皆さんから寄せられた5万件以上の書評をランキング形式で表示しています。ネタバレは禁止
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[ SF/ファンタジー ] 海底二万里 別題『海底二万マイル』『海底二万海里』『海底二万リーグ』 |
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ジュール・ヴェルヌ | 出版月: 1963年10月 | 平均: 7.00点 | 書評数: 3件 |
角川書店 1963年10月 |
早川書房 1970年01月 |
東京創元社 1977年04月 |
集英社 1993年05月 |
岩波書店 2007年08月 |
KADOKAWA / 角川書店 2016年07月 |
No.3 | 7点 | ミステリーオタク | 2017/07/04 15:21 |
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実に夢とロマンに溢れた古典的名作ですよね。
先日家族でTDSに行き、久し振りに「海底2万マイル」に乗りました。前回は子供たちが小さかったこともあり、薄暗い海底を何となくモヨモヨ進むだけという印象だったけど、今回ジックリ見聞きしたら、実はよくできているなぁと感心しました。 |
No.2 | 6点 | いいちこ | 2017/07/03 16:17 |
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隙のない博物学的なガジェットが、本作の舞台設定に相当なリアリティを付与しており、1個の作品世界を構築する力は大いに買うところ。
一方で、そのボリュームが多すぎることが、ストーリーテリングのダイナミズムの喪失と、プロットの曖昧化を招いている印象が強く、惜しい作品 |
No.1 | 8点 | Tetchy | 2017/06/26 14:59 |
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ヴェルヌの代名詞とも云える本書。
主人公はパリ博物館の教授を務めるアロナックス教授。そしてその従順かつ知性と勇気を兼ね備えた若き召使いコンセイユ。それに粗暴な銛打ちの名人ネッド・ランド。このあくまで主人に忠実且つ従順な下僕と類稀なる体力と力を兼ね備えた人物という構成はもはや藤子不二雄作品のようにヴェルヌ作品お決まりの人物構成と云えるだろう。 最も特異なのは今回登場するネモ船長という謎めいた人物が中心に据えられていることだ。地上での生活を捨て、最新鋭の技術の粋を結集して建造した潜水艦ノーチラス号で海底生活を続ける世捨て人ネモ船長は博物学、とりわけ海洋生物に精通しているアロナックス教授に敬意を持ち、ノーチラス号での旅への同行を許すわけだが、自由を与えつつも今後将来ノーチラス号から出ることを許さないという極端な側面を持っている。ただ前述したようにかなり秘密が多い人物である。 まずなぜ地上の生活を捨てて海中で最新鋭の潜水艦で世界中を旅して回っているのか?さらにアロナックス教授達に睡眠薬入りの食事をさせてまで隠す、船員を1人喪うほどの戦いをどこと繰り広げたのか?また地中海では知り合いの潜水夫に逢うと、莫大な金塊を入れた箱を渡して寄付しているようにも見える。これらの不審な行動についてはなかなか明らかにされないまま、読者はアロナックス教授と共にネモ船長に付き合うことになる。 そんなミステリアスな人物の所有するノーチラス号内での生活は非常にファンタジックな魅力に富んでいる。 まず全ての物が海で手に入る物から作られているのが面白い。 また船員の服もベッドもペンもインクもタバコも全て海産物から作られている。 そして肝心の動力は電気であり、これも海水中のナトリウムを抽出してナトリウム電池として電源を受給しており、しかも海底の石炭の熱を使って抽出されている。さらにこの電気は外部からの侵入者に対する防護にもなる。敵がハッチから侵入しようとすると手摺に電気が流れて入れなくなるのだ(床も全て鋼鉄で出来ている船内に電流が流れてなぜ乗組員は感電しないのかという不明な点はある)。 空気は海上から取り込み、タンクに蓄積して数日間深海に潜っていても問題はない。 さらに船中で亡くなった乗組員はインド洋の何処かにあるサンゴの森の墓場に埋葬され、海へと還される。 さらに資金は過去の歴史において沈没した船に積まれたまま海に沈んでいる金銀財宝を独占的に採取して賄っている。 また唯一の基地は大西洋の何処かにある死火山の中であり、誰も住んでいない島にある。 動力、空気、食糧、秘密の整備基地、そして潤沢な財源、それら全てを海で賄っている、ほとんど完璧無比を誇るノーチラス号。 そして海、とりわけ海中を舞台にした小説であるから海棲生物の記述はふんだんに盛り込まれており、さらに世界の冒険家たちによる新大陸発見の歴史である航海史やそれらに伴う数々の遭難事故のエピソード、更に海底ケーブル大西洋敷設という難事業に関するエピソードなど知的好奇心をそそる蘊蓄も満載だ。 ヴェルヌ作品でも『グラント船長の子供たち』に次いで530ページ強のページ数を誇る本書。両書に共通するのは世界の海を舞台にしているところだ。海上と海中の差はあれど、世界中の海の神秘性と特異性を語るにはやはりこれほどのページが必要で、いやこれだけでも足らないほどのロマンと冒険に満ち溢れているとヴェルヌは云いたいのだろう。事実、両書に共通するのはこれでもか、これでもかとばかりに注ぎ込まれるヴェルヌのアイデアの数々である。 海底の森での狩猟、サンゴに囲まれた墓地、深海に眠る大きなシャコ貝の中で静かに育つ人頭大の巨大真珠、誰も知らない紅海と地中海を結ぶ海底トンネル、地中海にある海底火山の噴火、世界中に眠っている金銀財宝、アトランティス大陸にマッコウクジラの群れとの対決に巨大タコとの格闘、更に氷に閉ざされた中での決死の脱出劇、等々。 こんな目くるめく冒険と不思議の数々を空想巡らしながら読む子供たちにとって未来は実に魅力溢れる世界になることだろう。本当にこれは全ての子供に読んでもらいたい作品だ。 本書は数多くの出版社から文庫が出ているが、私が読んだ創元推理文庫版ではヴェルヌ自身が作成したノーチラス号の航行ルートが描かれた世界地図が付されており、これが大いに参考になった。この地図を見ると恐らくヴェルヌはまだ見ぬ世界に想像を膨らませながらどれどれ主人公たちにどんな世界の神秘を見せてやろうかとほくそ笑んでいたことだろう。この大著はそんなヴェルヌの想像力と好奇心によって紡がれた作品なのだ。これほどの筆を費やしてもヴェルヌはまだ書きたいことが山ほどあったに違いない。 日本の南から始まった航行期間10ヶ月弱、航行距離2万里の長きに亘った物語の終焉はそんなヴェルヌの渇望感を表したかのような名残惜しさに満ちている。 |