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ミステリの祭典

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新参者
加賀恭一郎シリーズ

作家 東野圭吾
出版日2009年09月
平均点6.70点
書評数33人

No.33 5点 ボナンザ
(2022/10/09 19:29登録)
長編というよりは連作短編集のような内容。本筋に至るまでの引き出しの多さに驚かされる。

No.32 7点 ぷちレコード
(2021/12/23 23:06登録)
正面からではなく、背面や両サイドからの視点を変えることで、「被害者は誰か?」「一体何が起きたのか?」と同時に「なぜ殺されたのか?」「刑事は何をしたいのか?」という謎が多層化した物語。
しかも、八つの断片からなる連作短編集が、最後の一章で一気に長編となり意外な全貌を浮かび上がらせる。物語としても奥深くコクがある技巧派の面目躍如たる作品といえる。

No.31 7点 ʖˋ ၊၂ ਡ
(2021/06/14 16:19登録)
迷路の出口を巡るドアを開き続けるように、事件の真相を探る加賀刑事。しかし、いくら開いても見えないものがあり、それが下町ならではの人情。江戸情緒が残る日本橋を舞台にしたことには大きな意味があるのでしょう。広い世代に好まれるミステリだと思う。

No.30 6点 名探偵ジャパン
(2018/10/19 08:21登録)
ドラマ化もされて有名になり、今さら多くを語る必要のない作品です。
確かにミステリとしては物足りず、とくに「本格ミステリの鬼」と呼ばれるほどのマニアな人たちからは敬遠されがちな作品です。ですが、たまにはこういうものもいいじゃないか、という気持ちにさせられます。
いわゆるマニア受けする本格ミステリが「着色料や添加物でギトギトのジャンクフード」だとしたら、この作品は「大衆食堂の定食」です。とんでもない安定感と安心感があります。

No.29 6点 makomako
(2016/10/30 15:23登録)
 加賀恭一郎は東野氏の作品の中でも好きなキャラクターです。今回も彼らしいというか、彼らし過ぎる展開でした。
 物語の初めは淡々とした感じで、でも作者の巧みな導入でとても面白く読めます。 一章ごとが連作風となっていて、いずれもそれなりの解決を見る。なかなか人情もあって興味深い。どうしてこれが全体の話となるのか心配になるのだが、そこは東野氏で実に巧みに最終結末へと導かれる。
 なるほどね。よくできたお話。でも加賀がこんななんでもないことばかりやっていたのが、全部ストライクというのもできすぎな感じ。勿論そうでないと話としてまとまりがつかないのでありますが。
 ということで一つずつの話はかなり良いのですが、全体としてみるとなんだかこじんまりとまとまってしまった感じがして、私としてはやや評価が低くなりました。

No.28 6点 りゅうぐうのつかい
(2016/07/26 17:28登録)
メインとなる殺人事件は1件だけだが、その捜査の課程を描く中で、聞き取り調査を行った下町の家族内で起こる「日常の謎」をサブストーリーとして織り込んでおり、連作短編のような趣きを持っている作品。
下町の風情や人情が描かれており、加賀はそこで暮らす人々のいざござや悩みに助言を与えるアドバイザーのような役割を担っている。
特に印象に残っているのは、「上着を着ていたかどうか」という些細な違いから真相に気づく「煎餅屋の娘」。
加賀が本事件の結末で見出したのは、壊れているように見えて、失われていなかった家族の絆であり、父親が真に果たすべき役割。
殺人事件の犯人は最後の方にならないと登場しないし、推理の決め手となる事項は後出しで、謎解きの要素は薄く、地道な捜査過程を描いた警察小説。その捜査の課程をつぶさに見ると、被害者がある勘違いをしていることに気づいて洋菓子屋を探し出すなど、加賀の頭の良さには脱帽するしかない。
「事件によって心が傷付けられた人も被害者であり、そういった人を救い出すのも刑事の役目」、「犯人を捕まえるだけでなく、どうしてそんなことが起きたのかを追求する必要があり、それを突き止めないと同じ過ちが繰り返される」という加賀の言葉が重く響いた。

No.27 6点 パメル
(2016/03/18 09:45登録)
誰もが見過ごしてしまうような事を徹底的に調べ
小さな手掛かりを掴んでいく
そして微笑ましいほどの登場人物への心遣い
加賀刑事の素晴らしい人間性を堪能できる
ミステリとしては薄味

No.26 8点 青い車
(2016/01/24 21:51登録)
人々の人情を絡めてストーリーを紡いでいく上手さに東野さんの筆力を感じます。ミステリーとしては小粒なものの後味のいい終わり方も手伝って、「面白かった」と素直に言える作品です。ぼくの好物はガチガチの本格ものですが、人に薦めるならこういう作品ですね。数年前やっていた連続ドラマが無性に観たくなりました。

