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ミステリの祭典

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たかだいさんの登録情報
平均点:5.10点 書評数:157件

プロフィール| 書評

No.97 3点 神話の密室 天久鷹央の事件カルテ
知念実希人
(2025/02/03 00:43登録)
現役の医師でもある著者による人気シリーズの一つで、お固そうな医療ミステリーでありながら、専門用語や聞き慣れない病名が絡みつつもライトな語り口で堅苦しくなく楽しめる実績ありきのシリーズ
今作の場合、『密室』にフォーカスした中編2本で構成され、『閉鎖病棟で酔っ払ったアル中患者』(物理的な密室)と、『衆人環視の場で急死した選手』(状況的な密室)という毛色の異なる密室の謎が楽しめる
だが、(特に前者に言える事だが)本作はどちらかと言うと事件カルテというより推理カルテ寄りな内容で、正直あまり楽しくはなかったというのが正直な感想です


No.96 4点 ミステリークロック
貴志祐介
(2025/02/03 00:26登録)
例によって著者の「密室」に対する拘りが詰まった短編集
防犯カメラと迷路に阻まれた犯行現場、突如ボートから投げ出されて海の藻屑となった男。この2編は結構好きで、特に後者(「コロッサスの鉤爪」)はボリュームといい内容といい文句はない。前者については、映像化した際に映えるようなトリックである為、文章で訴えるには分が悪い感じはしたが内容自体は面白かった
逆に、表題作になっている「ミステリークロック」に関しては、作中で一番力が入ったトリックが用いられているのはヒシヒシと感じるが、一方で、それが空回っていたように感じてしまった。はっきり言って、「すげぇな」と思う前にダレてきてしまい、トリックが緻密で壮大な割に受け手に響かない自己満足になってしまっていたように思う(少なくとも私はそう思った)


No.95 5点 狐火の家
貴志祐介
(2025/02/03 00:08登録)
かつてドラマ化もされた「鍵のかかった部屋」の原作で、著者が『密室』に拘りを持って放つ「防犯探偵・榎本」シリーズの2作目
日本家屋、蜘蛛の飼育部屋、閉じ籠った棋士、凶暴な番犬…例に漏れず様々なシチュエーション下で意図的もしくは偶発的に発生した4つの密室が提示される
個人的に発想の面白さでは毒蜘蛛を使ったトリックは好きでしたが、一方で古い日本家屋で起きた実質的密室殺人(表題作)の真相は話の雰囲気が良いだけにちょっと物足りなさがあり、残る2編は正直良くも悪くも特にこれといった印象に残らない凡作と感じられました


No.94 5点 悪夢のドライブ
木下半太
(2025/02/02 23:50登録)
木下半太によるユーモアミステリーシリーズ「悪夢の○○」の一つで、今回は、食っていく為に止むなく運び屋のバイトを引き受ける羽目になった売れない芸人が主人公
車を所定の場所まで運転するだけのお仕事だった筈が、やがて命の危機にも直面し、思ったより多くの人間が関わる一大事へと発展していく
木下半太の軽快な文章と、アフロヘアーの売れない芸人(主人公)など分かりやすく個性的なキャラクター、そこに勢いのある展開も相まってまさに珍道中といった感じが魅力の作品
あまりシリアスになり過ぎていないのが逆に功を奏している気がしていて、木下半太が描くユーモアミステリーは本作がある意味で最適解なのではないかとも思う


No.93 5点 炎冠 警視庁捜査一課七係・吉崎詩織
戸南浩平
(2025/02/02 22:32登録)
ハチ公前で女性ランナーが爆死するというインパクトのある開幕から始まるサスペンス長編で、人を爆破する事に快感を見出す異常犯「カントク」を主人公含め警視庁捜査一課が追う警察小説
祖父の死をきっかけに歪んだ欲望を肥大化させていく「カントク」の狂気や、警察を嘲笑うような愉快犯的言動、なかなか尻尾を掴ませない狡猾さ等、悪役としてのキャラが立っていて個人的には結構好きなタイプのキャラクターでした
逆に、(むしろ敢えて狙って描かれてもいそうですが)主人公・吉崎詩織の相棒に関しては偏屈過ぎるというか僻みっぽいというか、終盤に掛けて彼の本音本心が見えてくるとは言え好きになれる人物ではないなと終始思いました
同じく警察小説である麻見和史の「殺人分析班」シリーズに近い物があり、もしシリーズ化されるようなら次作も読んでみたいと思う位には読み易く、面白い作品だったかと思います


