皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
していません。ご注意を!
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人並由真さん |
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| 平均点: 6.36点 | 書評数: 2301件 |
| No.2301 | 8点 | ゆるやかに生贄は- ドロシイ・B・ヒューズ | 2026/01/31 07:25 |
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| (ネタバレなし)
その年の5月初旬。ロサンジェルスの青年インターン、ヒュー・デンズモアは、20歳の姪クライティの結婚式に出席するため、アリゾナ州フェニックスに愛車で向かっていた。だが砂漠のハイウェイでヒッチハイクをしているアイリス・クルームと名乗る10代の少女に出会い、仏心を起こして彼女を乗せてやったことから、ヒューは予期しない事態に巻き込まれていった。 1963年のアメリカ作品。ヒューズの第16番目の、そして最後の長編。 ヒューズの翻訳がある長編のうち、「別冊宝石」掲載の2作を除いて、書籍化された邦訳は3冊とも読んでいる。十数冊の著作の中からセレクトされて? 翻訳された作品がそれなりに出来がいいのはまあ当然といえば当然だが、どれもそれなり以上に面白かった。 いずれにしろ本書は、先の訳書『青い玉の秘密』の邦訳刊行から、ちょうど10年ぶりの旧作発掘新訳紹介である。それで少し楽しみにしてはいたが、刊行されてから半年以上たってようやっと読んでみた。 全体の4分の1くらい読み進んだところで、ああ……というサプライズがある。 本書の解説(吉野仁氏の担当)ではネタバレを断った上で解説してあるのでまだいいが、Amazonの内容紹介はちょっとアブナイ。なるべくなら目にしない方がいい。 (ちなみに現状でレビューをくれている数名の購読者各人は、ちゃんと配慮した物言いをしており、リテラシーが高くてよろしい。) とはいえそのサプライズ自体がミステリ的な大ネタ、という訳では決してなく、むしろ巻き込こまれ型のサスペンス作品としてはその(軽い?)驚きを経た中盤以降がヤマ場となる。 話の起伏の付け方に、ページタナーとしての職人性を実感。 さすがこの作品までに実績20年以上のベテラン作家(どちらかといえば寡作で、本書の前の作品は11年前の1952年だったそうな)という貫録で、良い意味で話の幅を広げず、クライマックスのギリギリのギリギリまで主人公を追い込んでいく作劇はパワフルの一語に尽きる。 まあ悪く言えばシンプルすぎるくらいシンプルな、曲のない……とまでは言わないにせよトリッキィさなどとは無縁な話、ではあるのだが、読み物小説として最高級に面白い。 (なお作品の内容に、時代性・社会派的なメッセージを感じてもいいが、むしろ<そういう主題>を具材にしたエンターテインメントとして楽しんだ方がいいだろう。) 重ねていうが、ヒューズ面白い! これまで読んだなかでは本書が最高だったが、未訳長編がまだ10作近くあるのはもったいないなあ。もう少しどんどん発掘してほしい。 |
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| No.2300 | 8点 | 死の絆 赤い博物館- 大山誠一郎 | 2026/01/30 15:22 |
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| 今回は全5編収録。
良い意味でとても安定した面白さで、個人的に比較・連想するならホックのレオポルド警部シリーズあたりを読む愉しさに通じる(加えて、石沢英太郎の牟田刑事官ものあたりの雰囲気にも近いかも?)。 第4話のホームレスと国会議員の同じ現場での同時他殺? 事件など、ああこれはジェイムズの『死の味』(評者はまだ未読だが、ジェイムズご本人が来日の際に新作構想の形で御当人から話を伺った)ネタだな? と思いきや、本書の巻末に作者自身の各編のメイキング記事あとがきがあり、正にこれはそちらへのオマージュ、と語ってある。ほかにも各編がいかに既存の名作へのオマージュ、新世代作家からの挑戦という主旨で書かれたか、ミステリマニア作家としての愛情たっぷりに(特にネタバレはないと思う。そこにも感心)語られており、本書の評点もこのあとがきで一点……いや0.5点おまけ。 その4話など冴子の推理がやや直感に過ぎるかな? というものもないではないが、最後の名探偵イヤー・ワン編がなかなかぶっとんでおり、良い感じにいかにも奇想パズラーという味わいで面白い。 (もし、この程度で? という方は、さぞミステリを読まれているのだと思うが。いやイヤミや皮肉ではなく。) いずれにしろ今回もとても楽しかった。作者自らが一番、自作の連作のなかではトリッキィなシリーズと自負しているんだけど、ここ(本サイト)ではあまり読まれないのね。少し残念である。 |
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| No.2299 | 6点 | 今日未明- 辻堂ゆめ | 2026/01/30 01:34 |
