| みりんさんの登録情報 | |
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| 平均点:6.66点 | 書評数:518件 |
| No.458 | 6点 | 雲をつかむ死 アガサ・クリスティー |
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(2025/08/02 15:07登録) 1935年のポアロ中期作。『ABC殺人事件』の前なのか。日本では『ドグラ・マグラ』が発表された年だと思うと、意外と我が国のミステリーも先進性があるというか本国イギリスに健闘しているな。 【ネタバレのようなものあり】 列車内では飽き足らなくなったのか、遂には天空で殺人事件が起こる。メイントリックはその綱渡り的な面も含めて実にホンカクミがあって好感が持てた。吹き矢とハチのアイデアはミスリードとして十分に機能している。 ただ人物関係でよくやるアレは流石に食傷ぎみだ。いくら当時の戸籍制度・身分制度・捜査手法が杜撰でも、流石にこれを見逃すことはないだろうと思う。『オリエント急行』と同じように、捜査編もかなり退屈。 |
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| No.457 | 5点 | 光のアダム 中井英夫 |
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(2025/07/27 00:28登録) 森の廃屋に住んでいる名家・瀬良家に魅入られた美術評論家と失語症の画家。二人はそこで世にも美しい妖精のような人ならざるものを幻視する。 おお!とらんぷ譚よりもさらに反地上的な幻想小説。本作は"地上"というワードを現実という意味で多用する。主人公は"地上"の時間に囚われた人間なのに対して、失語症の画家は異次元へと飛翔する天使に近づこうと…うん、なんかよくわかんねーけど終盤はやたら俗っぽく・・・地上っぽくなる。話の掴みどころはないが、幻想文学ってこういうものか。あの世とこの世の境目のような雰囲気を出すのはうまい。"地上"の代名詞である主人公が傲慢で煩悩にまみれた性格なのはわざとなのだろう。 |
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| No.456 | 6点 | 無実はさいなむ アガサ・クリスティー |
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(2025/07/26 16:45登録) まだほとんど読めていない戦後のクリスティー作品の1つ。 舞台は『ねじれた家』で形式は『そして誰もいなくなった』みたいな感じだった。最近は初期のポアロシリーズを読んでいたので、ガラッと雰囲気が変わって面食らった。資産家夫婦の5人の養子の人間模様が複数視点で丁寧に描かれ、まるで自分ごとのように読ませてしまう力がある。日本の新本格作家(好きですよ)に足りないのはこういうところなのだろう。 親の愛情は子にとっての束縛となる。血の繋がっていない親ならなおさら倒錯した感情を抱いてしまうのだろう。犯罪をゲームのように楽しむフィリップだけがこの重さにそぐわずかなり浮いている(てかちょっとサイコっぽいw)。得意の恋愛描写も健在だが、最後は少し雑かな。 パズル好きの私の嗜好とは少しズレた作品だが『ねじれた家』と共に自著ベスト10入れているのも何となく頷ける。 |
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| No.455 | 7点 | アミュレット・ワンダーランド 方丈貴恵 |
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(2025/07/26 01:10登録) アミュレット・ホテルの続編。前作が小ヒットしたのもあり、売れ路線を狙ったか?本格度は前作より下がり、その代わりにエンタメ度がアップ。てことで贔屓しても7点に抑えておこう。 竜泉家シリーズはあまりキャラクターに愛着はないが、こちらのハードボイルド風なのに理知的なホテル探偵が格好良くて好きだ ドゥノット・ディスターブ 6点 生配信中に背後から刺された双子の片割れ。衆人環視の密室と鉄壁のアリバイだが実は〜のネタでズッコケ。ポイントは袖の内側に隠した両手から紐解かれるロジック。 落とし物合戦 7点 遺失物管理を担当しているラウンジ&バー『ブラック・カイザー』には高価なブレスレットと靴下の中に入ったぬいぐるみが届けられた。申し出た3人の中の誰が真の落とし主なのかを当てるフーダニット。その裏には正体不明の大泥棒・ニコラウスの影。舞台設定と謎のアンバランスさが愛らしく、著者らしく実にロジカルに解決されていく。犯罪者の楽園なのに従業員はほのぼのしてていいな。 ようこそ殺し屋コンペへ 7点 イタリアのマフィアの開催する殺し屋コンペにより、5人の刺客がアミュレット・ホテルの従業員・水田に襲いかかる。著者初のガン・アクション。方丈先生の端正な本格マインドを評価している身としては、あまりそっちには行ってほしくはないなと思いながら読んでいたが、推理を武器にするホテル探偵によるフーダニットに落ち着き安心。これは法月綸太郎へのオマージュ的なやつですか?? "ホテルのルールに守られているのは、宿泊客のほうなのだ" なるほどねぇ… ボマーの殺人 7点 アミュレット・ホテルを乗っ取ろうとする爆弾魔が最上階に出現。無数の容疑者から犯人を特定する鮮やかなロジックはいつも通りながら、49個の爆弾の中にたった一つ紛れ込んだ解除コードを探す力技とやや強引な10桁コードの推理もおまけつき。ホテル探偵による容赦ない拷問シーンがぜひ見たかったなあ(笑) 以上4編。『落とし物合戦』と『ようこそ殺し屋コンペへ』が特に面白かった。短編なので、事件の動機となるドラマや人間背景が薄っぺらく見えるのは仕方がない。ので続編は長編でどうですか(^^) |
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| No.454 | 7点 | 三幕の殺人 アガサ・クリスティー |
