水魑の如き沈むもの 刀城言耶シリーズ |
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作家 | 三津田信三 |
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出版日 | 2009年12月 |
平均点 | 6.62点 |
書評数 | 21人 |
No.21 | 5点 | ALFA | |
(2024/04/21 08:29登録) ホラーとミステリーのハイブリッドが謳い文句の刀城シリーズ。 人気作「首無」や「忌名」は凍るようなホラーと緻密な謎解きが融合した傑作で、このサイトでもすでにレジェンド。 長編第5作となる本作品はホラー描写がややマイルド。起こる怪異も、霊感の強い人物による幻視幻聴とも読める。一方のミステリー部分は犯行実現性(フィジビリティ)が弱い。 導入部が刀城とお仲間キャラの怪異談義というのもツカミとしてはぬるい。 一方、主人公たち母子家族の放浪物語は読みごたえがある。 エンディングもいい。大洪水のあとにまるで虹が掛かるようなエピローグは神話的。 ところでこの方言、何だか違和感があるんだが。 |
No.20 | 10点 | 密室とアリバイ | |
(2023/05/02 15:09登録) 刀城言耶シリーズの中では4番目に好きかな 忌名と首無が強すぎてそこまで評価されてないのがもったいない |
No.19 | 6点 | メルカトル | |
(2022/09/19 22:21登録) 奈良の山奥、波美地方の“水魑様”を祀る四つの村で、数年ぶりに風変わりな雨乞いの儀式が行われる。儀式の日、この地を訪れていた刀城言耶の眼前で起こる不可能犯罪。今、神男連続殺人の幕が切って落とされた。ホラーとミステリの見事な融合。シリーズ集大成と言える第10回本格ミステリ大賞に輝く第五長編。 『BOOK』データベースより。 殺人が始まる後半よりもそこに至るまでの経緯の方が面白いと感じました。特に正一と二人の姉、そしてその母の物語は何とも言えない切なさや遣る瀬無さを強調しており、これだけでも一つの小説が出来そうです。 メインの殺人事件は湖の密室とも呼べるもので、相変わらずの怪奇色を帯び乍ら不可能犯罪として扱われています。一見複雑に思える連続殺人事件と過去の事件は、構造は比較的単純で分かり易いものです。さらに言耶が謎のポイントを一々事細かに挙げていますので、その意味でも読者に優しい作りと言えそうです。それら全ての謎が解かれている訳ではありません。まあそれは左程問題ではないと思いますが。 個人的には犯人の正体は謎解きが始まって直ぐに目星が付きました。やはりそうだよなと思っていたら・・・やられました。流石に一筋縄では行かない様で。 |
No.18 | 7点 | じきる | |
(2021/01/25 01:58登録) 説明パートが多いにもかかわらず、初期作と比較するとリーダビリティーはぐっと向上しており、すいすい読ませる。 ミステリとしてはかなり強引な解決だが、それを補える程舞台設定・ストーリーが魅力的で非常に楽しめた。 |
No.17 | 7点 | ボナンザ | |
(2020/12/20 14:06登録) 長さの割にメインの謎は一つだが、中々その解釈が三津田らしく凝っていて面白い。 ラストのハッピーエンドは珍しいですね。 |
No.16 | 8点 | 雪の日 | |
(2020/04/14 16:08登録) シリーズ初期に比べて読みやすくなっていました。 |
No.15 | 5点 | レッドキング | |
