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[ 本格/新本格 ] 電報予告殺人事件 |
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岡本好貴 | 出版月: 2025年05月 | 平均: 6.00点 | 書評数: 1件 |
![]() 東京創元社 2025年05月 |
No.1 | 6点 | 人並由真 | 2025/07/25 09:39 |
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(ネタバレなし)
19世紀後半、ヴィクトリア朝時代の大英帝国は、世界規模で発達・普及した電信技術の大きな恩恵を受けていた。国営化され、合理化された電信事業の職場で活躍するこの道10年の女性電信士ローラ・テンバートン。かつて青春時代に恋よりも仕事を選んだ彼女も現在では29歳のハイミスになり、今後の進路について迷っていた。そんななか、彼女が勤めるエセックス州のチャーチゲート局の中で、ある夜、予期せぬ殺人事件が発生。しかもそれは密室状況での不可解な殺人だった。 前作『帆船軍艦の殺人』以来、2年ぶりのこの作者の新作(第二長編)。 今回も基本的には前作同様、物語性の豊かな時代ミステリで楽しい(海外作品の旧作で言うなら、シオドー・マシスンの『悪魔とベン・フランクリン』辺りの味わいを想起する)。 ただし主人公の日常の描写が、海戦を含めて船上での冒険行と隣り合わせだった前作に比べ、19世紀終盤当時の英国の電信業界の掘り下げというネタはどーしても地味である。 まあそれでも当時の電信技術トリヴィアの描き込み、職場もの小説としての面白さ、などもあって、それなり以上に面白い(英国全体の時代風俗描写はもうちょっと作品の厚みにしてほしかった気もするが)。 ミステリとしては中盤辺りで大ネタが割られて、ああ、そっちの方向に行くのね、と、ちょっと悪い意味で、わかりやすくなった印象。 あと個人的に失敗してTwitterでたまたま、本作を先に読んだヒトの感想を見てしまい、その物言いから何となくストーリー&事件の構造が推察でき、実際に予想の通りであった。 (ただまあ、その辺に関しては、思うこともさらにまたあり。以下、ムニャムニャ。) トータルとしては、まあまあ面白かったが、前作より半ランク落としました、というところ。秀作にはいかない佳作。悪い出来じゃないけど。 三作目もこの路線なら、それはそれで素で楽しみにしています。 |