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人並由真さん
平均点: 6.35点 書評数: 2244件

プロフィール高評価と近い人書評おすすめ

No.2224 7点 幽霊の死- マージェリー・アリンガム 2025/06/15 08:47
(ネタバレなし)
 1930年。英国のリトル・ヴェニス。異才の画家として業績を遺した故人ジョン・セバスティアン・ラフカディオ(1845~1912年)を偲ぶレセプション(展示会)が、現在70歳の未亡人で亡き夫の資産を管理するベル主催で開かれた。ラフカディオは死後10年経ったら一年に一枚ずつ公開する(市場に出す)ようにと指示して複数の絵画を腹心の代理人サマンに預けていたが、そのサマンもラフカディオ没後の数年後に死亡。いまはその業務はサマンの弟子筋の美術評論家で、サマンの画廊を継承した40歳のマックス・ファスティアンが引き継いでいた。ベルの邸宅の周辺には、かつて若い頃にラフカディオの常連モデルだった今は老女たちや彼が後見していた後続世代の芸術家、美術分野での技術を教えた使用人などが集い住んでおり、レセプションに招かれた私立探偵アルバート・キャムピオンは彼らとも対面する。だがそんななかで、予期せぬ殺人事件が。

 1934年の英国作品。脇役ポジションをふくめて、アルバート・キャンピオン(本書はキャムピオン表記)登場の第6長編。

 タイトルの意味がよくわからないと空さんのレビューにあるが、なるほどよくわからない。最後まで読んで牽強付会に解釈するなら、故人ラフカディオの(中略)ということか?
 
 なお初期のポケミスは裏表紙にあらすじを載せず、作家の紹介や作品の書誌的な立ち位置を書いて終わることが多い。
 で、本書もそのパターン。しかしどういう話で設定か、事前に簡単に知っておきたいとは思ったので、HMM2013年11月号の「ポケミス60周年記念特大号」を引き寄せ、(この号用に、あるいは以前の同系列の特集の際に)新規に書き下ろされた本作のあらすじを読むと

「リトル・ヴェニスの邸では、世にも奇怪な殺人事件のおきる前日、有名な画家ラフカディオの未亡人ベルと名探偵アルバート・キャンピオンは、亡きラフカディオの奇妙な遺書を読んでいた。遺書には12枚の画を封印しておくから、自分の死後11年めから、毎年1枚ずつ指定通り発表しろと書いてある。そしてその展示会の夜に、ヴィクトリア女王に似た老婦人が来たら、それは変装した私の幽霊だと思え、というのだ! デリケートな描写と円熟した筆致で英探偵小説界の三女傑の一人と目されるアリンガムの代表作。」
 ……とある。

 だが実は、本文を全部読んでも、どこにもそんな
<そしてその展示会の夜に、ヴィクトリア女王に似た老婦人が来たら、それは変装した私の幽霊だと思え、というのだ!>
 ……などという展開など、ありゃしない!(笑・怒)

 どうせHMM編集部が外注のライターかどっかの大学のミステリ研とかのバイトに書かせたあらすじなんだろうが、どこぞのキチ〇イの妄想を文盲ハ〇チの編集部がそのままノーチェックで載せたか、あるいはあまりの安い原稿料に怒ったライターが「どうせ今のHMM編集部じゃ、デタラメ書いてもわからないだろ(笑)」とバカにして大ウソを書き、ミステリにも自社の出版物に対しても愛情も素養もない編集部がまんまとその悪計通りに騙されたか、そのどっちかであろう!? 見よ! この世の地獄がここにある!!

 いや21世紀のミステリマガジンって、2002年にセイヤーズ(&ユースタス)の『箱の中の書類』がポケミスで出た際<今まで創元推理文庫で出ていたセイヤーズがポケミスで出るのは初めて>という主旨の書評をそのまま載せてしまうくらい、本・当・に・ダメだから(涙)。これでもしHMM編集部が、いまもまだその当該のライターに仕事を回していたら爆笑ものだな。

 つーわけで、アホな別途の記述でぶち切れそうになったが、作品の中身そのものは期待以上に面白い。
 解説で乱歩は美術界の内幕ものとして楽しめる、トリックもある、という主旨の本作の魅力を書いているが、殺人トリックはともかく確かに業界ものミステリとしてはよく出来ているし(斯界の関係者の描写をしながら、各美術分野の情報を読者に呈していく叙述が鮮やか)、伏在していて終盤に明かされるとある悪事の方にもちょっと唸らされた。
 ただしまともなフーダニットパズラーというよりは、ひと時代早い英国の先輩作家たちのある種のスリラー的な興趣に繋がっていき、その上でソコがかなり盛り上げてある。アリンガムという作家の資質や軌跡を考えるなら、その作風のグラデーション的な推移のなかで、こういう作品が出てきても至極当然ではあろう、といった感じの内容だ。もちろん詳しい具体的なことはナイショだが。
 第二の殺人の経緯(というか細部)がやや説明不足な気もするが、まあ円盤獣もしくはベガ獣ギリギリ。 

 いずれにしろこれまで読んだアリンガムの作品のなかでは、実のところ筆頭クラスに楽しめた。アリンガムの著作は、本サイトに来てから読んだものが大半だが、再確認してもたぶんこれがイチバン面白かった。個人的にはアリンガムって、当たりはずれのメチャクチャ大きい作家だけどね。

No.2223 7点 四つの終止符- 西村京太郎 2025/06/12 05:52
(ネタバレなし)
 昭和中期の江東区。量産玩具製造会社「北見玩具工場」に勤務する、耳が不自由な19歳の青年・佐々木晋一。彼は2年前から寝たきりの40歳代の母・辰子とともに、貧乏長屋「ハーモニカ長屋」に暮らしていた。工場の側にあるバー「菊」の二人の住み込み女給のうちの片方で20歳の石母田幸子は、さる事情から店の客である晋一に親身だ。バーの女将の坂井キクやもう一人の女給で三十女の松浦時枝は、幸子が晋一に気があるのかと勘繰るが幸子はそれを否定した。やがて彼らの周囲で一人の人物が急死し、警察はその死が他殺らしいとの見方を固めた。

 600冊以上(wikiの現行の記述によると単行本カウントで647冊)の作品を上梓した、国産ミステリ界の巨星・西村京太郎御大の記念すべき第1冊目の著作(1964年作品)。このあと次作『天使の傷痕』(1965年)が乱歩賞を受賞し、出世作となる。

 評者は大昔に古書店で、1973年刊行のサンポウ・ブックス版(出版社「産報」の新書サイズの叢書。現在Amazonにデータ登録なし)の本作を250円で入手。中に徳間の「赤川次郎読本」のチラシが挟まっていたから、1983年以降の入手だろう。
 その時点ですでに『天使の傷痕』は読んでおり、同作のラストの余韻に惹かれていたから、同じ西村初期作品であるこっち『四つの終止符』もそのまま購入後に読めばよさそうなものだが、何しろそのサンポウ・ブックスの裏表紙に書かれたあらすじがかなりヘビーで(今回、評者がまとめたあらすじとは全く別物。サンポウ版のあらすじは、かなり後々の展開まで書いてある・汗)なんとなく敷居の高さを感じてしまい、気が付いたら、今になるまで読まないでいたのだった。

