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ミステリの祭典

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殺した夫が帰ってきました

作家 桜井美奈
出版日2021年04月
平均点6.50点
書評数4人

No.4 5点 メルカトル
(2024/04/27 22:23登録)
都内のアパレルメーカーに勤務する鈴倉茉菜。茉菜は取引先に勤める穂高にしつこく言い寄られ悩んでいた。ある日、茉菜が帰宅しようとすると家の前で穂高に待ち伏せをされていた。茉菜の静止する声も聞かず、家の中に入ってこようとする穂高。その時、二人の前にある男が現れる。男は茉菜の夫を名乗り、穂高を追い返す。男はたしかに茉菜の夫・和希だった。しかし、茉菜が安堵することはなかった。なぜなら、和希はかつて茉菜が崖から突き落とし、間違いなく殺したはずで…。秘められた過去の愛と罪を追う、心をしめつける著者新境地のサスペンスミステリー!
『BOOK』データベースより。

これ面白いんですかねえ。どうにも小粒な感が拭えません。もっと大技で勝負して来るのかと思っていたのに、小技の積み重ねで期待外れでした。合わせ技で一本とはなりませんよね。だってこのタイトルですよ、どうしたって惹かれるものがあるじゃないですか。何故殺したはずの夫が帰ってきたのか、不思議な現象の裏に何があるのか、思わず詮索せずにいられないでしょ。

物語としてもぬるま湯に浸かった印象で、インパクトや意外性に欠けます。確かに整合性という意味では問題ないと思いますが、サスペンスと言うには緊迫感に欠けるとしか考えられません。まあ私の評価は全般的に厳しい方なので、あまり参考にしない方が良いかも知れませんけど。

No.3 6点 HORNET
(2024/04/06 20:10登録)
 鈴倉茉菜に付きまとう男が、自宅まで押しかけてきた。その時、その男を押しとどめ、茉菜を助けた男は―茉菜が「殺した」はずの夫・和希だった―

 非常に魅力的な物語の入り。夫・和希は記憶をなくしているということで、しかも殺意に至った当時のDVぶりとは打って変わって優しい男になっている。はてさて、これはどう展開していく物語なのか…と興味は尽きない。

<ネタバレあり>
 結果、あろうことか両者(!)別人という飛び道具的な着地。読者の想定を根本から覆すという点では話題作になると思うが、タイトル通り「殺したはずのその男本人の生還」としての行く末であったほうが、よりサスペンス感は増したかな… テンポよく読みやすい展開で、楽しむ分には全く問題ないとは思う。

No.2 8点 虫暮部
(2024/04/04 14:38登録)
 ダークなラヴコメ? かと思ったらホラー・ファンタジー? かと思ったら意外な着地点。誤認の生じる状況がきちんと設定された上で、幸せに怯える心の機微をも巧みに描いており、それが結果として上質なカムフラージュの役割を果たしている。
 細かいことを言えば “夫が帰ってくる” 場面はかなりギリギリだと思う。第四章でその時の心理が語られるが、それと照らし合わせると、部屋に入る前、先に話しかけるのは茉菜であるべきでは?

No.1 7点 人並由真
(2024/03/19 05:25登録)
(ネタバレなし)
 都内のアパレルメーカーに勤務する、一人暮らしの28歳のOL・鈴倉茉菜(まな)。彼女は取引先の妻帯者の中年・穂高からストーカー的な恋慕を寄せられていた。自宅にまで押しかけて来た穂高を押さえて追い返し、茉菜を救った青年は、鈴倉和希。茉菜が5年前に仙台で殺したはずの、夫だった!?

 Amazonでの評判が良いのを、今年になってからたまたま見かけ、フーン、と思っていたら、近所のブックオフの100円棚で一週間ほど前に見つけて購入。今夜、数時間で読み終えた。

 <死者の帰還>という、1950年代以前の海外ミステリなどでしばし見かけられた主題の物語は、はたしてホラーに流れるか、はたまた非スーパーナチュラルの純然たるミステリの枠内に収まるか、なかなか緊張を誘う。
 
 とはいえ正直、伏線が丁寧な(または、丁寧すぎた)こともあり、中盤で大方の真相の枠組みは予想がついたが、その上で改めて読み直すと、結構良くも悪くもグレイゾーンというか、ピーキーな作りをした作品だとわかる。ただし、それはそれで、この作品の場合、ありということで。

 物語の実像が見え始めたのち、お話の奥行きがさらに広がっていく感覚がかなり心地よく、真相のどんでん返しどーのこーののサプライズよりも、さらにそのあとで語られた小説としての賞味部分で得点してるタイプの作品じゃないか、と思う。
 逆にいうと、その辺が心に響かないで最後まで読んじゃったヒトは、けっこう厳し気な評価しちゃうんじゃないか、と危ぶむが。ふーん、ひねったつもりで、よくある大技じゃんとか、うそぶいて。
 
 評点は、0.4点くらい(0.5点ではなく)オマケしてこの数字で。

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