただ最後の「祈り」はちょっと落ちるような気がします。あまりに幻想的過ぎる印象でした。


No.666 6点 遺跡発掘師は笑わない ほうらいの海翡翠
桑原水菜
(2019/11/03 09:27登録)
 桑原水菜氏の作品は初めて読みました。コミックなども書いておられるようですが、作家さんとしても活躍中とのこと。
 この作品は歴史ミステリーの範疇に入ると思いますが、多分にファンタジーの要素が強く、ひと昔前の伝奇小説(古いな)といったくくりに入りそうです。
 こういった作品は個人的には好みなので、興味深く読みました。読みやすく誰でもさらっと読めそうです。
 作者は史学部卒業とのことで基本歴史的なベースを外してはいませんが、純粋な歴史推理として読めば拍子抜けするかもしれません。
 ただ主人公の無量の言葉が、「--っす」を連発し、関東人でない小生などにはいかにも薄っぺらな感じがしました。またヒロインの萌絵が突然少林寺拳法の使い手だったことになったのはいかにも漫画風で、作品の雰囲気がいっぺんに変わってしまっことは否めません。
 まあこういった雰囲気を飲み込んで読めば楽しめる小説だと思います。
 続編も出ているようだから読んでみましょう。 


No.665 7点 メインテーマは殺人
アンソニー・ホロヴィッツ
(2019/10/31 07:57登録)
カササギ殺人事件ではちょっとびっくりする展開にすっかり騙されてしまったのですが、本作品はそこまでではなかった。もちろん犯人当てなどは全く無理でしたけどね。
 話の途中でいろいろな映画や舞台の有名人が出てきたり、お話の雰囲気がいかにもシャーロックホームズ風だったり(作者はシャーロックホームズの新作シリーズを書いているから当然かもしれません。)、興味が尽きないところですが、いかんせん探偵のホーソーンが感じが悪い。変人や発達障害風の空気が読めない探偵は本格物でよくあるのですが、感じの悪い(わざと感じ悪くしている)探偵はあまり多くはない。
 どうしてこんな感じ悪くしなければいけないのかなあ。多少でもよいからもう少し感じよくしてくれたらよかったのに。
 全体的には読みやすくしっかりとした作品で十分楽しめましたが、探偵の魅力の点で多少減点です。


No.664 4点 恋のゴンドラ
東野圭吾
(2019/10/20 09:18登録)
私が歳をとったのか作者が無理して若い世代を描いたのか、とにかくいまいちでした。
 こんな薄利多売のような小説を書いているとそのうちいけなくなりそうな気がするのですが、意外にこのサイトの評価は高いのですね。
 多分私の感覚がずれているのでしょう。
 作者は名手なので読むのはすらすらと読めましたが、全然心に響いてこないなあ。


No.663 6点 カナダ金貨の謎
有栖川有栖
(2019/10/19 07:27登録)
有栖川氏の短編はトリック一本勝負といったところがあり、その出来不出来で印象が大きく異なるように思っています。
 今回のカナダ金貨はそれなりの水準がそろっているようで、まあ面白く読めました。
 私は氏の長編が大好きで、巻末の著作を見るとすべての長編を読んでいるようですが、短編は未読のものが結構ありました。これははずれだなあと思ったものが時折あったためなのですが、今回の作品はその中ではまずまずといった印象でした。


No.662 6点 紅蓮館の殺人
阿津川辰海
(2019/10/14 09:07登録)
山火事に追い詰められてたどり着いた館での猟奇的殺人事件。怪しげな人たちが集合する。なんだか以前にも読んだことのあるようなシチュエーションです。 面白そうなのですが、それほどでもない。
 まず作者が探偵という生き方をへんてこに定義してこれに合わせた会話が結構多い。お話としてはほとんど事件が解決したと思われるのにまだ終わりまで大分ある。ここからどんでん返しのつもりなのであろうが(実際どんでん返しなのだが)グダグダと切れの悪い会話が続くため、鮮やかというより無駄に長くてくどい感じがしてしまいました。
 本格物としては私の好みでとても良い感じなのにもう一つ何か足りない。
 新人に期待を込めての点数です。
 次回頑張ってね。


