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ミステリの祭典

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モトキングさんの登録情報
平均点:6.06点 書評数:78件

プロフィール| 書評

No.58 1点 月は幽咽のデバイス
森博嗣
(2003/12/05 13:36登録)
余り述べる言葉を持てない。凄く好きな作家だった。
しかし、これはトリックが酷い。酷すぎる。
ミステリを舐めないで欲しい。
作者の生み出すキャラや台詞回しが好きだからこそ、言いたい。


No.57 9点 有限と微小のパン
森博嗣
(2003/12/05 13:08登録)
シリーズ10作の最後のパーツとして、このシリーズを傑作と言わしめた作品だろう。
ただ、本作単独での出来は可もなく不可もなく、かな。トリックは決して悪くないのだが、作者の方でそのトリック+解決に伴うサプライズを敢えて避けた印象が強い。
ミステリ作品単独としての読み応えより、やはり、読者の大半が求めていたもの…真賀田四季と犀川、お互いが抱える問題。この解決にこそ、今作の存在意義を見いだしたのではないか。
ただ、結局は、推し量れぬ天才二人の思考。解決する術もない。いや、むしろ、この問題の解決とは「不定こそが解」であるという、同シリーズのどこかに出てきた文中の言葉そのものなのかも知れない。
それと、The Perfect Insider と対をなす、このOutsider は、色々な点…真賀田博士の関わっている位置、メイントリックの構造、物語終了後のメイン登場人物の思考のベクトル等々…で正に鏡面のような2作であり、それがとても見事に感じた。
タイトルの見事さとして、よく「封印再度」や「夢・出会い・魔性」が素晴らしいと言う人が多いが、単に邦題と英題の音が合っていて、内容も遠からず暗示しているだけの2作より、この始まりと終わりの2作の方が、異常とも言えるくらいの作者の狙いを感じた。
つまり、作者が真賀田四季を必要とした理由とは、この10作の「起」と「結」を繋ぐキーワードが欲しかっただけなのかも知れない。
色々コメントさせて貰ったが、個人的には大変面白かった。
「天才」と位置づけた人間、真賀田四季は最高。ミステリに限らず、他のどんな作品でも、こんな人物描写は見たことない。
単独ミステリとしては7点程度だが、シリーズと犀川と真賀田博士を生み出してくれた作者に、この点数。


No.56 6点 数奇にして模型
森博嗣
(2003/12/05 11:19登録)
事件発生から、各自の勝手な推理合戦。
この導入部は良いですね。ミステリ好きならこの辺は、普通に好ましく読めます。
ただこの時期の森作品に多いように、結末に収束するにつれ、映画的な映像と、活劇が盛り込まれてきます。ここは好みでしょう。
真相解明〜解決にかけては凡作ミステリ(ややマイナスかな)ですね。
まあでも、作者の独りよがりについていけるくらい、読者のキャラへの入れ込みが強いようなので、結局は成功なのでしょう。私も犀川は好きです。
あと、「有限と微小〜」へと向かう犀川と西之園の心の変遷を描く上でも、こういうエピソードを積み重ねていく必要があったのだとも、少し思います。


No.55 7点 ハサミ男
殊能将之
(2003/12/05 10:55登録)
良く出来た佳作。やや変形のミステリという感じ。
この性別誤認、人物誤認という叙述トリックは、各々単独では、既出ネタだと思うけど、それを組み合わせたのがまず上手い。
片方を疑っても、もう片方の可能性に気づかない限り、その疑念は否定されてしまう。…この構造がとても上手いと思った。
つまり、両方を同時に疑わないと、その可能性を肯定出来ないのだ。
文章も、新人とは思えない上手さ。物語の出来としてはかなりの高水準だろう。
ただ、真犯人の解明は、やや唐突に過ぎる。もう少し伏線を入れられなかったか。
レベルが高い作者だと思うからこそ、また、新人賞応募作という締切なしで作れる余裕があったと想像するからこそ、その点が惜しまれる。
それと、確かに良作だが、メフィストを取るような「新風」には思えない。