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| (ネタバレなし)
一定の地域内で生じた、別々の5つの<人が死んだ逸話>。 それらの出来事をニュース報道(たぶんネットの)が最初にダイジェストで概要を伝える……という形で各編が開幕。 あとはそれぞれのエピソードごとに、その局面に至るまでの経緯を深掘りしていくストーリー……という形式のミステリばかりを集めた、登場人物などはまったく異なるものの、広義の連作といえる中短編集。 Amazonのレビューで総じてべらぼうに評判がいいので、仕込みかサクラじゃなければ、それなり以上には楽しめるだろう? という期待を込めて、読み始めた。 うーん。アベレージでいうと100点満点で、60~70点くらいの諸作の出来が大半。 で、基本はイヤミスだが、やはり中にはちょっと毛色の違う読後感のものもあり。ソレがどれか、あるいは後味がどうとか言ってしまうと、ある種のネタバレになるので、控える。 中堅作家の手堅い短編集、という感じだが、一本だけ、個人的にこれはミステリ的にもなかなか……というのがあった。これも何で良かったかが言いにくい作品なので、口をつぐむ。ただ、私的には見事にうっちゃられた、とだけ言っておく。 ヒューマンドラマ的ミステリから青春ミステリとか、職人的に幅広い作風の著作を書き連ねている印象の作者で、こういうものも書けます、と地味に才気を示した感の一冊。 Amazonでの絶賛はちょっと過剰じゃないかい、とは思うけれど、一冊まとめて佳作~秀作の中か下。 【2026年1月30日追記】 イヤスミ基調の作品集だから仕方がないかもしれんけど、5本の中に一本(?)だけ、ある種の、あるいはある状況の読者には、これは絶対に読ませたくない! とj本気で思った話がある。どれかかはここでは言えない(言わない)が、当該の方はサブタイトルと最初の1ページ目のイントロ部分で警戒して、そこで読むのをやめるのを老婆心ながら推奨したい。 |
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| No.2298 | 8点 | 百年の時効- 伏尾美紀 | 2026/01/28 12:55 |
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| (ネタバレなし)
三日かけて(実質2日で)、昭和編→平成・令和編とその区分で、それぞれイッキに読んだ。 巻頭の主要登場人物表をコピーして余白に各キャラの情報を書き込み、さらに自作のメモで登場人物一覧リストを補遺しながら、読み進む。 非常に腹ごたえのある作品だが、こちらの現代史の記憶に訴えて来る物語の流れ、さらに相応の格調はあるがリーダビリティの高めの文章とあいまって、スラスラ頁がめくれる。 昭和編の主人公コンビ、鎌田&湯浅もいいが、平成編の方の主役・草加の、ややこしい立場のなかで苦悩するキャラもいい。 最後まで読了すると、事件の内実は込み入ってるようで、実は存外に良い意味でシンプルな面もあり、その辺は得点要素。しかし情報の物量攻撃のなかで、中盤で一度疑った大ネタを失念し、最後にムニャムニャ……。 これも確かに昨年の国産の収穫のひとつであろう。 数年後、文庫化されて誰か解説を書くミステリ評論家は、ユーナックの『法と秩序』とかウッズの『警察署長』とか引き合いに出すんだろうな、と予見(ちなみに評者はまだ後者は未読)。 いやミステリ的なネタバレともなんとも関係なく、単に三世代ものの大河警察小説ロマンというだけの話だけど。 |
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| No.2297 | 8点 | 抹殺ゴスゴッズ- 飛鳥部勝則 | 2026/01/20 15:49 |
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| (ネタバレなし)
作者の御方は、自分が国産の新刊ミステリからほとんど離れていた時期に活躍されていたようなので、これまでの作品にまったく縁がない(汗)。 何やらスゴイ作品をいくつも書いているようなので、自分が2010年代の半ばにミステリファンとして本腰を入れて(?)再動してから、およそ10年、そのうち、この人の作品の良さげなのを読もう、読もうと思っているうちに、今回の新刊が出てしまった(……)。 で、シリーズものでもないみたいだし、じゃあこの新作から読むかと思い、二日に分けて、しかし実質、一日もかからずに読了。 かなり破格な方向性を感じつつも、最終的には新本格のパズラーに決着するのだろう……そんな予感を抱きつつ、それでもバリンジャー風の並行ストーリー同時進行形式とあわせて、かなりスリリングな読書を楽しむ。 ちなみに登場人物一覧は、平成編と令和編、それぞれ別のシートにメモ書き。ともに登場人物(ネームドキャラ)が40人前後に及び、相応の総数だが、単なる脇役・モブキャラはわざわざ名前を設定したりしておらず、読み手をわずらわせないのは親切。 一方で、登場人物リストの一覧を作ったおかけで、ある程度、先のサプライズが読めてしまった面もないではないが、まあそれは、成り行きみたいなものか。 600ページを超える紙幅に量感と質感があり、同時に思ったよりはマトモな新本格ミステリであった、という感慨もある。終盤の正に<波状攻撃>風の謎解きにも満足。 他の皆さんがおっしゃっている通り、青春小説としての味わいも、あれこれ豊潤でよろしい。 期待通りに、面白かった、というところ。 |