 で、本サイトでも、評者が本作を読むその前までの時点で『天使の傷痕』はレビュー数が9、こっちは2、とかなりの差がある。
 いや乱歩賞受賞作で『天使』の方にアドバンテージがあるのは当然だが、ここまでの書評数の違いが出たのには、やはりもしかして、あまりにシンドそうな真面目な社会派テーマの本作が敬遠されてるのか? と勝手に思ったり(まあ実際のところは知らんけど)。

 いずれにしろ今回、数年前に水上勉の『海の牙』を、作品の存在を知ってからウン十年目に初めて読んだ時のような<この作品にはケイチョウフハクな態度で接してはいかん>的な気構えでページをめくり始めた。いささか大げさだが、まあそんな気分もほぼリアル(本音)。

 で、作品全体を読み終えて、いまだなぜ、作者がここまで真摯な主題の作品を書いたのかは、あとがきの作者の言葉以上には知らない。
 だけど、さすがに作者を見る目は相応に変わった。イヤミや皮肉でなく、真面目な人(作者・の作品)の前では頭を垂れるタイプの読者だから、自分は。

 ミステリとしても適度にトリッキィで面白く(素朴な複数のミスリードの向こうに潜む、やはり武骨な反転の構図がかなり心地よい)、さらに小説そのものが醤油と味噌で味付けした和製ウールリッチみたいなペーソス感でしみじみと情感に染みて来る。ラストのクロージングも、若い頃の作者のセンスというか筆の冴えを感じる(中盤のサブキャラ、室井弁護士センセイの熱弁の真剣さもイイネ)。

>この哀しさは沁みる。 義憤を湛え、ほの暗く静かな空気感で進む、美しい物語。

 まったくもって同感です。斎藤警部さん。

 そんななか、ちょっと雑……とまでは言わんが、ノリで済ませちゃったのかなと思うのは、二人目の主要人物の死亡の状況の描写とか。普通ありえないでしょう? いくら昭和とはいえアレは? 
 まあ細部ではいくつか気になる綻びも目につくものの、全体の熱さと種々のパートの得点ぶりでは十分に、西村初期作品のなかでも佳作の上~秀作の中にはカウントできる出来ではある。

 やっぱ、初期の西村作品はいい。最終的にはトータルとして、一冊単位で読んでよかったという充足感がほぼ必ずどっかにある。 
 今回はこの作品のおかげで、もう少し、人間として悧巧になれればいいな、と本気で思った。

No.2222 5点 ばけてろ 成仏って、したほうがいいですよね?- 十文字青 2025/06/11 11:27
(ネタバレなし)
 巨乳美少女高校生の天然娘・島原千代子は、友人で唯我独尊な性格の巨乳美少女・兎我野(とがの)メルカとともに、母校の大本山高校から徒歩20分の古い大屋敷を訪ねる。屋敷には女子たちと同年代ながら高校に行かない少年・刑天文院景敦(けいてんもんいん かげあつ)だけが、黒猫の「オヤジ」と住んでいた。母校の怪異「首吊り少年の幽霊」に遭遇した千代子は、優れた霊能者と評判の高い景敦に対処を願うが。

 ホラー風味のオカルトコメディ(2~3割ほどシリアス)のラノベ。霊感能力は乏しいくせにオカルトにはマニアックなほどに興味があるツンデレ美少女メルカが、景敦からいやらしい施術を受けると霊感が高まるというお約束の趣向(というか文芸設定)で、話も紙幅の割にさほど広がらない。
 大きなエピソードが2つ、小さなエピソードが1つあり、あとの方でもうひとり変化球のエロいヒロインが出てきて、本当によくある内容のネタだけで一冊もたせた、という気もする。
(アクションホラーとしては特記することはなく、後半は実質、男子の隠し持っていたアダルトソフト発見、きゃー何これ、ネタだし。)
 ただし主人公3人はそれなりに(ラノベキャラとして)魅力があり(景敦との距離感に繊細に気を使うメルカが可愛い)、景敦が背負うつもりになっている、彼自身の宿命についての覚悟も地味に重い。

 本サイトで扱わなくてもいいんじゃないの? と我ながら思うが、一応はローファンタジー(現実と地続き)的なホラー作品だし。それにあとがきで作者も「年齢、性別、国籍問わず、いろいろな方に楽しんでいただきたい」と書いてるし(笑)。
(まあ作者の読者想定内に、シャーリィ・ジャクスンの『山荘綺談』連載終了直後からミステリマガジンをリアルタイムで読んでいたジジイが含まれているかは疑問だが……。) 

 2009年の旧作で、数年前に購入した古書を本の山のなかから見つけて読了。後半でメインヒロインのひとりが半裸にされるが、この時期のラノベでは珍しく? 下着の呼称にパンツでなくパンティという言葉を使ってるのに軽く驚いた。2010年代のラノベではほぼ絶滅してるよな? いや、さすがに広い視野で確認したわけではないが(汗)。

 ほかにヒットシリーズを何作か出してるらしい作者だが、評者はこれが初読み(テレビアニメ版の『灰と幻想のグリムガル』は観てた)。本シリーズは2冊で打ち止めになってあと一冊だけのようだがちょっと残念なような、まあ仕方ないような。2冊目は古書を安く買えたら購読するであろう。

No.2221 7点 明日の雨は。- 伊岡瞬 2025/06/08 16:40
(ネタバレなし)
 あらすじ(というか大設定)は、猫サーカスさんのご紹介の通り。
 改題された角川文庫版(表紙が教室内の図柄の、明るめの方)をブックオフで購入後、しばらくこれを長編作品かと誤認していた。蔵書のなかに未読の伊岡作品がまだあったな、と改めて手に取って、ここで初めて実は連作短編集だったと気づく。目次で全6話の構成と判明。

 中身の方は伊岡作品らしい、人間の陰の部分も弱い部分も見つめたヒューマンドラマミステリで、途中には、意外な真相が明かされたのち、ミステリというよりは普通の学園ドラマっぽい、と強く思えるような話もある。
 ほかの長編ミステリを読む合間に少しずつ消化し、最初の話を読んでから二週間くらい経っていると思う。それでも最後の二編は主人公の去就の面での決着が気になって早めにまとめて通読した。

 そのジャンルとしては少し主人公の年齢が高めの青春ミステリの趣もあり、伊岡作品としては全体的に手堅くまとめた印象。ベストは第4話の「家族写真」。キーパーソンの荻野先生の屈折した(中略)は、正に伊岡キャラの典型だと思える。

 ラストまで読み終えて主人公の森島との別れが少し名残惜しく、その辺はフランシスの各長編のうちシンクロ度が高い作品を読了する時の感慨に似ていた。ただ伊岡作品って、登場人物の運用がかなり自在で器用なので、なんかいつかどっかの伊岡ミステリで、この森島、ひょこっと重要なサブキャラポジションで再登場しそうな気もするが(もうすでに実際に再登場とかしていたら、すみませんが)。

