富豪刑事 |
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作家 | 筒井康隆 |
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出版日 | 1978年05月 |
平均点 | 6.78点 |
書評数 | 32人 |
No.32 | 6点 | クリスティ再読 | |
(2023/12/07 12:12登録) 評者って筒井康隆は苦手作家なんだ。 一時必要に迫られて代表的な作品を集中して読んだこともあるんだが、どうも「合わない...」という印象だけが強いんだなあ。いや大変「頭のいい作家」だと思う。楽しめない、というわけじゃないんだが、「アタマのよさの使い方」に違和感を感じちゃって「う~ん、こんなこと、したいの??」と疑問に感じることが多くて興を殺がれる。ギャグ・パロディは大好物なわけで、小林信彦なら好きなんだけどもねえ。 というわけで「富豪刑事」。確かにミステリ・プロパーじゃない筒井康隆の「アタマの良さ」を発揮した作品で、所収の4短編すべて工夫と仕掛けを凝らしているのはわかる。「ミステリという形式」を作者が「面白がっている」のは伝わるんだよね。 しかしそこに「愛」はないんだ。筒井康隆って極端に「愛」に欠けた作家じゃないのかな、って思ったりする。「読者はこんなのしたら面白がるだろう?やってやろうか」と言わんばかりのところが、この人にはある。 だからこの人の「メタ」な仕掛けは、すべて韜晦だ。それに評者は「イヤな感じ」を抱くんだよね....困った。 とはいえね、捜査側が奇想天外な罠を容疑者に対して仕掛ける、というのは昔は「逆トリック」という言い方で、ミステリの「技」としてよく使われた(ホームズとかね)だからミステリの「本道」の一つなのだと思ってる。また、最後のホテルの話が、実はこれも一種の「密室殺人」になっているのが面白い。本作の「密室」って実は「逆密室」みたいな側面があって、興味深いのは確か。 だけど、この大富豪の刑事が金に飽かして捜査する、という趣向は、細野不二彦の「東京探偵団」の方がずっと成功しているとも思う。マンガの方が、突き抜けた「カネの使い方」ができてしまうんだ。 |
No.31 | 5点 | 蟷螂の斧 | |
(2023/06/28 07:57登録) ①富豪刑事の囮 6点 五億円強奪事件の時効が残り三か月と迫った。容疑者は四人。盛大なパーティを開き四人を招待する・・・楽団はポール・モーリア、余興は引田天功のマジックと木下サーカス、外国の女優も呼ぶ等ハチャメチャぶり。秘書の鈴江さんが魅力的(映画「K20 怪人二十面相・伝」の令嬢役松たか子さんにそっくり!?)犯人は見え見えです(笑) ②密室の富豪刑事 7点 密室での焼死。部屋には燃えるようなものは一切なかった。せいぜいタバコの不始末が考えられるが・・・物理的密室では初物。折原一氏「七つの棺」所収の「懐かしい密室」が本作のパロディです。そこでは著者の筒井先生を絶筆させています。いいのかな?(笑) ③富豪刑事のスティング 4点 町工場の社長の息子が誘拐された。警察に届けず犯人に身代金をを渡してしまう。しかし、子供は帰ってこない・・・まあ、よくありがちな。富豪刑事らしさも不発 ④ホテルの富豪刑事 4点 ヤクザの集団をひとつのホテルに宿泊させることに成功するが、一組だけ外人がスイートルームに宿泊することに・・・③④で鈴江さんの活躍がなく、面白味が半減してしまった。残念 |
No.30 | 7点 | まさむね | |
(2023/05/07 23:04登録) ミステリの側面は別として、純粋に面白かったですねぇ。良質なエンタメ小説。登場人物が突然回転椅子をくるりと回して「読者の皆さん…」と語りかける辺りが特に好き。収録4作品ごとにパターンが異なっているので、飽きずに読み進めることができます。「富豪刑事」こと神戸大助も印象的ではありますが、何といってもその父である喜久右衛門氏が個人的なツボ。笑わせていただきました。 |
