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ミステリの祭典

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ブルーローズは眠らない
マリア・ソールズベリー&九条漣

作家 市川憂人
出版日2017年09月
平均点6.94点
書評数16人

No.16 7点 mozart
(2023/07/23 17:46登録)
一作目と比べて格段に面白かったです。密室状態での凄惨な事件とかいったシチュエーションも自分好み(?)だったし。過去と現在の行き来もワクワク感があって前作ほど気になりませんでした。トリックや謎解きは(マニアには物足りないのかも知れませんが)自分のレベルでは十分堪能できました。

No.15 8点 みりん
(2023/05/22 21:26登録)
「ジェリーフィッシュは凍らない」に続くシリーズ第二弾(シリーズの名称あるのかな?)
前回と違って遺伝子工学がメイン。理系ミステリィの系譜嬉しい。
今回も前作と同様にミステリとしては相当練られていて満足度が高かった。

このシリーズもっと読みたいのですが、今後タイトルの制約に縛られないか不安です。

No.14 7点 suzuka
(2022/10/12 00:21登録)
バラによって作られた密室のロジックが結構緻密で、なおかつ大胆なトリックも用いられており、謎解きの部分はかなり楽しませていただきました。
ただ、犯人の動機を中心とした物語の部分が、謎解きのために犠牲になっている感もあったので、その点が少し惜しいと思いました。

No.13 7点 メルカトル
(2021/12/26 22:49登録)
ジェリーフィッシュ事件後、閑職に回されたフラッグスタッフ署の刑事・マリアと漣。ふたりは不可能と言われた青いバラを同時期に作出したという、テニエル博士とクリーヴランド牧師を捜査することに。ところが両者と面談したのち、施錠されバラの蔓が壁と窓を覆った密室状態の温室の中で、切断された首が見つかり…。『ジェリーフィッシュは凍らない』に続くシリーズ第二弾!  
『BOOK』データベースより。

本作は構成の妙の勝利でしょうね。薔薇の密室の中で発見された首と拘束された被害者の助手。この事件には多分に奇妙な要素があり、非常に惹き付けられる魅力を有しています。その後見つかる他の場所に埋められた首なし死体、謎又謎にトリック云々よりもどうしてこんな事になってしまったのかが気になって仕方ありません。犯人の狙いは一体どこにあるのか、動機は?二人が完成させた青い薔薇はどう関係しているのかなど、頭の中に?が一杯になりそうなところに、またしても新たなる殺人事件が起こり、何が何だか分からないまま読み進める事になりました。それは悪い意味ではなく、パズラーとしての妙味が存分に味わえる訳なのです。

ただ個人的に動機が弱い、と云うか何故そんな事をと思ってしまいました。その意味でやや残念な気持ちはあります。それでもよくこんな事を考え付いたものだと感心することしきりです。新本格を意識したのかも知れませんが、それよりも正統派の本格ミステリと呼んだ方が適当だと思います。うーん、でも真相は正統派とは呼べないですかね、相当ぶっ飛んでますから。

No.12 7点 ミステリ初心者
(2021/07/01 20:28登録)
ネタバレをしています。

 前作に引き続き、魅力的で読みやすい本です。
 マリアと漣の掛け合いやキャラクター、サイエンスフィクション(ノンフィクション?花万博でみた薔薇は、白っぽい青紫のカーネーションのようでしたが、結構昔なんで今はどうなっているのか)、密室殺人事件、サスペンス性のある過去の事件。非常に多くの要素を含んでいる本ですが、テンポもよく読者の理解もスムーズになるように書かれています。
 前作、ジェリーフィッシュより格段に読みやすさを感じました。私が苦手な科学的な話も、面白く読むことができました。

 密室殺人事件についてですが、これもポイントが高いです。
 犯人(ここではエリックとアイリス)が自分を有利にするために、自分の狙いを持って、偶然や幸運の要素が一切ない状態で作られた密室です。この密室を成立させるためには、共犯でないといけないし、殺人事件と思われたものが他人の手を借りた自殺なければならず、それは私の好みではありませんでした。とはいえ、真っ向から密室に挑んでいる作者には好感が持てましたし、トリックも渋めで好みでした(笑)。
 共犯とはいえ、非常に作りこまれたトリックであり、おどろきと感動(?)を味わえました。
 槇野茜殺しと、クリーブランド襲撃が、警察の犯行なのも好みではありませんでしたが、そこまでルールがガチガチなフーダニットではないので、まあいいでしょう(笑)。

 次に、いくつかの叙述トリックとドンデン返しがありました。
 過去の事件と現在の事件が大きく異なっていて、おそらくは日記に書かれている日にちよりもずっと昔だろうことは私にも気づけましたが、他のことはさっぱりでした。またもや、性別詐称トリックに引っかかってしまいました(笑)。女性にフランキーって名前つけるんですかね(笑)。
 
