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[ サスペンス ]
花束は毒
織守きょうや 出版月: 2021年07月 平均: 7.38点 書評数: 8件

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文藝春秋
2021年07月

文藝春秋
2024年01月

No.8 8点 みりん 2024/09/29 02:24
冤罪をテーマにした探偵捜査小説。中盤は捜査プロセスが冗長的で内容も起伏に乏しく、あくびを噛み殺しながら読んでいると、ひさびさに背筋が凍るような読書体験をしました。それも衝撃は2度やってくるのです。これは油断していて良かった。
周りが敵になっても、たった1人信頼し続けてくれる人がいるだけでどれだけ心が救われるのか。というようなことを想像してしまいました。

【以下ネタバレ】








よくよく考えるとタイトルがあまりにも攻めすぎているため、鋭い方は早々に気付くかもしれません。それでも脅迫手紙の中の1通の内容が実に巧みに真相を覆い隠しています。怪しい人物は指摘できるかもしれませんが、その人物の執念と手紙の真の目的にまで気づけた方はレアだと思われます。私は木瀬と心情が連動しており、衝撃の連続でした(笑)

No.7 6点 HORNET 2023/05/21 19:58
 木瀬芳樹は、中学時代に家庭教師をしてくれていた真壁研一に偶然再会する。兄のように慕っていた真壁が、婚約して近々結婚するという。喜ばしい報告もつかの間、「結婚をやめろ」と脅迫する手紙が、真壁のもとに届いていることを知ってしまう。芳樹は悩んだ末、探偵に調査を依頼することを決める。その探偵・北見理花は、中学時代に「探偵見習い」と称して、同級生たちから依頼を受けて悩みやもめごとを解決していた、芳樹の先輩だった。

 先輩・真壁の過去の「レイプ事件」の無実を信じ、奔走する芳樹。本当に真壁は無実なのか、一抹の疑念を読者は抱きながら読み進める。するとラストにそのすべてを覆す真相。仕掛けとしてはなかなかのもの。
 とはいえ、このテのミステリがオーソドックスに結末を迎えるはずはなく、そいういう意味では心構えの範疇ではあった。ただ「誰が信頼できる登場人物なのか?」という思いを抱かせ続けさせられる後半の展開は見事で、どんでん返しに次ぐどんでん返しともいえる畳みかけ方はなかなかのものだった。

No.6 8点 パメル 2023/05/10 07:36
木瀬は、かつて中学生の頃に家庭教師をしてもらっていた真壁が脅迫状を送られていることを知り、犯人を突き止めようと中学時代の先輩・北見理花が所属している探偵事務所を訪ねる。偶然再会した真壁が、彼と婚約者との関係を揺るがす脅迫者に悩まされていることを知り、真壁を助けたい一心で理花の元を訪れたのである。
主に理花の視点による物語は私立探偵小説の形式で淡々と進んでいく。かつて医大生だった真壁は、目下インテリアショップの雇われ店長をしている。脅迫の原因となっていると思われる過去の事件は真壁にとっても、そして木瀬にとっても掘り起こすことが現在の状況を好転させるとは思えないものだ。
事件の背後にあるものを探偵が追っていく過程が丁寧に描かれている。探偵と依頼者が直面する不都合な真実が、やがて脅迫者にたどり着くのだが、本書の真骨頂はその人物の真意が明かされたその先にある。
予期せぬ謎が突如解明され、総毛立つ感覚に見舞われる。恐るべき執念・狂気を明かし、推理へ回帰する構成が素晴らしい。作者の人間に対する透徹した眼差しが生んだトリッキーなサスペンスに背筋が凍る。
正義があれば真実を暴いていいのか。ラストに残る深い問い掛けに考えさせられる。一連の真相を知った主人公の決断は、どちらに傾いたのかを読者の想像に委ねたところに評価が分かれるかもしれない。個人的にはこれでよかったと思ったが。

No.5 7点 メルカトル 2022/09/28 22:44
「結婚をやめろ」との手紙に怯える元医学生の真壁。
彼には、脅迫者を追及できない理由があった。
そんな真壁を助けたい木瀬は、探偵に調査を依頼する。
探偵・北見理花と木瀬の出会いは中学時代。
彼女は探偵見習いを自称して生徒たちの依頼を請け負う少女だった。

