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ミステリの祭典

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迷蝶の島

作家 泡坂妻夫
出版日1980年12月
平均点6.57点
書評数7人

No.7 7点 makomako
(2019/09/08 20:51登録)
泡坂氏の作品を久しぶりに読みました。初期の作品はほとんどリアルタイムで読んでいました。11枚のトランプ、乱れからくり、湖底のまつりまではすごく気に入っていたのですが、長編第4作の花嫁の叫びはあまり好みではなく、以後氏の作品から少し遠ざかっていました。今回本作を読んで、氏の初期の作品にみられる屈折した白いウソのお話を満喫した思いです。氏は生前「どういうわけか人をだましたり騙されたりするのが好きで」のようなことをおっしゃっていたと記憶しますが、本作はそういった筋書きで、読んでいて気が抜けません。
 本格推理が好きな読者は何とか謎を解いてやろうとする方が多いとは思いますが、私のようにうまく騙されると結構喜ぶといったねじれた性格の方もおられると思います。
 本作はうまく騙されました。ちょっと女性の性格がきつすぎる感はありますけど面白かった。

No.6 6点 虫暮部
(2018/05/22 10:55登録)
 恋愛話は爽やかなもののほうが好きなので、私にとって本書などはカロリーが高過ぎる。しかし“痴情のもつれ”を動機にするにはこのくらい濃い恋でないと説得力が足りないか。
 島での死までの描写で、現実と幻覚が恣意的に混ざっているのはちょっとずるいと思う(一応、黒い蝶を見てその人物のイメージが導かれた、という流れが設定されているようだけど)。

No.5 6点 E-BANKER
(2018/03/25 22:00登録)
作者の第五長編。
一月から河出文庫より三か月連続で復刊された泡坂作品の第三弾がコレ。
1980年発表。

~太平洋を航海するヨットの上から落とされた女と、絶海の孤島に吊るされていた男。いったい誰が誰を殺したのか? そもそもこれは夢か現実か? 男の手記、関係者の証言などでつぎつぎと明かされていく三角関係に陥った男女の愛憎と、奇妙で不可解な事件の驚くべき真相とは?~

これは・・・策略に満ちた作者らしい作品。
そもそも「手記」から始まること自体怪しいよね。
ミステリーに出てくる「手記」なんて、明らかに仕掛けが満載なのだから・・・
「洋上の船」という舞台もミステリーにはたびたび登場するけど、やっぱり魅力的に映る。
究極の密室とも言えるし、絶海の孤島などという表現がサスペンス感を増す効果を生んでる。
(そういえば“山岳ミステリー”という言葉は聞くけど、“洋上ミステリー”というのはあまり聞かないな・・・)

というわけで本筋なのだが・・・
仕掛けそのものは割と単純。
最後まで読めば、「何だそんなことか・・・」という感覚になるかもしれない。
ただ、手記の謎を別の手記が明らかにするというプロットはなかなか面白い。
男女の「愛憎」の絡め方もさすがに旨いし、いい意味で「手堅い」仕上げだなと思った。

でも、女って怖いね・・・
こんな女には近づかないのが一番ということだ。でもまるで「迷蝶」の如くフラフラと引き寄せられてしまう・・・
ってことは、「迷蝶」って実は男の方を象徴してたのかな?

No.4 6点 ボナンザ
(2016/04/30 00:50登録)
極めて単純なトリックで最上の効果を上げている極めて優れた例。

No.3 7点 蟷螂の斧
(2012/08/23 21:18登録)
洋上でのサバイバル。ちょっとした手違いで結びついた男女。その二人の手記(1章・3章)と捜査官の報告書(2章)で構成されています。各視点での心理描写については、読み応えがありました。死んだはずの人物の登場は、幻覚?トリック?・・・また死亡者は他殺?自殺?の謎を抱えながら終章へ。登場人物が少ないので、ある程度は予想がつきやすいのですが、終章での真相(伏線はお見事)はわかりませんでした。

No.2 6点 kanamori
(2010/08/15 20:09登録)
叙述に趣向を凝らしたフランス・ミステリ風のテイストがある作品で、名前でのミスリードの手法は数年前に話題になった叙述トリックものの恋愛ミステリを連想させます。
登場人物が少ないため、仕掛けが分かり易いところが難点ですが、手堅くまとめたまずまずの良作という感じです。

No.1 8点 こう
(2008/05/26 00:18登録)
 泡坂第五長編の作品です。泡坂作品といえば伏線が張られまくっていても進行は経時的なものが多いですがこの作品は倒叙形式の手記ではじまる異色作です。
 メインキャストはたった三人でこの三人が三角関係(男一人女二人)で男が本命の女性をとるためにもう一人の女性を殺そうとする物語です。詳細はネタバレになってしまいますので控えますがまず一人が死に明らかに疑わしい一人には明らかなアリバイがあり、という話がテンポ良く進んでゆきます。
 アリバイトリックも単純ですがそれだけに無理がなく皮肉の利いた結末といい良作だと思います。ただこの作品では全編に悪意が満ちており共感できる登場人物は皆無であり他の泡坂作品に比べて読後感は落ちるかもしれません。作品自体は良作だと思います。

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