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| No.2296 | 6点 | ハウスメイド- フリーダ・マクファデン | 2026/01/16 07:36 |
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| (ネタバレなし)
●ミステリが読みたい! 第1位(ハヤカワミステリマガジン2026年1月号 海外篇) ●週刊文春ミステリーベスト10 2025海外部門 第3位(週刊文春2025年12月11日号) ●このミステリーがすごい! 第3位(2026年 宝島社 海外編) ……こんなに高評でなければ、良い意味でもうちょっと期待値が下がって、もっと楽しめたであろう。その意味ではソンした作品。まあ、こっちも評判だったから読んだところも大きいんだけど(なんなんだ)。 シーソーゲームの最初のあたりはふーん、ああ、で、その後の2つ目3つ目のツイストの方がちょっと面白い。最後はまあ。 最後まで<評判>に振り回されたような読書ではあった。 つまらなくは無かったが、いずれにしろ、これが昨年のベスト上位と聞くと、あ、そう、という感じがそれなりに。 2作目? 読むんじゃないの? たぶん。 |
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| No.2295 | 6点 | 松本清張編 黒い殺人者- アンソロジー(国内編集者) | 2026/01/13 18:42 |
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| (ネタバレなし)
松本清張編(名義貸し?)の、翻訳短編ミステリアンソロジー「海外推理傑作選」(全6巻)の第3集目。収録作は以下の通り。 けちんぼハリー / リチャード・ハードウィック 血なまぐさい家系 / リチャード・デミング サマー・キャンプ / ドナルド・ホニッグ 相続人の死 / エド・レイシー 黒い殺人者 / ロバート・C・アクワース うそつき / ウィリアム・ブリテン 静かなる逆流 / スタンレー・アボット テーブルの男 / C・B・ギルフォード 観察 / アーサー・ポージス 七番目の男 / ヘレン・ニールセン 久々にこのアンソロジーを読んで、収録作品のほぼ全部がごっつう面白かった第4集「密輸品」に比べると、さすがに全巻あのボルテージは維持できない、という感じで、こっちはトータルではやや弱く感じた。 それでも巻頭の3本(ハードウィックやデミング、ホニッグ)など、往年の日本語版「ヒッチコック・マガジン」の掲載作みたいな歯応えで、小粋な短編ミステリを読む愉しさが満喫できる。表題作は、ああ、そういう意味(趣旨)のタイトルの作品ね、という思い。 レイシーがなあ、作者の狙いはわかるし、よく出来ているのかもしれんが、ちょっとこの路線アンソロジーで読むのは違うだろ、という感じ。 いや、もっと破格なのは最後のニールセンで、1960~70年代の日本語EQMMかHMMの巻末に載ったボーナス中編みたいな感じで、その意味では懐かしく良かった(&まあ、読み応えもあった)が、いかんせん、レイシー以上にほかの作品と共存する空気を読まない(?)場違いな作品が来てしまった、という印象(笑)。 だがその前のギルフォードとポージスはなかなか良かった。ギルフォードはどっかでこの2020年代に、日本のミステリ研究家による個人作家短編集出してくれんかな、という感じ。ジャック・リッチーみたいな感じで需要があると思うんだけど。ポージスは死体処理テーマの作品だが、トリックの創意もさながら全体の奇妙に静謐な雰囲気がとても良い。終わりの方に当たりが出た! という手応えであった。 なんだかんだ言っても、残りの巻も一冊ずつ消化するのが、とても楽しみではある。 |
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| No.2294 | 7点 | 虎口- フェリックス・フランシス | 2026/01/13 02:06 |
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| (ネタバレなし)