 最後に、角川文庫版の解説があの北上次郎。へえ、こんな作品の解説も書くの、と軽く驚いたが、考えてみれば昭和作品でも佐野洋の諸作とかのマニア読者だし、21世紀に伊岡作品を読んでいても全然、不思議ではない。
 ちなみに解説でその北上が、昔から読んだ作品のことをどんどん忘れるという自分の弱点を白状しており、すでに何冊も伊岡作品を読んでレビューまで商業誌に書いておきながらその事実を忘れていた経緯を説明している。
 自分(評者)も読んできたミステリの冊数ばかりは多いため情報のオーバーフローで印象的なサプライズ(の作品)を数ヶ月もすれば忘れてしまうことなんかはザラだが、北上の述懐の実情(読んだ作品の忘却ぶり)はそれにしてもかなりヒドイものだった。
 以前に晩年の北上が21世紀に犬ミステリのオールタイムベスト10を選んでおきながら、当時あれほど激賞したアルベアト・バスケイス・フィゲロウアの『自由への逃亡』を一顧だにしていないのをかなり呆れたが、今回の解説を読むといろいろ腑に落ちるものがある(汗)。
 以上、伊岡作品とは直接関係のない余談でした。

No.2220 7点 戦車兵の栄光 マチルダ単騎行- コリン・フォーブス 2025/06/06 07:41
(ネタバレなし)
 1940年5月。第二次大戦前半のベルギーの戦場。英国軍海外派遣部隊に所属する34歳のバーンズ軍曹を指揮官とする4人の戦車兵は、歩兵戦車マークⅡマチルダで、前線斥候の任務に就いた。だが空襲を逃れて退避したトンネルが陥落。マチルダは懸命に閉所からの脱出を試みるが、その間に前線は移動。戦車はドイツ軍の占領下のなかに取り残されてしまう。バーンズと仲間たちは火力を満載した単騎のマチルダで、友軍との合流を目指し、長い険しい道中に就くが。

 1969年の英国作品。
 そして海外ミステリの旧作発掘に奮闘する現在の新潮文庫、その昨年暮れの目玉作品(書店での実売が遅かったらしいので、SRの会のベスト区分では2025年の新刊扱いになったが)。

 80~90年代に20冊以上? もの作品が邦訳された(ただし本サイトではまったく読まれていないが)、英国冒険小説新世代実力派の一角コリン・フォーブス、なんと31年ぶりの未訳の新刊の翻訳出版だそうである。
 ちなみにこれ以前は複数の別名義でシリーズものを5冊ほど書いていた作者が初めて「フォーブス」名義で著した作品が、本書だそうな。
 ここで評者も万歳三唱したいが、なにせフォーブス作品はまだ『アバランチ・エクスプレス』しか読んでないので<ああ、懐かしの作家の作品に久々に会えた!>的な感慨はそれほど伴わない。
(それでも客観的な事実として、未訳の面白い旧作が関係者の目にとまって初紹介されること自体は実に結構なことだが。)

 内容は、欧州の戦場を舞台にした主人公たちの戦車のサバイバル・ランを描く直球の陸路ロードムービー風冒険小説で、矢継ぎ早に起こるイベントの連続でスイスイとページをめくらせる。翻訳は、本作同様の戦争冒険小説のほか、ロジャー・スカーレットやJ・D・カーまで手掛けている守備範囲の広い中堅~ベテランの村上和久。第二次大戦の史実分野にも詳しいみたいでその辺りの臨場感やデティルは、シロートのこちらが読む限り、特に違和感なくスムーズな感触であった。

 ちなみにAmazonの紹介文では
「大自然との闘い、敵軍との遭遇。襲い掛かる試練をはねのけ、戦車はたった一輛で英仏海峡を目指す。」
 なんてあるけど、少なくとも大自然との闘い云々は、実はほとんど関係ない(湿地帯でピンチになるシークエンスはあるが)。イネスの諸作とかマクリーンの『北極戦線』とかの線を期待するとちょっと違う。
 
 それでもこなれの良いサービス精神ゆたかな作品で、序盤から終盤までおおむね物語のベクトルが透けて見える筋運びをグイグイ読ませる筆力はなかなか。
 ただ一方で、この手の作品にタマにあることだけど、よく出来た全体のバランスの安定感がかえってどこか何か食い足りなさを感じさせない気分もないではない。実を言うと、先に読んだ『アバランチ~』も正にそんな感じだ。英国冒険小説の主幹にどっか汗臭さや泥臭さを求める側からすると、いささか洗練され過ぎて小気味良すぎるというか。
 いや劇中の登場人物たちはまさに決死の逃避行なんだけどね。

 ここではあえて評点7点。実質は8点でもいいので、ほぼ一年後のSRの会のベスト投票ではその8点で評価(投票)すると思う。

No.2219 7点 人狩り- 大藪春彦 2025/06/05 05:08
(ネタバレなし)
 四谷二丁目に地味な事務所を構える、30歳前後の水野雅之。裏社会の一匹狼の彼は暴力団「三光組」の男・小野寺から、同組織と敵対する「大和興行」に潜入して内部工作を起こすよう依頼を受けた。水野は大和興行が経営するキャバレー「ベビー・ドール」に乗り込み、荒事師としての腕前を披露。自分を殺し屋「藤野昇」として、大和興行の代表・張本に雇用させる。

 巻末に池上冬樹の詳細な解説が掲載される、光文社文庫版で読了。

 双葉社の雑誌「実話特報」に1962年の3~8月にかけて連載された、大藪の初期長編。正確な書誌は再確認しなければ未詳だが、たぶん10作目前後の長編作品だろう。
 あらすじを見れば歴然とするように『血の収穫』、ウェストレイクの『殺しあい』風の組織壊滅内部工作もので、さらに主人公が完全に裏社会の人間な分、ノワール度も高い(その意味ではハメットよりもウェストレイク寄りだ)。
 池上の解説によるとこの時点ですでに、大藪には先行の同系列作品(組織内部工作もの)もあるらしいが、そっちは評者は未読。
 例によってブックオフの100円棚であらすじや解説に触れ、面白そうだとフリで買った大藪の初期作品。で、期待通りに楽しめた。
 
 小説は全編が三人称で綴られ、その大半が水野を主軸としたほぼ一視点で進行。水野の内面描写はあることはあるが、感情の機微に関する叙述はかなり抑制されているので腹が読めない。たとえば犯罪計画に巻き込まれた一般市民を水野がどう扱うのか(気絶させただけで済ますのか口封じのため冷徹に殺すのか)読者は即座に見極められない(どちらもありうる)ので絶えず小説には相応の緊張感が堅持される。
 わかりやすい意味で実に大藪ハードボイルドらしい。

 機転と謀略と裏切りと血臭と硝煙で全編が形作られた小説。そういうものを読もうと思ってページをめくったので、前述通りに十分に期待に応えてくれた作品である。
 
 池上の解説によると<ラストは唐突という声もあるが、私(池上)はこのラストに痺れた(大意)>ともあり、評者はそのどちらにも共感できる(笑)。
 正直、水野の狂気行を長々と書くのに飽きてきた作者が放り投げたんじゃないの、あるいは次の連載か書き下ろしの仕事に関心が移って、こっちはこんな感じで幕を下ろしたんじゃないの? という気もしないでもないが、とにかく出来たもの(ラスト部分)は、これはこれでまたソリッドな大藪ハードボイルドに仕上がっているとは思う。
(昭和三十年代のリアルタイムでこれを十代で読んだ当時の若い連中は、どう思ったんだろうな。)