No.661 5点 卑弥呼の葬祭:天照暗殺
高田崇史
(2019/10/12 13:26登録)
 高田氏の歴史ミステリーもついに古代史最大の謎とされる邪馬台国と卑弥呼のお話となった。
 例によって事件が起きて、一見関係のない歴史談議があってといったところはQEDシリーズと大きな変化はなく、さらに探偵としてタタルさん(崇)も活躍するから、QEDシリーズの続編としてもよいぐらいです。
 今回は連続殺人で、それが卑弥呼と宇佐八幡宮と邪馬台国につながるのですから、当然大いなる無理があります。ちょっと度肝を抜くようなタタルの歴史解釈が出てきますが、これはこれで興味がある人には面白いかもしれませんが、今回はちょっとやりすぎかな。これが殺人の同期となるように話を仕向けるのはなかなか大変なのでしょう。そのあたりが共感しにくいところがあるので、このお話があまり楽しむことができにくかったのかもしれません。


No.660 7点 黒野葉月は鳥籠で眠らない
織守きょうや
(2019/10/05 23:19登録)
作者は現職の弁護士さんとのこと。
なるほど弁護士ならではのお話でした。
4つの連作ですが、初めはふつうそう見えても一筋縄ではいかないなかなか突飛な展開となっています。
主人公の弁護士さんはなかなか良い人で、実に親切に弁護人の世話をしていくのですが、弁護人のほうが上手で(または先輩弁護士が入れ知恵をしていて)辛口の最後となることもあります。弁護士さんも大変ですねえ。
 解説のところを見ると作者は女性のようです。かなり男性の心を知っている手怖い女性ですね、きっと。


No.659 8点 風のかたみ
福永武彦
(2019/10/05 22:58登録)
 福永武彦氏の作品は大学時代に魅力に取りつかれて読んだものでしたが、この作品は知りませんでした。
 当時は純文学的なものが好みでサスペンス小説に興味がなかったからかもしれません。
 たまたま見つけて懐かしく読んでみると、氏特有のあでやかで美しい調べが久しぶりに味わえました。途中でああこれは今昔物語がベースにあるようなお話だと気が付いたのですが、解説を読むとやはりそのようです。

本格推理小説ではないので多少お話の内容を書いてしまいます。、
 このお話は登場人物が素晴らしい。ことに主人公の次郎は実に男らしく誠実で、ただ一途に萩姫を思う。萩姫は人を見る目がないのか、家がよいのみのろくでなしの保麿をひたすら思う。保麿は萩姫が好きなのだがすべてを捨ててもこの娘と一緒になろうとまでは思っていない。勝ち気で美人の楓は次郎が好きでたまらないが、絶対この恋は成就しない。さらに盗賊の親玉も萩姫が好きになり必ず奪って我がものとしようとする。これではどうしようもないではないか。
 その通りどうしようもなくなり最後は悲劇で終わります。本格物ではないのですがトリックもあるのですよ。
 草の花や忘却の河のような繊細で悲しい美しさをこの小説でも味わえます。


