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ミステリの祭典

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まっ白な嘘
別題『真っ白な嘘』

作家 フレドリック・ブラウン
出版日1962年05月
平均点6.30点
書評数10人

No.10 7点 蟷螂の斧
(2021/08/28 07:30登録)
①笑う肉屋 8点 雪の平原に二人の足跡があり死体が一つという雪密室。本作が初出?
②四人の盲人 6点 サーカスの支配人がこめかみに銃をあて死んでいた。空砲であり三発発砲されていた。自殺?他殺?
③世界が終わった夜 7点 今夜、世界が終わるとアル中の男をからかったところ・・・
④メリーゴーラウンド 5点 遊園地の売上金が紛失。オーナーの甥が逮捕された。彼を助けようと・・・ほのぼの系
⑤叫べ、沈黙よ 7点 駅で隣の男に時間を訪ねたが無視された。駅員はその男は耳が聞こえないふりをして妻殺しから逃げているという・・・ゾクッ(笑)「沈黙と叫び」(さあ、気ちがいになりなさい)は続編?
⑥アリスティードの鼻 4点 マイクロフィルムを探す探偵の秘策は・・・灯台下暗し
⑦背後から声が 6点 サーカスの大砲男は妻と喧嘩をし家を出ようとするが妻は止めない。更に激怒した男は・・・うっかり
⑧闇の女 8点 下宿にやってきた謎の女性はいつも真っ暗な部屋で過ごす。銀行強盗の共犯者では?・・・反転、オチは笑える
⑨キャスリーン、おまえの喉をもう一度 8点 妻を殺害、その後自殺未遂し記憶を失ったバンドマン。精神病院を退院し生きていた妻の元へ・・・緊迫感と真相
⑩町を求む 4点 「さあ、気ちがいになりなさい」で書評済
⑪歴史上最も偉大な詩 7点 詩人は無人島で9年かけ、その作品を完成したという・・・ユーモア系
⑫むきにくい小さな林檎 6点 表題のあだ名の悪童。大人になったも悪事(殺人)を働く。ただし証拠がない・・・残酷
⑬出口はこちら 7点 妻子を事故で亡くした男がホテルで自殺・・・マインドコントロール
⑭真っ白な嘘 6点 新婚夫婦は家を購入。その家は強盗による殺人事件があった。夫が怪しげな行動を・・・サスペンス
⑮危ないやつら 7点 「さあ、気ちがいになりなさい」(ぶっそうなやつら)で書評済
⑯カイン 8点 弟殺しで死刑を宣告され電気椅子に怯える男・・・叙述?
⑰ライリーの死 6点 ダメ刑事が死して名誉を讃えられることとなったわけは・・・ユーモア系
⑱後ろを見るな 7点 印刷工のディーンは仲間と組んで偽札づくり。仲間を殺されディーンに狂気が・・・メタ

No.9 6点 E-BANKER
(2019/09/07 11:48登録)
~ショート・ストーリーを書かせては当代随一の名手の代表的短篇集。奇抜な着想、軽妙なプロット、ウィットとユーモアとサスペンス。論より証拠、まず読んでいただきましょう。どこからでも結構。ただし最後の作品「うしろを見るな」だけは最後にお読みください~
というわけで1953年の発表。

①「笑う肉屋」=新婚旅行の旅先で訪れた小さな田舎町。そこで起こった「足跡のない殺人」(!) いきなり本格ミステリーっぽいプロットだなと思いきや、これって二階堂黎人の某長編に出てくるトリック?
②「四人の盲人」=いきなり逆説っぽい逸話が紹介されて事件に突入。そして結論は意外な意味で「逆説」。
③「世界がおしまいになった夜」=SF系作家の短編なんかでよくお目にかかるプロット。「あんな嘘ついたばっかりに・・・」ていうオチ。
④「メリー・ゴー・ラウンド」=今ひとつテーマが理解できず。
⑤「叫べ、沈黙よ」=タイトルからして逆説っぽい。これはラストのひと捻りが主題。
⑥「アリスティッドの鼻」=名探偵(誰がモチーフかよく分からなかったが)を皮肉るようなストーリー。そもそもヒゲの中に・・・って、無理だよね。
⑦「後ろで声が」=疑心暗鬼の男。それは・・・かなり厄介な存在。そんな男が最後に・・・
⑧「闇の女」=これは短編らしい好編。ラストにひっくり返される。
⑨「キャサリン、おまえの咽喉をもう一度」=いろいろあって、最後にはタイトルどおりの結果になる・・・のか?
⑩「町を求む」=ショート・ショート。ラストの台詞が効いてる。
⑪「史上で最も偉大な詩」=船で遭難し無人島に九年間置き去りにされた男。彼が出来ることは食糧を確保することと詩を書く事だった・・・
⑫「むきにくい林檎」=このラストの光景は見るの嫌だな・・・。よっぽど恨みが深かったんだね。
⑬「自分の声」=これはイマイチなにが言いたいのか分からなかった。オチはある?
⑭「まっ白な嘘」=表題作らしくまとまった作品。よくある手と言えばそうなんだけど、まずまず良い。
⑮「カイン」=死刑執行に怯える弟殺しの男。なのだが、ストーリーは思わぬ方向に・・・
⑯「ライリーの死」=今ひとつよく分からず。ライリーと取り違えたということ?
⑰「うしろを見るな」=必ず最後に読めとの指定がある最終譚。何か仕掛けがあるのかと思いきや・・・うーん。こんなもんかな。

以上17編。
評判どおり、非常にバラエティに富んだ短篇集。
ツイスト感のある作品も多いし、まずまずの満足感。さすがに短編の名手と言われるだけはある。
(ベストは難しいな。①⑧⑭辺りが好みかな。)