(2020/03/30 22:51登録) 「~の如き~もの」シリーズ(長編)第五弾。引田天功水中大魔術トリックと因習ホラーの結合。それまでのシリーズ長編初読時に感じた「こええな」感が薄まっている。この作品以降も、長短何作かこのシリーズ出てるが、おそらく将来、ヴァン・ダインの様に、「厭魅」からここまでの五作が傑作群として括られると思われ。「首無」>「厭魅」≧「山魔」>「凶鳥」≒「水魑」てな作品優劣順位かな。(好きな順は「山魔」>「厭魅」≧「首無」・・だが) ※ところで、畔辺りから現れた大蛇鯰みたいな化物、あれ何だったんだ? |
No.14 | 6点 | 新世紀ミステリー | |
(2019/06/23 05:42登録) 2009年発表。水中脱出トリックを宗教的因習に絡めるアイデアが面白いと思いました。 |
No.13 | 7点 | 青い車 | |
(2016/11/27 23:02登録) 作者の癖(?)である説明パートの重さは正直ちょっと苦手だったのですが、今回は割りと気になりませんでした。シリーズお決まりである、くどいほどの多重解決も読み応え満点です。全体としてリーダビリティが格段に向上しており、730頁の厚さをこれだけの勢いで読ませてくれるのは作者の確かな実力でしょう。ただし、他の方もおっしゃるように、最終的な解決がやや強引に落ち着いてしまったのだけが若干のマイナスポイントでした。最初の水魑様の増儀での殺害トリックはやや説得力を欠いているのが否めません。 |
No.12 | 7点 | 名探偵ジャパン | |
(2015/04/15 11:15登録) シリーズ最長編ということで、「間を置いたら中身を忘れる」と思い、休日を利用して一気に読んだが、初期作に比較して文章が格段に読みやすく、キャラクターも立ってきたこともあり、肩すかし的にすんなり読めた。 相変わらずトリックを設定(謎儀式)に組み入れるのがうまい。他の方の書評の通り、突っ込みどころは多々あるが、好きな作家(キャラクター)のひいき目かなぁ、私はあまり気にならなかった。 毎度おなじみ多重推理も今回は、「切羽詰まって、今ある手掛かりだけで見切り発車的にリアルタイムで考えながら推理を披露するしかない」という状況で説得力を持たせている。 結界、何かを見る力、など、あやふやな解答ではなく、超常的な現象ありきで話が進むようなところは気になったが。 ゲストキャラクター造形もしっかりしており、「がんばれ」と応援したり、「こいつ何だよ」と腹を立てたり、全編に渡って楽しめた。そして、数々の事件を経て成長した名探偵刀城言耶の頼もしさはどうだ。 全ての謎は明らかにされ、最後はハッピーエンド。これぞ本格ミステリエンタテインメントだ。 |
No.11 | 6点 | のりまき | |
(2014/04/08 21:20登録) ネタバレだらけ 一気に読めましたが、いかがなものかと思うところも色々ありました。 オカルト描写はいいと思いました。特に子どもから見た「なにか」がとっても得体が知れなくていい感じ。 ですが、水魑様をめぐる宮司達は世間的な面から書かれることがほとんどで、りゅーまや龍吉朗の言う「本来」が描かれないまま龍璽の「工夫」ばかり展開されるので、最後の大洪水=水魑様の怒りのこわさが宙ぶらりんになってしまいました。 ミステリーとしては無理矢理すぎるでしょう。他の方もおっしゃるように、一服盛られているのに偶然脱出できてすぐ水中からあんな武器ではムリ、ピストルの扱いどこでおぼえたの?なぜ次々殺すの?等々。策に溺れて辻褄合わせでやっつけた感があります。 |
No.10 | 6点 | 白い風 | |
(2014/01/09 20:23登録) シリーズ物なので安心して読めましたね。 戦後直後のまだ古き慣習の残る山村での連続殺人事件は大好きな横溝作品の雰囲気が似ていて楽しめました。 ラストの万城が二転三転する謎解きも面白いですね。 ただ、湖での密室(?)殺人の実現性やその他の連続殺人の動機などには?が付きましたが・・・。 |
No.9 | 6点 | E-BANKER | |
