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[ 本格 ]
赤い霧
ポール・アルテ 出版月: 2004年10月 平均: 4.67点 書評数: 3件

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早川書房
2004年10月

No.3 4点 E-BANKER 2021/03/21 10:15
ツイスト博士シリーズの第一長編「第四の扉」に続いて発表された長編二作目。
ノンシリーズしかも二部構成、舞台は19世紀のイギリスというちょっと変格気味のプロット。探偵役として登場するのは、スコットランドヤードの腕利き警部ジョン・リードなのだが・・・。1988年の発表。

~1887年英国。ブラックフィールド村に新聞記者を名乗る男が10年ぶりに帰郷する。昔、この村で起こった密室殺人事件を正体を隠して調べなおそうというのだ。10年前、娘の誕生日に手品を披露する予定だった父親が、カーテンで仕切られた密室状態の部屋で背中を刺されて死んでいた。当時の関係者の協力を得て事件を再調査するうちに、新たな殺人事件が起こり・・・~

『何じゃ、こりゃ?』っていうのが最初の感想。
第一部は紹介文のとおり、作者らしい不可能趣味に溢れた密室殺人がテーマとなる。なんだけど、この解法はないんじゃないか? あまりにもお粗末に感じた。
現場に居合わせた人々の誤認や誤解だけをあてにしたトリックなんて、誤認・誤解を誘導する仕掛けに納得感があるならまだしも、これではアマチュアレベルと言われてもやむなしではないか?

これは本気のトリックじゃないのかな・・・と思ってるところで、第二部に突中。
ここで突然、舞台は霧深いロンドンの暗部に移る。19世紀のロンドンでの大量猟奇殺人事件といえば、そう、「切り裂きジャック」ということで、よもやの切り裂きジャック事件の真相解明がテーマとなってしまう。
真犯人は大方の読者なら途中で十分察しがついただろう。
ということで、本格志向の読者にとっては全く食い足りない印象。スリラー、サスペンス寄りだとしても、あまり緊張感のある展開とは言い難い。
もってまわったような表現が多いという作者の悪い部分が目に付くところも評価を下げる。

これは思い付きのプロットを十分煮詰めないまま慌てて発表しましたということなのかな?
他作品でも荒唐無稽で現実性に乏しいトリックというのはあるけど、それはそれで本格ファンにはご馳走なのだが、本作は味のない見た目だけの料理を食べさせられた感じ。
(19世紀末のロンドンということで、世界で最も有名な私立探偵と助手のコンビもカメオ出演! しかも探偵はジャックではないかと一瞬疑われる役どころ!)

No.2 5点 nukkam 2011/01/07 21:19
(ネタバレなしです) 1988年に発表された第2長編でシリーズ探偵は登場しません。最初から3分の2ぐらいまでが純然たる本格派推理小説、最後の3分の1がスリラー小説という構成です。とはいえ前半部にも不気味な部分はあるし、後半部でも謎解きがなくなったわけではありません。ジャンルにこだわらない読者なら1冊で2度おいしい思いができたと満足するかもしれませんが、私のように本格派偏愛タイプだと微妙な判定(笑)。ブラックフィールド村を舞台にした第一部で謎のかなりの部分が解決され、第二部は舞台をロンドンに移しての後日談的な物語となるのですが、最後の謎解きが腰砕け気味(脱力系トリック)なのが個人的には残念。

No.1 5点 kanamori 2010/09/28 21:07
19世紀末の英国を舞台にしたノンシリーズの歴史ミステリ。
前半部は、奇術実演中の密室殺人の謎を中心とした本格ミステリで、後半は一転、シリアルキラーもののサスペンスに変わるプロット自体は面白いと思いました。
しかしながら、ともに中身のほうは不満足。密室トリックは平凡ですし、切裂きジャックの真相も多くの先達のアイデアを超えるものではありませんでした。この設定で”あの人物”を登場させるのも食傷気味です。


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