 いずれにしろ、久々にたっぷりと大藪成分は補充。
 またそのうち、なんか読みたくなるだろう。
 肩の力が抜けた中期以降の作品もそれはそれで味があっていい。

No.2218 7点 弔いの鐘は暁に響く- ドロシー・ボワーズ 2025/06/03 07:53
(ネタバレなし)
 第二次大戦終結後、その年の前半。英国のレイヴンチャーチ地方にあるロンググリーティング村の周辺で、わずかふた月の間に首吊り、川への身投げ、銃弾での絶命……など4件で5人もの自殺者が続発した!? そんななか、村では事件に関する匿名の怪文書が飛び交い、やがて施錠された屋内で今度は明確な他殺による死体が発見される。スコットランドヤードのレイクス警部は、地元の警察と協力して捜査に当たるが。

 1947年の英国作品。ボワーズ最後の長編。

 探偵役がこれまでのレギュラーのダン・パードウ(パルドー)警部ではなく、30代後半のハンサム、レイクス警部に交代したのが軽く意外だった。
 とはいえマーシュのロデリック・アレン風の紳士捜査官風のレイクスはなかなか魅力的な探偵キャラで、正直パードウよりも印象がいい。たしかに作者が早逝しなければ、ボワーズの第二のシリーズ名探偵になったんだろうな。これは相応に惜しまれる。

 nukkamさんもご指摘だが、論創の巻頭の登場人物表には総勢18人しか名前が出ていないが、例によってネームドキャラのメモを作りながら読むと名前が出て来る人物だけで60人以上を数えた。
 あんまり翻訳ミステリの巻頭にズラリと登場人物の名前が並んでいると、それだけで妙な満腹感が生じ、読書欲・購読欲が減退するというのは評者自身よくわかるが(イネスの『ハムレット復讐せよ』とか、正にソレね)、あまり割愛しすぎても、実作の内容に沿っていない編集側の不見識を疑われるのではないか。
 今回の場合ざっと見ても、物語のリアルタイムでの開幕以前のくだんの「自殺者」連中をふくめて、あと15~20人は登場人物一覧には必要だろう。

 でもお話の方は、とても面白かった。
 評者の場合、前述のように私的に登場人物メモを作りながら読んだことが幸いしたかもしれんが、舞台となるロンググリーティング村の住人たちの情報が続々と積み重なりながら、物語がテンポよく進み、そろそろ……という辺りで中盤の殺人が起きる呼吸も心地よい。
(ただし論創のハードカバーの表紙に書かれたあらすじの3行目はダメ。これ書いた編集、中味を読まずに翻訳者から口頭で梗概とか聞いて、実際の内容も確認しないで記述したんじゃないの?)
 
 真犯人もかなり意外ではあったし、それが残り少なくなったページの最後の方でわかる演出もいい。カントリーものの英国旧作フーダニットパズラーとしては非常に楽しめた。

 ただし出来がいいか? と言われると、ちょっと、う~ん……となる仕上がり。真犯人の決め手となる情報は後出しで、せめてもうちょっと早めに伏線とか欲しいし、何より肝心の(中略)。あれ、説明してないよね?
 
 読んでる間はすごく面白かったので、この評点だが、本当のところは0.3点くらいオマケ。<そのポイント>をうまく捌いて決着づけてくれていたら、十分に8点だったんだけど。
 確かにまだまだ、作者のミステリ作家としての伸びしろは感じるなあ……。
 ライスやジョセフィン・テイほどじゃないけれど、当時の若い才能の喪失を、今さらながらに惜しむ。

No.2217 6点 山形新幹線「つばさ」の女- 峰隆一郎 2025/05/31 08:46
(ネタバレなし)
 その年の7月上旬。「中央警備保障KK」の調査員で33歳の五貫(いぬき)吾郎は、34歳の売れない画家・戸川圭一郎と駆け落ちした31歳の人妻・西保靖子の行方を追って、山形を訪れた。そこで吾郎は「斉木」という男に誤認され、当人が横領したらしい3億の金の返却を求められる。当座のトラブルから脱した吾郎は、その直後、またも彼を斉木と見誤っているらしい美女・樋口美奈と出会った。吾郎が美奈から情報を探り出すと、斉木は都内の不動産会社の専務で、美奈は彼の秘書兼愛人らしい。いまだ吾郎を斉木と誤認しているのかそれとも他人と了解したのか漠としたまま、美奈は吾郎と一夜をともにするが、ふたりでともに東京に戻る山形新幹線のなかで、予期せぬ殺人事件が生じた。
 
 評者が3年前に読んだ『特急「あずさ」殺人事件』(旧題・『アルプス特急あずさ殺人事件』)以来の、五貫吾郎シリーズ……って、実はブックオフで少し前にこの本(元版の新書の方)を手にするまで、シリーズ探偵になってるの知らなかった。いま思うと『あずさ』がシリーズ第1作目だったみたいだけど、本作がシリーズ何冊目になるのかは今のところ、知らない。

 ほとんどポルノミステリかと思えるくらい、濃厚な濡れ場が続出(主人公は本作の劇中だけで6人のヒロインとセックスだよ。たぶんワタシが読んできた新旧のミステリのなかでも最多じゃ?)。

 が、決して<エロ一辺倒>の中身ではなく、キーパーソンの斉木は結局生きてるのか? 死んでるのか? と薄口の『キドリントン』みたいな大きな謎の興味を最後まで維持するし、ホンボシと絞り込まれた相手のアリバイ崩しのネタもある(これが本書の独創のものかは知らないが)。

 で、あれやこれやの謎を絡めたフーダニット的な趣向に加え、主人公・吾郎の職業的な矜持の叙述において、必要十分な和製ハードボイルドミステリの背骨を感じさせてくれる。2時間半で読了できるリーダビリティの高さの一方で、なかなか読みごたえはあった。
 
 まあ真相が発覚すると、メインキャラクターの行動の一端に違和感を感じないでもないが、まあその辺は解釈の幅で了解できないこともない。
 最後の吾郎と某メインキャラの対峙場面は、なかなかのテンションで印象に残りそう。
 作者(&編集部)としてはサ-ビスしてるらしいセックス描写の過剰さにヘキエキしてしまう読者は全国にゴマンといそうだが、その辺のうわぁ……感をスルーできるんなら、けっこう欲張った力作じゃないかとは思う。
 この評点の上の方で。

No.2216 6点 絹靴下殺人事件- アントニイ・バークリー 2025/05/30 07:10
(ネタバレなし)
「デイリー・クーリア」紙紙上で、犯罪研究家として連載コラムを担当するロジャー・シェリンガム。そんな彼はある日、ドーセット地方に住む老牧師で5人の娘の父A・E・マーチから<いつもコラムを楽しんでおります、実はロンドンに行っている次女でコーラス・ガールのジャネットと連絡が取れません、警察に行って大事にしたくないので、先生、何か状況はわからないでしょうか?>という主旨の相談の手紙を受け取った。心にとめたシェリンガムが動くと、くだんの娘ジャネットはほぼひと月前に自分の靴下で首を吊って自殺? していたらしいことがわかる。老父に悲報をどう知らせようかと悩むシェリンガムだが、彼は最新の新聞でまったく同じ死に方で別の若い女性が命を絶ったことを知った。