No.8 6点 makomako
(2019/08/16 08:00登録)
 これ程色々な趣向を凝らした作品が読める短編集は少ないと思います。作者はよほどのアイデア製作者なのでしょう。個々の短編が全く違ったお話であるのは当然ですが、トリック、プロットなど全く違った性格のお話が次々と出てきます。
 よくもこんなに色々と書けるものだと感心してしまいます。
 勿論短編ですので、物語の雰囲気や登場人物の性格や機微を楽しむということには向いていませんが、一つの話が短いので、ちょっとした時間でも読んでしまえます。感動するといったたぐいの小説ではありませんが、短編が好きな方はとても楽しめると思います。

No.7 6点 HORNET
(2019/07/27 20:26登録)
 無駄なく短い話の中にパンチの利いたネタが仕込んである、短編集の見本のような一冊。その仕掛け方もバラエティに富んでいて、作者ブラウンが「アイディアとプロットに苦労したことはない」と豪語したというのもうなずける。
 「笑う肉屋」「四人の盲人」「闇の女」のような、オーソドックスな謎解きミステリが私はやはり好き。「闇の女」の真相は予想できたが、落としどころが絶妙だと思った。
 含みを持たせる終わり方の「叫べ、沈黙よ」「自分の声」も秀逸。ショートストーリーを活かした、後を引く不気味さの演出がよかった。「後ろで声が」も。
 当代随一の短編の名手という触れ込みを裏切らない、古典の名作。

No.6 7点 クリスティ再読
(2018/05/28 21:34登録)
ブラウンというと、典型的なアイデア・ストーリーの作家、というイメージなんだけど(まあSFはとくに)、こうやって読んでみると1作1作丁寧に肉付けして書いているのが伝わる...内容も実にバラエティに富んでいて、本当に万能選手の部類だ。まあ器用すぎるかもしれないけどもね。
「笑う肉屋」だって、ウソ!っとなるような足跡トリックものとして読むばっかりでなく、肉屋と小人のキャラを楽しんで読むのもありでは?と今になっては思ったりするわけだよ。「キャサリン、おまえの咽喉をもう一度」なんて音楽的な書き込み部分がリアリティを醸し出していて、いいしね。
で最後の「うしろを見るな」は有名な仕掛けモノ作品なんだけど、これだってサイコな偽札犯の語りが、仕掛け以上にホラーで怖い、というのがブラウンの腕の見せ所のように感じるよ。というわけで、ブラウンの小説の腕前を見せつけられて、どっちかいうと今回その「上手さ」の部分に感銘を受けてたなぁ。
エリンの「九時から五時までの男」と連続して読んだこともあるが、アメリカの雑誌全盛期の、短編小説の幅と深さ、アイデアと粋、切れ味とショックを改めて実感した気がする。さすが。
(久々にミミズ天使とか読み直したくなった..)

No.5 6点 斎藤警部
(2016/01/19 16:58登録)
若かりし頃、緩めに愉しませてもらいました。本業SFの合間に本気の趣味で書いてたんでしょうか、こういうの。氏のSF短篇に較べると若干切れ味甘いのが愛嬌です。有名な「うしろを見るな」なんかタイムパラックスで包み込んでSFミステリに仕立てる手もあったかな、なんて思っちゃったりなんかしちゃったりなんかして。「叫べ、沈黙よ」や「史上で最も偉大な詩」の様に大きく振りかぶった感のある作品が印象深いけど、本格パズラーやハードボイルド風を含め、意外とジャンル的バラエティに富んだ一冊に仕上げてあるのが好感触ですね。

笑う肉屋/四人の盲人/世界がおしまいになった夜/メリー・ゴー・ラウンド/叫べ、沈黙よ/アリスティッドの鼻/後ろで声が/闇の女/キャサリン、おまえの咽喉をもう一度/町を求む/史上で最も偉大な詩/むきにくい林檎/自分の声/まっ白な嘘/カイン/ライリーの死/うしろを見るな

No.4 5点 ボナンザ
(2014/04/08 21:37登録)
収録作品順に読むこと。
カインや笑う肉屋などブラックユーモアが映える。
アイリッシュとは違ったタイプだが、それぞれに魅力がある。

No.3 7点 あい
(2013/04/15 22:56登録)
たくさんの種類の違う物語が収録されていて、面白かった。個人的には笑う肉屋がベスト。最後のうしろを見るなは現実性は無いが、夜一人で読んでると少し怖いかも。

No.2 6点 kanamori
(2010/08/07 15:08登録)
「東西ミステリーベスト100」海外編の135位は、短編の名手によるヴァラエティに富んだミステリ作品集。
だいぶ以前に読んだので、ほとんど内容を忘れてしまっていますが、最後の「うしろを見るな」だけは鮮明に覚えています。まあ、オチは見え易いけれど、新本格以降の読者でもうけるんじゃあないかな。

No.1 7点
(2010/01/24 12:06登録)
SFも得意とする短編の名手ということで、解説にも名前の出てくる星新一みたいな、ストンと落とすアイディア・ストーリー集だと思い込んでいるとがっかりするかもしれません。古典的なパズラーに近いものもあれば、人情話あり、心理サスペンスあり、渋いハードボイルド風ありと、様々なタイプの17作を集めた楽しい短編集です。表題作を含め、ダジャレ的な話のまとめ方がかなりありますが。
方法より理由に驚かされる足跡トリックの『笑う肉屋』から始まり、音に関する命題をショート・ショートに仕立てた傑作『叫べ、沈黙よ』、タイトルも内容もアイリッシュを思わせる『闇の女』、大ぼら話のオチを論理でまとめた『史上で最も偉大な詩』、最後にやってくれますねえの『うしろを見るな』(必ずしも最後に読まなければならないとは思いませんが)などが印象に残りました。

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