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[ 短編集(分類不能) ]
11の物語
パトリシア・ハイスミス 出版月: 1990年06月 平均: 6.40点 書評数: 10件

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ミステリアス・プレス
1990年06月

早川書房
2005年12月

No.10 7点 ROM大臣 2022/03/24 15:51
巻頭作の「かたつむりの観察者」は、密室劇の趣で、食用かたつむりの飼育観察に熱中するあまり、江戸川乱歩の「鏡地獄」ならぬ「かたつむり地獄」を現出させてしまう男の物語。
作者は、相当な動物好きらしく、他にも「すっぽん」や「からっぽの巣箱」など、動物が絡む話が散見される。特に「からっぽの巣箱」は集中第一と目される傑作で、得体のしれぬ小動物に悩まされる夫婦の不安と葛藤を見事に抉り出して不気味な余韻を残す。
その鮮鋭な筆致は、カフカの不条理掌編に比肩しうるといっても過言ではあるまい。現代人の孤独な内面を蝕む不安と狂気を鮮やかに描き出したハイレベルの短編集である。

No.9 7点 斎藤警部 2021/08/23 11:11
かたつむり観察者 
かたつむり単体は動きが遅い。これは数学的想像力を発揮して玩読せねば!! 但し、割とグロ注意だぞ!!

恋盗人
甘い期待をかっさらって歩き去るストーリー。他人の手紙を盗み見て、返事まで出してしまった主人公は。。ベタに展開しても良かったとは思うが、、最後の涙は光ったな。

すっぽん
シングル毒母に苛まれる幼い息子が脱出を試みる。庶民が生活に失敗した物語。最後はいきなりの事にびっくりするのだが、、残念ながらさほど響かず。

モビールに艦隊が入港したとき
これは好きなディープ短篇だなあ。。話が次々と深掘りされて行く構造に旨味あり。冒頭いきなり、就眠中の夫を窒息させた不幸な女が当て所ない逃避行に出る。。シャーリィ・ジャクスンを思わす側面も光る一篇。もやっとしたエンドに雪崩れ込むのかと思っていたら。。

クレイヴァリング教授の新発見
これも分厚くて好きな短篇。面倒は抜きにしてひたすら熱いスリルに拮抗しよう。しかし教授、悔しいよな!!

愛の叫び
ソフトきちがいばばあ二人の仲良し復讐合戦。考え落ちならぬ想像落ちがなんとも、痛ましい。まずまず。

アフトン夫人の優雅な生活
何故だかにこやかな心持ちになる日常の反転劇。そういうこともあるさ。。本短篇集の中ではミステリ度高と言ってよいかな。

ヒロイン
心の病とはどこまで罪深くなれるものなのか。。この、いきなりこれから始まる、暴力的オープンエンディング。。。。。。。。

もうひとつの橋
起伏の多い人生ドラマを淡々と歩み渡ってじんわり来た。本短篇集の中では際立って、前向きな力強さがあるね。 (まさか、主人公もいずれは。。というオープン考え落ちじゃないといいが。。)

野蛮人たち
軽犯罪?絡みの日常のサスペンス。しかし何なんだこの野球好きの不良オヤジ達は(笑)。絵がヴィヴィッドに浮かんで愉しいが、最後ちょっとクニャッとなって終わるのが、惜しいかね。

からっぽの巣箱
心のしこりが、偶然の出来事に因縁を植えつけて現れる。。可愛い(?)動物が走り回る話。 途中退屈だったが、最後はなかなかズンと来た。

No.8 5点 メルカトル 2021/05/21 22:54
私は少々頭が弱いので、真に受けないで読んでいただきたいのですが、この作品集には幾つかの欠点があります。まず文章が下手。そしてそれを直訳に近い形で翻訳しているので感情が篭っていない印象を受ける。余分な描写が散見されるが、肝心な事が御座なりにされている。オチはあるものの、その解釈が読者に委ねられているのでモヤモヤした読後感が残る。例えば『ヒロイン』などがその良い例で、幸せな勤め先を見つけたはずなのに、何故主人公は最後にあのような行動に出たのかが理解できません。序文でその伏線らしきものがしっかり張られていると書いてありますが、私がぼんやり読んでいたせいか、全く気付きませんでした。以上は飽くまで個人の感想です、あまり参考にしないで下さい。

