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[ 冒険/スリラー/スパイ小説 ]
十五少年漂流記
別邦題『二年間の休暇』
ジュール・ヴェルヌ 出版月: 1951年11月 平均: 7.00点 書評数: 2件

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新潮社
1951年11月

角川書店
1958年06月

明治図書出版
1988年06月

集英社
2009年04月

新潮社
2015年08月

No.2 7点 Tetchy 2018/08/16 23:51
ヴェルヌの代表作の1つで児童文学の傑作として今なお読まれている名作。私の父親が子供の頃に読んで大変面白かったと云っていた本書。そして今なお子供の夏休みの読書感想文の課題図書の1つに挙げられている本書を40も後半の歳になって初めて今回手に取った。
まずヴェルヌのこの不朽の名作が『地底旅行』や『月世界旅行』、『海底二万里』、『八十日間世界一周』といったビッグネームと比べて後の年に書かれていることに驚いた。ヴェルヌ御年60歳の1888年に発表され、作家としては円熟の領域からやや下った時期に書かれている。
そして本書は明らかに児童を、少年少女を対象にして書かれているのが明確であり、先に書かれた『神秘の島』のジュヴナイル版といった趣である。
いかな名作であってもこの歳になってこのような児童文学を読んで果たして愉しめるかと思っていたが、それはまったくの杞憂であった。
面白い、実に面白い。そして次から次へと創意工夫で困難に立ち向かう少年たちに胸躍らされてしまう。とにかく彼らの生活力の豊かさが凄いのだ。

彼らの無人島生活は悲惨さよりもむしろ楽しさが強調され、全く悲愴感がない。
但し全く問題がないかと云うとそうでもなく、15人の仲間たちの軋轢が存在し、やがて顕在化してくる。
また思春期の少年たち特有のスクールカーストが備わっており、それぞれ自分の能力に自負を持つ生徒たちとの対立があり、派閥が生まれている。
私はこのような危難に遭遇した少年たちは、生き延びるという大目的のためには一致団結して困難に立ち向かうと思っていただけに、この15人の中での分裂が盛り込まれていることに驚いた。ヴェルヌはいわゆる学校生活で起こる、このような仲良しグループたちの反発をこの漂流した少年グループにも持ち込むことで、少年たちのリアルな世界を作っている。これを1888年に盛り込んでいることに驚かされるのである。

本書の原題は『二年間の休暇』というように彼ら15人の少年が無人島で過ごし、故郷に帰り着くまでに要した期間は2年という長きに亘ってであった。
「男子三日逢わざれば刮目して見よ」という言葉があるように、少年たちにとっての2年は飛躍的に成長を遂げる期間だ。

なんと清々しい物語だったことか。やれば出来ると少年少女たちを励ますのに実にいい物語だ。親元を離れて無人島で子供たちだけで暮らすという絶望的な状況を彼らは持ち前の陽気さと知恵と勇気で乗り越える。今年も夏休みの読書感想文の課題図書の1つに挙げられていたが、今なお読まれるだけの価値はあるし、そしてこんなに面白い本を読むことが宿題として与えられている子供たちはそれを選んだ先生、そして何よりも作者のヴェルヌに感謝すべきだろう。

今頃になって本書を初めて手に取ったが遅きに失したという思いは一切ない。寧ろ少年時代に戻ったかのような冒険心が蘇ってきたことに感謝したいくらいだ。
本書は人生で読むべき作品の1つとして是非とも皆に読んでもらいたい名作だ。

No.1 7点 いいちこ 2017/08/19 16:17
明快で完成度の高い舞台設定・プロット、登場人物の配置の妙などもさることながら、勤勉・勇気・思慮・熱心があれば、いかなる困難にも打ち勝つことができるとのメッセージが強く印象に残る佳作


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