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[ 本格 ]
マクベス夫人症の男
ネロ・ウルフ
レックス・スタウト 出版月: 1983年02月 平均: 7.00点 書評数: 1件

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早川書房
1983年02月

No.1 7点 クリスティ再読 2025/03/30 09:45
原著1973年刊、翻訳は1983年。最後から1つ前のネロ・ウルフでも最末期の作品。ヒッピーとかパレスチナ問題とかウーマンリブだとか、そんな単語が出てきたりするし、事件自体、航空会社の社内で副社長のデスクに仕掛けられたブービートラップで爆死するというかなり物騒な事件(スタウトって爆弾が凶器って設定が妙に多い気がする)。そのトラップが仕掛けられた背景にLSDをウィスキーに混入するとかそんな話もある。ウルフだってしっかりと「サザエさん時空」に突入している。依頼者はMLBのファンでアーチーと、トム・シーバーが投げてるTVの中継を一緒に見てたりする。

このところウルフの事務所は依頼が少なくて、経営が四苦八苦になっていて、アーチーが積極的に「お客」を取りに行くところとか、読者を喜ばせるギミックがいろいろあって興味深い。こう問うてみたいだろうだろう?「ウルフものって、マンネリなのか?」末期作だからこそ、振り返ってみたいのだ。

いやいや、作品ごとにそれぞれギミックみたいなものがよく考えられているのが、このシリーズなんだと思う。ウルフの娘が登場したり、ユーゴに潜入したり、FBIと対決したり、などなど作品ごとのギミックの面白さが長期シリーズとしても「マンネリ」にならずに続いてきた証拠のように思うのだ。

訳者あとがきだと「日本では不当に冷遇」と述べているが、このところの論創社からの中編集の出版でも分かるように、海外ミステリ雑誌の「呼び物中編」としてはウルフ物は重宝されてきた、という印象の方が評者は強いんだ。長編の未訳が多いのが不思議だが、中編はほぼすべて訳されている。日本でもファンに愛されたシリーズには違いないと思っている。

しかしなぜ、評論家筋に取り上げられづらいのか、といえば界隈での「トリック至上主義」みたいな「本格」の美学から外れている部分があるためだろう。本作でもそうだが、複数の人物の供述の間での微妙な齟齬・矛盾を突いて、なぜ嘘をついているのか?を追求して真相を炙り出していく経緯が、なかなかシブすぎるところも影響しているのではないか。本作あたり典型的な「ロジック派」と呼ぶべきだと思うんだ。何というのかな、人狼っぽいというのか(ウルフなだけにねw)。

「ここが凄い」と持ち上げるポイントが難しい作家なのだと思う。
でもスタウトって評者にとっては読めば読むほど「すごいな〜」と感じることが多い作家である。


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