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ミステリの祭典

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殺人偏差値70

作家 西村京太郎
出版日2014年05月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 6点 まさむね
(2022/10/08 22:51登録)
 ノンシリーズの短編集で、1964年から1982年までに発表された8短編が収録されています。短編集への初収録作品は「高級官僚を死に追いやった手」のみで、他の短編はこれまでの何らかの短編集に収録済みです。清張風の作品が多く、小品揃いとはいえ、味わいはあります。
 マイベストは1作品目の「受験地獄」か。2作品目の「海の沈黙」のテーマは、短編集「歪んだ朝」収録の「蘇える過去」と同じでした。作者として強い問題意識を持っていたのでしょう。

No.1 5点 E-BANKER
(2014/12/10 22:13登録)
500冊以上の著作を誇る作者。
本作は角川書店によって編まれた作品集。ラストの1編以外は“非トラベル・ミステリー”という構成。
表題は最近地上波ドラマ化されたもの。

①「受験地獄」=この言葉も最近は「死語」になったのだろうか? 二浪し何としてもT大に合格したい主人公は、あろうことか受験日当日に朝寝坊をしてしまう。窮地に陥った主人公の取った行動が悲劇を招く。何とも皮肉なラスト。
②「海の沈黙」=東北の漁村を訪れた新聞記者を待っていたのは漁船の沈没事故。取材を進めると、明らかに沈没は保険金狙いの偽装事故に思えたのだが・・・。これもラストは逆説的。
③「神話の殺人」=TV業界が舞台の一編。業界を牛耳るスポンサーとそれに群がる業界人たち。「黄金番組殺人事件」という長編も書いている作者はこの業界にも詳しいのか? 設定自体が一昔、ふた昔前だが・・・
④「見事な被害者」=本編もマスコミ、新聞社が舞台。喉から手が出るほどスクープを欲しがっている記者が陥る陥穽。これも売名行為が横行するマスコミ業界ならでは。
⑤「高級官僚を死に追いやった手」=今度は官僚たちの権力闘争を描いた作品。まぁ当然ながら汚い世界ではあるのだが・・・これも大人の世界なのだろう。
⑥「秘密を売る男」=とある財界の大物をひたすら非難する選挙活動を行う男。その男の選挙資金は謎の人物から贈られていた・・・。やがて明らかになる謎の機関。
⑦「残酷な季節」=ワンマン社長の肝いりで子会社の社長として出向した生え抜きの専務。熱意を込め新事業に邁進していた元専務に罠が迫る・・・。ラストも切なく残酷。
⑧「友よ 松江で」=本編のみトラベルミステリー風味の作品で、脇役として十津川警部まで登場する。まぁ小品だな。

以上8編。
冒頭に触れたとおり、⑧以外は作者の代名詞であるトラベルミステリー以外の作品が並ぶ。
どれも人間の醜い「保身」とか「妬み」などを元に起こる事件を集めており、それが本作のテーマなのだろう。

どれも小品というレベルの作品ではあるが、さすがにうまくまとめてるなという印象は持った。
旅のお供や時間つぶし程度にはちょうどいいかもしれない。
そんな評価。
(ベストは①かな。②~⑦はマズマズ。⑧はダメ)

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