皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ ハードボイルド ] ギャルトン事件 リュウ・アーチャーシリーズ |
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ロス・マクドナルド | 出版月: 1960年01月 | 平均: 7.86点 | 書評数: 7件 |
早川書房 1960年01月 |
早川書房 1982年01月 |
No.7 | 7点 | 蟷螂の斧 | 2024/10/11 08:11 |
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首無しの白骨体発見(何故、首無し)と孫息子への疑惑(根拠の乏しい感?)が気になってしまいました。まあ、ハード・ボイルドなので軽く読み流せばよかったなと後悔(笑)。プロットはよく練られていると思います。ただ、ギャング仲間の関係は省略した方が、物語はわかりやすいとは思いました。 |
No.6 | 8点 | 斎藤警部 | 2024/09/23 16:35 |
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うう~~ん、この小説は良い。 これは良いロス・マクだ。 ファンでなくとも読んでみるが良い。
死ぬ前に、若いころ家出した息子に会いたい 。。富豪ギャルトン家の未亡人から願いを聞き入れた弁護士セイブルは、旧友の私立探偵アーチャーに捜索を依頼する。 直後、身近の意外な所で殺人が! アーチャーはこの殺人と先の捜索依頼に通じるものを(よしゃぁいいのに?)直観した。 一方、家出息子の帰還は叶わなかったが、その忘れ形見で俳優志望の青年(未亡人の孫)が見つかり、ギャルトン家では大歓迎を受ける。 依頼主にとって案件は円満解決したが、アーチャーだけは満足せずに件の殺人事件、そして「孫」の真偽さえ疑い独歩的捜査を続け、ゆく先々でやくざ者、はぐれ者共の妨害を受ける。 そんな中、弁護士セイブルの妻が精神の病に蝕まれつつあると言う。。 “おなじ時刻の、おなじ双発機だった。スチュワーデスまでが同じだった。どういうものか彼女は前より若くなって、ずっとあどけなくなったようにみえた。「時」はまだ彼女の味方をしているのだった。” どことなく明るい空気感のある、面白小説オーラを纏ったオープニングから心地よくテイクオフ。 良い意味で模範的ハードボイルド・ミステリらしい、機敏にして複雑、意外性に旨味のある展開が読者を掴んで離さない。 小泉○○郎氏を髣髴とさせる人物に、太宰治っぽい家出息子。 詩人と私立探偵、どちらも「シ」から或いは「P」から始まるんだよな。 温か過ぎて噴き出しそうになるほどユマラスな友情シーンもあった。 良い場面、さり気なく良い言葉のやり取りでいっぱいの作品だ。 登場人物もいっぱいだ。。 いい感じで夢見心地にさせてくれましたよ。 人並由真さん仰る > 序盤からのサイドストーリー的な殺人事件という大きなパーツの組み込ませ方 おそらくはそれが巧妙に関わってこそ成り立った クリスティ再読さん仰る > 隘路 ここに遠くから焦点合わせてじっくりと、何層にも重ねた解決、幅があって分厚い真相に、そこから解きほぐされたような、光明あるラストシーン。 この本は、解決篇の後半だけは、早朝に覚醒して読むのが良いかも知れません。 反転のモトが中盤通してこれだけ大きな位置エネルギーを保ち、最後に運動エネルギーとして一気に解き放つ、そこにハヤカワ・ミステリさんの惹句でもある『人間悲劇の底にアーチャーが見いだした愛と希望』が控えめに輝いている構造、この尊さはなかなか他では味わい難いものがあります。 “ふたりは、老夫婦のように寄り添って午後の影が長くなり夜にとけこんで行くのを待っているのだった。” |
No.5 | 9点 | 人並由真 | 2021/09/11 06:00 |
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(ネタバレなし)
アーチャーが見つけた「大富豪の未亡人の孫」は本物か? 偽物か? メインプロットはきわめてシンプル。 しかし、序盤からのサイドストーリー的な殺人事件という大きなパーツの組み込ませ方があまりに見事。 (いや正直、前半では、たまたまほぼ同時に起きたのかもしれない二つの案件をむりやり結びつけようとするかに見えたアーチャーの強引さに、いささか呆れたりもしたのだが。) 真犯人のものの考え方には、かなり新本格パズラー的な側面を見やったりもする。 そして終盤の二転三転の展開の果てに、こういうテーマというかメッセージ性が浮き彫りになってくるとは、予想だにしなかった! まだまだロス・マク読みとして、自分は修行が足りない。 (と言いつつ、実はすでに大昔に、大半の作品は一度は読んでいるのだが、まるで心の肥やしになってないね・汗。