No.25 7点 風桜青紫
(2016/01/15 03:16登録)
うーむ、上手い。このような日常ミステリの形式でも下町情緒を演出できるのは、東野圭吾の筆力と取材力の高さがあってこそだろう。しかし何よりも目を引くのはストーリーの構成。章が進むごとに、少しずつ被害者の動きを追うことができ、それが各章に妙なリーダビリティを生み出している。それを追う加賀さんのキャラクター性(飄々としたかっこいいおっさん)もまた絶妙で、それが本作をただの「下町を舞台にした短編集」にとどまらない面白さの作品として成立させている。おそらく現時点では東野圭吾のアイデアと技術が惜しみなく発揮された最後の作品。

No.24 9点 Tetchy
(2015/11/06 23:31登録)
日本橋署に赴任したばかりの加賀が携わるのは小伝馬町で起きた1人暮らしの女性の殺人事件。その捜査過程で彼は被害者三井峯子の遺留品を手掛かりに捜査を進めていくのだが、彼が訪れる先々ではそれぞれがそれぞれの問題を抱えており、加賀はそれらに対しても対処していく。その問題は市井の人々ならば誰しもが抱える問題で、いわばこれらは殺人事件が起きない日常の謎なのだ。つまり殺人事件の謎を主軸に加賀恭一郎は日常の謎を解き明かしていくのだ。

各章で明かされる各家庭が抱える秘密や問題は我々市井の人間にとって非常に身近で個人的な問題だ。そんな些末な、しかし当事者にとってはそれらはなかなか深刻な問題である。普通に暮らしている人々の笑顔の裏には誰もがこのような問題を抱えている。それは表向きは当事者以外にしか解らない。従ってその問題がひょんなことで表出した時に謎が生まれる。そんな謎を加賀は細やかな観察眼と明晰な推理力で解き明かす。それらは家族の中でも一部の人間しか知らされていない、実に人間らしい家庭の秘密である。

全てが明かされると、この世界は人間の優しさや人情で出来ているのだと温かい気持ちになるから不思議だ。

特筆なのはこの事件を通してシリーズキャラクターとして読者にはお馴染みである加賀恭一郎の人となりが今まで以上に鮮明に浮き上がってくることだ。
日本橋署に赴任したばかりの一介の刑事が人と人の間を練り歩き、事件とは関係のない謎を解き明かすことで1人の人間の死が及ぼしたそれぞれの小さな事件を知り、1つの大きな絵が見えてくる。それを飄々とした態度で、明晰な観察眼と頭脳で解き明かす加賀の優秀さ、いや清々しさがじんわりと読者の心に満ちてくるのだ。
特に第7章で被害者の元夫である清瀬直弘と対峙した時に加賀が清瀬に告げた家族の力の強さは、以前の加賀からは決して出なかった台詞だろう。これはやはり長年確執があった父の死を超えた加賀だからこそ云えた言葉だった。
本書は家族への愛を色んな形と角度から描いたミステリだ。人の心こそミステリだと宣言した東野氏がこんなにも心地よい物語を紡いだのは一つの到達点だろう。

No.23 7点 斎藤警部
(2015/07/23 19:02登録)
「日常の謎」の連作短篇群、かと思うと前の話と次の話が連関していたりする、かと思っていると最後に。。 こりゃちょいとヤラレました。

泣ける場面も結構登場、爽やかで深みのある一冊。 君に、読んで欲しいんだ。。(誰だよ)

No.22 7点 いいちこ
(2015/07/21 17:51登録)
ミステリとしての核は小さいものの、舞台設定も含めた構想力の高さと、ストーリーテリングの妙が際立っている。
後半の短編はやや見劣りするが、作品全体として高水準を維持しているのは間違いない。
しかし、著者の力量の高さを認めるが故に、グリグリの本格で勝負してもらいたい気持ちは強い。

No.21 6点 itokin
(2015/02/06 13:55登録)
殺人事件が起きた東京下町でそれにかかわってくる人たちの暮らし、感情等を表した短編作品集で刑事加賀の性格がよく表現されてます。しかし、さらっとは読めますがそれぞれが心に残らないものたりさがありました。

No.20 7点 sophia
(2014/04/13 17:06登録)
このミス1位だったので読みましたが、ちょっと期待外れでした。こういう各章リンク系には「白夜行」という超大作があるので、それに比べるとどうしても小ぢんまりとした印象になってしまいます。