「私」こと37歳の弁護士ハリィ(ハリソン)・フォスターは、ロンドンの民間トラブルコンサルタント会社「シンプソン・ホワイト社」のスタッフとして活動していた。そんなハリィの新たな任務とは、英国の競馬界のメッカのひとつ・ニューマーケットのとある厩舎で生じた火災事件に関する事だった。火災現場はカリスマ的な調教師・オリヴァー・チャトウィックが息子ライアンに任せた老舗の厩舎「カッスルトン・ハウス」。そこでハリィ自身の旧友でもある中東の小国の王シーク・アーメッド・カリムが預けていた馬が焼死し、さらに身元も性別も不明な死体が発見されていた。事件性を探る警察の一方でハリィもまた事件に首を突っ込むが、やがて事態は思わぬ方向へと連鎖していった。 2018年の英国作品。 次男フェリックスによる単独の「新・競馬シリーズ」の第8弾。 主人公が弁護士という素性の「競馬シリーズ」は、すでに親子共作時期の『審判』があるが、本作はその設定に加えて主人公ハリィが競馬にはまったく門外漢という文芸を加味。法曹家としては一人前で現職トラブルコンサルタントとしての評価も高いハリィだが、ウマのことはほとんど知らない、という趣向が主人公のキャラクターを実際の年齢設定よりも若やいだものにしている。 良い意味で地に足がついた事件の調査ぶり、警察や関係者との情報交換の流れ、引き締まったそしてテンポの良い会話と筋運び……といつものフランシス一家の「競馬スリラー」だが、次第に残すところ後半3分の1くらいでちょっと異様な事件のコアが見えてきて、その辺の緊張は父親ディック(名義)時代の某初期作を思わせる。<馬が凶器>にされるあたり(詳しくは本編をどうぞ)の趣向というか、サスペンス&スリルも面白い。 要するに競馬シリーズの定番を守りながら割とイケる方で、息子フランシス時期の未訳のノンシリーズの中からこれを選んで翻訳したのは、訳者の選球眼が確かだったということになる。ヒロインのケイトもいいし。 で、本文P123という前半の途中で、ハリィが上司のASW(社長のアンソニイ・シンプソン=ホワイト)と電話で相談し、ちょっとだけ先輩の、頼りになる同僚の名を出して応援を求める描写がある。だが彼は別の任務で国外で仕事中ということで、その当該の先輩の件はそれだけになるのだが、なんかいかにもソレっぽいので、ん!? このキャラクター、これまで書かれた「競馬シリーズ」のどれかの話の調査員かな? 本作はそっちと話が姉妹編的に繋がってるのかな? とも思ったが、読了後に巻末の訳者のあとがき(解説)を読むと特にそんな話題も出てこないし、こちらの勘繰り過ぎだったようである。まあもしかしたら本作の方が仕込みで、今後何かあるのかもしれないけれど? いずれにしろ、作品としてはフツーに面白い。 エピローグのなんともいえない、ある種の余韻もしみじみ。 セレクトで翻訳、と言わずにフェリックス版の未訳の新作、全部日本語で紹介してほしいものだ。十分に息子の方も固定客はもうとっくに掴んでるじゃろ。 |
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| No.2293 | 8点 | ネズミとキリンの金字塔- 門前典之 | 2026/01/10 14:12 |
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| (ネタバレなし)
後半は怒涛の勢いで読了。 実に強烈な犯人像、あまりに(中略)な犯罪計画。 2025年はこれを読まなきゃダメだろ、と実感。 (といいつつ前者に関しては、某深夜アニメの某メインキャラクターを思い出した←絶対にネタバレにならないと思う。) 一方でどこかで見たような仕掛け、やっぱりな、と思う細部のギミックも多いが、これだけ饗応精神豊かに盛り込んでくれれば、不満はない。しかも最後には、ヒューマニズムでヌカミソサービスしてくれるし。 >「屍の命題」(別題「死の命題」)(1997年)に並ぶ怪作と思います。 とおっしゃるnukkamさんのご意見にはまったく同感だが、今回は個人的にはモロ島田荘司であった(といえるほどA級の島田作品を読んではいないのだが)。小島正樹がいなかったら、十分に直系の後輩作家といえるだろう。 いろいろ凄かったが、なぜかシリーズの中での現状のベストワンにはしたくない。そんな思いも抱く作品。 |
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| No.2292 | 8点 | 終止符には早すぎる- ジャドスン・フィリップス | 2026/01/08 14:48 |
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| (ネタバレなし)
その年の6月のニューヨーク。「ぼく」こと31歳の青年弁護士コーネリアス(コーニー)・ライアンは、上司のベテラン弁護士ジェイコブ(ジェイク)・クレイマーから、噂の富豪で56歳のマシュー(マット)・ヒグビーの相談に乗るよう指示を受けた。ヒグビーは競馬界のある組織の要人の立場を希望しているが、その組織の長であるリー・フーパー元将軍が、ヒグビーの旧悪を理由に反対しているらしい。ヒグビーと対面したコーニーは成り行きから、彼の恋人らしい中年の美女フランシス・テリルのアパートに赴くが、彼女は若い暴漢2人に何らかの目的で家を荒らされ、フランシスの娘で20歳代初めの美女ドーンとともども何とか危機をやり過ごした状況だった。暴漢の正体に心当たりがあるらしいヒグビーが行動に出る一方、コーニーはテリル母娘と対話するが、事態は思わぬ殺人事件へと展開していく。 1962年のアメリカ作品。 作者ジャドスン・フィリップスは、ヒュー・ペンティコーストの別名で、個人(評者)的には数か月前に全くたまたま読んだ、その別名義でのポケミスの旧刊『ささやく街』がエライ面白かったところなので、実にタイムリーに次の新刊(未訳の旧作の発掘翻訳)が出た! という思い。 