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ミステリの祭典

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匣の中の失楽

作家 竹本健治
出版日1978年01月
平均点6.38点
書評数40人

No.40 5点 zuso
(2024/03/07 22:18登録)
登場人物の名前がみんな人形からとられているといった遊戯性や、記述の虚実が入れ子のように反転する構造など、極めて意欲的な作品。作者が24歳の時に書いた処女作であり問題作。

No.39 9点 mediocrity
(2021/02/19 04:57登録)
4大奇書ということですが、奇書というほどではないように思います。中盤までメタ構造にちょっと戸惑ったくらいで、それほど読みにくいわけではありませんでした。ペダントリーも節度があって、『黒死館殺人事件』のように本筋を忘れてしまうような状況には陥りません。
22歳のデビュー作というのはちょっと信じられないレベルの名作だと思いますが、第3章の事件がうまく運びすぎなのが気になったのと、3大奇書に比べてキャラクターに魅力を感じられなかったので1点だけマイナスで。

No.38 8点 じきる
(2021/01/06 21:35登録)
読み物としての面白さとメタミステリの構造美が両立されており、満足できました。

No.37 6点 クリスティ再読
(2020/01/02 18:03登録)
ゲーデルによれば「自己言及可能な言語であれば、矛盾する言明が同時に成立する」ことになる。これを小説で言い換えると、「メタな記述を許してしまえば、小説の中の矛盾をあげつらうことに意味がなくなる」なのではないか..と意地悪な評者は思ったりもするのだが、本作の抱えた問題点ってそういうことだと思うんだ。
今回再読してみて、本作、相当に「虚無への供物」のパスティーシュ味が強いなあ、と思う。だからいくつか、本作と「虚無への供物」を比較して、本作が採用できなかったところ、を指摘するのもいいのではないか。まず、1)美少年を出しながら同性愛色は希薄である(苦笑)。エロスは欠いている。ゲイ小説だったアドニス版から滲み出るような「虚無」のエロスと逸脱ここにはないな。それでも5章の謎解きで煙草を吸うシーンは、いい。2)大量死のテーマ。まあこれは荷が重すぎるし、中井の本旨としては戦争による無意味な死とその鎮魂という三島的テーマを共有しているわけで、こんなの担えるわけがない。3)「友情」。「虚無」は謎解きの中で告発はするけども、抱きしめあうような「優しい告発」の良さがある。卑俗なキャラが多い本作は何かギスギスしてるなあ...
と上記の要素が評者に言わせれば、「奇書としては微妙」な「虚無」を奇書たらしてめている根源なんだと思ってるよ。というわけで、本作はアンチ・ミステリではあっても「奇書」とは呼べない。同じ「虚無」のパスティーシュであっても「十二神将変」の方が中井の真意を汲んでいるように思う。
しかしね、本作は「奇書」たりえないことによって、「革命」というか「ぶちこわし」を行ったのだ、とも思う。「三大奇書」なのか「三大アンチ・ミステリ」なのが、今一つよく区別がつかない現状なんだが、本作が示したことは、「アンチ・ミステリは、(いろいろ)書ける」ということなのだ。これを呪縛からの「解放」と取るのか、「堕落」と取るのか、は受け取りようなんだろうけども、「メタ記述」と「推理合戦」によって、「奇書みたいな作品」ってのを、いくらでも書けてしまう、というのを示してしまったのだ。本作が日本のミステリの「ポスト・モダン(あまりイイ印象のない言葉だが)」を開いてしまったのは、間違いない。そういう意味で「メタに画期的」である。

No.36 7点 レッドキング
(2019/04/03 22:21登録)
照明器具やドアのぶを利用したトリック等、ネタ自体は小粒の集まりで、ミステリとしては6点が妥当だろうが、ヒロインが夜の雨の街を歩き去って行く描写が実に素晴らしく、そこだけで1点のおまけ。
もしもこの作品に第6章があれば、それこそ本当に「四奇書」の一つになれたのかも知れない。そしたら「三奇書」同様に「採点不能」の作品だった。
さらに6章のエンドを1章のヘッドに循環させて、「奇数章」対「偶数章」を無限の相互入れ子にすることに成功していたら、10点満点だった・・・でも無理だったんだろうな。