(2013/07/17 22:27登録) ホラーとミステリーを融合させた人気シリーズ・刀城言耶シリーズの第五長編。 三年連続のノミネートのすえ、(やっと)受賞の日の目を見た「第十回本格ミステリ大賞」受賞作。 ~奈良県の山奥、波美(はみ)地方の“水魑様”を祀る四つの村で、数年ぶりに風変わりな雨乞いの儀式が行われることになった。儀式の当日、この地を訪れていた刀城言耶の目の前で起こる不可思議な犯罪。今、神男(かみおとこ)連続殺人の幕が切って落とされた。ホラーとミステリーの見事な融合で、シリーズ集大成と言える本作!~ いやぁー長かったなぁ。さすがにシリーズ最“長”編だけはある。 ただ、どうしてもこれまでのシリーズ作品との比較では、満足感で今一歩(二歩)という印象が強く残った。 そう感じた方も多いのではないか?(そうでもない?) 刀城言耶の事件解明の章では、本シリーズらしい犯人絞込みのロジックは健在だし(特に本作は「犯人足り得る七つの条件」が読者に示されるなど、本格好きには堪らないサービス・・・)、その後もドンデン返しに次ぐドンデン返しで、怒涛のように迎えるラスト、そして、その驚愕のラストを支える前半の精緻な設定の数々・・・ こういう点では、確かに相変わらず高いクオリティだなと思う。 ホラーテイスト云々というのは、最初から殆ど気にしていないのだが、本作の「水魑様」に関しては、その半端ない作り込みに敬意を評したくなった。 (村の起こりや左霧母娘の設定なども含めて、下調べの苦労が偲ばれる) でもなぁ・・・今回はそれにも増してモヤモヤ感が残ってしまったという印象なのだ。その理由を列挙するなら、 ①真犯人の動機・・・特に「連続」しておこす必要性。神器との絡みなのかもしれないが、説明不足に見える ②一つ目蔵の秘密・・・結局、“○”という一言で片付けられたが、時代性を勘案してもかなり荒唐無稽に見える ③フーダニット・・・クローズドサークルものの宿命かもしれないが、かなり唐突感あり(潜水服について偶然○いていた、などはやはりご都合主義だろう) なによりも、(これは言葉では表しにくいのだが)、今回はホラーテイストの設定と、ミステリーがそれほど有機的に結びついていない、ということに尽きるのだと思う。 まぁ、これは期待の高さの裏返しということだし、他作家よりも高いハードルを課されている作者もツライところだろう。 評点としては、どうしてもシリーズ他作品との比較になっちゃうよなぁ・・・ (相対評価になっちゃうのはシリーズものの宿命かな。このままいくと、本シリーズの山はやっぱり「首無」「山魔」ということに落ち着くのだろう) |
No.8 | 8点 | ミステリ初心者 | |
(2012/05/28 16:14登録) ネタバレあります。 個人的には、はじめにの使い方が、このシリーズ中一番好き。途中で気づいたときにはニヤリとします。ヒントでもトリックでもなくミスリードです。これだけでもかなり評価が上がっています。 探偵の仮説と否定の部分がヒントになっているところも面白いです。 容疑者の選び方にロジックが多く入っているため、その点では首無より好きです。犯人の凶器の選び方、殺意が芽生えたのはいつか、潜水服?周辺の状態なと最高です。 ラストはさわやかでいいんじゃないでしょうか。そうでなくてもいいけど。 嫌いな点は、犯人にそれができたか? 特殊訓練を受けているように見えます。偶然も味方しているような気がします。 ホラーでみると、明らかに他の長編に劣ります。ややギャグよりになってます。人間の気持ち悪さは楽しめると思います。 全体的に好みな作品なので、甘目かもしれません。 |
No.7 | 7点 | mozart | |
(2011/07/01 15:08登録) これまで読んだ「~の如き・・・」シリーズ長編の中では一番読みやすかったと思う。「ホラー」色は随分少ないけれど、最後の方で「謎」の列挙と「誤解答」の提示、そしてその「否定」の連続というパターンはいつも通り。後半、小夜子の身を案じながら読んでいたので、最後は安堵、かな。 |
