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ミステリの祭典

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星屑の仔さんの登録情報
平均点:6.33点 書評数:46件

プロフィール| 書評

No.26 4点 緋色の囁き
綾辻行人
(2009/12/08 00:08登録)
綾辻行人の幻想性があふれた作品ではあった。
面白かったよ。確かに面白かった。
学園をテーマにした殺人事件が今回の舞台である。

しかし
そうしかし、肝心のトリックやストーリーがあまり記憶に残っていない。読み返してみれば「あぁ、こんなことあったな」と思い返すことができるものの、やっぱりインパクトが薄い傾向がある。辛うじて叙述ものであったきがする、程度である。

新シリーズの一発目と言う事もあり、期待していた分、インパクトに欠けるという意味でこんなもんでどうでしょう。


No.25 8点 霧越邸殺人事件
綾辻行人
(2009/12/08 00:03登録)
これぞ綾辻!
と言わんばかりに綾辻ワールドが盛りだくさんな作品。
描写良し、幻想性良し、叙述性よし、何より世界観が最高。

雪山の山荘で仲間が一人、また一人殺されていく、という手あかのついたストーリですが、そこには微塵の古臭さはありません。

確かに一回読むだけでは、そのごてごてしい装飾が眼についてその真価が分からないかもしれません。
でも二度、二度読んでみてください。

その装飾の奥には噛みしめれば噛みしめるほど沸いてくる、ミステリの味わいがあります。

中には、「あのラストは納得がいかない」と言う人もいるでしょうが、納得が作品は概して詰らないものです。
納得がいかないからこそ想像外の展開が面白いというものなのでは。僕はそう思います。


No.24 7点 双頭の悪魔
有栖川有栖
(2009/11/23 20:48登録)
学生アリスの三作品目。


突然大学を休学したマリアを追って、アリス一行は陸の孤島とも言われる山奥の村にやってきた。
突然の大雨により、「マリアのいる村」と「その隣村」と2チームに分断されてしまう。
しかも悪いことに、その両者で殺人事件が起こってしまう。



結論を言うと、「マリアのいる村」に存在するとある人物が両者の殺人事件を引き起こしていたのだ!
・・・という結論らしいのだが、正直最初から「この2つの事件は裏でつながっているものだ」と思い込んでいたので、そこまでの驚きはなかった。

しかし一作目二作目同様、その繊細なロジックは健在で、しかも無駄がない。
また切羽詰まった状況をこれまた巧みに表現していて、小説の分量ほど冗長に感じなかったのはすごい。


No.23 6点 孤島パズル
有栖川有栖
(2009/11/23 20:40登録)
学生アリスの第二作品目。

今作品はヒロインとしてマリアが登場します。
今回も前回同様、絶海の孤島を舞台としたクローズド・サークルものです。
全作品の「月光ゲーム」と良い、有栖川さんは本当にロジックに重点を置く作家さんなのだなぁと思いました。

緻密なまでに事件の解決に繋がる全ての要素を、一つ一つ論理的に消していきながら結論を導く様子は、決して「ご都合主義」とはかけ離れている作品でしょう。

また宝探しもこれまた面白い。
島に点在するモアイの位置と向きを参考に、一次元を二次元に、二次元を三次元に、そして三次元を四次元に変換していくという解読方法は面白かった。

難を上げるとすると、意外性が乏しいかなと。
確かに事件は論理的に解決されるけど、その分ラストの驚愕は足りなかったかな。
あと人物のキャラクタをもう少し引き立ててくれたら・・・。
でもそうしたら、ライトノベルみたいになるのかな。
ある意味、ギリギリなバランスの上の作品なのかもしれません。


No.22 5点 月光ゲーム
有栖川有栖
(2009/11/23 20:31登録)
有栖川有栖さんの処女作となった作品。

エラリー・クイーンを崇拝しているらしく、論理性やロジックを重視している作風は顕在している。

事件のどこが問題なのか、それを解決する案はどんなものがあるか、それは矛盾していないか、ほかの可能性は考えられないのか・・・・・・、
と言う具合に論理的な「推理」を楽しめる作品。