 密室事件、叙述トリック、過去の事件と現在の事件、そのすべてが、ラストのドンデン返しと、物語全体の悲しい復讐劇につながっております。こういった本はなかなか希少だと思います。
 密室やアリバイトリックを楽しむ本は、プロットに無理がある本が多いように思えるし、プロット重視の作品は小粒な叙述トリックのみで終わってしまって本格推理小説として物足りなかったり…。本作品は、そのどちらもおろそかになってないと思います。
 救いのあるラストもいいですね。

No.11 7点 ボナンザ
(2021/06/03 23:05登録)
二作目ながら水準を落とさないのはすごい。さりげなくあれを使っているが、衝撃というよりは軽いひねりといった感じだろうか。

No.10 7点 測量ボ-イ
(2021/05/03 18:05登録)
本格度が高く、読後満足感が高い作品。
伏線がうまく回収できているのも良いですね。

不満点を挙げれば、
・登場人物一覧がない(構成上、あえてそうした?)
・事実の時系列表のようなものがない
以上がないので、話し内容をつかみにくかったです。

採点は8点(基礎点)-1点(このわかりにくさ)

No.9 8点 じきる
(2021/03/07 16:10登録)
これは作者のプロット構成力の勝利でしょう。私の嗜好ど真ん中の本格ミステリです。
大胆なトリックを支える伏線の数々が実に巧妙で、それらを活かした解決編は圧巻。青い薔薇を巡る切ないストーリーにも強く惹きこまれました。

No.8 7点 パメル
(2020/11/14 09:55登録)
薔薇はもともと青い色素を持っていないので、自然交配での青い薔薇は不可能と判断されているらしい。この幻の青い薔薇という魅力的なモチーフを巡るミステリ。(この作品を読み進めていくうちに、東野圭吾氏の夢幻花を思い出した。夢幻花では黄色いアサガオ...アサガオは黄色を出すのが難しいらしい)
遺伝子編集技術を用いて青い薔薇の作出に成功したと発表したフランキー・テニエル教授が殺された。現場は教授の別宅の裏庭に建てられた温室の中。発見当時、温室の扉・窓など全て内側から施錠されており、そこに教授の首だけが転がっていた。
前作で知り合ったドミニク刑事から、マリアと漣の刑事コンビに捜査依頼が入る。ストーリーは2つの視点から語られる。マリアと漣のパートと並行して一人の少年の手記が綴られていく。
メイントリックは温室の密室に関するものだが、これは単に密室をひとつ作るだけにとどまらず、他のトリックとも密接に絡み合っている。丹念な捜査と緻密のロジックで事件の構図が露になり、予想外の真相が明らかになり驚かされる。捜査シーンや圧巻の解決編は読み応えあるし、マリアと漣の軽妙なやり取りは楽しい。ハウダニット、ホワイダニット、フーダニットのどれもが楽しめる。
ミステリとしての出来も素晴らしいが、全ての謎が明らかになった時、ひとつのラブストーリーが浮かび上がってくる。ストーリー・テラーとしても達者。
※余談ですが、このシリーズのタイトルは「〇〇は〇〇ない」にこだわっているように思える。どうせなら、トコトンこだわってほしい。

No.7 6点 E-BANKER
(2020/07/12 18:46登録)
処女作「ジェリーフィッシュは凍らない」に続く、”マリア&漣”シリーズの第二弾。
前作は「十角館の殺人」への対抗心を煽るかのような「帯」が鮮烈だったが、今回の「帯」は「バラえ覆われた密室」「縛られた生存者と切断された首」・・・なかなかそそるねぇ
2017年の発表。

~両親の虐待に耐え兼ね逃亡した少年は、遺伝子研究を行うテニエル博士の一家に保護される。彼は博士の助手として暮らし始めるが、屋敷に潜む「実験体72号」の不気味な影に怯えていた。一方、ジェリーフィッシュ事件後閑職に回されたマリアと漣は不可能と言われた青いバラを同時期に作出したというテニエル博士とクリーブランド牧師を捜査することになる。ところが両者と面談した後、施錠されたバラの蔓が壁と窓を覆った密室状態の温室の中で切断された首が見つかり・・・~

「甦った」新本格という感覚である。
前作はあの「十角館の殺人」へのオマージュ全開だったが、今回は何だろう? 令和に移った現代にも拘らず、テーマは「密室」、そして「首切り」である。
これも作者の本格愛の賜物なのかもしれない。

