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[ 日常の謎 ]
カササギたちの四季
道尾秀介 出版月: 2011年02月 平均: 5.50点 書評数: 8件

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光文社
2011年02月

光文社
2014年02月

No.8 6点 パメル 2022/07/26 08:36
「リサイクルショップ・カササギ」は、赤字続きの小さな店。店長の華沙々木は推理マニアで、事件があると商売そっちのけで首を突っ込みたがる。副店長で修復担当の日暮は、売り物にならないガラクタばかり買い入れてくる。中学生の菜美は名探偵華沙々木のファンで、いつも店に入り浸っている。
彼らの周囲で起きるのは、店の倉庫に誰かが忍び込んで鳥のブロンズ像を燃やそうとした放火未遂事件とか、山奥の木工所で原木が傷つけられた器物損壊事件といった軽微なものばかり。血なまぐさい事件は一つも出てこない。
華沙々木がホームズ、日暮がワトソンという役割になっているが、このホームズは実は自称だけの名探偵。菜美を落胆させないために、日暮が秘かに現場を修復してホームズの手柄に作り替えるところが、アンチ・ミステリとしての読みどころになっている。
ミステリとしては弱いが、軽妙でしかもイメージ喚起力のある文章、魅力的な登場人物、捻りの効いたプロットなど、さすがと思わせる面もある。

No.7 7点 take5 2018/09/17 18:06
4章からなる連作
春の章がかなり出来か良くないと思ったのですが、
夏、秋とうまく繋げて、冬で大団円です。
春だけ掲載誌が違うのは何かあったのでしょうか?
主人公の事件に対する推理がめちゃくちゃで、
相方がフォローを入れながら正しく解くというのは、
見た目より難しい構成ではないでしょうか。
最終章で、更に一捻りあるのですが余計に
コメディタッチである事が効いてきます。
救われる話がやはり好きなのだと実感しました。

No.6 5点 風桜青紫 2015/12/29 03:01
木更津&香月ペアを思い起こさせるカササギさんと日暮くんの間抜けなやりとりが微笑ましい。仕掛けはそこまで強くないけど、まあ気楽に読めるライトミステリとして○。といっても初期作のような野心的な仕掛けはもう書く気がなくなってるように見えてくる。飽きたのかな。文庫の解説で米澤が「連城三紀彦を読んで、ミステリであることは小説としての何かをあきらめることではない、と思った」なんて書いてくれてる(米澤は小説としての何かを書いてるつもりなのだろうか)が、連城三紀彦も道尾秀介もミステリ捨ててるからねえ……。まあ、連城三紀彦も最終的にはミステリに戻ってきたんだし、道尾さんにもそれを期待しておこう。

No.5 5点 E-BANKER 2014/03/03 22:00
2011年に発表された作者得意の連作短篇集。
リサイクルショップ「カササギ」の店長・華沙々木と店員の日暮、そして中学生の菜美を加えた三人が身の回りで起きる謎を解き明かしていく・・・

①「鵲の橋」=春の章。「カササギ」で起こった放火事件の謎を追ううちにたどり着いたのがある鋳物工場。経営者の親子・兄弟関係に纏わる話を聞くうちに華沙々木は思い付く・・・。そして日暮はそれを訂正する・・・
②「蜩の川」=夏の章。久しぶりに来た大口の注文。注文品を届けに山奥へと向かった三人はある工芸家とその弟子たちに遭遇する。そこには工芸家にやっと弟子として認められた若き女性がいたのだが・・・。これも最後には日暮が訂正する。
③「南の絆」=秋の章。三人組のひとり、南見菜美が仲間に加わった際のエピソードが紹介される一篇。なぜ日暮が華沙々木の影となってフォローしているのか、その理由が心に染み入る。
④「橘の寺」=冬の章。日暮の天敵(?)的存在・黄豊寺の和尚が急にやさしくなった。が、後で思わぬしっぺ返しを受けるハメに・・・。本当の親子じゃなくても愛情は普遍なんだと気付かされる。

以上4編。
直木賞受賞後ますますミステリーから離れていく感のある作者だけど、本作は完全にミステリーと呼べる連作短篇集となった。
表現力というか読ませる力はさすがの一言。
「カササギ」という店も三人のメインキャストもまるで目の前にいるようにリアリティある存在に思えた。

ただ、ミステリー的な仕掛けという観点からいくと、本作はまだまだ十分とはいえない。
謎が小粒だし、これだけいい人だらけの小説というのも読みにくいものだ。
長所と短所を比べていくと平均点という辺りに落ち着く。
(あまり抜きん出ている作品はなし。どれもホノボノした味わい)

No.4 5点 haruka 2014/02/23 00:20
日常の謎系はあまり好きではないのだが、さすがに伏線が効いていて、第1話を読んで面白いと思った。だが、読み進むにつれてマンネリ感が強くなり若干飽きてしまった。

No.3 5点 ayulifeman 2012/02/24 23:58
親子の絆や問題を扱っている連作短編で特に最後のお話は泣けました。
ただ主要登場人物の3人の関係性が最後までなんだかよくわからず、すっきりしない。何か読み落としているのかもしれませんね。

No.2 6点 まさむね 2011/05/22 22:43
 最近はノンミステリ作品が続いていた著者ですが,直木賞受賞第一作は連作短編ミステリで魅せてくれました。まぁ,「魅せてくれた」ってのは,ちょっと言い過ぎなのかもしれませんが,久々のミステリでしたので,ファンとしてはテンションが上がりましたね。
 メインの登場人物は、「リサイクルショップ・カササギ」の店長と副店長(他に店員はいないけど…),さらにこの店に入り浸っている女子中学生。探偵気取りの店長が,毎回「日常の謎」に首を突っ込むというスタイル。
 連作短編のプロットとして非常にしっかりしてます。大仕掛けはないのですが,軽快に読み進められますし,一般的な人間ドラマとしても楽しめました。笑える小ネタも結構詰まってます。この辺りは流石ですねぇ。
 幅広い年齢層にオススメできる作品かな?

No.1 5点 kanamori 2011/05/19 18:31
このところ文芸寄りで暗欝な物語を続けて出してきた作者ですが、本書は一転して軽妙な連作ミステリでした。

小さなリサイクルショップを経営する男二人(ダミーの探偵役と影の探偵役)に女子中学生を加えた3人組が、商売がらみの”日常の謎”に遭遇するというのが共通のパターンで、いずれも親子の絆がテーマになっている。
各話ミステリ的な仕掛けは小粒で真相もサプライズ感がないですが、人の心を解き明かす手法自体は巧いと思う。


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