キャンプ場に集まったいくつものグループ
みんな仲良く過ごしていたのに、火山が活動を開始し麓に助けを呼ぶことができなくなった。
そんな閉鎖空間で殺人事件が起こる。

とまあ、ミステリでは有り触れた内容ながらも黴臭さは微塵も感じられない気がした。


ただ問題点を挙げるとすれば、論理的に推理を展開するのはいいがどうも冗長になってしまった点、
また登場人物が多すぎて、一人一人が引き立たなかった点があげられる。


No.21 8点 迷路館の殺人
綾辻行人
(2009/11/03 22:27登録)
「館」シリーズ第3弾

ミステリ小説作家が迷路館と言う謎の屋敷に閉じ込められた。
その傍らに書きかけの小説が残されたまま一人また一人と殺されていく。
犯人は誰だ!?


と言う作中作があり、その解説版を現実世界で行うといった作品だ。

その幻想性は元より、読者をあっと言わせる叙述トリックの切れ味は炸裂する。
中には、「あのトリックはどうなの!?」と言う方もいるかもしれないので10点満点は上げられないけど、スピーディな展開で読んでて飽きの来ない作品だなと思った。


No.20 7点 水車館の殺人
綾辻行人
(2009/11/03 22:19登録)
「館」シリーズ第2弾

過去の事件と、現在の事件が並行して語られる作品。
トリックや結末こそ平凡かもしれませんが、そこに至るまでの神秘的なまでの幻想性がこれでもかと盛り込まれている。

第一作目と同じ毛色を期待していた読者にとってはイマイチかもしれないが、綾辻ワールドを楽しみたい人はむしろこっちを読むと良いかもしれない。


No.19 5点 人形式モナリザ
森博嗣
(2009/11/03 22:09登録)
うん。まぁ楽しめたかな。
形は違えど、密室ものであることには違いない。
人物設定と舞台設定は毎回毎回面白いと思う。
1つの小説の中に複数の謎を散りばめて最後に終結する、というのは良いとしても、もう少しスマートにできたらもっと高く評価していいと思う。
あと人物相関表と地図がほしい。
何気に、森博嗣さんは叙述トリックを扱われると思った。


No.18 6点 黒猫の三角
森博嗣
(2009/11/03 22:04登録)
新シリーズの一作目。
やはり森博嗣さんは密室がお好みのようで、今回も密室ものです。

屋敷の中からも外からも監視がある中で、完全に施錠された密室で絞殺された夫人が発見された。


結論は、だって・・・・・・ねぇ。
何作も続くシリーズものの、一作目の犯人が探偵ってどうなの?
確かに、「シリーズの一作目」と言う目くらましがあって、犯人を当てることができなかったのは事実だし、
伏線だって読み返してみれば、「確かに・・・」と言えなくもない。

なんとなくすっきりしない後味だが、森博嗣さんのミステリはそう言ったものを求めるものではない。
その森博嗣の脳内の世界観を楽しむものなのだから、これはこれで良いかな。


No.17 8点 容疑者Xの献身
東野圭吾
(2009/11/03 21:54登録)
面白かった。
読んでいてハラハラした。
ストーリは、離婚した元夫を殺してしまった女性と娘、その女性に命を救われ罪を隠そうと手伝う元天才数学者、そしてその数学者の旧友の天才物理学者、その三者の物語。