No.35 10点 青い車
(2016/12/31 22:47登録)
 本日、今年最後の本として読み切りました。
 仲間内の小説の通りに殺人事件が起きる展開は、割とベタで、そしてだからこそ強く惹かれる導入です。しかし、前の章で殺されたはずの人間が普通に登場してきたあたりから、その異様な構成と展開に読者は翻弄されることになります。作中作という、ミステリーではお馴染みのガジェットの究極のかたちとでも言うべき仕掛けです。しかし、そこは第四の奇書と言われるだけあって、「ああ、あの章は作中作だったのか」と理解しても、掴みどころのなさは変わりません。現実と虚構の境目がわからない、ミステリーの型を壊している書き方は、ただ叙述トリックに使う目的で作中作を使う他の小説とは一線を画しています。
 また、当時22歳の作者の熱が詰め込まれたように過剰な、密室の数々と濃密なディスカッションも大きな特徴です。「付き合ってられん」と投げ出す人も多そうですが、僕は大喜びで読めました。人物の書き分け不足云々といった紋切り型の批判をものともしない勢いがあります。トリックはどれもさほど新しくない、もしくは小粒ですが、構成の妙で圧倒するタイプの傑作です。評価が分かれるのは当然でしょうが、100人いて100人が支持する作品などあり得ませんし、これだけ尖がっていなければ今なお読まれ続けることはなかったでしょう。

No.34 8点 風桜青紫
(2016/07/17 15:28登録)
面白い。以上。

No.33 4点 いいちこ
(2015/11/25 16:50登録)
現実と虚構が高度に錯綜したプロットと、多すぎる登場人物の書き分けの不徹底が、読者を強烈な眩惑に陥れているところ、作品の大半が推理合戦に費やされるのは、いかがなものか。
推理合戦は、推理の前提たる事実関係が厳格に限定されてこそ効果を挙げられる。
その点、本作は前提事実が曖昧であるため、提示される推理の妥当性・合理性が検証できないまま、推理とは異なる現実が次々と明らかになっていく。
いわば「暗黙のうちに外れと予見される推理」を延々と読まされ続けるプロットとなっている。
また、読者によって様々な読み方を許容する柔軟構造としての着地は、それに意味がないとは断じて言わないが、当方の理解力不足・努力不足を差し引いても執筆意図としては弱い。
結果、読者を眩惑すること自体を目的とした作品と映り、それが読物としての面白さには繋がってこなかった

No.32 7点 ボナンザ
(2014/04/08 00:47登録)
摩訶不思議。作者の遊び心が見事に結実した奇書の名に恥じぬ怪作だ。

No.31 7点 アイス・コーヒー
(2013/12/21 12:12登録)
いわゆる四大奇書の一作。中井英夫の「虚無への供物」を意識したアンチミステリ構造に独自のメタミステリとしての構成を添加した、後の新本格に大きな影響を及ぼした作品。
ただし、「虚無への供物」の二番煎じ的な雰囲気を脱していない気がした。これなら内容がストレートな「虚無」の方が読みやすいし、わかりやすい。そもそもこれだけの作品を書くのは一般人には不可能な芸当だとは思うのだが、これより上の「虚無」がある以上高い評価は難しい。
やはり本作は「本格推理とは何か?」「解決とは何か?」をテーマにした文学で、本来の推理小説とは違った「アンチミステリ」なのだが…独自のメタミステリ手法は評価できるとしても、これは結局「虚無」のファンブックといった作品だ。
一方で作中の密室トリックはなかなか面白かった。だからこそ、内容を「密室とは?」という点に絞った方が良かったように思える。あとは、登場人物が多すぎて書き分けられていないという難点がある。

色々と文句を書いたが、デビュー作でこれだけ書ける作家はまずいない。それだけは言っておこう。

No.30 5点 蟷螂の斧
(2012/12/04 13:13登録)
「虚無への供物」(1964)のオマージュか、対抗作品なのか良く解りませんが、ベース、展開は似ているようなと気がします。それに「黒死館殺人事件」(1935、薀蓄がメインらしいので未読)の薀蓄や、「ドグラ・マグラ」(1935)の幻想をプラスしたような作品でした。現実と虚構(作中作)をもって、読者を混乱させるのが、メインのような気もしますが、1章から2章へ移る段階で「あること」に気が付けば、それほど混乱はしないのでは?と思います。(しかし、自分が思っている現実と虚構が逆との書評もありましたが・・・(笑))。次は本作のオマージュ作品の「匣の中」(乾くるみ氏)を読むつもりです。

