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ミステリの祭典

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たかだいさんの登録情報
平均点:5.05点 書評数:198件

プロフィール| 書評

No.38 5点 探偵工女 富岡製糸場の密室
翔田寛
(2024/12/14 08:52登録)
かの富岡製糸場を舞台としたミステリーという一風変わった作品
新政府への移り変わりや、それに伴う反乱や動乱といった激動かつ不安定な世相、さらに明治の当時には色濃かったと思われる偏見や思想が如実に描かれていて舞台背景はばっちり描けている印象
そんな時代背景の元、1人の工女が密室の状況で死亡しており、さらにもう1人の工女が姿を消す
密室の謎と、消えた工女という2つの謎に、さらに輪を掛けて大きな陰謀の気配が終始漂い、激動のラストへ向けて収束していく話の壮大さも結構好意的に受け止められた
周囲をよく観察し、見聞きした情報を基に物事を鋭く淡々と推理していく本作の探偵役「勇」のキャラも、こういったミステリー小説の探偵としてはあまり見かけないタイプな気がして興味深かったです


No.37 5点 能面鬼
五十嵐貴久
(2024/12/14 02:32登録)
開幕早々、無理な飲酒の強要により1人の大学生を急性アルコール中毒で死亡させてしまい、挙句、保身に走ったサークルメンバー達は死の原因を死亡した本人の自己責任による不幸な事故として偽装する
当然、コレを理由に事件に関わった者達が次々と殺されていくわけだが、ホラーとして見るとテンポも良くて読み易い部類の小説だったかと思います
一方で、ミステリーとして捉えた場合、オチまで含めた事件の真相が若干、反則じみてる気がしないでもない…
後、保身に走ったサークルメンバー達が総じてわりと胸糞で、いかにも罪悪感があるようでいて、実の所、自分達が悪いとは微塵も思ってないのが透けて見えるようで嫌悪感が湧きました(キャラクターに寄っては、死んだ方が悪いと嘯いてる奴もいる始末)
だからと言って、そんなサークルメンバー達が殺されていく様子を見て特別すっきりするわけでもないのが、いかにもホラーといった感じ
いわゆる「13日の金曜日」的な作品で、ジェイソンに村ホラーの要素も加わったような作風はなかなか良かったと個人的には思います


No.36 5点 透明な螺旋
東野圭吾
(2024/12/14 01:50登録)
東野圭吾による「ガリレオ」シリーズの一つで、本シリーズの主要キャラクター「湯川学」の人物像を深掘りした内容となる
背後から銃殺され海に沈んだ男、特に理由もなく忽然と消えた女、女を匿う老女…等々、一つのミステリーとしても中々に面白い内容だったかと思います
ただし、前述のように湯川の秘密というか生い立ちであったり、意外な人間性に焦点を当てた作品でもある為、多かれ少なかれシリーズに馴染みがあるかないかで評価が割れそうな印象も受けた
良かれ悪かれキャラの深掘りがメイン(の一つ)にある為、事件としての面白みはあってもどこか小粒感が拭えず、正直、単体として見た場合の評価は10段階中の真ん中(5点)が妥当な気がしました
勿論、シリーズを通して見たら重要なポイントではあると思うのですが、個人的には、どうせならアッと言わせるようなトリックありきの「ガリレオ」が読みたかったかなというのが本音です


No.35 6点 少女Aの殺人
今邑彩
(2024/12/09 23:57登録)
深夜ラジオに届けられた少女からの悲痛なSOS。やがて、事件は実際に起きて…という筋書なわけだが、なかなか引き込まれる設定であると思う
95年の作品を2〜3ヶ月前に読んだ為、深夜ラジオ云々に若干の古臭さは感じてしまったものの、それを差し引いても読者を引き込む魅せ方が上手い作家だと改めて思った所です
金雀枝荘のような派手や、貴島柊志シリーズのような奇怪さがない地味めな内容ながら、意外と上質なフーダニットが楽しめる作品だったかと思います


No.34 6点 倒叙の四季 破られたトリック
深水黎一郎
(2024/12/08 08:30登録)
犯人視点で事件が語られる倒叙形式を採用した短編集で、春夏秋冬が割り振られた4編が収録されています
読んでいて思ってのは、同じ倒叙物でも「古畑任三郎」のようなキャラクター的な面白さは薄いという事。古畑が目星を付けた犯人にねちっこく張り付いて犯人のミスを誘発するタイプとするなら、本書は入念に物証を潰して犯行に及んだ犯人が唯一見落とした物証をズバっと突きつける直球タイプとでも言おうか。その辺りのスタンスの違いから、いわゆる探偵役のキャラクターとしての面白みはあまり感じなかった
とは言え、つまらないかと言うとそんな事はなかったです
希少なマニュアルまで入手し、色々と調べ上げて自らの犯罪に自信満々な犯人が、極々小さなミスから破滅していく(暴かれていく)様は、意外と爽快感もあります