No.19 6点 E-BANKER
(2013/10/08 21:14登録)
前作「赤い指」から数年、日本橋署へ異動となった加賀刑事が活躍するシリーズ作品。
東京・小伝馬町で起きたある殺人事件。その関係者ひとりひとりにスポットライトを当てていく連作短編集。

①「煎餅屋の娘」=物語の始まりは人形町の煎餅屋さんから。実母を亡くし祖母を慕う娘と、その娘を大切に思う父親。ちょっとしたボタンのかけ違えのような謎をやさしく解き明かす加賀・・・。いい話系。
②「料亭の小僧」=今どき珍しい存在だよ・・・“小僧さん”なんて。下町の老舗料亭を切り盛りする女将とだらしない主人。いかにもドラマのようなストーリー。
③「瀬戸物屋の嫁」=まさに嫁姑問題を抱える家庭。一見いがみ合っている嫁姑だが、男にはよく分からない絆みたいなものがあるようで・・・
④「時計屋の犬」=気難しい職人肌の時計屋。かせぎのない男性と駆け落ち同然に結婚した娘を勘当したのだが・・・やっぱり親娘の絆ってやつは強固なんだよね。
⑤「洋菓子屋の店員」=これは本作のターニングポイントと言ってもいい一編。被害者となった女性が足繁く通っていた洋菓子店とお気に入りの店員。そこには当然理由があった・・・
⑥「翻訳家の友」=殺された女性の友人で翻訳家。離婚して翻訳業の道に引き込んだはずが、その本人が結婚&海外移住することになり・・・
⑦「清掃屋の社長」=今までの流れからやや離れたストーリーが展開される本編。新たに登場する人物たちが、実は殺人事件に大いに関係することになるのだが・・・。そろそろまとめに入ったな。
⑧「民芸品屋の客」=最終段階になってなんでこんな話を盛り込んできたのか? まぁ「凶器」の問題なのは間違いないが。
⑨「日本橋の刑事」=いよいよ解決編。加賀が殺人事件の謎を見事解き明かすわけだが、多分最初から分かってたんじゃないの? ラストもいい話に。

以上9編。
何だかとっても「いい話」です。日本橋・人形町という江戸情緒・江戸文化が生き残る街をまるで「ぶらり途中下車」のように加賀が歩き、人々と接していく・・・。
今まで割とシリアスな展開の多かった本シリーズとは明らかに一線を画した作品に仕上がってます。
まぁうまいよねぇ・・・。言うまでもないことですが、抜群のリーダビリテイです。

加賀のキャラってこんなだっけ? という気がしないでもないですが、読んで損のない作品でしょう。
ただ、今までのシリーズ作品より高評価はしにくいかな。

No.18 4点 kowai
(2013/08/17 13:32登録)
すらすら読める家族ドラマでした。ミステリではないので、それ以上でもそれ以下でもありません。

No.17 8点 ドクターマッコい
(2013/06/07 10:27登録)
個別の章が徐々に一つの物語を構成する。

独立した章もいい話のオンパレード。思わず舌を巻く上手さです。

No.16 6点 touko
(2012/08/03 21:24登録)
東京下町を舞台にした連作短編集。

下町に赴任してきた加賀刑事が、下町情緒溢れる店を訪れ、老若男女に聞き込みを続けるサイドストーリーを通して、メインの事件の犯人が浮き上がってくるという趣向。

ミステリとしては弱いんですが、現代の風俗描写をきっちり押さえながらも、リアリティのある下町の人情話として成立させているところに、うまさを感じました。

ドラマ化慣れしているせいかもしれませんが、現実にはほとんど使われない、書き言葉特有の女言葉(~わ)や老人言葉(地方人でもないのに、わし~じゃ)を使わないでも、ちゃんと女性や老人が喋っているとはっきりわかるところに、何より作者の筆力を感じたりして(笑)。

No.15 7点 bookmaker
(2012/05/28 09:40登録)
サイドストーリーに比べてメインの謎がもうひとつの様な気がします。無理に連作を絡めずに単純に日常の謎的な短編集にした方がすっきりしたのではと思います。(話が成立しなくなる恐れはありますが。)
加賀刑事の設定が初期のイメージと変わってきている様に感じられるのは気のせいでしょうか?

No.14 7点 Q-1
(2012/05/27 23:52登録)
小伝馬町のマンションで起きた殺人事件の物的証拠や状況証拠を各章ごとに紐解いていく構成は退屈せずに読めます。
ただ、章を追うごとに容疑者が消えてゆき、
真犯人にたどり着くための決定的な章もかなり後半なので、
殺人事件の犯人を当てるという意味ではあまり楽しめないかもしれません。

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