No.29 4点 yoneppi
(2012/03/02 21:03登録)
とにかく疲れた。。厚くて重いし。。乾くるみの「匣の中」の方がよかったかな。

No.28 4点 nukkam
(2010/12/06 10:57登録)
(ネタバレなしです) 竹本健治(1954年生まれ)が1978年に発表したデビュー作の本書は、小栗虫太郎の「黒死館殺人事件」(1934年)、夢野久作の「ドグラ・マグラ」(1935年)、中井英夫の「虚無への供物」(1964年)のミステリー3大奇書に続く第4の奇書と評価されている作品です。相次ぐ推理合戦や膨大かつ広範囲な知識の披露は明らかに中井作品の影響が色濃く、歪みを感じさせる作品世界描写は中井作品の発展型といってもいいのでは。それが小説としての面白さとは乖離しているところが奇書たる所以であり、すっきりした結末は期待しない方がいいです。私の読解力では4大奇書は楽しむどころか理解さえもほとんどできず、ただ機械的にページをめくっただけに等しいです。

No.27 4点 kanamori
(2010/07/30 20:11登録)
推理マニアが集まって推理合戦を繰り広げるという構成は「虚無への供物」への供物だと思うが、現実世界と虚構世界が錯綜したプロットが人物造形の稚拙さと相まって非常に読む者を混乱させる。
アンチ・ミステリは嫌いではないが、「虚無への供物」と違って、この小説は最終的に何を言おうとしているのか理解不能でした。

No.26 9点 メルカトル
(2010/05/25 00:01登録)
読んでいて眩暈がする構成。
『虚無への供物』の発展系ともいえる、メタ構造は究極の作中作といっても過言ではないと思う。
登場人物が多い為、一読すると煩雑に感じるかもしれないが、読み込むほどにキャラが立ってくるのを実感できる。
推理合戦を純粋に楽しめる、ミステリの極北。

No.25 5点 文生
(2010/01/20 17:30登録)
現実と虚構が混沌となっていく趣向は面白いのだが、登場人物が作り物めいて感情移入がしずらかった。
舞台もオタクが考えた人工的な閉ざされた感じで息苦しい。
文章もペダントリーが先にたって無味乾燥で読みにくかった。
同じ趣向の作品なら作者の熟練度が上がってから書かれた『トランプ殺人事件』や作者自身やその作家仲間が登場する『ウロボロスの偽書』がオススメ。

No.24 6点 E-BANKER
(2009/10/12 15:39登録)
これを読む前は「アンチ・ミステリー」ってなに?という素朴な疑問から読み始めたわけですが・・・
まぁ、現実の世界と虚構の世界が入り混じっており、そこに「作中作」が加わって、訳が分からなくなってどうしたらいいの! という多くの読者と同じ感想にならざるをえませんでした。
勇気を持って再読してみれば、ある程度作者の狙いというか、面白さが少しずつ分かったような気はしたのですけど。
何はともあれ、後の作家や作品に多大な影響を及ぼしたのは間違いないでしょうし、「虚無への供物」よりは読みやすいでしょう。

No.23 8点 測量ボ-イ
(2009/05/04 10:31登録)
「虚無への供物」を意識して作られた作品ですが、前者より
数段楽しめました。密室トリックの謎解きで一見バカバカし
い種証しもありますが、こういうの、嫌いではないです。
薀蓄話しも、そんなに嫌味たらしくなく、うんざりする事も
なかったです。

ただ多くの方が指摘されるように、現実と虚構の世界の交錯
には頭が混乱しました・・

No.22 9点 星屑の仔
(2009/04/07 07:52登録)
頭痛がした。
小説を読んで頭痛がした作品は初めてだ。

読んでいるうちに、「今は現実なのか? それとも虚構なのか?」そんな非現実的な疑問に駆られる作品。

全体は5部構成になっている。
1部では早速殺人事件がおこるが、2部ではそれが小説内の虚構であると書かれている。
しかしその2部を受けて、3部では1部から話は続き、2部こそが虚構であると書かれている。
しかししかし、4部ではその3部こそが虚構である書かれていて・・・・・・。
もはや今読んでいる内容が、夢か現か解らない。
そして最後の5部は、あるはずの6部がなく、まさに空想と現実が一緒になった世界を醸し出してくれる。
そんなミステリの大前提を崩した作品。

これを読む時は、「ちょっと気分転換に・・・」と思って読まないことをお勧めする。

きっと現実世界に帰ってこれないからだ・・・・・。

No.21 4点 おしょわ
(2008/10/12 17:27登録)
単にワケが分からなくしてる感じ。
読み辛いし。

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