No.33 5点 掲載禁止
長江俊和
(2024/12/07 10:34登録)
人死に見学ツアー、天井裏の住人、品格を護る過激な活動家等々、怪奇色強めに描かれる戦慄の短編集といった内容
ある意味、「世にも奇妙な物語」的な短編が5作程収録され、どこかしら一捻りあるのが好感が持てます
尚、ジャンルとしての分類はミステリーになるのかも知れませんが、個人的には本書は人恐系のホラー小説と捉えています
なんにせよ短編集なのでキリ良く読み進められる点と、作中の常軌を逸した雰囲気が好きでしたので普通に楽しめました


No.32 4点 三重殺
奥田哲也
(2024/12/07 05:58登録)
プロットというか話の大筋が面白かった作品
バラバラ殺人、焼死体、崖から突き落とされた包帯ミイラの男…なんと3度も殺された男の正体とは⁉︎っていう掴みはばっちりです
ガチガチの警察小説は若干苦手なので、このくらい軽いテイストのミステリーは読み易いーー筈なのですが、内容がごちゃごちゃし過ぎている印象が強く、その実、ちょっと読みにくいと感じた作品でもあります
個人的にはじっくり腰を据えてというより、所々読み飛ばしながら斜め読みするくらいでちょうど良く楽しめるタイプの小説だったかと思います


No.31 5点 佐渡・密室島の殺人
深谷忠記
(2024/12/07 05:22登録)
この著者の作品に触れるのは本書が初でしたが、読者への挑戦状も挿入されるタイプの本格推理小説の系統を踏まえた作品で意外と悪くなかったです
1人の女性が殺害され、容疑者は3人。ところが、3人には三者三様にアリバイが有り…という定番のアリバイトリック物であり、一方で佐渡島を舞台とした旅情ミステリーとしても楽しめる作品かと思います
ただ、前述のアリバイであったり、遺体を遺棄した車に目立つように殺の文字が残された物々しい犯行現場であったり期待できる要素は散見されるものの、読み終えてみると若干パワー不足が否めなかった気がしました
可もなく不可もなく、無難にまとまっている作品だと思います


No.30 4点 天久鷹央の推理カルテ
知念実希人
(2024/12/07 05:03登録)
現役の医師でもある著者による人気シリーズの一つで、アニメ化も決定している作品の第一弾
お固そうな医療ミステリーでありながら、専門用語や聞き慣れない病名が絡みつつもライトな語り口で堅苦しくなく楽しめる、実績ありきのシリーズとなります
医療ミステリーなのに河童や人魂という一見噛み合わないテーマが基にある話であったり、少女による不可思議な妊娠という重い話もあり、医療ミステリー定番の派閥争いや医療ミスを巡るごたごたもありで、いい感じに話の振り幅があって飽きはこない
ただ、個人的には同じ天久鷹央シリーズでも医療関連を主体とした「推理カルテ」より、殺人事件も絡んでくる「事件カルテ」の方が好みです
正直、このシリーズを最初に読んだのがこの「天久鷹央の推理カルテ」だったなら後の続編には手を出さなかったかも知れません
最初に「事件カルテ」の方を先に読む機会があり、その後に本書を手にした者が読んだ感想としてはそんな感じです


No.29 6点 むかし僕が死んだ家
東野圭吾
(2024/12/07 04:47登録)
ガリレオや新参者、マスカレード・ホテルなど有名なシリーズ物を多く手掛ける人気作家・東野圭吾による単発物の長編
山中の廃屋を舞台に登場人物は(基本)男女の2人のみという限定的な空間でストーリーが進行し、探索によって見つかる手掛かりから徐々に全容が見えてくるという構築が絶妙な作品
こんな限られた空間でよくもここまでのサスペンスを描けるものだと、ある種の感心すら覚えました
どことなく「弟切草」や「かまいたちの夜」のようなノベルゲームっぽい雰囲気を感じましたが、氏の特徴だと思っている読み易い文章で一気に読めてしまう作品です