No.29 | 5点 | パメル | |
(2023/03/20 07:49登録) キャデラックを乗り回し、1本8500円もする葉巻を愛用する大富豪の息子で刑事の神戸大助が、大金を惜しげもなく使って事件を解決していく四編からなる連作短編集。 「富豪刑事の囮」五億円強奪事件の時効まであと三か月。容疑者を四人まで絞れたものの、そこから先に捜査が進展せずに途方に暮れる捜査部。そこで神戸大助が刑事という身分を隠して容疑者たちに接触。大金を使わざるを得なくなる工作をして、強奪した五億円を使おうとしたところを逮捕しようとする。富豪刑事ならではの考えつかぬ様々なダイナミックな金の使い方で、張り合うよう心理戦にもっていくのがうまい。 「密室の富豪刑事」ある会社の社長室で社長が殺される密室殺人事件が発生。容疑者は被害者のライバル会社社長だが、殺害方法も証拠もつかめず捜査は難航。神戸大助は、新たに容疑者の会社ライバルになり得る会社と密室殺人が起きた社長室と似た作りの部屋を造って罠を張り、容疑者がまた同じ犯行を実行するように仕向けようとする。本格推理小説をコミカルにオマージュしているようなドタバタ劇。 「富豪刑事のスティング」子供の誘拐事件が発生。被害者の父親は犯人に言われて警察に知らせずに要求された五百万円を渡したが、子供は返されずに「もう五百万円用意しろ」と電話があり、被害者の父親はたまりかねて今度は警察に連絡する。神戸大助は自分が用意した金を被害者の父親に不自然な形にならぬように渡そうとする。「話を面白くするために、小説中における時間の連続性を、トランプのカードをシャッフルするように滅茶苦茶にしてしまえばどうであろうか」と出てきて、実際にそのようなプロットで書かれるという試みがなされている。 「ホテルの大富豪」二つの暴力団組員のほぼ全員が集まって談合するらしいという情報が入り、警戒に当たることに。神戸大助は父の持ち物である高級ホテルに暴力団全員が宿泊するように誘導し、監視しようとする。前三編では詳しい説明がなかった捜査班の面々の人となりの説明があるというのが妙な具合で面白い。結末も一味違って最後まで型にはまらない。 作中人物にメタ発言させたり、地の分で読者に語り掛けたり、パロディ要素がふんだんに盛り込まれていたり、全体的にユニークで型破り。ミステリとしてのプロットやトリックは驚くことはないが、次はいったいどんな金の使い方で捜査するのだろうと興味を抱かせる他では味わえないミステリとなっている。貨幣価値の変化や少々古びた風俗描写を割り引いても、時代を超える普遍的な面白さが現代でもなお通用するユーモア警察小説。 |
No.28 | 5点 | バード | |
(2018/12/27 13:30登録) ユーモラスな小説でそこそこ気に入った。(読後感はAAミルンの赤い館の秘密に似ている。)筒井さんのミステリは二冊目(1本目はロートレック壮)。個人的にはロートレック壮の方が好きかな。 密室の富豪刑事が推理要素があって一番良かったね。しかし、私が思った以上に皆さん高評価なのね。 |
No.27 | 5点 | 名探偵ジャパン | |
(2018/09/03 14:06登録) ミステリ部分に特に見るべきものはないが、設定の奇抜さとキャラクターの面白さで読ませていく。 これはまさに、昨今のミステリ界に幅をきかせている、日常の謎を取り扱ったキャラクターミステリの構造そのものです。ですが、それら十把一絡げの「キャラミス」と本作を決定的に分けるものは、作者が持つ毒と、どこか自作を突き放した客観姿勢でしょう。 いわゆる「キャラミス」を書く作者の姿勢として共通するのは、とにかく自作のキャラクターがかわいくて仕方がないという愛情です。まるで我が子を育てるかのごとく、作者は自身が生み出したキャラクターたちを愛し、読者にもそれを要求します。この『富豪刑事』は同じ「キャラミス」の構造を持ちながらも、それが著しく欠けているように思えるのです。読んでいて私が感じたのは、「早く終わらせたい」という作者の欲求、焦りばかりでした。 