 1928年の英国作品。シェリンガムシリーズ第四弾。

 話は小気味よくハイテンポで進行し、事件も続発。
 だが一方、これで最後にサプライズを出すには、あの人物を真犯人に設定するしかないだろ、でも……(中略)と思いながらクライマックスに到達。そうしたら、え、それはアリか!? という手でイクスキューズしていて、いささかコケた。
 まあフーダニットの方はともかく、ある面でのホワイダニット(ここではあえて書かないが)について、実質的にまったくスルーなのも残念。

 事件の求心力はかなりのもので、筋運びも悪くはないのだが、ミステリとしてはいささか緩めで、シリーズのなかでは中~下位の方か。
 シェリンガム、一部の行動は例によって? オカシイけれど、大枠では今回フツーに名探偵だったね。

No.2215 8点 食刻- 柾木政宗 2025/05/29 16:00
(ネタバレなし)
 24歳の超美青年で、新進銅版画家。若手の文化人としても人気を博す早乙女真琴。彼は自分の才能を見出した、美術界に権勢を奮う大物評論家・影塚孝志の密な後見をいまも受けていた。そんななか、真琴は同世代(25歳)の人気彫刻家・赤塚宏伸と雑誌企画で対談する機会を得るが。

 メルカトルさんのレビューを拝見して、あら? 柾木先生の新刊出てたんだ!? と気が付く。
 しかもメルカトルさんのレビュー(ネタバレ以降はまだ読まないが)によると、かなりスゴそうな内容? ということで、昨夜いっきに読んだ。

 ……なんというか、感想を書くのにも言葉をイチイチ選ばせるような凄惨な話ではあった(十分に広義のミステリではある)。

 しかし作者のマジメ度と本気度が伝わってくる熱気ムンムンの作品なので、不快感の類は存外に少ない(これを涼しい顔で才気だけで書いていたとしたら、それはそれである意味すごいし、凄まじいが)。
 いずれにしろ自分には書き手の発汗ぶりがよく見えるような気がする。
 そういうタイプの作品。

 こってりとした小説を久々に読んだ感触がある。
 改めて自分を振り返って狭義の意味での文学というのは実はよくわからないが、たぶんそれになっている作品ではあろう。いや、あくまでエンターテインメントで、先に書いたように(広義の)ミステリだが。

 ひょっとすると今年の新刊で最初に読んだのがコレか?
 うん、たぶんそうだ。

No.2214 7点 癒えない傷- ベンジャミン・M・シュッツ 2025/05/28 16:35
(ネタバレなし)
 未知の病気エイズ問題に世界が震撼する1986年。全米ではアメリカの海外派兵に反対する過激派テロリストが活性化し、無差別爆弾で命を落とす市民も出ていた。その被害者のなかには、「わたし」こと私立探偵レオ・ハガティーが少し前に出会ったばかりの人々もいた。そんなハガティーは旧知の弁護士ネイト(ネイサン)・グロスバードの仲介で紹介された女性マルコ・ヴァースケイスから、先日ホテルで変死した夫マルコム・ドネリーの死亡状況について調査依頼を受けた。ドネリーは自殺とされかけているが、それだと現在の保険の契約状況では保険金が下りず、一方でマルコには夫の死に不審を抱く根拠らしきものがあった。ハガティーは調査に乗り出すが、事件はやがて予想を超えた奥行きを見せていく。

 1987年のアメリカ作品。私立探偵レオ・ハガティーもののシリーズ第3長編。
 原書ではまだ数冊以上シリーズが継続し、ハガティーの立ち位置はけっこう面白そうな方向に行く気配もあるが、日本での翻訳はこれで打ち止めになった(あとはアンソロジーに入ったハガティー主役の短編が一本、日本語で読めるが)。
 第1作『狼を庇う羊飼い』以来、地味に好きなシリーズだっただけにちょっと残念。

 前作『危険な森』と同様に今回も、ベトナム帰還兵のタフな相棒と小説家の恋人を主人公の脇に配し「オレならこう書くスペンサーシリーズ」という趣も強い内容。
 とはいえその辺がやや~相応に鼻についた前作よりも、ずっと前提となるメインキャラシフトの扱いはこなれ、いきなり相棒アーニーを物語の表舞台から引っ込めてしまうとか、こちらなりの工夫は感じないでもない。
 なにより情報を集めるため、目の前に積み重ねられたタスクを消化していくハガティーの足さばきが、なかなか痛快で良い。特に情報を得るため、また情報をくれたサブキャラが重傷を負わされたのでその復讐のため、町のクズ(ただしそれなりに強い)と命懸けでやり合う辺りとか、実にオモシロイ。
 私立探偵の調査小説としては複数のサイドストーリーを交えながらも一本芯の通った作りだが、話の適度な膨らませ具合が本作を良質なエンターテインメントにしている。

 まあ最後の最後で物語の構造が(中略)という点は、ああフィクションだな、という感慨を抱かせなくもないが、もとよりこの作品そのものが<そういう形質のミステリ>なんだろうから、文句を言うのはいささかお門違いであろう。
 いずれにしろシリーズ第1作目のときめきには遠く及ばないが、前作よりはずっと楽しめた。繰り返すがこれで邦訳が終わり、というのはちょっと残念。

 しかしネオハードボイルド系の私立探偵シリーズ(5冊以上)で長編の邦訳が完走したのって、どのくらいいるんだろう? コレはそうなんだろうといえるのはスペンサーとマット・スカダー、タナー、サムスンくらいか? たぶんもうちょっといるだろうが、一方でそんなに多くない、という感触もある。

No.2213 6点 不変の神の事件- ルーファス・キング 2025/05/24 06:21
(ネタバレなし)
 石油業界の大物で、60歳の大富豪アーティマス・トッド。その愛する長女で、義理の息子ジョナサン・オールデンの妻となったジェニーが自殺した。その原因が脅迫者シーガード・リベレンの恐喝にあるらしいと知ったアーティマスは、ジョナサン、次女のリディア、そしてジョナサンや姉妹の友人である青年弁護士チャーリー・ウォーレンと連携してリベレンを屋敷に呼びつけるが、その場でリベレンは命を落とした。身内がリベレン殺しとして逮捕されることを危惧した一同は、隠蔽工作をはかるが。

 1936年のアメリカ作品。ヴァルクール警部補シリーズの第9弾。
 9年前に当時の翻訳新刊ミステリとして読んだ『緯度殺人事件』はなかなか面白かったと思い起こしながら、読み始める。本書も『緯度』と同じ、ヴァルクールもの。

 なりゆきの激情からクズみたいな小悪党を殺してしまった金持ちファミリーの倒叙風の物語が延々と続き、これがどうパズラー(そういう噂らしい?)に転調するんだ? という興味で読み進む。その辺はなかなか求心力があってオモシロイ。

 翻訳も流調、会話も多い、とサクサク読める文章で、お話の転がり具合もそれなりによし。で、中盤を過ぎたあたりから、「ん!?」という情報が見えてきて、そこらからさらに話の弾みがつく。