で、本題なのだが、正直なところ、「密室」も「首切り」もメインテーマではなく、作者が用意した(或いは書きたかった)大いなる「欺瞞」のための些細な道具立てに過ぎない。
この「欺瞞」を成立させるために、細部に繊細なまでに拘り、神経質なほど伏線が張られている。
これが本作の「良さ」であると同時に、「弱み」になっているように思う。

確かに最後、うまい具合にパズルのピースは埋まったんだけど、どうもピッタリ嵌まってなくてグラグラしている、とでも表現すればよいのだろうか。
他の方も書かれてるけど、動機は首肯するもののこんな遠大なやり方でやる意味がどうにも弱いし、二人目の犠牲者を殺害する意味は甚だ脆弱だし・・・
あとは最初から「人の入れ〇〇り」が明白なことがなぁ。

などと辛口の書評をすればいくらでも瑕疵が浮かんできてしまうが、決して嫌いではないのだ。
「新本格」ドストライク世代の私。昔はこんなミステリーをワクワクしながら読んだもんです。そんなノスタルジーに浸らせてくれるシリーズ。是非とも続けていただきたい。

No.6 5点 蟷螂の斧
(2018/12/28 20:36登録)
謎が次々と提示されるので、前の謎をすぐに忘れてしまいます(苦笑)。フー、ホワイ、ハウダニットとサービスのてんこ盛りですね。動機、密室、○○殺人、時間軸・人物に係るトリックなどと欲張り過ぎ?の感も。結局、何がメインなのか、的を絞れないままの読書となってしまいました。なお、○○アレルギーがあり、他作品の評価と同様に減点となりました。

No.5 7点 HORNET
(2018/09/29 13:18登録)
 幻の青いバラがついに開発されたという驚きのニュース。しかしそれは、学者のテニエル博士と、教会牧師・クリーヴランドの二者から、それぞれほぼ同時期になされるという異例の事態だった。
マリアと漣は、P署の刑事から2人を調査してほしいと依頼を受ける。しかし両者への面談直後、密室となった温室内でテニエル博士の切断された首が発見され、現場には「実験体七十二号がお前を見ている」という血文字が残されていた。

 シリーズ第2弾の本作だが、密室、バラバラ死体など本格の匂いが存分に感じられる中、マリアと漣の間の抜けたやりとりがそれを中和させ、本格的な謎解きに没頭できる。
 面白かった。

No.4 7点 虫暮部
(2018/08/29 10:10登録)
 何を以て復讐の成就と見做すか、は当事者の胸三寸次第と言う側面があるわけで、ひとおもいに殺しては復讐にならないと言われればハイそうですかと受け入れるしかないけれど、本書の犯人の行動はあまりにも迂遠に感じる。そのへんの設定をもう少し詰めて欲しかった。

No.3 7点 まさむね
(2018/06/24 19:06登録)
 鮎川賞受賞作「ジェリーフィッシュは凍らない」に続く、シリーズ第2弾。
 二つのストーリーが交互に語られるスタイルの、正統派本格作品。トリック・プロットともに実に良く考えられています。色彩的な要素の絡ませ方にも好感。
 一方、犯人として、目的を果たしたいのであれば、自分以外の第三者を巻き込まない、さらに安全で効果的な手法があったのではないか…との疑問が残ったのも事実ですね。

No.2 7点 人並由真
(2017/10/09 12:47登録)
(ネタバレなし)
 前作以上に怒涛のごとき合わせ技で攻めまくる一冊で、作者のミステリ愛がひしひしと伝わってくる快作。
 中盤の『エリアンダー・Mの犯罪』を想起させる文書の謎は「まあそれ以外ないよね」という解法だが、しかし読者がひとつかふたつネタを見破ったところで総体としては揺るぎもしない正統派&技巧派パズラーの迫力。これはたっぷり堪能した。
 殺人の意外な構図や、「なぜ事件に巻き込まれたと思しき関係者を殺人現場で犯人はギリギリ縛り上げたか」の謎解きにもニヤリ。 
 ただし後半である大ネタがわかってからは、それについての描写で<神(作者)の恣意が入り過ぎた作法>に摩擦感を覚えないでもないが、ここはグレイゾーンか。そんなのは、この作品に限った問題ではないし。
 いずれにしろ次作も楽しみな作家とシリーズではあります。

No.1 7点 はっすー
(2017/10/07 18:57登録)
去年話題を呼んだ鮎川哲也賞の『ジェリーフィッシュは凍らない』の続編
『ジェリーフィッシュは凍らない』ほどでは無いものの見事な反転がありその反転が密室トリックに繋がっていて流石の一言
他にも犯人を特定する伏線もよく張られていて力作となっています
ただトリックの使い方は上手いものの印象的なトリックが無いのと容疑者の少なさが玉に瑕でした

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