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[ 本格 ] 赤い箱 ネロ・ウルフ |
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レックス・スタウト | 出版月: 1959年01月 | 平均: 5.00点 | 書評数: 4件 |
![]() 早川書房 1959年01月 |
![]() 早川書房 1981年05月 |
No.4 | 5点 | クリスティ再読 | 2025/05/16 17:06 |
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ウルフ物4作目になる。
キャラは「毒蛇」から完璧に仕上がっていたわけだが、異例な「腰抜け連盟」とは違い(すまぬ「ラバーバンド」未読)、本作あたりで安定した世界になってきたのかもしれないな。次作は外出話の「料理長が多すぎる」だし。 本作のギミックは、A:口先だけの依頼人の口車に乗せられてウルフが出張尋問を行うのと、B:ウルフの事務所でゲストが毒殺されること。Aはまあ軽いジャブみたいなものかしら。実はウルフって意外なくらい外出しているよ(苦笑) だけどもBはウルフにしたらメンツをつぶされた激怒案件。この件もあって、ウルフもエンジンがかかる。ちなみにC:途中で依頼人が変更されるというのもギミックかしら。実はこれ真相と絡んで想定外の落着をする。ウルフはしっかりと「経営者」であり、依頼料を取りっぱぐれたら食い上げであるからね。 まあ本作、ミステリとしては大体想定内くらいの話。ミステリとしてはそう「いい」ということでもないのだが、今回読んでいて評者はネロ・ウルフに敬意をもっていることを改めて実感した。マナーをわきまえ、たとえ犯人であっても「ミスター」などの敬称をかかさず、人情の機微に対する洞察力に富み、言葉を濁すことはあっても誰にも明白な嘘はつかず...いや立派なジェントルマンだと思うんだ。 小説家は作者本人より頭のいいキャラを説得力を持って描くことができないと言う。 探偵役の人間としての説得力がこれほどしっかり描けているミステリ・シリーズは少ないんじゃないかな。 |
No.3 | 5点 | 雪 | 2018/07/17 08:56 |
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ニューヨークの有名デザイナー、マクネアーの店でモデルが毒殺された。彼に送られてきた菓子の中に青酸カリが仕込まれていたのだ。嫌疑を掛けられた女性へレンの婚約者は、ウルフに捜査を依頼する。同時に菓子を食べていた関係者に当たるウルフとアーチー。
追って事務所を訪れたマクネアーは自身の遺言書を書き換えた事をウルフに伝え、ウルフを資産管財人に指名する。そしてヘレンの汚名を晴らすよう依頼し、事件の鍵は「赤い箱」にあると語るのだが、その会話の途中に毒殺されてしまうのだった。 7分の1トンの巨体を持つ美食と蘭の愛好者、名探偵ネロ・ウルフ物第4作。ここまではかなりスピーディーです。この後も意味深な発言をした登場人物が殺されるなど、そそる展開が続くのですが、それほど面白くはなりません。「赤い箱」はマクネアーとヘレンの過去に絡んでくるのですが、これを見つければ全てが解決するにもかかわらず、その在り処は一向に不明なままだからです。 ウルフはハンデ持ちの体格で調査は助手のアーチー・グッドウィン任せ。殆ど事務所から外出しない代わりに誤謬など皆無です。事件の真実は常にウルフには自明なのですが、舞台は法の国アメリカ。告発するに足る証拠が無ければそれは何の意味も持たないのです。おかげで作中でもウルフはぶつくさ呟く事になります。この「どうやって証言や証拠を得るか」の手練手管がウルフ物の面白さだと思います(一気に揺さぶりを掛けて追い込むノーマルタイプもありますが)。 初期6作品の中では処女作「毒蛇」と同パターンですね。犯人はウルフにも読者にも大体分かっているけど証拠が無い。「赤い箱」の行方を巡って右往左往しますが、最後にそれを逆手に取って罠を仕掛けます。この部分をどう評価するか。筆は達者ですが人物描写などは「毒蛇」に劣り、罠やミステリ要素もそれほど関心出来なかったのでこの点数です。 |
No.2 | 4点 | 斎藤警部 | 2017/09/16 08:06 |
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ユーモアなかなか。ドタバタ退屈。真相いまいち。スリルとサスペンス、ありません。 「赤い箱」に纏わるイキサツがさんざ仄めかされた挙句、それですか。。。(最後、小道具としての使われ方はちょっとびっくりだけど) 主役コンビを中心とする掛け合いに、眼の醒めるロジックだとか、斬れる物証だとか、心理探偵専門ならそれなりの心理トリックなんかが絡められたら相乗効果で興味津々の一作にもなりそうだが、そういうのも無いんで、ミステリ部分に限ればただただ古臭いばかりに思えてしまいます。 ただ、やっぱりユーモアは良いね。 |
No.1 | 6点 | 空 | 2014/08/29 22:08 |
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巻末解説にはそれまでのネロ・ウルフ・シリーズの集大成的な作品としてありますが、初期作品を読んでいないので、その点は何とも言えません。全体的には、ウルフを辟易させるようなうるさい人物は登場するものの、むしろじっくり型です。動機の基になった秘密はミステリとしてはよくあるパターンと言えるでしょう。事件関係者はごく限られていて犯人の意外性はそれほどありませんし、特にミスディレクションもなく、事件の構造としては非常にストレートです。それでも、真相はそれなりに満足できるものになっていました。また、解決部分での赤い箱の使われ方には驚かされました。
ウルフがグルメや蘭のためではなく、事件捜査で外出するのは(もちろんそんなこと、めったにありません)、ある意味お約束的なギャグなのかもしれませんが、事件の性質から見て必要だったとは思えませんでした。 |