No.6 | 7点 | 好兵衛 | |
(2011/06/14 01:36登録) 言耶シリーズも増えてきましたね。 新書しかない作品の、文庫版も作っていただきたいな。 あと、地図を追加してほしいですね。 今回もサービス精神は満点。 読みやすさも巻をおうごとに、読みやすい。 だが、怖くない。ノリが、軽い。 一番のトリックが好みではない。 その解答を聞くと可笑しくなってしまう。 しかし、ミスリードや、物語全体の仕掛けなどが とても面白かった。 あらゆる方向から読者をミスリードさせようという 作者に拍手。 ****ここからネタバレ**** 恒例の「はじめに」の使い方が面白い。 シリーズを読んできた読者をはめる気、満々。 足跡の一点ロジックは大好きです。 竹林の結界のように本当に怪奇現象的な作用が起きるのは 本格色強めだけあって、すこし嫌です。 |
No.5 | 6点 | HORNET | |
(2011/04/03 20:13登録) 三津田作品を読むのはこれで三作目だが,土俗的な雰囲気や因習はびこる山村という,現代離れした設定に自分の目が慣れてきたためか,はじめに読んだ「首なし」よりも読みやすかった。それは「水魑様」をあがめ,「増儀」「減儀」などの儀式によりその統治を願うという仕組みが複雑でなく分かりやすかったということもあるかもしれない。 しかし,読みやすいということは翻れば緻密さに欠けるということかもしれず,確かに「首なし」のような,ドミノが倒れていくように今までの謎が解決されていく怒涛の勢いは感じられなかった。結末がロジックとして完全とは言い切れない感じがあったこともその一因。 とはいえ,多くの登場人物を出しながら,どの人物にも極端な軽重をつけず,誰が真犯人となっても反則な感じがしないのは作者らしいフェアな感じを受ける。本格ミステリとしての名に恥じない,良作であることは間違いない。 |
No.4 | 6点 | touko | |
(2011/04/01 22:21登録) ホラー分少なめ(特に文体)。 おどろおどろしくしすぎると売れないかららしいけど、切羽詰った状況でも軽くて暢気な人々の描写にイライラ。その中間くらいには出来ないのかしらん……。 |
No.3 | 7点 | makomako | |
(2011/01/16 09:44登録) 民話とミステリーのおどろおどろしい合体は今回も健在で、このぶんについてはとても楽しめた。謎も多彩で刀城が最後のほうで多くの謎を整理して呈示して最終的にすべてを解くというミステリーのお決まりもかたちとしてはきちんとしているようにみえる。 ところがその解決の過程にいたっては探偵は無理な推理を長々とやってくれるし、最後も犯人が分からないままみんなを集めてしまうしとめちゃくちゃなところも目立つ。 以下ネタバレのところがあります。 旧帝国海軍の潜水具が見つかれば女子供でも装着して真っ暗な水中洞窟を潜水していける!。ピストルを手にしたら初めて手にした人が離れたところから連発で命中させて立ち会った人が気づく前に逃走できる!。睡眠薬で寝かされていた子供が起きた瞬間に大人の急所をいっぱつでしとめてしまえる!、など次々と気になるところが出てきてこれが出来るという仮定の下の推理が長々と続き、しかもその多くをまた否定してしまうこととなる。はじめっから無理なことは分かるでしょ。最終的な解決もどうもすっきりしない。 読んで楽しめたかといった点では十分に楽しんだのでそんなに文句をたれてもいけないとも思うが、現在一番期待している作家なのでちょっと言い過ぎかもしれません。次作を期待しています。 |
No.2 | 6点 | おしょわ | |
(2010/01/24 22:31登録) 良くある感想ですが、首無、山魔は落ちるけど凶鳥よりはいい。厭魅とくらべてどっちが上かは意見分かれそうですが、厭魅の方が良かったです。 |