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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ]
黒い山
ネロ・ウルフ
レックス・スタウト 出版月: 2009年09月 平均: 6.00点 書評数: 1件

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早川書房
2009年09月

No.1 6点 2018/08/12 18:28
 ネロ・ウルフの親友にしてレストランのオーナー、マルコ・ヴクチッチが自店前の路上で射殺された。ウルフは身元確認のため遺体安置所に向かうが、その直後に彼の養女であるカルラ・ブリトンが事務所を訪れ、ウルフを糾弾する。マルコと彼女は祖国モンテネグロの独立運動に関わっていたのだ。
 親友の仇を取るためウルフは捜査を進めるが、状況は一向に進展しない。数日後にニューヨークから姿を消すカルラ。そしてウルフの元に、彼女がモンテネグロ山中で殺されたという知らせが齎される。
 ウルフは遂にアメリカを離れ、殺人者を追ってアーチーと共にユーゴスラビアに赴く!
 シリーズ第17長編にして37本目のウルフ物。1954年に発表されました。かいつまんで言うとウルフがユーゴ秘密警察のボスをだまくらかして、親友と養女を殺した犯人をアメリカまで引っ張ってくる話です。色々ガバガバですが。
 旧知の相棒の手引きで、イタリアからアドリア海を横断してモンテネグロに上陸しますが、今回のウルフはアーチーよりよっぽど活動的。山中踏破を物ともしません。一晩寝ると無理が来て「壊疽って知ってるか」とか言い出しますが、音を上げる事だけはしません。とにかく歩きます。現地の描写とか結構面白いです。
 秘密警察の追及を口先三寸でかわしてからマルコの甥の信頼を得るまでは良かったですが、カルラの殺害現場であるアルバニア国境付近の要塞で都合良く犯人が判明するのはちょっといただけませんね。アメリカとモンテネグロに同時に手を伸ばせる相手は限られてますから、ウルフならば遅かれ早かれ突き止めたでしょう。この辺はもう少し工夫が欲しかった所です。

 追記:欧米批評家がスタウトの代表作として選んだネロ・ウルフ物を以下に掲げます。
 参考:http://fuhchin.blog27.fc2.com/blog-entry-88.html?sp

 腰抜け連盟 (1935)  8票
 毒蛇 (1934)  5+(1)票
 料理長が多すぎる (1938)  5+(1)票
 シーザーの埋葬 (1939)  5+(1)票
 ネロ・ウルフ対FBI (1965)  5票
 Xと呼ばれる男 (1948)  4+(1)票  雑誌「EQ」掲載、アーノルド・ゼック三部作
 The Second Confession (1949)  3票  未訳、アーノルド・ゼック三部作
 In The Best Families (1950)  3票  未訳、アーノルド・ゼック三部作
 黒い山 (1954)  2+(1)票
 語らぬ講演者 (1946)  2票  雑誌「別冊宝石」掲載
 編集者を殺せ (1951)  2票
 ネロ・ウルフ最後の事件 (1975)  2票
 ☆()票は同一選者の別選

 以下1票作品
 ラバー・バンド(1936)、赤い箱(1937)、Plot It Yourself(1959)、A Right to Die(1964)、マクベス夫人症の男(1973)
 ギャンビット(1962)、ファーザー・ハント(1968)、(いずれも雑誌「EQ」掲載)
 
 腰抜け連盟強いですね。自分はさほどのものとは思いませんが。
アーノルド・ゼックとはネロ・ウルフ最大の敵で、ホームズ物のモリアーティ教授に相当する人物。「Xと呼ばれる男」以下の作品はゼック三部作と呼ばれています。
 ポケミス版「黒い山」のあとがきでは順次刊行予定でしたがそれから約十年、一向に音沙汰が無いので諦めた方が良いでしょう。


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平均:5.25 / 書評数:4
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シーザーの埋葬
平均:6.40 / 書評数:5
1986年10月
ネロ・ウルフ対FBI
平均:6.00 / 書評数:2
1984年09月
ネロ・ウルフ最後の事件
平均:4.00 / 書評数:1
1983年02月
マクベス夫人症の男
1976年10月
料理長が多すぎる
平均:5.88 / 書評数:8
1961年01月
ラバー・バンド
平均:6.00 / 書評数:2
1960年01月
腰ぬけ連盟
平均:5.00 / 書評数:4
1959年01月
赤い箱
平均:5.00 / 書評数:3
1958年01月
我が屍を乗り越えよ
平均:5.00 / 書評数:1
毒蛇
平均:5.60 / 書評数:5
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Xと呼ばれる男
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語らぬ講演者
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女が多すぎる
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