No.28 5点 さかさ星
貴志祐介
(2024/12/07 04:32登録)
久しぶりに読む貴志祐介による呪物をテーマにした本格ホラー作品
なにかと理由を付けて縁起物を徹底的に排除し、本命と囮を混ぜ込んだ様々な曰く付き物品を屋敷に持ち込んだ話の元凶ー底知れぬ悪意が持つ「何がなんでも一族を根絶やしにする」という執念、情念は読んでいてゾクリとさせられた
ただ、一方で大ボリュームの割に曰く付き物品(呪物)が次から次へと出て来てその都度曰くが説明される為、呪物の紹介本と化している感も少なからず感じられる。そこは、ちょっと残念に感じました
個人的には「黒い家」や「ISORA」の印象が強い分ホラーの人というイメージがある貴志祐介という事で結構期待して読んだ感想としては、「天使の囀り」を読んだ時のようなある種の重苦しさも感じられて雰囲気も良かった割にまぁまぁ怖いと言った所に落ち着いたのはその辺が理由かもしれません
設定や雰囲気は良質ながら、ボリュームに見合った面白さがあったかと問われると若干物足りない作品でした


No.27 4点 涼宮ハルヒの憂鬱
谷川流
(2024/12/05 19:19登録)
実際に読んだのはアニメ一期が話題になっていた頃になるので約20年も前になります
その頃も思っていたのは、評価が過剰では?っという事
確かに主人公含め登場人物のキャラは立っていて個性的だし、そんなキャラクター達がわちゃわちゃする学園物と思わせて、終盤にかけてのSF的な展開は普通の学園物ライトノベルとは一線を画す仕上がりだとは思います
ただ、とんでもないライトノベルと持て囃されていた割に、個人的には可もなく不可もなくな感じだったのを覚えている
つまらないわけではない。ただ、好みの問題かもしれないけれど、良かれ悪かれストーリーの流れが割りかし淡白に感じでしまい、事前情報の割に…っとなってしまった具合です
一応、シリーズは最新刊以前までは読破済みで、シリーズとして見るとそう悪くもないとは思ってます。消失なんかは、SF物としてもかなり面白かった印象もあります
あくまで、「涼宮ハルヒの憂鬱」単体での感想という事で


No.26 3点 模像殺人事件
佐々木俊介
(2024/12/04 10:10登録)
個人的に雰囲気は好きだった作品です
古のミステリー風味というか、横溝正史や江戸川乱歩のような場の空気感とでも言うべきか、そういった雰囲気に加えて、どちらも自分こそが本物と主張する2人の包帯男、それがやがて殺人へと発展していく…掴みは完璧に好みでした
難点(とも必ずしも言い切れませんが)として、話がややこしくてなかなか頭に入ってこなかった点
これは私自身の読解力の問題も含まれるかと思いますが、これによって、あまり面白かったとは言えない後味となりました
少し間をおいて再度読み直したら評価は変わる可能性はありますが、今はこれで


No.25 3点 消えたなでしこ
西村京太郎
(2024/12/03 23:58登録)
お馴染みの十津川警部が活躍する作品で、西村京太郎作品で度々見られる誘拐物の一作です
今回、誘拐されるのはなでしこジャパン。なかなかのビッグネームで、興味がそそられます
して、その中身ですが、なでしこジャパンがチーム丸ごと誘拐される根幹は面白いものの、事件の流れそのものは良かれ悪かれ平坦だった印象
どうしても氏が書いた誘拐物の最高峰「華麗なる誘拐」と較べてパワーが低い上に、似たプロットで読売ジャイアンツの選手が誘拐される「消えた巨人軍」が既にある為、二番煎じは言い過ぎにしても正直新鮮とは言い難い。同じ十津川警部が活躍する誘拐物でも「ミステリー列車が消えた」や「ダブル誘拐」の方が作品としての質は高かった気がします
軽い読み物としては十分楽しめる反面、満足感はそこまで望めない。そんな作品でした


No.24 6点 終着駅殺人事件
西村京太郎
(2024/12/02 19:05登録)
西村京太郎といえば十津川警部で、更に言えばトラベルミステリーの印象が圧倒的に強い
本作も例に漏れず十津川警部が指揮を執る鉄道ミステリーであり、氏の代表作の一つと記憶している
その内容はと言えば、アリバイ、密室、動機と幾重にも謎が絡み合い、特に最後の最後に明らかになる決定的な動機に関して言えば脱帽と言ってもいい塩梅。正直、犯人の側からしたら友人を皆殺しにするくらいの殺意も湧くだろうよ、と納得出来てしまった
とりあえず、西村京太郎に関しては作品数が膨大であるが故にパターン化している所もあって当たり外れが極端な印象を持っていますが、この『終着駅殺人事件』然り氏の初期の作品は話がよく練られていて面白いですね