No.92 5点 上海魚人伝説殺人事件
天樹征丸
(2025/02/02 06:57登録)
映画化ありきの作品らしく、確かに映像化に向いた作風になっていると思う
事件の流れ自体は、原作でもたまにある逃避行物というか、状況から犯人と決め付けられた青年と一が警察から逃亡しながら事件の真相に迫っていく
肝となるのは凶器の隠し場所だが、このトリック自体なかなか大胆で面白かった。少なくとも私は、こういったトリックを採用した作品を(似たのも含めて)他に知らないので、新鮮でもあった
とは言っても、個人的にあまり印象に残る程の話でも無かったのも事実としてあり、言うほど特徴のあるストーリーじゃ無い為、原作漫画含めて他の事件に埋もれがちな普通の内容といった評価に落ち着いた


No.91 4点 殺戮のディープブルー
天樹征丸
(2025/02/02 06:45登録)
ノベルス版金田一少年の事件簿において異色、異彩を放つ作品
というか金田一少年の事件簿全体を見ても、こういった事件は異例な気がする(他にはゲーム版の「地獄遊園殺人事件」が近いくらいだろうか?)
テロリストに占拠されたホテルからの脱出を目指す最中、脱出を目指す仲間が殺されていく
結構、緊迫感が生じ易く映像化に向いた内容(実際、アニメとして映画化し、普通に週1のアニメも放送された)なのだが、良かれ悪かれ金田一の小説は文体が軽い傾向にあるのでサスペンスになり切れてないというか中途半端な印象が拭えない
その辺りは原作の雰囲気や、メインとする対象を考慮するとやむを得ない部分ではあるのかも知れませんが、ちょっと残念に思います


No.90 5点 鬼火島殺人事件
天樹征丸
(2025/02/02 06:30登録)
ノベルス版金田一少年の中で、犯人の意外性という意味では本作と「雷祭殺人事件」がツートップかなと個人的には思ってます
ミステリーとしてはそう珍しいパターンでもないのかもしれませんが、少なくとも金田一少年の事件簿においては珍しいパターンだった気がします
また、メインの消失トリックも大味ながら一応納得も出来る感じで、塩梅としては丁度よかったのかもしれない


No.89 8点 電脳山荘殺人事件
天樹征丸
(2025/02/01 19:24登録)
小説版金田一少年の中で、最も完成度の高い作品
当時まだ珍しかったハンドルネームを用いたチャットでのやりとりを上手く事件の肝に活かす事で、見事な叙述トリックを成立させている
著者曰く、金田一少年というブランドが無くとも成功出来た自信があると自画自賛していたのを聞き覚えがあるが、そう言いたくなるのも頷ける出来栄えだと思う
(基が漫画という事もあるからか)どうにも文体が軽かった印象だが、そこは逆に言えば読み易いと捉える事も出来る
いずれにせよ、作品としての質は高いと思います


No.88 6点 黒いトランク
鮎川哲也
(2025/02/01 07:15登録)
アリバイ崩しを得意とし、後身の育成にも尽力した大家・鮎川哲也の代表作と名高い本作
トランクに詰められていた男の腐乱死体、トランクの送り主は溺死してしまい、その送り主が犯人なのかと思いきやそう単純な話でもない。調べれば調べる程、混迷していく捜査状況は読んでいて惹き込まれるものがありました
派手さ珍しさは無くとも堅実な本格推理を楽しめる名作だと思います
正直、アリバイトリックがアレコレ複雑に入り組んでいる印象で全体像が理解しにくかったのはご愛嬌。個人的な読解力の問題もあるでしょうが、「なんかすげぇ事やってるな」程度の認識であっても事件の真相、裏側が判明する頃には感嘆する事請け合いです


No.87 5点 露壜村事件 生き神少女とザンサツの夜
椙本孝思
(2025/02/01 03:46登録)
帯にて様々な状況に対する挑戦状を突き付けてくる「迷探偵・白鷹黒彦の事件簿」シリーズの3作目で、本作は「村ミステリ」への挑戦状と位置付けられてます
奇妙な宗教に狂った名家に支配された田舎の寒村を舞台とした連続殺人を描いており、内容の凄惨さも相まってある種の金田一耕助みがある作品ではあったかなと思います
一方で、主人公とヒロインのやり取りが軽妙で一種の清涼剤になっている為、その辺りを雰囲気を壊すと捉えるか、雰囲気を和ませると捉えるかで作品の印象は大分変わる気はします。個人的にはこのシリーズの2人のやり取りはラブコメ的で嫌いじゃないので特に問題はなかったです
事件そのものは大掛かりな割にあっさりしていた感じがして若干の物足りなさを覚えましたが、シリーズ物としてはラストの展開など興味深い内容でした