私は、願った希望が叶う、世界が私中心に動く、翻訳ミステリファン界の特異点。早く来てくれ、ガブリエル・ゲイル。 閑話休題。 そんな状況の上に、本作はあの植草甚一「フランクランテ・デリクトでがホメていた秀作だったそうで(そーだったけ? 「フランクランテ~」は大昔に読んだけど、さすがに記憶にない)、それも発掘新訳企画のブースト的に後押しになったらしい。実にいいことだ。 ということで相応の期待を込めて読みだしたが……いや話の内容そのものは、凝縮された時間の流れのなかで相次いでイベントが生じてテンポよく、フツーに面白い。翻訳も流麗で、読みやすい。 ただしちょっとネタバレするけど、表紙の画題や裏表紙のあらすじにある女子の飛び降り騒ぎっていうのは物語の中盤になってからのイベントで、かなり待たされる。今回の翻訳のこの売り方は、ちょっとアレというかピーキーだ。 私ゃカーター・ブラウンの『ストリッパー』みたいに、いきなり飛び降りるかどうかの騒ぎの場面から開幕するものと思っていた。 でさらに、後半の展開は小説、読み物、隠されていた人間関係の綾が続々と明かされる人間ドラマとしてはかなり面白いけど、ミステリとしては割り切ったくらいに推理の余地もなく、なんか、その辺はどーなの? という感じ。 あと、あんまり言いたくないんだけど、物語の後半でその飛び降り娘を説得にくるメンツが、交代制のローテーションみたいに次々入れ替わるのが、ドリフのコントみたいでこちらもちょっとなんだかなあ、であった。 (いや、劇中の登場人物たちはひとりひとり、 本気でシリアスに行動しているんだけどね。) というわけで全体的には読み物、エンターテインメントとしてはなかなか良かった(後味もいいし)けれど、個人的にペンティコースト、ここまでスゴイのか! と唸らされた優秀作~傑作『ささやく街』の域にはひとつもふたつも及ばない感じです。まあ、期待値のハードルも高すぎるんだけどね。 ただまあ、巻末のリストを見るとペンティコーストの未訳作品ってとんでもなく、冗談でなく空の星の数くらいのイメージである感じなので、まだまだオモシろいものはいっぱい眠っているでしょう。 本書もワタシのヘボ感想なんかは別にして、Amazonでの評とかはなかなかいいみたいだし。 今後もどんどん未訳の旧作で良さげなのを発掘翻訳願います。 評点は実質7点だけど<植草甚一がホメた未訳作品を出します>という版元と編集部の心意気が最高級にウレシイので、もう一点オマケ。 同じ流れで、ブルーノ・フィッシャーの未訳長編あたりとか、4~5冊くらい出してくれませんか、新潮文庫さま。 |
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| No.2291 | 5点 | 宙に浮かぶ首(春陽堂文庫版)- 大下宇陀児 | 2026/01/05 04:39 |
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| (ネタバレなし)
春陽堂文庫版で読了。全180ページ弱と薄めの本だが、本文は二段組で小さ目の級数がぎっしり。 短めの長編(長めの中編?)の2本『宙に浮く首』『たそがれの怪人』を同時収録の上、さらに巻末に短編『画家の娘』まで併録してある。 でもサクサク、ひと晩で全部、読める。 『宙に浮く首』(元版は1931年刊行/初出は不明) その年の冬。信州の降雪の村・飯沼村で、19歳の娘・樋口妙子が何者かに惨殺された。だが村の水車業の男で「アホウの与七」「コブ七」と異名を取る中年男・唐沢与七が、事件現場の周辺で宙に浮かぶ素性不明の首を見た! と言い出した。 『たそがれの怪人』 資産家の高楠孝作氏は温情から、夭逝した友人夫婦の忘れ形見の娘・篠村澪子を後見し、実の娘のように養育した。だがその孝作氏も先年他界。美しく育った澪子は、高楠家の長男である潤一郎と両想いの末に婚約を交わす。そしてその年の2月19日、海外から船便で帰国する潤一郎を、澪子は高楠家の次男の少年・潤次郎とともに港に迎えに行ったが。 『宙に~』の浮遊首のトリックというか真相は、現実にはまずありえないもの。だが一方で、良い意味で旧作にも新本格系にもありそうな? おバカネタでもあり、個人的には面白い。そこから別のロジックが展開していくあたりもちょっと気が利いてる。ただし作品の中盤~後半は、かなり安手の猟奇スリラーになってしまい、その辺は残念。 『たそがれ』は、大した推理要素もない通俗スリラーだが、キーパーソンの設定というか劇中での行動原理に、妙なロマン味(あくまで読み物的な)を感じさせる面もあり、そこらへんは作者の持ち味か。 短編も含めて三篇、どれも他愛ない作品ではあるが、まあたまにはこういうのも。 |
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| No.2290 | 6点 | 時計殺人事件- ルーファス・キング | 2026/01/02 22:32 |
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| (ネタバレなし)