 こー書いていくとかなりの秀作っぽいし、さらに終盤の意外な犯人もサプライズ度は満点なのだが、一方でいやこれは、作中のリアルとしていろいろムリでしょう……という真相の解法で、かなりズッコケた。作者のサービス精神はよくわかるんだけどね。
 最後の方でスベってしまった中距離のファール作品。ただし打球に勢いはあった感じで嫌いになれないし、とにかく6分の5くらいは読んでる間、実に楽しかった。

 という訳で、ルーファス・キングもっと読みたいので、未訳や抄訳しかされてない作品、新訳で発掘してほしい。B級パズラーとして楽しみに手に取ります。

No.2212 6点 誘惑の鬼気- 笹沢左保 2025/05/18 16:30
(ネタバレなし)
 製薬会社が新設した食料品部門でスタッフとして働く29歳の独身美女・前田佐紀子。彼女は5年前、家電メーカーの技術者で6歳年上の栗原大伍の新妻だったが自宅で強盗にレイプされ、その相手を殺してしまった過去があった。大伍によって死体を始末してもらった佐紀子は新婚生活を続ける気にならず、夫との合意の上で離婚の道を選ぶ。事件の後は男性恐怖症もあって恋愛関係にいっさい消極的だった佐紀子だが、今では学生時代からの親友である美女・小笠原由美の夫である青年社長・剛に好意を抱き始めており、剛の方も妻の由美がいる身ながら佐紀子に関心があるようだった。だがその由美は実は5年前のあの事件当時、偶然の状況から佐紀子と大伍に不審を抱いている気配があった。

 土曜の夜、深夜アニメを観たあと徹夜で朝の6時まで仕事して、さて寝る前に何か一冊読みたいと思い、日曜の早朝にこれを手に取る。
 こーゆー時は笹沢佐保あたりがさらっと読めてそこそこ面白く、手ごろだ。

 1995年の徳間文庫版で読んだが、元版の刊行は87年。

 例によって『サルまん』のレディスコミック編のノベライズで紙幅の全体の5分の3(もっとか)を使ってるような笹沢エロロマンだが、途中で呆れるくらいに唐突に殺人が起こり、そのノリに付き合えるなら少し面白い(作中のリアルで殺された被害者にはナンだが)。

 オトナの読み物の間隙を縫うようにミステリ要素が小出しにされる構成だが、事件? 犯罪? の輪郭はなかなか見えない。
 その辺の興味が、かなりやむを得ない状況だったとはいえ他人を故殺し、しかもその事実を闇に葬ったヒロイン主人公の着地点への興味とあわせて、そこそこ読ませる。
 ラストのサプライズは冷静に考えれば決して予想がつかない種類のものではなかったのだろうが、こっち(評者)は読み手の視線を別の方向に引っ張ろうとする? 作者の話術に幻惑(そんな大げさなものじゃないが)されて、ちょっと意外であった。まあ、こっちがチョロいので、気が付く人は途中でもしかしたら、とピンとくるだろう?
 それでもそれなりに面白かった。

No.2211 6点 謎の飛行計画- 福本和也 2025/05/16 18:15
(ネタバレなし)
 航空写真撮影会社「東アジア航測」のパイロット・水田透と撮影士の米沢吾一は、就労中にセスナ機で山梨県の上空を飛んでいる際、たまたま余ったフィルムで地上を撮影。なんとその大月市の山中には、地表から目立たくなった巨大な何かの輪郭が確認された。東アジア航測と懇意の理学博士・西野純一は航空写真から得られる、さらには入手できる限り現地の地表の情報を解析し、そこに仁徳天皇陵よりもさらに巨大な古墳が埋もれている可能性を突き止めた。かたや、水田の内縁の妻とよべる恋人・安城志保子は理由も定かでないまま、彼のもとを去り、水田はその行方を追う。やがて関係者の視界に、謎の変死事件の知らせが入って来た。

 改題された角川文庫版で読了。航空業界に精通した作者だけに、航空機や航空写真に関する含蓄の情報量はすさまじく、その辺の世界に導かれていく臨場感は並々ならない。さらに本作は、いわゆる昭和のB級伝奇古代ミステリの興味もあるが、そこに水田と恋人の不安定な状況でのドラマ、さらにはもうひとりの重要人物となる・「静野クリニック」院長・鎭野幹也のサイドストーリーなども絡み、中盤で起きる殺人? 事件と合わせて、複数の挿話が縦横に交錯。
 だが話の幹は古墳捜しの謎とはっきりしてるので、ややこしさや雑駁感などは特にない。
 言うならば、切り揃えの悪い大小の野菜の具材を多めにぶっこんで、まずまずの味付けで作った八宝菜みたいな感じのジャンル越境ミステリ。

 終盤のけたたましいまとめ方など、他の謎解きミステリだったら、たぶんまず許さないよ、という感じだが、こーゆー通俗・B級(でもその辺を含めてなかなか面白い)なら、まあアリじゃないかという感じだ。
 で、最後まで割と重要なメインキャラが放っておかれた気もするが、まああの人物は(中略)ということなんだろうな。それならそれでいいか・

 典型的な昭和のB~C級ミステリ。もちろんキライではありません。

No.2210 6点 シナの鸚鵡- E・D・ビガーズ 2025/05/14 07:04
(ネタバレなし)
 ハワイのホノルル社交界の花形として長年にわたって知られた、今は60歳代のシェリイ・ジョーダン夫人。彼女の自慢の宝石「フィルモア真珠」は斯界の伝説的なお宝だったが、最近になって夫人の息子で30代半ばのヴィクターが投機で失敗。夫人は息子の窮状を救うため、やむなく真珠を手放して金に換えることにした。夫人は30万ドルで真珠を売りたいが、ウォール街の大物として知られるP・J・マッデンは息子のために金策を急ぐ夫人の足元を見て、買値を22万ドルで買いたたこうとする? しかもマッデンはいわくつきの男? 実は彼は10代の頃、ハワイで憧れの美少女だったシェリイに懸想していた過去があるらしく、真珠の買い取りは当時からの意趣返しでもあるようだ。NYの宝石商アレクサンダア・イーデンが真珠の取引の仲介を務め、その息子の美青年でまだ大学生のポップが真珠の運び役を担当。かたやハワイの名刑事チャーリー・チャンもシェリイとの縁で、アメリカ本土に渡った。やがてマッデンの希望で真珠の受け渡し場所がカリフォルニアの砂漠にある「マッデン牧場」に変更になるが、そこでは怪異な殺人事件が待っていた?