No.54 7点 どんどん橋、落ちた
綾辻行人
(2003/12/04 15:35登録)
表面的には、単なる楽しいパズル、若しくは間違い探しクイズ。
しかし、長いことミステリファンをやってきて、そして綾辻行人という作品を読み続けた自分にとっては、この作品は作者の苦悩の吐露に感じる。
自分はこれからどこへ行くのか。
何が書けるのか。
何を生み出せるのか。
「どんどん〜」「ぼうぼう〜」そして「意外な〜」。この3作に登場する「彼」の存在こそが、作者にとって、この短編集の価値であり、本質であると思ってしまう。
むしろ、いわゆる本編の物語の方は、過去のエピローグ(大学時代の自分の創作意欲や情熱…)をそのまま紹介しただけで、その後に来る「彼」とのやりとりこそが、作者にとっては大事…というか、発表すべき告白なのだと感じた。
ミステリはクイズではない。やはり小説なのだ。
作者もそう思っているのだと、私は思う。
ミステリ作品としては2、3点だと思うが、この本はそういう本ではない。
点数は…考えても良くわからない。ので、とりあえず今の平均点に最も近い点数を。


No.53 8点 クラインの壷
岡嶋二人
(2003/12/04 14:20登録)
面白い。
作者のストーリーテーリングの才の結晶でしょう。
ミステリとしては、やや自分の思う定義から外れますが、エンターテイメント小説として、最高にスリリングかつエキサイティングな傑作です。
SF小説かな。


No.52 9点 そして扉が閉ざされた
岡嶋二人
(2003/12/04 14:15登録)
凄い。
クローズドサークルという設定。そして、この結末。これらを考えついたとしても、これほどの作品に仕上げるのは至難の業だろう。
ミステリは元より、小説作家としての腕が、これでもかというほど閃きまくった大成功作品。
この人は本当にストーリーテラーとしての才能が凄まじい。
これでネタを生み出す才に優れていたら、全てが傑作となるだろう。…が、そっちの方はそうでもないらしく、結構厳しい作品もあるが、全てが商品(小説)として水準以上だろう。
何はともあれ、これは大傑作。どんなに他の作品が嫌いでも、これだけは読むべきだ。


No.51 9点 ロートレック荘事件
筒井康隆
(2003/12/04 13:46登録)
余韻が、美しく…そして限りなく切ない小説。
この小説そのものを支えるある人物の持つたった一つの事実。
これがこの小説のトリックの肝であり、そして全ての余韻の原因である。
犯人を決定づける説明に関して、たった「1行」で全てひっくり返す凄さとしては、ミステリの歴史的に見てもコレが最初だと思う。
単に犯人足りうるだけでなく、その事実の持つあまりに衝撃的なことといったら…。
ただ、近年の傑作「十角館」にも共通するが、登場人物に対するトリックが全くなく、彼らには真相が全く意外ではないところはご愛敬。
それでも、動機付け、結末の余韻…これらは「十角館」を遙かに凌駕している。
ただ、物語全体としては「十角館」の方がミステリチックで好感が持てる。
なのでこの点数。


No.50 5点 七回死んだ男
西澤保彦
(2003/12/04 13:25登録)
面白い。エンターテイメントですね。
少しブラックな味付けをしてあるドタバタコメディという感じ。
よく著者の作品はSF云々言われるけど、この設定は、作者の腕も相まって大して違和感はわかないので、SFはちょっと、という方でも問題なく入り込めるでしょう。
でもミステリとしては、それほどでも…。トリックというトリックはないですし、…まあ一人称による事実誤認を誘う叙述トリックの応用ですね。この「応用」というのは、故意の事実描写省略ではなく、主人公自身の誤認から来るものなので。
西沢ファン若しくはコメディ好きなら。