No.23 5点 ○○○○○○○○殺人事件
早坂吝
(2024/12/01 00:26登録)
作品タイトルが伏せ字になっており、ことわざと事件の性質からタイトル当てをするという趣向はなかなか斬新で興味を惹かれ、読破
いわゆるバカミスと言われる類ではありますが、叙述トリックの部分なんかは意外と面白い
なんか無理がないか?という疑問もバカミスとして見るとなんでか許せるので、個人的にはさほど気にならず
推理を補完する為に、実際の犯罪では様々な物の隠し場所として悪用される"あそこ"に言及している辺りも、珍しさを感じつつ妙にリアルで嫌いじゃない
総評として、肩の力を抜いて楽しむ娯楽として及第点って感じの作品かと思いました
個人的には同じ作者の作品なら、探偵AIシリーズの方が好きですね


No.22 6点 invert 城塚翡翠倒叙集
相沢沙呼
(2024/11/30 17:50登録)
シリーズがいくつか出ている内、最初に手に取ってみたのが本書
事前情報として他シリーズとは違って倒叙型の短編集だということだけ分かっていて読んだ者の感想です
まず、同じ倒叙物という事で意識したのか否か、有名な刑事ドラマ「古畑任三郎」を彷彿とさせるシーンが作中に垣間見れて面白い。特に犯人を追い詰める材料が出揃った所で探偵から読者に向けて語られるモノローグなんかはニヤニヤしながら読んでました。こうゆう演出は小説ではあまり見た事がありませんが、結構好きです
また、探偵役である城塚翡翠のキャラクターも楽しめた要因でした。先述の古畑にも言える事ですが、この手の『犯人に張り付いてボロを見つけ出す』という物語の特性上、キャラには粘着性みたいなのがあった方が好ましいと考えますが、それに相応しい性格であったかなと思います。ふわふわ系というかどこか抜けた印象でありながら言動が小悪魔系な城塚の性格は、犯人からしたら堪らなくウザかろうと読んでいて思わずニヤリ
他の長編シリーズも早く読みたいと思えた良作でした


No.21 2点 ブラック・ショーマンと名もなき町の殺人
東野圭吾
(2024/11/22 16:37登録)
とりあえず、私としては東野圭吾は好きな作家の一人だし、本作も話としてはまぁまぁ面白いと思いました
その上で評価が2点なのは、ひとえに「本作の探偵役が嫌い」、この一言に尽きます
こう言ったミステリー作品にはクセの強い探偵役はごまんと居ますが、本作のそれもかなり癖が強いです
職業がマジシャンなのも珍しいですが、その性格は高慢不遜、目的の為なら汚い手段も辞さないようなヒール寄りのキャラクター
正直、この手のキャラが総じて嫌いな私にとって、彼が探偵役という時点で中々に読むのがツラい…
本作がシリーズ化されているのも知ってますが、以降のシリーズを私が手に取る事はおそらくないでしょう


No.20 9点 硝子の塔の殺人
知念実希人
(2024/11/21 06:35登録)
個人的に好きな作家の一人である知念実希人作品という事で、発売当初から期待しつつ最近(と言っても2〜3ヶ月前だが)ようやく読む機会が持てたので、早速、一気読みした
そんな者の感想としては、率直に言って今まで読んだ知念実希人の作品の中で一番好きかも知れない
元々殺人を企てた者が余計な罪まで着せられる事を恐れ、いわゆるワトソン役を自ら買って出て探偵に真相を推理させようとする
この構図が結構珍しくて好きな一方、塔の性質を利用した大小様々な仕掛けが散りばめられていてトリックの観点からも不満は無かった
真の真相とでも言うべき最後のどんでん返しも鮮やかに決まっていたと思うし、やはり知念実希人の作品中、最も面白い(現時点での)最高傑作は本作だと個人的には思います
小ネタとして、著者の他シリーズの人物に軽く触れられている箇所があり、他にもネタを知っているとニヤニヤできるような遊び心があるのも魅力の一つかなと思いました


No.19 6点 殺し屋、やってます。
石持浅海
(2024/11/19 23:53登録)
現代に生きる殺し屋の物語なのだが、ミステリーとしての視点が面白かった作品
主人公は殺し屋で、殺し屋は仲介人2人を経て依頼人から殺人を依頼される
そんな依頼人もしくは標的の不審点に気付いた殺し屋が、その不審点を調査し解き明かしていくというのが大体の本筋であり、そこら辺がこの作品の長所にして唯一無二だと思った点です
また、謎は解き明かしつつ淡々と依頼もこなす殺し屋の姿勢も(話として)好感が持て、伊坂幸太郎の「殺し屋シリーズ」と比べたら時、リアリティはこちらに軍配が挙がる気がしました
視点の面白さと、文章の読み易さで思った以上に楽しめた1冊です

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