しかし、それでも5点を付けたのはかたつむりの話二編と有名な『すっぽん』、最終話などはまあまあ面白かった為です。その最終話『空っぽの巣箱』はやはり謎のユーマはアレなんだろうなとは思いますが、これもどうとでも解釈が出来ます。
本作を高評価されている方はさぞかし読解力の高い人であろうと尊敬します。いや、決して皮肉ではなくて。

No.7 8点 YMY 2021/02/26 20:20
全作品が代表作にしてベスト級の逸品と言われる作者の、ほぼすべてが詰まった短篇集。
不条理な現実、理不尽な暴力、いわれなき不安と焦燥感。日常に潜む恐怖を描ききった作者の凄さを、改めて思い知らされた。

No.6 8点 tider-tiger 2017/12/03 16:21
登場人物の心の動きを強制的に追わされて、いつのまにか彼らを理解してしまう。この理解が感情移入という域まで達してしまったとき、このうえなく不愉快な世界が読者を待ち受けています。 
『すっぽん』は、感情移入してしまいました。本当にきつかった。
かたつむりの話はわけがわかりませんでしたが、これって人間などという下らない生物は、かたつむりの餌にでもなってしまえばいい。そんなハイスミスの反人間主義が素直に表出しただけなのでは、なんて勘繰りたくなります。

軽々しく使いたくはない言葉ですが、この人はある種の天才だと思います。

No.5 5点 ALFA 2017/03/26 12:31
奇妙な味を持った11話からなる短編集。
分類は難しいがあえて言えば生理的サスペンスかな。緩効性の毒が神経をマヒさせるような読後感になる。
全体に好みとは言えないが、あえてのフェイバリットは「もう一つの橋」。
主人公の虚無感がよく描かれている。

No.4 3点 あびびび 2016/09/09 23:42
最初の「かたつむり観察者」であきれてしまった。

かたつむりの交合が興味深く、調理せずにいると(食用)、やがてたまごを生んだ。これが幸運の兆しでいろいろ仕事も忙しくなり、しばらく目を離していて、ある日、久しぶりにその部屋に入ると、部屋はかたつむりだらけで、一匹を呑み込んでしまい、次々とかたつむりはやってきた…。そして、身動きできなくなった。

もうひとつかたつむりの物語があった。こちらはお金も暇もある学者が、ハワイ近くの島に、巨大なかたつむりがいると言う噂を聞き、発見者としての名誉を得るためにその島へ行ったが、結局はそのかたつむりに食べられてしまうと言う話。

これは、何かの比喩だと思うのだが、どこが面白いのか?カフカの小説をイメージしているのか、自分には分からない。

「すっぽん」は、子供がアパートの下階の友人に、「うちにすっぽんがいる。見せてあげる」と言ったのだが、母親がシチューにしてしまった。それで母親を殺してしまったという話。確かに熱湯に放りこまれ、死に行くすっぽんは子供には悲劇だが、元から母親はシチューにすると言って買って来ていた…。

奇妙な味のある作家であるが、日常的ではない。フランスでは、かたつむりに何か意味があるのかな?

No.3 5点 ミステリーオタク 2015/12/11 23:15
まあ、ひまつぶしにはいいかな(苦笑)

No.2 7点 kanamori 2010/07/27 19:09
女性作家には意地の悪い、毒気を含んだ小説を書く人が多いように思える。
クリスチアナ・ブランドも毒のある本格短編を書くが、ハイスミスの毒は”奇妙な味”で、独特なテイストを感じます。
この短編集はバラエティに富んでいて、作者を知るには恰好の作品集だと思います。

No.1 9点 mini 2008/11/13 10:59
これはもうコメントの必要もないと思う
私は採点として2点以下と9点以上の点は滅多に付けない事にしているが、そんな私でも9点を付けてしまった
ハイスミスの短編集なら別格でしょう


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パトリシア・ハイスミス
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