No.49 2点 人形式モナリザ
森博嗣
(2003/08/18 16:46登録)
完全に同感。これ以降は堕落の一途。
味をしめた、というのか。ミステリ読者の「程度」を誤認してしまったというのか。
私は前シリーズが好きだったので敢えて言いたい。
勘違いしないで欲しい。ミステリとしての基盤が在ってこそ、その上にキャラクターが生きていた前シリーズが読者に受けたのだ。本小説以降のミステリ的内容は、誰がどう見ても手抜きにしか見えない。やっつけ仕事だ。
キャラの魅力は問題ないのだから、ミステリの部分について、初心に戻った真摯な姿勢で、創作に取り組んで貰いたい。
ミステリの創作は、そこが最も心血を注ぐ部分で、だからこそ選ばれた者にしか書き得ない。商品として、その才がない(だろう)我々が買う価値を感じられるのだ。
森作品といえど、このミステリの基本原理を崩すことは出来ない。と、思う。
だから皆が低評価なのだ。


No.48 7点 今はもうない
森博嗣
(2002/09/13 11:47登録)
本作の肝は、その構成。メインのストーリーで繰り広げられるトリックや人物描写や、そんな全てを、この構成作りの一要素として捉え、徹底している。だからかも知れないが、メインストーリーだけを抜き出すと、ミステリとしての出来は、かなり凡作。
そして、この構成におるサプライズを成立せるための条件は、読者が本シリーズ(S&M)の他作をある程度読んでいるということ。確かに万人向けではないが、当時から結構売れていた本シリーズにおいては、ビジネス的にも需要的にも、確かにアリなのだろう。
ちなみに、私は大のファンになっていたので、途中、その可能性に気づいてしまいながらも、結構面白かった。


No.47 7点 夏のレプリカ
森博嗣
(2002/09/13 11:37登録)
まず思うのは、「幻惑の〜」と同時並行した事件として扱う必要が全くない、ということ。章立てが偶数オンリーとか奇数オンリーとか、一見奇抜で面白いのだが。
内容自体は、面白い。謎自体、何か無理矢理、犀川と萌絵が出なくても良いと感じる面もあるが、ラスト近くのチェスのシーンで、萌絵が真相に気づくシーンなんかは、劇的で、絵的で、しかし小説でしか描写し得ない、素敵な文章だと思う。そういう意味では、やはりS&Mシリーズで良かったかな。
あと、作品冒頭に展開する萌絵の親友の自宅と別荘との2シーン進行に隠された叙述トリックも、良くできていて面白い。
総合的に見て、シリーズでも上位にランクするだろう。


No.46 6点 幻惑の死と使途
森博嗣
(2002/08/15 17:20登録)
他作品と比べ、間違いなくフェアのレベルが低い。ただ、その「森博嗣がまさかこんなことしないだろう」が、正に読者の盲点となり、つまりトリックとして作用したからこそ、この作品の「転」が見事に決まっていると言える。
しかし、この作品の良さは、そんな些末なところではなく、もちろん作中のトリックでもなく、恐らく、終盤、怒濤のように展開される一人の男の人生観と、それに触れて叫ぶ犀川に集約されるだろう。


No.45 5点 まどろみ消去
森博嗣
(2002/07/03 17:23登録)
他の森作品から得られるのと同様の満足感を得ようとすると、肩すかしを食らう。
他作品との関連といえば、S&Mシリーズのレギュラーキャラが登場する1つのエピソードのみ。そして、恐らくミステリらしいミステリも同作のみ。
幻想小説? サスペンス? サイコ? ・・・そんな感じ。起承転結の「転」は全作とも見事。作者はここが小説のポイントと思っているのかも知れない。もしかしたらミステリのポイントだとも…。
個人的にはあまり良くなかった。


No.44 6点 封印再度
森博嗣
(2002/05/16 16:16登録)
これミステリなのか、な。印象的には、「学研と科学(小さい頃こんな本を読んだことが…)」とかに連載してそうな科学読み物。人が死んでいて、かつそれが殺人によるものだから、まあ子供向けではないけど。
トリック的には最悪に近い。例えば、DNAにおけるアミノ酸の配列(これは本作の内容とは全くリンクしていません)がトリックを理解する上で必要な知識だとしても、そんな専門的知識のない一般大多数の読者にとっては、それがトリックだなんて言われても、意表を突く突かない以前の問題。そんなの、常識的な知識じゃないからね。大げさに言えば「実は登場人物のAさんは壁を通り抜けられるんです!」などと、最後に説明された感じ。
まあ、客観的には以上のとおりだと思うけど、でも、個人的にはかなり好きですね、これ。シリーズ他作よりは劣るけど、また、人それぞれ相性もあるけど、私にとって本作は、全く飽きさせない、非常に魅力在るキャラの作り出した面白い小説と思えます。でもやっぱりミステリではないかもね。