No.86 4点 悪夢の六号室
木下半太
(2025/02/01 03:33登録)
とあるモーテルタイプのラブホを舞台に、拉致され殺し屋と同室している男、裏金を持ち逃げしたヤクザの息子とその愛人、どちらもあと一歩で地獄待ったなしの状況で繰り広げられる人間模様を描いたサスペンス物
相変わらず軽快というか軽妙な文体で書かれている為、サクッと読めるのは魅力だと思う
その分、ミステリアスな雰囲気になり切れてないとも言え、今作に限って言えば他の悪夢シリーズのようなコメディ要素もあまりないので、作品として薄っぺらく感じてしまう
一応、予測不能な展開は健在なので、本格的もしくはヘビーなサスペンス大作とではなくライトノベル的な感覚で読む分には楽しめる作品ではあったかと思います


No.85 2点 転売ヤー殺人事件
松澤くれは
(2025/01/29 22:10登録)
そのものズバリなタイトルやあらすじは面白そうで期待値が上がったものの、実際に読んでみたら拍子抜けな内容でした
転売ヤーという存在を殊更悪として描いていて、しかも内容が大分くどい…
確かにあまり褒められた行為ではないのは分かりますが、この話のように晒し者にされているのも不快感がある
もっとも、その転売ヤーである主人公のキャラクターも自己正当化と開き直りが酷くて好意的には見えずらい
では事件そのものはどうか?と言えば、これも薄っぺらい
「転売ヤーが殺される」
ただこれだけの内容で、それ以下はあっても以上はない作品でした


No.84 6点 桜の下殺人事件
西村京太郎
(2025/01/28 00:27登録)
個人的に西村京太郎の作品は箸休めに丁度いい(言い方は悪いが)小物が多いという印象を持っているが、一方で発想が大胆で先鋭的なテーマも決して少なくない
この作品の場合は、まさに後者であり、あらすじの時点でなかなかに興味深い
当時は概念としても新しかった「多重人格」を扱った作品であり、派手さはないがサスペンス物として大いに興味を惹かれた作品です
また、捜査に関してストイックな姿勢と熱い想いを抱く十津川警部をして、本作のラストはなかなかに異色。それだけ事件の真相、黒幕に対する怒りがまさったという事でしょうが、話の締め方が他の十津川警部シリーズとは一線を画す終わり方で、ここまでキレた十津川警部を見られるのも珍しい気がします
ともあれ、西村京太郎作品としても、十津川警部シリーズとしても読み応えのある、隠れた名作といっても良い作品だったかと思います


No.83 3点 ラプラスの魔女
東野圭吾
(2025/01/25 09:33登録)
とりあえず他作品と同様に、相変わらず東野圭吾の文章は読み易いのでスラスラと読了出来た
そんな本作は、2つの離れた温泉地で起きた硫化水素による死亡事故に端を発し、その両方に居合わせた少女が抱える秘密と事故の真相を探っていくミステリーです
根幹にあるSF的な設定の空想科学とでも言うような特殊設定の基、ストーリーが構築されている変わり種ですが、個人的にはこの設定がちょい弱いように思えてイマイチ刺さらず…
続編が出ていた筈ですが、正直続きを読みたいとは思わなかったです
東野圭吾の作品(シリーズ物)としてはブラック・ショーマンよりはマシですが、あまり魅力を感じないシリーズ、といった所でしょうか(個人的な見解)


No.82 4点 スラッシャー廃園の殺人
三津田信三
(2025/01/25 07:54登録)
斜線堂有紀の「廃遊園地の殺人」みたいな作品かと思いきや、綾辻行人の「殺人鬼」系統の話だった作品
要は、泡銭を手にして自分だけの特殊な世界観(庭園)を創り出したホラー作家の邸宅に潜入した撮影クルーの面々が、1人ずつ謎の怪人に拘られて殺害されていくホラー作品です
著者の趣味前回の作風で、ホラー映画のオマージュがあちこちに散りばめられていたらしいですが、個人的にはよく分かりませんでした
作品としては、氏の持ち味だと思っているミステリーとホラーの融合が本作にも生きており、思っていた系統のミステリーでは無かったとは言え、事件の真相はいかにもホラー的で良かったかと思います
ただ、それこそ「殺人鬼」のような突き抜けた魅力が薄いと感じたのも正直な所で、あまり印象に残る作品ではなかったかなとも思いました