その年の春のある夜。NY市警のヴァルクール警部補が帰宅しかけたところ、署内に何やらただならぬ? 通報があった。どうやら富豪ハーバート(ハーブ)・エンディコットの美貌の奥方からの電話で、夫妻の自宅周辺で何か特別な事が生じているらしい? 同家に赴いたヴァルクールは、夫人から状況の説明を受けるが、そんな彼の眼前で事態はさらに思わぬ方向へと遷移していく。 1929年のアメリカ作品。おなじみ? ヴァルクールものの第一弾で、黄金時代の一流半都会派パズラー。 エンディコット家に赴いたヴァルクールが出くわす第1章ラストのサプライズから始まり、起伏に富んだストーリー……になるはずのところ、登場人物の描写も話の転がし方の演出も、どれも中途半端な練り込み不足感が強い。 真犯人の暴かれ方や事件の構造の着想など、かなり面白くなる可能性は秘めてたんだけどね。 ヴァルクールの部下の刑事チームがしっかりお話の流れに組み込まれるのも悪くはないし。 そこ、もっと推そうよ、といいたくなる箇所を次々と雑に放り出して、それでも二流品としてはソコソコ面白いものはできた……?(でももったいない!)という感触である。 エピローグの余韻も、謎解きミステリの技巧性と遊戯性が好きな送り手として、ちょっとハジけてみようとした(でもいまひとつキマらなかった……)感触はある。 ひとばんの内に事件がおおむね片付いて、その時間経過が明記される趣向は確かに楽しいが、ミステリの謎や事件の構造とはあまり関係のない、ただ作者がやりたくてやった(読者を楽しませようとした)悪い意味で、単なるギミックだったのはちょっと残念。 ただまあ、作者なりの茶目っ気は『不変の神の事件』同様に感じられる面もあり、前述の通り一級半~二級品の黄金時代パズラーとしてのそこそこの魅力は感じないでもない。 高い期待はしないので、残りのシリーズの未訳分も、少しずつ出してください。 |
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| No.2289 | 6点 | 仮面の情事―プラスティック・ナイトメア- リチャード・ニーリィ | 2026/01/02 06:41 |
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| (ネタバレなし)
1978年のアメリカ作品。 数か月前に、出先のブックオフの100円棚で遭遇。 思い起こせばニーリィを読むのは、2014年にリアルタイムの新刊で『リッジウェイ家の女』を手にして以来である。 で、これは読み残しの一冊で、久々に……という気分で購入。元旦が過ぎた深夜、1月2日の早朝から読み始めた。ちなみに映画の方は未見。 作中の時系列での重要なイベントの自動車事故が大晦日の深夜の直後、その年の元旦の早朝に起きていて、妙な暗合に笑った。 で「さすがに、真相の大ネタはこれしかないだろう!?」という予断で読み進み、それに関しては、まあムニャムニャ……だった。 が、ストーリーテリングの妙で読ませ、さらに良い意味での力業で唸らせる。 ただしその一方で、法医学がさらに進んだ21世紀の現在なら……だろうな、とも思う。 クロージングの独特な余韻はいいかも。 |
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| No.2288 | 8点 | あるフィルムの背景(角川文庫版/ちくま文庫版)- 結城昌治 | 2026/01/01 21:30 |
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| (ネタバレなし)
少し前の古書市の一冊50円均一のワゴンで見つけた、旧版の角川文庫版で読了。よくよく考えたら、これもすでに何十年も前に買ってあったかもしれない。まあいいか。 全8編、どれも昭和のクライムストーリー&奇妙な味、系の短編として一定以上のレベルで面白い。冒頭の『惨事』からして、魂を掴まれる。 ベストは……その『惨事』ほか『蝮の家』『あるフィルムの背景』『孤独なカラス』『私に触らないで』『みにくいアヒル』『老後』『女の檻』。……どれも佳作の上~秀作だな。自薦傑作選の触れ込みは伊達じゃない。 『私に触らないで』のオチはミステリとしては他愛ないが、そこに行くまでの話の曲のつけたかたがハンパじゃない。 『女の檻』は、なんか抜け道があるのでは……とあれこれ考えたが、やはり(中略)であろう。 『老後』は暗い結晶感が絶品だな。 『みにくいアヒル』は心に響く。原作版『いじわるばあさん』の「男としての(中略)」の回を思い出した。 表題作がある意味で毛色の変わった感じで、結城ハードボイルドの系譜。さらに解説でも名が出たシムノンの雰囲気にも似てる。 昭和ミステリのノンシリーズ短編集好きなら、一読の価値はある。 |
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| No.2287 | 8点 | 松本清張編 密輸品- アンソロジー(国内編集者) | 2026/01/01 16:26 |
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| (ネタバレなし)