 1926年のアメリカ作品。チャーリー・チャンシリーズ第二弾。
 一年と少し前に読んだシリーズ第一弾『鍵のない家』がかなり面白かったので、今回もちょっと期待した。

 翻訳は定評の悪訳らしいが、当初からそう覚悟して読めば、まあ付き合えないことはない。
 中盤まで事件らしい事件は起きないが、奇襲(早わざ)殺人? といえる殺人事件の発生シーンはなかなか蠱惑的(あまりそっちの面からミステリ的に深掘りされないのはナンだが)。
 さらに実質的な青年主人公のポップと、映画業界人(ロケハンティング役の女性スタッフ)ポーラ・ウェンデルとのラブコメ模様がなかなか楽しいので、ほとんど退屈はしない。そんなこんなのうちに、某メインキャラクターの隠された秘密らしき情報が見えて来るあたりの筋運びはなかなかスリリングだ。
 前作レベルの結実感にはちょっと遠いが、今回も最後のどんでん返しまでそれなりに楽しめた。物語の舞台となる砂漠の牧場と、映画撮影所、それぞれのロケーションの叙述もいい。
(まあ真相が発覚してから振り返ると、犯罪の構造についてはいささか思う所もないではないが。)

 例の「奇想天外の本棚」の新訳予定リストに入っていた一作だが、もはや、ぜ~~~~~~~~~~~~~~~~~~ったいに、ソッチでは読めそうもないので覚悟を決めて、数か月前にややプレミア付きの綺麗な状態の古書を購入。電子書籍でタダで読めるかもしれんが、当座その気はないので、まあまあ高いこのお値段でも納得。
 さて次は『追跡』か。こちらも大昔に買った本が見つからないので、改めてすでに古書(創元文庫版)は購入してある。
 
 評点はこの数字だが、評価はその点数のなかでの上の方。

No.2209 8点 フローテ公園の殺人- F・W・クロフツ 2025/05/11 09:01
(ネタバレなし)
 創元文庫の旧訳版で読了(73年10月の第5版)。
 地味で退屈どころか、イベントのつるべ打ち、後半の探偵役ロス警部の捜査にも細かい起伏感があり、十分に面白かった。
 でもエンターテインメントとしての最大のポイントは中盤で登場のメインヒロイン、マリオンの後半に続く大活躍。途中で彼女が見舞われる、いかにもフィクションっぽいアクシデントには苦笑(いや作中のリアルとしてはかなり大事の災難なんだけど……)。
 でもって、ダメ押しで最後の「そう来るか!」という、破壊力甚大なサプライズ(この辺は、あびびびさんのご所感にまったく同意)!
 あー、面白い時のクロフツ、やっぱりおもしれえ。

 旧訳を担当した長谷川修二の訳者あとがきによると『樽』と『フレンチ警部最大の事件』はそれぞれ乱歩、植草の他薦で翻訳したそうだけど、この作品ばかりは自分で惚れ込んで訳出したという主旨のコメントがあり、しごく納得。

 でまあ、その翻訳(この長谷川の旧訳)も使う言葉が古くなってるのは認めるが、それでも全体的にとても読みやすい。
 しかしP273のドンゴロスのズボンって、ジーンズのことだよね? 同じ長谷川による旧訳の『スイート・ホーム殺人事件』(まだ旧訳も新訳も未読だが)にその言葉が出て来るらしいのは、大昔に「SRマンスリー」で教えられた覚えがある。

 何にせよ、久々のクロフツ。存分に楽しめた。最終的にはこの評点でいいでしょう。ただ売りのハズ? の二大探偵の直接の連携が実際には(中略)なのはやや意外だった。

No.2208 6点 ホンコン野郎- カーター・ブラウン 2025/05/08 06:14
(ネタバレなし)
「おれ」ことアンディ・ケインは香港在住9年目、宝石や銃器類を密輸して(ただし麻薬は扱わない)暗黒街では「悪魔の兄弟分」「香港の名物男」として知られる青年アウトローだ。そんなケインのもとに大柄で小麦色の肌の美人ナタリー・ダヴから相談がある。彼女の話では戦時中に、パイロットだった兄のレイが特命を受けて軍用金100万ドルを運んだが、輸送機が海に墜落。大金も海底に消えたまま、レイ当人は日本軍の収容所で獄死したという。レイは収容所で一緒だった男ジョナサン・カーターにその情報を遺したが、そのジョナサンは戦時中に敵国に利敵行為をした戦犯として戦後もずっと収監されており、ナタリーが海底に今も眠る軍資金の存在を知ったのはつい最近だという。ナタリーは噂の快男児ケインに軍資金の捜索の協力を願うが、同じ獲物を求めて多数の者が群がってきた。

 1962年のクレジット作品。海賊紳士(というより単に気風のいいアウトロー)アンディ・ケインものの第一弾で、日本ではシリーズ第二作『金ぴかの鷲』の方がなぜか先に訳されたが、できるならこっち(本作『ホンコン野郎』)から読んだ方がいい。
 理由は先に『金ぴか』を読んでしまうと、本作『ホンコン野郎』の後半、主要人物がどんどん退場してゆくなかで、誰がシリーズのレギュラーキャラとして次作まで残留するのか、それがわかってしまうから。

 物語の前半で犯人不明の殺人事件も起きて、その意味ではフーダニットミステリの要素もある本作だが、大筋は複数の陣営によるお宝の奪い合いで、終盤はけっこう血なまぐさい。ダニー・ボイドものならともかく、アル・ウィラーものではまずお目にかかれない殺伐さだ(まあウィラーも、時にはけっこう荒ごとを躊躇なく行うのだが)。
 途中はやや冗長感はあるが、後半、ケインが窮地に陥ってその危機から苦闘しつつ脱するくだりは、なかなかハイテンションで面白い。最後の方はフツーに楽しめた。
(しかしこの作品、やっぱり少年時代に一度読んでいたな。ある場面を読んで思い出した。邦訳のあるケインものの二冊のうち、どっちかは既読だと思っていたが、それはたぶん次の『金ぴか』の方だろうと誤認していた)。

 巻末の解説は、海外ミステリ研究の歴史の中に消えてしまったひそかな大物(と勝手にこっちが思っている)で、たぶん日本最高峰のカーター・ブラウン研究家の白岩義賢氏が担当。
 実に丁寧に、本作そのものの読みどころと、さらに複数のカーター・ブラウンの主人公たちのなかでこのアウトロー海賊アンディ・ケインがどういう独自性があるのか語っており、その辺もファンには嬉しい。数年前にネットでこの方のお名前を初めて検索したところ、どこぞやの新聞か雑誌の編集者さんだったはずだが、まとまったミステリエッセイの著作みたいなものを書いておいていただきたかったとつくづく思う。
 時代のなかで一過性で、本気で自分の好きなミステリへの熱い思い入れを語り、そのまま歳月の流れのなかで表舞台から消えていった文筆家たちのいかに多い事か。

No.2207 6点 白夫人の妖術(新潮文庫版)- 林房雄 2025/05/07 22:59
(ネタバレなし)
 円谷英二による特撮ファンタジー映画として隠れた(?)秀作『白夫人の妖恋』(おとぎ話みたいなストーリーも良いが、とにかく美術監督・三林亮太郎による美麗なビジュアルが素晴らしい)。
 同映画の原作である表題作の中編を含めた全5編の中短編集。

 以下、簡単に各編のメモ書き&感想。

①「妖魚」
 大戦後のある年。元華族のG侯爵の家に集まった、大学教授のOや小説家のSたち数人の客。老侯爵は20年前にスマトラで起きた「赤い河のブウランダ」と呼ばれる「妖魚」にまつわる逸話を語り始める。
……いきなり冒頭から恐竜の話題をするし、この題名なので秘境怪獣ものか? と期待したが、そこまではいかない。ブウランダも巨大だが、全長2m前後なのでスーパーナチュラルなサイズではない。しかし後半、奇譚風のミステリに転ずるのに軽く驚く。

