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ミステリの祭典

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風のかたみ

作家 福永武彦
出版日1968年01月
平均点8.00点
書評数1人

No.1 8点 makomako
(2019/10/05 22:58登録)
 福永武彦氏の作品は大学時代に魅力に取りつかれて読んだものでしたが、この作品は知りませんでした。
 当時は純文学的なものが好みでサスペンス小説に興味がなかったからかもしれません。
 たまたま見つけて懐かしく読んでみると、氏特有のあでやかで美しい調べが久しぶりに味わえました。途中でああこれは今昔物語がベースにあるようなお話だと気が付いたのですが、解説を読むとやはりそのようです。

本格推理小説ではないので多少お話の内容を書いてしまいます。、
 このお話は登場人物が素晴らしい。ことに主人公の次郎は実に男らしく誠実で、ただ一途に萩姫を思う。萩姫は人を見る目がないのか、家がよいのみのろくでなしの保麿をひたすら思う。保麿は萩姫が好きなのだがすべてを捨ててもこの娘と一緒になろうとまでは思っていない。勝ち気で美人の楓は次郎が好きでたまらないが、絶対この恋は成就しない。さらに盗賊の親玉も萩姫が好きになり必ず奪って我がものとしようとする。これではどうしようもないではないか。
 その通りどうしようもなくなり最後は悲劇で終わります。本格物ではないのですがトリックもあるのですよ。
 草の花や忘却の河のような繊細で悲しい美しさをこの小説でも味わえます。

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