それぞれの再読が楽しみだ。) しかしこの作品では、第24章でアーチャーのやさしさ、第30章で同じく厳しさ、その双方の極北を見せてもらった思いもある。 『さむけ』『ウィチャリー』はいずれいつかまた読み返す(かな)として現状で(この数年に読んだ&再読した)アーチャーシリーズのベストは『縞模様の霊柩車』だが(次点は『犠牲者は誰だ』)、これは全体の密度感では『縞模様』に一歩二歩ゆずるものの、その分、小説としての味わいで得点。同じくらいにスキかもしれない。 (アーチャーが出会った浮浪者のおじいさんのエピソードなんか全くの点描なんだけど、ああいうのが実にいいなあ。) そして評点は、自分にとってこの作品のどこがスキかが『縞模様』よりもはっきりしている分、さらに高くなる。 傑作ということなら『縞模様』、お好みということなら、本作だ。 |
No.4 | 9点 | あびびび | 2018/11/05 00:35 |
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最近ずっとロスマクに物足りなさを感じていたが、これは力作。リュウ・アーチャーの推理が一転、二転するが、最後はほのぼのとして読後感が良かった。自分の中では、「さむけ」と互角、いや、全体的評価としてはナンバーワンかも知れない。 |
No.3 | 8点 | クリスティ再読 | 2018/04/02 18:13 |
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本作とか「運命」とか、ロスマクの転回点として重要作になるのだけど、なぜかポケミスでしか出なくて文庫にならなかったんだよね。「さむけ」とか「ウィチャリー家」とかがミステリ文庫の初期の目玉の扱いだったのと、なんでこんなに差のある扱いなんだろうか....というわけで、ちょいと判官びいきの点をつけます。
文庫にならなかった理由は本当に不明。一応本作は70年代あたりだとロスマク代表作級の扱いを受けてた記憶がある。文庫になるならないで知名度に差が出ちゃった...としか言いようがない出来。巨額の財産を継承すべき20年前に失踪した息子を探せ、という依頼を受けたアーチャーが、その息子?の死体が発見された件、依頼をした弁護士の使用人殺し、そしてその息子の息子が見つかるが、その身元に疑念が...というあたりの謎を解いていくことになる。 本作の一番いいのは、その孫息子の身元疑惑とその解決なんだよね。これ意外に小説として難しい「謎」で、「ほんもの」だと周囲の事件と絡ませにくいし、「ニセモノ」だと小説としての捻りがないし...とこの隘路を小説としてかなり上手に処理できていること。パズラーじゃないので殺人が結構行き当たりばったりで、ワルい奴らが右往左往しているけども、かえってそのくらいの方がハードボイルドらしくてイイように感じるよ。「一瞬の敵」みたいな家族・血統の中だけの話になると、因果話みたいになって閉塞した感じになるから、このくらいのオープン感が評者は好きだな。 (あれ、今 amazon で何となく検索したら、ボッタクリな高額出品以外ひっかからないや...そんなに入手性が今悪いのかしら。もったいない) |
No.2 | 7点 | こう | 2010/07/19 01:51 |
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20年前の失踪人を財産相続のため探しだすという今では手垢のついた題材がこの作品の依頼内容です。
マクドナルドらしい血統、血筋をテーマとしていますし最後に真相のひっくり返しもあります。但し登場人物の語られる行動面に納得いかない所が後半部分に何箇所か、何人かあります。ひっくり返される真相も確率的にはかなり低いと思います。そのため最後までよんでもさほど衝撃もなくやられた感じもしませんでしたが結構楽しめました。 |
No.1 | 7点 | 空 | 2009/12/17 22:38 |
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象徴的なタイトルの多いロス・マクにしては、なんともそっけないタイトルです。
ハードボイルドではよくある失踪人探しといっても、なんと20年も前にいなくなった人の行方を捜すという、雲をつかむような依頼を受けたリュウ。どんなふうに話を進めていくのかと思っていたら、まだほとんど手もつけていないうちに意外な所で殺人が起こってしまいます。その殺人が失踪人とどうからんでくるのか、このからませ方が精密に考えられていて、しかもそこが小説のテーマにもなってくるところ、さすがロス・マクです。ただ、まだ真相が判明していない時点での首切り殺人犯人の人物描写が、振り返ってみると違和感を感じました。 途中、「あなたって、聞き上手、聞き出し上手の顔をしてるのね」「この顔でお役に立つんならお安いご用だ」なんて会話が出てくるところ、他のハードボイルド探偵にはないリュウの個性でしょう。 |