No.43 6点 笑わない数学者
森博嗣
(2002/05/16 16:00登録)
ミステリとしては、ハッキリ言って凡作。大仕掛けなトリックには、欠片ほどの迫力も謎もない。恐らく意識してだろうが、メインのキャラを映えさせるセリフのやりとりは、非常に非日常の香りがして、こちらのほうがよほど難解なミステリといえる。
しかしながら、この数学的でいて実は哲学的な禅問答のようなセリフこそが、森作品をヒットさせた最大の秘訣だろう。理解できそうで出来ない魅力とでも言おうか。
ちなみに、そんな意向にまんまと嵌った私は、大の犀川ファンです。で、この点数。


No.42 6点 冷たい密室と博士たち
森博嗣
(2002/05/16 15:51登録)
「F」の後では、普通のミステリという印象。舞台設定やキャラとかの道具は、完全に「理系」であったが、トリックや動機などは、完全に普通のミステリ。
森作品の隠れた生命線であるキャラも、本作ではあまり引き立っていない感じ。
しかし個人的には、犀川という新しい探偵(役)像を生んだ点だけでも、本シリーズは評価に値する。ま、つまり彼のキャラが好きなのでこんな中途半端な評価です。


No.41 10点 すべてがFになる
森博嗣
(2002/05/16 15:41登録)
ミステリは比較的読んでいる方だが、今まで森作品は、何故か「私的詩的〜」をつまみ食いした程度だったので、この作品には度肝を抜かれた。
ハッキリ言って凄い。何故こんなに売れてるか不思議だったが、本作にて納得。
この設定、世界観でしか通用しないあのトリックは秀逸。本格の定義に照らし合わせてもかなり上位でしょう。だってこんな設定自体が前代未聞だ。それに加え、比較的文量も多いのに、スピード感、スリル感に溢れ、あっという間に読破した。それと特筆すべきはキャラ。犀川と西野園を作り出したことこそが、その後のシリーズ成功を生んだ最大の要因だろう。
あと、筆者も理系なのか、イメージとして作りが丁寧。わかりやすいとかじゃなくて、きちんと自分のルールの中で、細部まで凝って作り込んでる感じがした。


No.40 9点 切り裂きジャック・百年の孤独
島田荘司
(2002/01/31 10:39登録)
誰だかが言っていた。これは御手洗作品の番外編だと。あの「クリーン」氏がやはり…? いやはや何ともファンには嬉しい隠れ含意である。
前に読んだ清涼院の「コズミック」でも、同じイギリスの連続切り裂き事件を題材にしていたが、それとは雲泥の差で、見事な解釈が成り立っている。
島田作品の中では、「漱石と倫敦ミイラ〜」と本作は、歴史的事件に対するアプローチが優れた、裏傑作群であると、私は認識している。
非常に面白い。こういう作品の創作は、閃きだけではなく、歴史の勉強や解釈の付け方が必要となってくるが、本作は見事である。全く持って尊敬してしまう。
欠点がほぼ無いという点では、作者の最高傑作とも言えるのでは…?


No.39 4点 放課後
東野圭吾
(2002/01/24 15:30登録)
可もなく不可もなく。デビュー作はやはり青春系が多いな、という今更ながら思った。
今はもう、飛ぶ鳥を落とす勢いすら感じる作者だが、スタートはやはり、平々凡々なのね。
今活躍しているほとんどの作家のデビュー作と大して遜色が無く、かつ特記すべき事項もない。
一つだけ、個人的に絶対言いたいことは、この作品に乱歩賞はあり得ないという一点。
最近の作品には、小説物語創作の天才とすら感じられるほどの佳作が多いのに…。

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