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[ ハードボイルド ]
地中の男
リュウ・アーチャーシリーズ
ロス・マクドナルド 出版月: 1983年10月 平均: 6.75点 書評数: 4件

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早川書房
1983年10月

早川書房
1987年01月

No.4 6点 クリスティ再読 2018/04/21 23:23
後期ロスマク、ということになるのだが、どうも「別れの顔」以降は進歩というよりも、今まで登場した要素が複雑化してバロックなほどに肥大化の途を辿っているような印象だ。
作中で「大人子ども」というような言い方をされているが、これは一時流行った「アダルト・チルドレン」といった方がわかりやすいのだろう。まあこの概念も意味があるのかないのか微妙なものと感じるのだが、殺人を目撃するなど深いトラウマを抱えたまま成長した「大人子ども」が4人も登場して、さすがに食傷する...「大人子ども」たちとその親たちの間を、アーチャーが往復するので「誰がどの...」と読んでいて混乱するんだよね。ふう。ちょっとした描写でキャラを性格付けするのが上手なチャンドラーと比較すべくもなくて、ロスマクってキャラ造形はそう上手と思えない(すまぬ)。ロスマクのキャラで印象に残るのはあくまでもプロットが割り当てた役割が印象的だ、ということの結果ではなかろうか。
まあそれでも二人の逃避行を軸に読者を引っ張る「読ませる力」みたいなものはあるけどねえ。袋小路な印象の方が強いかな。背景でずっと燃えている山火事があくまで雰囲気作りだけで、プロットに直接絡まないのも若干不満である。

No.3 7点 2013/11/08 22:19
読み始めてすぐ、ロス・マクらしい世界が広がっていくのを感じます。やはり語り口が何とも言えない味わいを出しているのです。このさりげなくも気の利いた文章、会話はさすがに巨匠の技です。
これも久々の再読で、最終解決部分がかろうじて記憶に残っていただけだったとはいえ、複雑に絡み合った人間関係は途中で何が何だかわからなくなってきてしまいました。読書中に登場人物の関係をメモったのはたぶん初めてです。
若い二人の逃避行については、そこまでするかなあという感じも受けましたし、メモを吟味すると、その二人が一緒になったということ自体、ストーリーを組み立てるためのご都合主義じゃないかとも思えましたが、残り3割を切ったあたりから、過去に何が起こっていたのか、次々に明らかにしていく作者の手際は鮮やかです。悪い意味でまさかと思うダミー解決の後の真相も、この作者らしいテーマ性を含んでいます。

No.2 5点 あびびび 2012/02/04 14:52
リュウ・アーチャーは礼儀正しく、静かな男であるが、あらゆる疑問に立ち向かう。今回も登場人物のほとんどが邪悪な人間関係、それをひとつひとつ解きほぐして、最後に真犯人にたどり着いたときは、ため息しか出ない。

洗練された文章に、一種独特な人間描写。どの物語を読んでも外れがない。どんでん返しの驚愕差?だけである。

No.1 9点 Tetchy 2009/05/21 22:34
終盤の残り130ページ余りでどんでん返しを繰り返しながら明確に物語が収束するその手際は、やはり巨匠の業故である。
今回は登場人物それぞれの思い込みが微妙なバランスを維持し、今日にまでに至り、アーチャーをして、もはや本来の任務は終えたのだから真相はそのままにしておいた方がよいのかと云わしめたほど。
そして恐るべしは母親の息子への記憶の刷り込み。これに尽きる。


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ロス・マクドナルド
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