1970年代後半にEQ(ダネイ)が来日した際に、その縁で集英社から刊行された、海外の短編ミステリアンソロジーシリーズ「海外推理傑作選 松本清張編」全6冊の4冊目。 本国版「ヒッチコック・マガジン」系のアンソロジーをベースに日本で組み替えた内容のようで、清張自身のセレクトというのも、たぶん口上のみ(個々の作品を読んでのコメントは本人のものだとは思うが)。 叢書総体の詳しい情報については、数年前の例の「ミステリ・ライブラリ・インヴェスティゲーション」に記述があったはずだけど、本の山に埋もれてすぐ出てこない。 そもそもこの今回のアンソロジーも、もともと全6冊のうち4冊くらい買ってあったハズだが、出先のブックオフで端本が1冊200円の帯付きで3冊あったので、ダブってもいいやと買ってきた。 で、この4巻『密輸品』の収録作家・作品は以下の通り。 催眠術師 / ヘレン・ニールセン 事実と判決 / オーガスト・デーレス 密輸品 / ジェイムス・ホールディング 骨董品 / ハル・エルソン 満潮 / リチャード・ハードウィック 中身は死体 / C・B・ギルフォード ある日花咲く庭で / フレッチャー・フローラ マレーボーンへ3マイル / ヘンリー・スレーサー 感度のいい陪審員 / リチャード・デミング 捨て台詞 / ボーデン・ディール 『マンヴィル(マニー)・ムーン』で旬の話題のデミングを含めて50~70年代当時のヒッチマガジン系作家が大半で、ほぼ全編が活字で読む「ヒッチコック劇場」のようで、面白かった。中ではデーレス(ダーレス)のソーラ・ポンズものだけが異彩だが、これは本国版ヒッチコックマガジンの旧作・再録路線の反映か? そのポンズものも、殺人容疑者に常態的に寛容な裁判官の周辺で起こる謎の裁きの殺人? というテーマで、なかなか面白い。 ベストは「ああ……」と思わず最後に溜息が出た表題作と、ブラックユーモア&落語のような『中身は死体』。フローラやデミング、ディールも面白い。 というかハズレがない。スレッサーは少し長めでいつものコンデンス感とはちょっと違うけれど、なんか一時間枠版のアンソロジードラマみたいな感じで、まあこれはこれで佳作以上。 昔の翻訳ミステリ雑誌、日本版「EQMM」~80年代辺りまでのHMM,日本版「マンハント」、同「ヒッチコックマガジン」さらには「別冊宝石」の一部まで、は、(多少方向性に幅があるとはいえ)こーゆー楽しさを毎月提供してくれたんだよな。 もうあんな時代は二度と来ないだろう。 他の巻も読むのが楽しみ。 |
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| No.2286 | 6点 | セブン殺人事件- 笹沢左保 | 2025/12/28 18:29 |
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| (ネタバレなし)
忙しい時にミステリ好きが、就寝前に喝を癒す、笹沢短編集。 なんかオリジナルの元本も大昔に買ってあったような気もするが、結局、今回、ブックオフの100円棚で買った美本の双葉文庫版で、初めて読了。 ①「日本刀殺人事件」……トリックは予想の範疇内だが、笹沢には似合ってるよね、このネタ。 ②「日曜日殺人事件」……犯行のバレる経緯は、よくありそうだが、これはこれで。 ③「美容師殺人事件」……被害者が殺された動機が(……)。余りに切なく、その意味で妙に心に響いた。チェスタートンに通じるものもある? ④「結婚式殺人事件」……当該の人物は、その段階に至る前にいくらでも、とは言わないにしても、希望のデータを得る機会はあちこちにあったのでは? どーも納得できない。 ⑤「山百合殺人事件」……ミステリとしては底が浅いんだけど、これも笹沢ミステリの枠内で読むとちょっと違う含意があるよね。まあまあ。 ⑥「用心棒殺人事件」……殺人トリックよりも動機が、印象的。③と並ぶそっち方面の佳作。 ⑦「放火魔殺人事件」……ストーリーテリングとして見るなら、B級ミステリとして一番よくできてるだろう。 このシリーズ、これで終わりなのか。もうちょっと読みたかった。作者のロマンチシズム志向を背負った送り手の分身的なキャラとして、宮本が地味にいい。 |
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| No.2285 | 5点 | 小路の奥の死- エリー・グリフィス | 2025/12/28 09:31 |
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| (ネタバレなし)
読んでる間は結構、面白かった。 さらに良い意味であれやこれやと読者を振り回しながら、終盤に向けて少しずつキャラクタードラマを整理していく話の作りはなかなか達者だと思える。 で、まあ、肝心の真犯人は確かに意外だが、一方で正にnukkamさんのおっしゃる通り、そんなモン、後出しされてもナー、という気分である。1920年代辺りの、謎解き小説としての整合性なんか二の次で、とにかく読者を「あ」と言わせればいいんだ、というような感じの作品。 アニー・ウィルクス(キングの『ミザリー』の)あたりが本書を読んだら、「そんなのおかしいわよ!」とマジメに怒るのではないか(うんうん同感)。 ミステリ作家としての作者の心得違いを、現在形のCWA所属の面々が「あのね、グリフィスちゃん、そもそも謎解きミステリというのはね……」と諭してあげてください。 シリーズ第4作目がどんなモンになっているか、楽しみな反面コワイ、いやコワイ反面、楽しみです。 |