②「香妃の妹」
 大戦後、かつて戦前の北京で新聞記者をしていた「私」は、当時のことを回想する。そこにいるのは気の良い友人だった青年・荘(ツァン)の義妹(彼の妻・香妃の妹)で、幼く美しい少女だった小美玉(シアオメイユイ)のことだった。
……ほとんど普通小説のような短編。相思相愛ながら、心の機微から男女の間に微妙な距離感が生じていく。

③「白夫人の妖術」
 宋の時代の中国。西湖のほとりの町。兄夫婦の薬屋で仕事を手伝う22歳の青年・許仙は美しい若い未亡人に出会い、恋に落ちるが。
……前述の特撮ファンタジー映画の原作で、中国の「白蛇伝」伝説に材をとったもの。題名が映画と微妙に違うが、大筋はほぼ同じ。映画で観客が息を呑んだ円谷特撮のビジュアルに相応するシーンもちゃんとある。ただし白夫人と対峙(対決)する法力・神通力を持った僧侶や道人などの挙動が一部異なり、最後のクロージングも少しニュアンスが異なる。

④「失われた都」
 1943年のマニラ。親フィリピン派の青年で映画脚本家の日本人・笠原宗吉は、同国の文芸に関する素養を高めようと、一人の若き小説家に対面するが。
……戦時中のマニラを舞台にした、切ない青春小説のような趣。イントロは終戦後の時勢の視点から始まっており、淡々としたしかし抒情的な物語は静かに劇的な決着を迎える。講談社の某・海外短編ミステリアンソロジーに入っていそうな一編。 
 
⑤「四つの文字」
 戦後「私」は、かつて中華民国の南京政府で出会った「部長」格の男の訃報を知る。今風に言えば彼は同政府の大臣で、当時、旅行者として彼と最初に関わった私の回想が始まる。
……当時の南京を舞台にした、戦時中の人間ドラマ。収録作中もっとも短く、小説の形を借りて語られた思弁エッセイ風の趣もある。

 評者が手にしたのは新潮文庫の第二版で、もともとの初版は①を表題作に刊行されたが、映画化にあわせて再版から表題作が③に変わり、書名も変更された。
 みんな大好きヨコミゾの角川文庫『黒猫亭事件』(横溝正史シリーズ第二期の放映にあわせてほんの一時期だけ『本陣殺人事件』から改題したマニア垂涎のレア本)みたいなもんだ。
 全5編の本文ページの見開きの右上に、まだ「妖魚」と旧書名の通しタイトルが残っている一方、終盤のページに改題についてのお断りがあるので、初版の在庫をいったんバラし、最後の折にくだんの文言を加刷したのだろう。

 紹介した通り、広義のミステリ、ファンタジーといえるのは①③④のみだが、②と⑤もふだんはあまり縁がない世界を覗くようで、それなりに楽しかった。ただ古い本なので本文の活字の級数がおそろしく小さいのはキツイ。全200ページと薄めの一冊だが、今風に字組を直したら二倍近くの厚さになるのではないか。

【2025年5月7日23時・追記】
⑤は近年、大陸書館の中短編集『林房雄大陸小説集 薔薇の秘密』にも採録されてるんだけど、編集部は同作を「サイコ・スリラー」と称している。どこのポイントを論拠に言ってるかはわかるが、全体としてそーゆー種類の作品なのかなあ……という感じである。あくまで私的な感慨だが。

【同年同月8日6時・追記その2】
 そーいや、林房雄って、一冊だけ? ガードナーのメイスンものの翻訳やってるんだ!?(創元版の『幸運の脚』『幸運な脚の娘』) どーいう経緯というか縁だったのであろう。木々高太郎とか文学派ミステリ作家とかの関係とか?

【同年同月8日22時・追記その3】
 この人はガードナーの翻訳をもう一冊やっていた。創元版『どもりの僧正』。こっちはいわくつきの本だね。

No.2206 7点 虚像- 大下宇陀児 2025/05/05 06:20
(ネタバレなし)
 国産の昭和の旧作がまたなにか読みたくなって、今夜はこれを選ぶ。

「日本推理小説大系」の第4巻(大下/浜尾編)に入ってるのでそれで読んだら、本文3段組で100ページ弱と結構、短いのに驚き(だが中身は濃い)。
 さらに1955年に雑誌連載、1956年に元版の書籍化と、比較的新しい時代の作品だったのにも軽くビックリした。『見たのは誰だ』と同時期の作品だったのだな。読む前は『金色藻』なんかと同じ昭和ヒトケタ代の作品かと思っていた。

「わたし」こと、中学生からハイティーンに成長していくヒロイン主人公の大谷千春はまったく悪い子ではないんだけど、いびつなくらいに融通が利かず、我を通す気の強い<正義漢>娘。美少女ながら当然、友人なんかほとんどいない。なんか2020年代のラノベのある系列の、女子主人公みたいだ。時代を超えた、強烈な普遍性を感じる。
 ぎりぎり薄口のミステリになっているし、アレコレの伏線(かなり強引なもの)も多いが、とにかく小説として面白い。
 昭和ミステリの大枠のなかで生まれた、最強の読み物作品のひとつじゃないかしらねえ。
 先行する雪さんのレビューの最後の
                              ※
 ある程度先は見えるが、そのような読み方をすべきではない。物語の流れに身を委ねて、じっくり味わうべき長篇小説である。
                              ※
 の部分にまったく同感。
 エピローグ部分でもうけ役となる、脇役の使い方のうまさに舌を巻いた。

No.2205 7点 東京空港殺人事件- 森村誠一 2025/05/04 08:49
(ネタバレなし)
 昭和30年代。北極回りロンドン行きの旅客機が機体の不調から、アラスカの氷原に不時着。多くの乗客や乗員が犠牲になった。それから十年以上の時が経った、昭和40年代のその年の2月6日。乗客乗員総員138名を乗せた「全日航」の旅客機JA4301便が羽田の到着前に、行方不明となった。新婚の夫で全日航のエリート職・小室安彦の帰国を待っていた若妻の由紀子は、彼が乗っていたはずの4301便の無事を願うが。やがて事態は、空港周辺のホテルでの奇異な密室殺人事件へと連鎖していく?

 光文社文庫の新装版で読了。
 密室トリックに関しては、そこだけ切り離してみるとかなり<ナン>だが、一冊全体、作者・森村センセイの人間観が如実に感じられ、しかしてそれがいつものようにはさほどイヤミになっていない。
 むしろ小説の完成度がミステリ要素のぶっとい柱となっている感じで、そこがとてもいい。なんかこの作品の登場人物の描写は、いわゆる「刺さる」ってヤツなんだな。
 繰り返すが密室謎解きミステリとしては、かなりアレです。でもその上でね、なかなか嫌いになれない作品だった。

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ひとこと
以前は別のミステリ書評サイト「ミステリタウン」さんに参加させていただいておりました。(旧ペンネームは古畑弘三です。)改めまして本サイトでは、どうぞよろしくお願いいたします。基本的にはリアルタイムで読んだ...
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