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[ 本格 ]
狂人の部屋
アラン・ツイスト博士シリーズ
ポール・アルテ 出版月: 2007年06月 平均: 6.55点 書評数: 11件

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早川書房
2007年06月

No.11 6点 ミステリ初心者 2023/06/30 18:27
ネタバレをしております。

 本作は怪奇めいた出来事が多く登場し、初めから最後まで興味津々で読み終えられました! 100年前の謎の変死事件とその後の預言、開くと不幸になる開かずの間、ハリスの変死と何かを見た妻(何も見てなかったけどw)、甦る死者など…最後まで謎たっぷりのまるでトッポのような小説でした。

 好みではなかった部分について。
 一番大きくて魅力的な謎は、やはりハリスの死の謎でしょうね! 私は目撃されているハリスが声を出さないなどの点から、絶対に変装だと思っておりましたw もしブライアンの証言に嘘が無ければ(顔を見ていない、声を聴いていないので本当っぽいw)フランシスが大分怪しいですね。しかし、検視による死亡推定時刻により私の考えは頓挫しました。まさか、検視が間違っているとは…。どうしても納得がいきませんねw これは好みかもしれませんが、私は絶対に認めません。
 また、セイラの殺人?については、犯人はあまりにもリスキーですねw もし、あそこで死ななかったらどうするのか? 死体を運んでいるところを見られたらどうするのか(実際見られていたしw)。魅力的な謎が多い作品ですが、同時にバカミスっぽさもありますねw
 最後に、犯人以外の嘘つきがおおすぎますねw パトリックに関してはポーラとの恋があらかじめ書かれており、なにかやっているのは理解できますが、甦るハリスまでやっていた(実際は狂言させていた)のは読者からすると不要なミスリードに思えます。

 総じて、カーっぽい魅力満点な怪奇な謎がちりばめられており、読み物としてはかなり面白かったです。まさにフランスのカー! ただ、ミステリとしてのフェアさや、読者に真相を当てさせようとする工夫が足りていないように思えました。雰囲気や読みやすさは8点クラスでしたが、6点としました。

No.10 5点 レッドキング 2023/03/22 20:17
原題"La Chambre du fou"、仏語le fou(狂った)は英語the fool(愚か者)とは違うのね。「ふー」でなく鼻にかけた仏音韻「んふ」風カー。カー風に、オカルト・どたばたロマンス・不思議事件と出てくるが、カー描く英国男女は、もっと劇画チックでエキセントリックで、ミステリ臭くて・・。アリバイトリックは、もうひと工夫で「密室」してた、惜しい。※

※あの後、窓の三日月錠(か何か)をロックし、部屋の扉に外から鍵かけて、複数人で扉を破って侵入し女が失神騒ぎ起こしている間に、室内の何処かか地面の死体の服に鍵入れておけば、密室からの死体消失完成! 誰かこのアイデア使ってもいいよ。「 既出すぎダろ! てめぇ密室ナメてんのか!」って怒られても知らないけどね (^^)

No.9 7点 YMY 2022/04/04 22:39
あり得ない謎を理詰めで解き明かす作者の手腕が存分に発揮されている。お馴染みの探偵役ツイスト博士がハースト警部を伴って登場するタイミングも絶妙。
ポーラとその男友達パトリックのエピソードも本作の大事な要素で、ロマンス小説として読んでも、辛口の面白さがある。

No.8 6点 八二一 2021/09/11 20:23
丁寧に描かれた伏線、幾重にも張り巡らされた謎、じわじわテンポの展開はアルテの作品の中でも一級。お馴染みのツイスト博士とハースト警部登場のタイミングも絶妙で、息詰まる中にもその茶目っ気ぶりに和まされる。
不倫ロマンスのエピソードを敢えて一つの謎を残しての幕切れはいかにもフランス的。

No.7 6点 メルカトル 2020/04/04 22:57
ハットン荘のその部屋には、忌まわしい過去があった。百年ほど前、部屋に引きこもっていた文学青年が怪死したのだ。死因はまったくの不明。奇怪なことに、部屋の絨毯は水でぐっしょりと濡れていた…以来、あかずの間となっていた部屋を現在の当主ハリスが開いた途端に、怪事が屋敷に襲いかかった。ハリスが不可解な状況のもとで部屋の窓から墜落死し、その直後に部屋の中を見た彼の妻が卒倒したのだ。しかも、部屋の絨毯は百年前と同じように濡れていた。はたして部屋で何が起きたのか?さすがのツイスト博士も困惑する、奇々怪々の難事件。
『BOOK』データベースより。

皆さん一様に怪奇趣味を取り上げておられますが、私としてはやはりカーとは比べるべきものとまでは思えません。確かにプロローグのシーンには興味を惹かれますし、なるほど上手いなと感心しました。それがまさにクライマックスとなってのちに詳細が明かされるに伴い、興奮は絶頂に達します。それに加え絨毯が三度に亘って濡れていたという謎や蘇る死者など、様々なガジェットが読者を魅了します。

個人的に恋愛模様などはどうでも良くて、そういった要素は必要なかったと思いました。まあしかし、全体としては面白かったのは否定できません。前半は事件なのか事故なのかはっきりしないモヤモヤ感が何とも悩ましかったのですが、ツイスト博士が登場してから物語が引き締まりますね。作品の性質上致し方ないかも知れませんが、もう少し露出多めでお願いしたかったですね。