不可能アリバイトリックを仕掛けた天才数学者「石神」、
そのトリックに挑む「湯川」。

それは犯人vs探偵と云う簡単な対立構造ではない。

天才でしか知り得ない世界を共有し合った友人同士であり、
何が正義で何が悪かを問われる構造でもある。

そして最後には「さすが東野圭吾!」と言わしめるどんでん返しも待っている。

期待されていた作品であるが、それ以上の内容があったと思われる。


No.16 9点 匣の中の失楽
竹本健治
(2009/04/07 07:52登録)
頭痛がした。
小説を読んで頭痛がした作品は初めてだ。

読んでいるうちに、「今は現実なのか? それとも虚構なのか?」そんな非現実的な疑問に駆られる作品。

全体は5部構成になっている。
1部では早速殺人事件がおこるが、2部ではそれが小説内の虚構であると書かれている。
しかしその2部を受けて、3部では1部から話は続き、2部こそが虚構であると書かれている。
しかししかし、4部ではその3部こそが虚構である書かれていて・・・・・・。
もはや今読んでいる内容が、夢か現か解らない。
そして最後の5部は、あるはずの6部がなく、まさに空想と現実が一緒になった世界を醸し出してくれる。
そんなミステリの大前提を崩した作品。

これを読む時は、「ちょっと気分転換に・・・」と思って読まないことをお勧めする。

きっと現実世界に帰ってこれないからだ・・・・・。


No.15 5点 慟哭
貫井徳郎
(2009/04/07 07:42登録)
2つのストーリーが交互に話を進めて行く作品。
1つは難事件の解決を進める刑事を主人公とした話。
もう1つは新興宗教に入団する人間視点の話。

どちらかと言うと、本格ミステリかと言うとどうかと思う。
社会派ミステリの毛色も強い作品だと思った。
先の見えないミステリとしてはとても面白かった。

最初はこの2つのストーリーが全く無関係に進んでいくと思いきや、最後の最後には見事に1つに合体する、

と言う手法を取りたかったのだろうが、「こう言った類」の半紙を読みなれている人は、途中で多かれ少あと思った。

まずは何も他のミステリを読まない人が読むべき作品だと思う。


No.14 6点 そして誰もいなくなった
アガサ・クリスティー
(2009/04/07 07:26登録)
「ミステリ小説読んでみたいけど、何を読めば良いのかな?」
そんな人に読んで欲しい一冊。
僕みたいに変にミステリ慣れした後よりも、まったく白紙の状態で読んでこそこの衝撃はあると思います。

できれば僕も何の予備知識内で読みたかった。


No.13 6点 アクロイド殺し
アガサ・クリスティー
(2009/04/07 07:22登録)
『アクロイド殺し』

「犯人の名前はわからなくても、誰が犯人であるかは有名である」で有名なこの一冊。

できることならば、何の予備知識無しで読んでみたかった。
この一言につきます。


No.12 9点 女王国の城
有栖川有栖
(2009/04/07 07:10登録)
ついに出ました。
有栖川有栖さんの『江神二郎』シリーズの新刊。
10年以上の月日を開けて、ついに学生アリスが活躍します。

舞台はとある農村地「神倉」に本部を構える、新興宗教団『人類協会』その内部。
本作品の主人公とも言える江神さんが、その人類協会の内部に入ったまま出てこないことを危惧した英都大推理小説研究会のメンバーはその後を追って神倉村へ。
そこで殺人事件に巻き込まれ、アリス達は人類教会の内部に閉じ込められてしまう。

犯人はだれなのか。
無事外へ出れるのか。
そして過去の事件の真相は。

もう、1つの作品の中に読者を惹きつける要素を、これでもかと押し込めた作品です。
純粋な読者との知恵比べあり、
人類協会との息詰まる攻防サスペンスあり、
漫才コンビの爆裂的なからみあり、
アリスとマリアの今後の関係も然り、

いや~~
10年間待ったかいがありました。
治作は何十年後になるのか、こうご期待。


No.11 10点 名探偵に薔薇を
城平京
(2009/04/07 06:59登録)
コアなファンの間では話題となった『スパイラル~推理の絆~』の作者が送るミステリ小説。

舞台はとある住宅地。
作品は二部に分かれている。
「小人地獄」と呼ばれる新種の毒物の存在をほのめかす脅迫文から起こる前半部と、それが解決してから数ヵ月後の後半部。