No.658 5点 赤死病の館の殺人
芦辺拓
(2019/09/14 07:54登録)
 芦部氏の作品は古典的ミステリーのオマージュや続編のようなものなどが多く、本格物が好きな私にとって気になる作家さんです。
 作品そのものも意欲的なものが多い。本作品もお話の初めは実に興味深いものがそろっておます。
 奇妙なお話、不可能と思われる密室事件など興味が尽きません。
 そういった期待を大いに抱きつつ読んでみると、多くが拍子抜けだったりああこれはめちゃくちゃですといった感じになってしまいます。
 本格推理としてそれほどいけないわけではないのに(密室の鬼はいけないですが)もう一つと感じるのは、多分お話のプロットは良いのだが肉付けがダメなせいではないかと思っています。
 不可能犯罪のようなお話が提示され、森江探偵が快刀乱麻を断つように解決するといった構成は実に正当なのですが、その間の人間味のある機微が希薄なため算数の答え合わせのようなのです。
 本格推理のお話としては良さそうなのですから、もうちょっと何とかならないかなあ。
 なお本作品の最後に少女漫画のような森江探偵と新島ともかさんのイラストがのっています。森江探偵は背が低く足が短く髪がくちゃくちゃでだらしなくてさえないイメージで描かれていると思うのですが、こんな足が長くてスマートな少女漫画的イメージでよかったんですか?


No.657 5点 危険なビーナス
東野圭吾
(2019/09/08 21:04登録)
例によって東野氏の作品はとても読みやすい。
 本作は比較的長い長編ではありますが、長さをあまり感じさせないところはさすがです。
 ところどころに伏線も張って会ってまあ不足はないように見えますが、内容は長さの割にちょっと薄い。恋も謎もスリリングな絶品ミステリーと帯には書いてありますが、色々盛り込んで読者にサービスしようとした意思が透けて見えるような感じがして、もう一つでした。
 売れっ子の作者は、薄利多売でもある程度の内容を作って読ませるといったテクニックがあるので読んで損はないのです。
 私としては、作者にはじっくり時間を取ってがっちりした作品を書いていただきたいのですが。


No.656 7点 迷蝶の島
泡坂妻夫
(2019/09/08 20:51登録)
泡坂氏の作品を久しぶりに読みました。初期の作品はほとんどリアルタイムで読んでいました。11枚のトランプ、乱れからくり、湖底のまつりまではすごく気に入っていたのですが、長編第4作の花嫁の叫びはあまり好みではなく、以後氏の作品から少し遠ざかっていました。今回本作を読んで、氏の初期の作品にみられる屈折した白いウソのお話を満喫した思いです。氏は生前「どういうわけか人をだましたり騙されたりするのが好きで」のようなことをおっしゃっていたと記憶しますが、本作はそういった筋書きで、読んでいて気が抜けません。
 本格推理が好きな読者は何とか謎を解いてやろうとする方が多いとは思いますが、私のようにうまく騙されると結構喜ぶといったねじれた性格の方もおられると思います。
 本作はうまく騙されました。ちょっと女性の性格がきつすぎる感はありますけど面白かった。


No.655 7点 七つの棺
折原一
(2019/09/01 12:42登録)
本格推理物が好きになった方は一度は密室の謎に興味を持たれたことと思います。私も昔は黒星警部ほどではないですが、密室ものに惹かれて色々と読んだ経験があります。ところが不思議な密室なんてそう簡単にできるわけがなく(簡単にできるようら不思議ではなくなりますが)、密室トリックをある程度読んでしまうと新しい密室ものは少なくなってしまいます。せっかくアッと驚く密室が提示されても、解決編はちょっとこんなのあり?とか、無理に決まってるでしょ、
さらにぜったいむりだ、まで失望することが多くなってしまいます。
 本作品はかなりが昔の作品のオマージュとなっているようですが、それなりにひねっており、最後の天外消失事件以外はまず納得できるお話でした。
 こんなお話がデビュー作なんて折原氏はやっぱりすごい方だと改めて感心しました。
 氏の作品は発表されたらすぐに読んでいたのですが、内には新作のように見えて実は改題した作品を読まされて、以来ちょっと避けてきました。以前の作品を推敲した結果、題名も新たに付け直したものと思いますが、読者にとっては一杯食わされた感があったのです。内容の濃い良い作品が多いので今後未読作品を読んでみることとします。ネット販売だと内容までは調べられないので、書店で内をよくみてから購入しよう。

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