もうちょっと掘り下げようよ、というところで、いきなり作中人物がメタ視点に立って強引にストーリーを進める。明らかな作者の「天の声」が介入してくるなど、慣れないミステリを書いてみたはいいが、どうにもうまくいかなくてさっさと幕を引きたがっている。そんなふうに読めてなりませんでした。 というわけで、ミステリとしては高い評価はできない本作ですが、作者がどう思おうが登場するキャラクター、設定の魅力はかなりのものがあります。昨今の「キャラミス」が束になってかかってきても到底太刀打ちできないほどのものです。 このキャラクターたちを使って、まだまだ続編を書けたはずですが、潔くそうはしなかったところも、昨今の「キャラミス」とは一線を画するところでしょう。 |
No.26 | 6点 | 虫暮部 | |
(2017/03/06 09:43登録) 作者はもともと本職のミステリ作家ではないことを逆手にとってミステリの持つ形式主義に対する批評を行っている。これを読むと、所謂バカミスにはもっと批評的な作品があっても良い気がするが、私が知らないだけだろうか。 ところで「密室の富豪刑事」。部屋を炎上させるトリックはあるものの、被害者をその場に束縛する手立てが講じられていないのはおかしい。 |
No.25 | 6点 | いいちこ | |
(2015/06/08 16:11登録) 刑事が富豪だったらというワンアイデアでありながら、エンタテインメントとしてさすがの完成度。 伝統的なミステリを揶揄するかのような作風、変幻自在のプロット、適度なボリュームで読者を飽きさせない展開は見事 |
No.24 | 7点 | TON2 | |
(2012/11/12 13:24登録) 新潮文庫 キャデラックを乗り回し、最高のハバナ葉巻をくゆらせた富豪刑事こと神戸大介の活躍です。 この作品はミステリーとしての基本をおさえたきっちりとしたものということですが、トリック等に目新しいものはありません。 それよりもキャラ小説として読むと、非常に面白いです。 あくどく金儲けをしてきた大介の父親が、大介が捜査のためにふんだんに金を使うと、贖罪になると、息子は天使だと言って泣きながら、毎回呼吸困難の発作を起こすというところはたまらなく笑えました。 またこの作者らしい毒も含まれていて、「ブルジョアの娘に失恋したために立派な共産党員になれたってやつは意外に多いんだよ。」というくだりには、大笑いしました。 |
No.23 | 8点 | E-BANKER | |
(2012/02/20 22:36登録) 大富豪の一人息子・神戸大介刑事を主人公とした短編集。 ミステリーをいい意味で皮肉った軽いノリが何とも言えない・・・ ①「富豪刑事の囮」=ある事件の容疑者4人から真犯人を絞り込むために、神戸刑事が取った大富豪にしかできない「囮作戦(!)」 結局誰が犯人かなんてどうでもいい! とにかく鈴江さんが異常なまでに魅力的。 ②「密室の富豪刑事」=一応、殺人現場が「密室」のように思える現場って・・・なんてミステリーっぽいんだ!! 神戸刑事は謎を解くために、事件現場と同じような建物をもう1つ建ててしまう。同僚の刑事たちも実に魅力的にドタバタする。 ③「富豪刑事のスティング」=誘拐事件がテーマ。身代金が支払えない被害者家族に代わって、神戸刑事が身代金を立替えることに。 本作では「小説中における時間の連続性を捻じ曲げる」というプロットが堂々と展開される・・・実に面白い。 ④「ホテルの富豪刑事」=市内に2つの暴力団勢力が集結し、神戸刑事が所属する警察署が厳戒態勢を敷く。警備がしやすいようにと神戸刑事が取った手段は、ホテルの全部屋をまるごと予約するというもの・・・。そして発生する銃殺事件。まぁ、真相そのものは何ということもないんですけど。 以上4編。 いやぁ、とにかく面白い。さすが筒井康隆です。 ミステリー云々とかいうレベルではなくって、エンタメ小説として秀逸。 神戸刑事や鈴江さん以外のキャラ、父親や同僚の刑事たち・・・面白すぎ! とにかく笑いたい方にはお勧め。 (①~④までどれもが滅法面白い。) |