この作者の作風から言うと、まず読みやすい。
回りくどい情景描写などがなく、文章も読みやすい。
しかもそれでいてストーリーは起伏に富んでいる。
この作品の売りは、密室トリックやアリバイ工作ではありません。
たった1つあげるなら、『名探偵の生き様』でしょうか。
表では華やかなスポットライトを浴びる名探偵の、その才能故の苦悩に満ちた世界。
それがこの作品の全てだと思います。
トリックうんぬんよりも、人間の心理描写の書き方が非常にうまいと思う作品です。


No.10 5点 裁くのは誰か?
ビル・プロンジーニ
(2009/04/06 19:40登録)
賛否両論ある作品かなと、そう思いました。
現代日本ミステリの代表作家のうちの一人である「森博嗣」さんがお勧め作品として挙げたものです。
帯にも「森博嗣さん絶賛。まさにギリギリ」と書かれていたので、気になって買ってみました。


主人公はアメリカ合衆国大統領。
次期大統領選に向けて躍起になっている主人公だが、自分の身内であり仲間であるはずの政治家たちが、実は裏切り工作を目論んでいるのではないかと疑心暗鬼になっていく。
そして謎の人物は、その裏入り者を突き止め、大統領の地位を守り抜くため殺人を犯していく。

簡単にまとめるとそんなストーリーです。
本格ミステリにアメリカ政治のシステムや問題点なども盛り込まれていて、自分の中では新しい作品でした。日頃そう言った毛色の作品は読まないもので。

事前に所謂「そう言った類」の作品だと知っていたので、そこまで大きな衝撃はありませんでしたが、それを差し引いても、その結末はある程度予想できちゃいました。

読みやすい作品なので、「この一冊!!」と言うよりは、小休止的な感じで読むのが良いのではないでしょうか。


No.9 6点 びっくり館の殺人
綾辻行人
(2009/02/10 19:02登録)
綾辻さん「館」シリーズの正式な8作品目の、びっくり館の殺人。
一読すると、今までの館シリーズと毛色が異なる、番外編作品と捉えられてしまうかもしれない、そんな作品。
舞台が館であると言うことは共通していても、クローズドサークルものでもないし、大規模に練りに練ったストーリー、とは言い難い。

しかしながら、「これぞ綾辻行人!」と言う倒叙ものは切れ味があると思います。
倒叙ものを書くと分かっていながら、それでも最後には引っかかると言うのは、考えてみればすごいことだと思います。

また、二読目はまた違った世界が見え、全く異なった作品にも感じます。

この作品は二読して初めて本当の味が解るんじゃないかなと、そう思いました。


No.8 9点 倒錯のロンド
折原一
(2008/09/10 23:36登録)
折原さんの『倒錯』シリーズの第一作。

最初、折原さんの作風を知らずに、ただネットでお勧めと書かれていたから読んでみたら、これが大当たり。
ミステリを本気で読もうと思ったきっかけの作品がこれ。
ミステリを読みなれている人ならそうれもないんだろうが、まだミステリを読んでいなかった自分にとっては、正に驚愕だった。

似たような作風に綾辻さんがいるが、綾辻さんが荘厳で幻想的なのに対し、折原さんは日常生活に近いポップな感じの作風と言えるでしょう。
地の文章が読みやすく、サクサク読めるから、初心者にもお勧めできる。

ただ一つ言えるなら、性的な描写が多すぎだと。
そう言うのが嫌いな人には、お薦めはできません。


No.7 6点 11枚のとらんぷ
泡坂妻夫
(2008/09/10 23:27登録)
泡坂さんの長編と言うことですが、読んでみるとなかなか。
途中で作中作も入っているし、地の文章も滑らかで読みやすい。途中で少々奇術に関する文章が少々難解でテンポ悪くなる場所もあるけど、それ以外はスラスラ進む。
ページ数の割には結構サクサク読めるのは吉。

しかし一方で、今言ったように思うような情景が思い浮かべることができない部分があったのも確か。
自分は手品、奇術、マジックの類を齧っているのでまだ判ったんだが、なんの予備知識も無い人が読むと少々混乱するんではないかと思った。
最後の推理の部分で、理論の大きな破たんは無かったけど、やっぱりどこかしっくり来ない、と言う部分を加味すると6点かな。

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