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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ]
八十日間世界一周
ジュール・ヴェルヌ 出版月: 1956年01月 平均: 7.50点 書評数: 2件

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鱒書房
1956年01月

荒地出版社
1957年01月

東京創元社
1957年01月

東京創元社
1976年03月

角川書店
2004年10月

光文社
2009年05月

No.2 7点 Tetchy 2017/09/01 01:02
もはや何も説明する必要もないほど有名な本書。物語も題名を読むだけで解ってしまう実にシンプルでありながらも面白さ満点である、まさに歴史に残る作品だ。
そして物語はまさに疾走感に溢れている。1872年と云えば日本はまだ明治5年。文明開化の言葉が福沢諭吉によって訳される前の年である(因みにこの言葉は明治8年にcivilizationの訳語として紹介された)。まだ飛行機が発明される前であり、したがって船旅が主流だった頃に80日間、つまり2か月と20日間で世界を一周するためにフォッグ卿とパスパルトゥー、そして途中で道連れとなるアウーダ夫人とフォッグ卿を銀行強盗の犯人と目して追う刑事フィックスは世界を駆け抜けていく。

拙速な旅ゆえ、またフォッグ卿が刊行に興味がないため、それぞれ来訪の地の描写やエピソードが浅く感じるが、それでもインドや横浜ではその特有の風土と文化に筆が割かれている(中にはアメリカではモルモン教の僧侶の意味不明なエピソードまであるが)。特に横浜ではフォッグ卿と離れ離れになってしまったパスパルトゥーが着物を着て、旅のサーカス団の一員になって天狗に扮して曲芸をするなどのエピソードも盛り込まれ、なかなか濃密である。当時の風俗もきちんと描かれ、ヴェルヌは極東のこの地のことをどうやって調べたのだろうかとその博識ぶりに改めて感心させられた。

物語の最後、作者は次のような言葉で締めくくる。

実際、人は、それほど大きな利益がなくても、世界一周をするのではなかろうか?

当時まだ旅行が一般的でなかった時代にヴェルヌが、冒険が将来人々の娯楽になることを予見していたことを示す一行ではないか。こ賞金を得るために人は旅に出るのではなく、むしろ思い出という無形財産を得るために金を出して旅に出る現代を実によく云い当てている。

No.1 8点 いいちこ 2017/07/03 16:15
まず、80日間で世界を一周できるかというキャッチーなプロットが抜群。
世界各地の興味深い習俗・文化に関する描写、各処で勃発するトラブルがもたらすスリルが本作に華を添えている。
スピーディな展開による高いリーダビリティと、ラストの痛快な逆転劇も実に見事。
狭義のミステリに該当しない作品としては最高級の評価で、万人が一読すべき傑作


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