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| No.2284 | 5点 | 国会採決を告げる電鈴- エレン・ウィルキンソン | 2025/12/24 11:30 |
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| (ネタバレなし)
1932年の英国作品。 確かに裏表紙の通り、二つの世界大戦の間のリアルな国情は感じられるし、翻訳の良さもあって序盤はそれなりに面白い。 (特にメインヒロインのひとりのアネットが、問題発言を放つあたりまで。) ただ中盤からはフツーの素人探偵たちが足で事件を追い回す流れの上、いかにもお約束的にお話の中だるみを押さえました、という感じで起きる小さな事件など、本当にどっかで(というより悪い意味であちこちで)読んできた、水準作~佳作のミステリのパッチワークという印象。 終盤の事件の真相はちょっと面白かったが、nukkamさんのおっしゃる通りにその情報の大半は後出しで、ミステリの完成度としてはあまりホメられたものではない。気の抜けるようなトリック(といえるのか?)は、実はまあキライではないのだが。 他種業作家の書いた、それなりに商品性のあったセミプロミステリというところ。 佳作の中くらいかな。 |
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| No.2283 | 8点 | 乱歩と千畝:RAMPOとSEMPO- 青柳碧人 | 2025/12/20 07:57 |
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| (ネタバレなし)
二日前に読了したが、なかなか感想が書けない。 おおざっぱな物言いをしてしまえば、もちろん歴史ドキュメントでもなんでもなく、むしろ「忠臣蔵には中村主水が関わっていた」「桜田門外の変にも中村主水が関与していた」「中村主水が平賀源内と知り合いだった」(←もういいです)と同質の、歴史史実ものに見せかけた(?)それっぽいフィクションのお話エンターテインメントだが、それはともかくとして実に面白かった。 乱歩と杉原千畝という、実際にはいくら何でも接点なんかねーだろ? と思える両人の関係性を、良い意味で最大限に強引に手繰り寄せ、相応の想像力と資料の読み込みで築き上げた本書。 その中身は、大正~昭和中盤までの時代のオールスターものでもあり、そういう意味での興趣も尽きない。 一番評価されるべきは虚実をまぜこぜにしながら作中人物たちの縦横自在な人間関係を組み上げた、作者の破格の構成力だろう。 ほぼ全編が良かったが、一番グッと来た(死語)のは第7話の、あの人もあの人も……のくだりかな。山村正夫のあの本に通じるトキメキがある。本書のそこには万端な意味で歴史上の真実はないかもしれないけど、たぶん確実に戦後の本邦推理文壇での真理がある。島田一男も登場させてほしかった。 この本に対するたぶん一番近い自分の感慨は、少年時代にベアリング=グールドの『ガス灯に浮かぶその生涯』を熱に浮かされるような思いで読みふけったあの時の気分。 本書ももっと若い頃に読んでいたら、間違いなく殿堂入りしていたね。十~二十代の頃に出会っていたら、10点満点で10点だと思う。実際には読んでる間の熱狂で9点、二日経った今ではとにもかくにも頭が冷えて、8点の上だけど。 で、さらに言うなら本書はおそらく完全に、良くも悪くもNHKの朝ドラの世界です。いやわたしゃ、朝ドラって『なつぞら』の東映動画(がモデルのアニメスタジオ)編以降しか、まともに観たことないんですが(汗・笑)。 まあ、十中八九、その路線もしくは近しい場で、十年以内に実写ドラマ化されるとは思うのだ。 |
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| No.2282 | 7点 | 巫女は月夜に殺される- 月原渉 | 2025/12/17 15:20 |
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| (ネタバレなし)
読み始めてすぐ作中に××という名のヒロイン(巫女さん)がいると意識したので、その瞬間に、かなりおバカなことを考えた。 そこのあなた、同じこと思ったりしていません? もちろん結果がどうだったのかは、ここでは言いませんが(笑)。 最後まで読んで、……ああ、そう来たか! と個人的にはかなりツボにはまった。 いや、早々に気づく人はいるかも知れんけど、なんというかいささか大味なことは認めた上で、それでも物語世界がでんぐり返り、もうひとつの世界像が現れる快感は確かにある。 なんかね、1950年代あたりの新世代作家が書いた技巧派ミステリの原書をすぐ翻訳したポケミスかそのほか海外ミステリの叢書の中にありそうな感じの食感。 私は結構スキです。 ただ、犯行現場というか隠し里の図(地図)は欲しかった。 |
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