No.22 | 8点 | ようじろう | |
(2012/02/16 17:17登録) ロートレック荘の出来に感心して、巨匠のもう一つのミステリ作品を読んでみた。それがこれ。 テンポもよく、筒井康隆らしいメタ的な部分に迫るところもあって、まったく楽しめた。 しかし驚くほどのトリックはなかったので、そこでマイナスといったところか。 |
No.21 | 6点 | haruka | |
(2011/04/30 00:31登録) 馬鹿馬鹿しくて面白い。 |
No.20 | 2点 | ムラ | |
(2011/02/03 01:36登録) 設定は面白いから映像向きだよな、と思ってたら本当にドラマ化してびっくり。 小説だと無駄に長い説明の所が読んでいてかったるい。オチの分かる説明とだらっだらとされても困る。 一番最初はサクサク進んで面白かったけど、後は無駄にミステリしようとしてたため中だるみ。(このサイトでそういう事を言うのもあれだけど) キャラが面白いからトリックよりもそっちをもっと出してほしかった。 |
No.19 | 6点 | kanamori | |
(2010/08/01 16:38登録) 大富豪の息子・神戸大助刑事シリーズの連作短編集。 収録作4編のテーマにバラエテイを持たせてミステリの軽いパロデイが楽しめる。 たとえば「密室の富豪刑事」で探偵が読者に向き直り読者への挑戦を語りかけるシーンはアレを連想させる。 作者が気楽に書いて、読者が気楽に読める連作ミステリ。 |
No.18 | 5点 | 江守森江 | |
(2010/03/09 11:08登録) 先日、ベランダ改修工事の都合で物置を撤去した。 中にあった段ボール箱の詰め替え時(廃棄&トランク・ルームに仕訳)にドラマ作品(深田恭子が可愛い)を録画したテープが出てきた。 早速観て、図書館に出向き原作もおさらいした。 主人公が男だった。 正統派な解決方法をおちょくったアンチ・ミステリーだと思って読んだので楽しかった。 ミステリーに軸足を置いた作家に、こんな作品は書けない事を踏まえて書いてしまう辺り作者は凄い。 |
No.17 | 7点 | itokin | |
(2010/01/12 09:07登録) 喜劇、ドタバタ風に書かれた作品だがトリックなど短編にもかかわらずつじつまの合う書き方がされている。一言で言うと読んでいて楽しくなる。続編がないのが残念。 |
No.16 | 7点 | シュウ | |
(2008/11/02 16:22登録) 以前虚航船団の難解さにギブアップして以来久しぶりに筒井作品を読みましたが、分かりやすくギャグもブラックさがなく正統派で読みやすかったです。 いかにも筒井康隆的なドタバタ+推理という感じでかなり楽しめました。 こんなに魅力的なキャラばっかりなのにこれ一冊で終わりというのはもったいないなあ。 |
No.15 | 7点 | こう | |
(2008/10/19 02:09登録) 読み物として面白かった覚えがあります。また思いのほかミステリの構成を保っていたのは好感もてました。ミステリとしての評価はともかく読んで楽しむタイプの作品でしょう。 |
No.14 | 6点 | 白い風 | |
(2008/06/30 11:26登録) 推理小説と云うよりマンガかな(笑) でも、富豪神戸親子のキャラは面白いですね。 主人公はドラマでは深キョンでしたが原作は男性でしたね。 4つの短編集でしたが「密室の富豪刑事」が一番面白かったかな。 まっ、このような作品は通常のミステリ作家には絶対書けない気がしますね。 |
No.13 | 5点 | ElderMizuho | |
(2008/02/07 21:11登録) アイデアは面白いが中身は正直微妙 オチが面白くない、というかそもそもオチ自体がない話が多く、富豪刑事と言う設定の妙以外特筆する点が残念ながらなかったです。 読み物としては楽しめなくもないですが、点数を付けるとなると・・ |