No.81 1点 元彼の遺言状
新川帆立
(2025/01/20 23:15登録)
事件のきっかけになる異質な遺言状や、その後に起こる弁護士殺害と盗まれる金庫など魅力的な謎、それらがスピーディに進みながらも綺麗に纏められているとは思います
しかし、それ以前に主人公のキャラクター性がとことん無理でしたので、読むのがひたすらに苦痛でした(一応、折角買ったので読み切りましたが…)
いわゆる『強い女性』を描きたかったのかと思いますが、個人的に主人公に対して感じたのは強さとかいうポジティブな印象より、ガメつく傲慢な鼻持ちならない女というネガティブな印象しか受けず、最初のプロローグ的な章の時点で「なんだコイツ…」とひたすらにドン引きでした
ミステリーとしての面白さ・新しさはあったものの、主役のキャラが致命的な位に私とは相性最悪で、全てを悪い意味で打ち消してくれました


No.80 4点 天河伝説殺人事件
内田康夫
(2025/01/20 18:39登録)
旅情ミステリーの大家として知ってはいても作品は未読でしたので、軽く調べて氏の代表作に数えられる本作をチョイスしてみました
内容としては、古典芸能の「能」がテーマとなっており、能の宗家にまつわる不審死、更に東京で起こった毒殺事件の謎に、浅見光彦が巻き込まれていく話
とりあえず、(先入観もあるかも知れませんが)2時間サスペンス的なストーリーだなと思いつつ、幾つもの謎が少しずつ順当に分かってくる流れは丁寧で安定感があったように思います
相応に重めな話を綺麗に纏めている印象がある反面、飛び抜けた所が見当たらない作品でもあったと感じます
また、十津川警部並みに知名度はあると思われる本作の探偵「浅見光彦」ですが、少なくとも本作を読んだ限り、キャラクターとしてパッとしないのも難点かと…。本人曰く「落ちこぼれ」でダメ人間らしいですが、あまりそういった感はない為、例えば普段と調査の過程でギャップが生じるような魅力もなく、「普通に優秀な人じゃね?」という面白みの薄いキャラになってしまっていたように思います


No.79 4点 東京・山形殺人ルート
西村京太郎
(2025/01/18 18:40登録)
身元不明のバラバラ死体が発見された事を皮切りに、僅かな手掛かりに縋って十津川警部が山形に赴くトラベル・ミステリー作品です
文庫本には「本格推理小説」とありますが、作風としてはサイコパスを扱うサスペンス物となります
引き起こされる凄惨な事件など前提となる設定が結構面白く、個人的には僅かな手掛かりから捜査線上に挙がった男「黒田」のキャラクター性が割と好きで、捜査線に名が出るや自ら十津川警部に接触を持ち、疑われている前提で嘲笑うように捜査を掻き回す。愉快犯的であり、言葉巧みに女性を信用させる詐術の持ち主であり、大胆不敵で抜け目のない狩人でもある「黒田」のキャラクターが、この作品のすべてと言ってもあながち言い過ぎではないかと思います
ただ、それだけにラストが呆気なさ過ぎた感が否めない。その直前に、十津川警部との水面下での攻防に勝利しているだけに、余計、唐突に負けた感が拭えなかった
そこが残念に感じた点であり、詰まらなくはないがイマイチという評価に繋がったポイントです


No.78 4点 爆ぜる怪人 殺人鬼はご当地ヒーロー
おぎぬまX
(2025/01/12 17:02登録)
お蔵入りの憂き目にあったご当地ヒーローが、誘拐犯や薬の売人といった悪人を殺害するという奇抜なストーリーが特徴的な作品
また、ストーリーの奇抜さの中にきちんとミステリーとしてのロジックというか面白みが軸としてある為、ただのキワモノで終わらない魅力のある作品だと感じました
ただ一方で、パワハラ三昧で部下に(控え目な表現で)根性焼きを強要するような制作会社の社長など負のキャラ付けをされた人物も多く、個人的にそういった人物は総じて胸くそだったのであまり好きになれず、読後感も悪かったです
ミステリーとしての骨組みは面白いがキャラデザで印象があまりに悪い作品、というのが個人的な所感ですね

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