No.6 7点 ボナンザ 2020/03/12 00:39
ロマンもバカミス具合も実にカーっぽい。堪能しました。

No.5 6点 makomako 2019/01/03 17:51
アルテの最高傑作という評判もある作品で、このサイトの評価も高いようですが、私はそこまでとは思えませんでした。
 ロマンチックで怪奇的であることに関しては今まで読んだアルテ作品の中で一番かもしれません。登場人物、ことに女性がとても素敵に描かれています。
 そしてなんといっても怪奇趣味が非常に強い。死人がよみがえったり、棺桶を開けたり、そりゃもう大変です。
 勿論最後にツイスト博士ともう一人の人物が見事解決するのです。たしかに理屈はまあ通っているのに、私としてはどうもすっきりしません。


以下ちょっとネタバレ。
 その理由はなんといっても二つの殺人(といっておきます)が、偶然性が高すぎるのです。ことに第2の殺人では非常に大掛かりなトリックを使っているのですが、確実性が少なすぎる。これで成功したからよかったものの(お話ですから当然うまくいくのですが)こんな方法では強いダメージを与えることはできても殺人までは至らない可能性もかなりあるのでは。
 もちろん大変な力作ですので、悪いというわけではないのです。

No.4 7点 E-BANKER 2017/10/18 22:41
1990年に発表された作者五番目の作品。
アラン・ツイスト博士シリーズとしては、「カーテンの陰の死」に続く四作目ということになる。
今回も、“フランスのディクスン・カー”に相応しい本格ミステリーなのかどうか?

~ハットン荘のその部屋には忌まわしい過去があった。百年ほど前、部屋に引きこもっていた文学青年が怪死したのだ。死因はまったくの不明。奇怪なことに部屋の絨毯は水でぐっしょりと濡れていた・・・。以来、あかずの間となっていた部屋を現在の当主ハリスが開いた途端に怪事が屋敷に襲いかかった。ハリスが不可解な状況の下で部屋の窓から墜落死し、その直後に部屋の中を見た彼の妻が卒倒したのだ。しかも、部屋の絨毯は百年前と同じように濡れていた。果たして部屋で何が起きたのか?~

シリーズ四作目にして、ミステリーとしてのアイデアは最上位に評価できる作品に思えた。
(前作が酷かったということもあるが・・・)
作品全体にオカルト趣味を漂わせながら、その殆どを合理的に解決することには一応成功している。
(「全て」ではなく「殆ど」というところがミソ。過去の怪事件のことは結局置き去りのままだしね)
中盤までのモヤモヤした展開を、力技とはいえ最終段階でスパッと解決させた手腕は評価できるだろう。

最も感心したのは、作中でも一、二の謎として取り上げられている「予言」について。
単に作品世界を盛り上げる小道具としてではなく、トリックの軸としてうまい具合に処理されている。
本家カーの作品でもオカルティックな小道具は頻出するけど、ここまで有機的に使われている例は浮かんでこなかった。
後は、紹介文でも触れられている「ぐっしょり濡れた・・・」謎。
言われてみれば「そんなこと!」なのだが、伏線としてはあからさまなだけに、逆に効果的な演出だろうと思う。

瑕疵はまぁいろいろあるんだけど・・・
動機の是非は許すとして(ある意味禁忌だよね)、墜落死の場面の無理矢理感はかなり酷い。
アリバイに関しては読者には推理不可能なレベルだし、○体をそこまで簡単に○○できんだろう!
などなど、指摘すれば枚挙にいとまはない。
(ツイスト博士もラストで「(あまりの)偶然の連続」を嘆いてますから・・・)

でも、楽しめたかどうかということなら、「結構楽しめた」ということに落ち着く。
本格好きなら手にとって損はないんじゃないかな?

No.3 8点 蟷螂の斧 2013/10/08 12:22
裏表紙より『ハットン荘のその部屋で、百年ほど前、部屋に引きこもっていた文学青年が怪死したのだ。死因はまったくの不明。奇怪なことに、部屋の絨毯は水でぐっしょりと濡れていた…以来、あかずの間となっていた部屋を現在の当主ハリスが開いた途端に、怪事が屋敷に襲いかかった。ハリスは、部屋の窓から墜落死し、その直後に部屋の中を見た彼の妻が卒倒したのだ。しかも、部屋の絨毯は百年前と同じように濡れていた。』
ハリスの弟に予言能力があり、上記事件や、その後の怪奇現象を言い当てるという謎。妻が部屋の中で何を見て卒倒したのかという謎で引っ張ってゆきます。この真相(後者)はユニークでしたね。また、探偵役の青年と人妻(元恋人)とのロマンスが、事件と絡まっている点で、いい味を出していると思います。プロローグとエピローグで「棺を開けたら何がある?」も決まっていました。近年、海外で本格ミステリーを書く作家は少ないらしいので、希少価値の存在であるのかもしれません。本書を著者の最高傑作と押す声が多いらしいのですが、いい作品であるのは間違いがないと思います。

No.2 6点 nukkam 2009/10/19 19:26
(ネタバレなしです) 「棺をあけたら何がある?」という衝撃的な一行で始まる1990年発表のアラン・ツイストシリーズ第4作の本格派推理小説ですが前半は他殺かどうかもはっきりしない事件のアリバイ調べという、アルテにしては地味な内容です。しかしこの作家がそのままで終わるはずもなく、終盤になると(23章あたりから)まさかという出来事が続発します。それを合理的に片付ける手腕はさすがですね。真相に関しては偶然が重なり過ぎだし(エピローグで作者自身も認めてます!)、「それは反則では」と注文つけたくなるようなトリックが使われているのも残念ですが全体としては面白く読めました。物語全体を包む独特の怪しげな雰囲気が何とも魅力的でした。

No.1 8点 あい 2008/10/03 14:06
面白い作品だった。怪奇的な雰囲気の中で起こる信じられない事件や殺人が少々強引ながらもしっかりと解決されたのは良かったと思う。物語の中のロマンスも長ったらしくなくて読みやすかった


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