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リンガラ・コード
ウォーレン・キーファー 出版月: 1974年01月 平均: 6.00点 書評数: 2件

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角川書店
1974年01月

角川書店
1986年05月

No.2 7点 人並由真 2025/07/14 08:48
(ネタバレなし)
 1971年。テヘランに在住のアメリカ大使マイク(ミシェル)・ヴァーノンは、NY在住の恩師ハロルド・グロスマン教授に向けて、ヴァーノンが1960年代初頭、コンゴ(のちの一時期ザイール)に表向きは大使館員、実はCIA局員として勤務していた時の記録を書き綴った。そこにはコンゴの地で、大使館付きの武官であり、同時にヴァーノンの朝鮮戦争以来の戦友(親友)であったテッド・スターンズの殺害から始まる1962年の事件の経緯が、仔細に語られていた。

 1972年のアメリカ作品。同年度MWA最優秀長編賞受賞作品。

 なんか大技を使っていると、以前からウワサの作品なので(幸いにもそれが具体的にどういうものなのかは知らない~あるいは聞いたか読んだかしても、今は都合のいいことに失念している・笑&嬉)、思い立ってこのたび読んでみた。

 ベルギーやフランスなどの植民支配を受け、さらにアメリカやロシアの干渉、さらには国連の関与もあって内政が揺れまくる当時の現地の描写はなかなかの臨場感。
 現代史に無教養な自分は、当時の国連事務総長ダグ・ハマーショルドの惨死(謀殺らしい)なんか初めて知った。

 おなじみ池央耿の翻訳は快調で、リーダビリティは最高。ネームドキャラの登場人物は60人以上に及び相応だが、メモを取っていけばまったく混乱はない。出張先の地方でヴァーノンを含むアメリカ政府の人間が暴徒に襲われるシーンの緊張感など、相応のものである。
 あと、CIA側で使っていたコンゴ在住のとあるスパイがいささかヤクザ者なのだが、その彼がこれが最後と重要な情報をくれたことを恩義に感じ、そのスパイ当人を、あるいはせめてそのスパイの妻子だけでも優先的に国外に逃がしたいと考える主人公ヴァーノンの造形(人間味)なんかもいい。

 ミステリ的なギミックはなかなか見えてこない(途中でいくつか仮想を考えるが、いや、たぶん違うんだろうな……と、思い付いた仮説の却下を繰り返すパターン)まま、お話そのものが結構、面白いね、と読み進む。で、クライマックスで、事件というか秘められていた策謀は意外なほど順当に解決……と思いきや……ああ、こういうことね。
 まあ、確かに<思いついて>も良かったけれど、これはスキを突かれた。この作品で原体験的にその手のサプライズを味わった人には、かなりインパクトのある作品だったと思う。
(ちなみにAmazonの本作のレビューでは、どこぞの〇クチ野郎が余計なネタバレをしてるので(←〇ね!)、これは見ない方がいい。Twitter(Ⅹ)も見ない方がいいだろうね。)

 なお今回読んだ翻訳本は、元版のハードカバー。図書館で借りて読んだが1976年7月の第9版と、角川の海外ベストセラーズ初期分のなかではかなり売れた方だと思う(そりゃフォーサイスにはかなわないだろうが)。たぶん『ジャッカル』以来の「全米探偵作家クラブ最優秀長編賞受賞」の惹句がものを言ったのだろうな。
 逆に言えば当時読んだ世代人は結構いると思うのだが、21世紀にはほとんど忘れられ切った作品のようで、本サイトでも現状、16年前のこうさんお一人のレビューしかない(涙)。
 関心と機会があったら、余計な情報を入れないうちにさっさと読んでしまうことをお勧め。

 ただまあ、その後の本サイトへのレビューのご投稿の際には、ちょっとだけ想像力を働かせて<あれこれ必要十分なご配慮>を戴けると幸い(汗・笑)。

No.1 5点 こう 2009/11/03 22:51
 ガイド本の折原一氏の推薦で以前読んだ本です。コンゴ共和国を舞台にCIA職員であるヴァーノンを主人公としたスパイ小説です。
 一言でいえば「折原一」が好きそうな作品でした。この手の小説ではおそらく珍しいであろうトリックが使われていますが明らかな前例が私の知る限り2作品ほどあるのとその2作品ほどトリックが効果的に使われていないと感じました。またあまりメインストーリーもひかれない作品でした。ずいぶん前に読んだのですが再読しようとは思いません。現代のしかも日本人には通用しない作品かなあと思いますがこのトリックを読んだことのない方なら見つけたら読んでみてもいいかもしれません。(ただし前例の2作品の方が面白いとは思います)


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ウォーレン・キーファー
1974年01月
リンガラ・コード
平均:6.00 / 書評数:2