ーーあの時、彼女がもたらした「解決」は今も僕の心に棘を残している。
大人になった今度こそ、僕は違う結果を出せるだろうか……。

背筋が寒くなる真相に、ラストに残る深い問いかけに、読者からの悲鳴と称賛続出の傑作ミステリー。
Amazon内容紹介より。

滑り出しは新たな名探偵の誕生を思わせ、凄く好印象でした。ところが本番が始まり、大まかな被害状況が明らかになったのち、探偵はほぼ聞き取り調査に終始しこれと云ったサプライズもなく、淡々と抑揚なしにストーリーが進行するのは、正直ちょっと退屈でした。それでも最後には何か有る筈だと、読み進めました。いえ、決して苦痛だったわけではありません。そもそも平易な文体で読み易いですから。
推理しない名探偵、これは如何なものかと思いますね。まあ、おそらく最初にアイディアありきでその他は後付けに近いものでしょうから、それもやむを得ないかも知れませんが。

それにしても、真相は私の想像を遥かに超えるものでした。素直に参りましたと言うしかありません。ここが10点で、序盤が7点、中盤が5点で総合点は7に収めました。中盤にもう少し面白味があれば8点だったかも知れません。

No.4 8点 人並由真 2022/09/02 06:33
(ネタバレなし)
 昨年度の「SRの会」国内ミステリ作品、ベスト第7位。
 この高い実績と、さらに本サイトでの文生さんのレビューが気になって、遅ればせながら読んでみる。

 でまあ、中盤まではスラスラ読めるが、ことさら特化したものは何も見えてこない。逆に言えば、このあとの後半~終盤でソレなりのものが待ち受けているハズだ。そんなことを考えながらワクワクワクワク読み進む。ああ、この幸福な緊張感。

 で……なるほど、終盤のどんでん返しは、かなりの破壊力(!)。

 とはいえ正直、キーパーソンについては早々と半ば読めていたのだが(だって……)、しかしながらココまで奥行きのある真相とは思わなかった。あまりに強烈な(以下略)。
 
 そしてクロージングのまとめ方は見事な余韻だけれど、もしも今後も、この主人公コンビの事件簿が続くとしたら(個人的には強く希望している!)、かなりシリーズの方向性は、硬化してしまうだろうね? 
 まあ次作以降は(中略)という手も、あるのではあるが。
 
 何はともあれ、期待通りに面白かったでした。
 評点は0.25点くらいオマケで。 

No.3 7点 ぷちレコード 2022/07/14 22:35
大学生・木瀬芳樹と探偵・北見理花の二人の視点から語られるサスペンス。
木瀬のかつての家庭教師・真壁が「結婚をやめろ」という脅迫を受けていると知り、北見に調査を依頼する。北見が調べていくと真壁の過去のある秘密につきあたる物語で、隠された事実の一つ一つが明らかになる過程がスリルに満ちている。
物語に奥行きがあるのは、中学時代に木瀬がいとこへのいじめを止めてほしいと一年先輩の北見に頼んだ過去が生きているからだ。彼女が導いた「解決」は正しかったのかという問いがずっと残り、新たな事件の追求と解決でもまた大いに苦悩することになる。謎解きの面白さに、真実は人を傷つけるのかという主題が鋭くかみ合って終幕に至る。ラストシーンが胸に残る。

No.2 7点 sophia 2022/05/28 14:25
直接的な描写をせずに浮き彫りにするという「火車」の手法。ラストの余韻も似ています。全体的に叙述に起伏がなく淡々としているのも敢えてのことなのでしょうか。7点か8点か迷ったのですが7点になったのは、最後のどんでん返しだけに懸けて逆算で物語を作ったという感じを受けてしまったからです。もう少し寄り道のようなものが欲しかったかもしれません。主人公と探偵・北見理花の中学時代の因縁もそんなに効いていないような。

No.1 8点 文生 2021/09/09 13:38
「結婚をやめろ」と書かれた脅迫状に怯える元医学生の真壁。
後輩の木瀬は警察か興信所に相談することをすすめるが、なぜか彼は逡巡する。
見かねた木瀬は中学時代に従兄の窮地を救ってもらったことのある女探偵に独断で調査の依頼をする。
すると、思いがけない事実が明らかになり......。

脅迫者は誰なのかという謎で話をずっと引っ張っていき、犯人の目星がついたところで予想外の落とし穴に付き落とされます。
いやー、これは恐ろしい。
伏線がほとんどないので本格としては評価できませんが、どんでん返しが好きな人にはおすすめです。


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