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(2025/07/23 22:49登録) ポアロが登場するまで約200ページ。日常でも何かしらの役を演じてしまう自己愛の強い俳優と人間観察が趣味の好事家による素人探偵コンビが活躍して新鮮。 【ネタバレあり】 ポアロを悩ませるのが聖人の権化のような牧師が殺された動機。これは良心が痛む凄まじい一撃だ。しかし、それよりどちらかというと2つの殺人の会食に居合わせた者を疑わせるというミスディレクションのためだったという動機の方が良かったのではないか? よくもまあこんな良作をポンポンかけるなあ いや今作に関しては「犯人はエッグでチャールズを自分の元に呼び戻すためだ」という確信があった。怪しいモノローグや独り言もあったし。だがクリスティーはそこまで甘くなかった。 |
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| No.453 | 8点 | エッジウェア卿の死 アガサ・クリスティー |
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(2025/07/23 14:47登録) このシリーズは騙された人と見抜いた人(もしくはネタバレ等で知っていた人)で評価が分かれがちだなあと思います。 ⚠️ネタバレ注意⚠️ ※ポアロシリーズ過去作のネタバレもあり 著者の得意とするこの手のテクニックにまた騙されちまった。むしろお前が見抜ける作品あるのかよと思われそうだが。もう流石に"この技"はないだろうと油断していた。悪く言えば過去作の使い回しであるが、それが連続すると見事に決まる。 ????「今考えていることの逆が正解だ。でもそれは大きなミステイク」って奴です… 今作はわざわざモノマネ女優までフェアに登場させているのだから、このトリックにも実現可能性が保証されているし、成功したかを電話で確認までしているのだからリスクが極めて低い。実際に○○○○○に気付いて殺された奴もいるわけだし。 トリックは見事◎で動機も前例なし◎(自分の読んだ中で)。ミスリードは本サイトのレビューを見ると引っかかってる人は少なめなので微妙か△ 最後の獄中からの手紙、自信に満ちた狡猾な犯人の造形もよし◯ てことで8点! |
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| No.452 | 7点 | 邪悪の家 アガサ・クリスティー |
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(2025/07/22 12:55登録) すごくシンプルに読めば、真相が浮かび上がってくるという構成が面白い。いや普通に疑ってたんですよ中盤くらいまではね。でもそこから色々あって頭からポッカリ抜け落ちていたというか、勝手にその可能性を消していたというか…まあ素直な読者なんです。まあポアロもずっと見抜けなかったんで(笑) ミスリード・ミスディレクション(違いや如何に?)の巧みなクリスティーと相性良いのかもね。 ※人並さんのありがたき警告によって、ソチラをどうせ読んでいないであろう私は皆様の書評が読みたくても読めないのが辛いところ。 |
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| No.451 | 3点 | 青列車の秘密 アガサ・クリスティー |
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(2025/07/20 02:37登録) 列車内で顔を潰された女の遺体とその部屋に潜んでいた男の影、ルビーの盗難、骨董商の話…そして謎のロマンス展開。話がとっちらかりすぎてあまり整理できていない。 アガサ・神・クリスティーにしては珍しくつまらん。でもポアロの推理が聞きたくてこんな深夜まで読まされちまった。 |
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| No.450 | 7点 | グラン・ギニョール ジョン・ディクスン・カー |
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(2025/07/18 09:42登録) 『夜歩く』の原型となった中編。読む前から犯人を知っているというバイアスもあるが、登場人物が減らされたためか『夜歩く』よりも犯人の意外性がなくなっている。その代わりにバンコランの豪華な推理ショーが映える。最後の犯人の悲痛な叫びも削られているのは寂しいが、スリムになった分、事件の不可解性とその真相はこちらの方が分かりやすい。 読みにくかった新訳と比べると、国内作品かと錯覚するくらい異常に滑らかでかつ雰囲気も損なっていないと思う。多少省いてるんか知らんが、素晴らしい翻訳。 あと、恐怖小説とロマンス小説と謎短編が3つと、最後にはカーの評論付き。 カーの『十大傑作探偵長編』のセレクト理由とその作家・作品の歴史的意義・位置付けなどが解説。ネタバレの嵐なので、海外古典未読だらけの私は半分くらい飛ばし読みせざるを得なかった(ネタバレの警告⚠️はあるので安心して読める)が、このサイトの海外古典が好きな方々にとっては垂涎の品だと思われる。 |
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| No.449 | 7点 | 千年のフーダニット 麻根重次 |
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(2025/07/16 21:22登録) 物語の2/3ほどは秘境冒険小説+プチミステリみたいな感じでワクワクしながら楽しく読んでいたが、研究所が千年間コールドスリープさせる理由が脆弱(なぜ千年?)だったり、千年後の世界が想像を超えるものでなかったりと節々に安っぽさはあった。ホワイに関してもたっぷりページを割いて、背景を掘り下げ、犯人の執念と狂気に説得力を持たせていたら…と惜しく思う。しかしながら、真相自体は紛れもなく一級品で、非常に優れた密室ミステリ。もし某1990年代の作品を読んでいなかったら凄まじい衝撃を受けて、さらに高い点数をつけていたと思う。この設定でクローンを使わなかったことも素晴らしい。 疫病神ながら予想しておくと、今年の本格ミステリベスト10とかにランクインするんじゃないですかね(^^) あと、装丁もうちょっとがんばれよ |
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| No.448 | 5点 | 妖刀地獄 夢野久作 |
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(2025/07/15 16:28登録) 『名娼満月』以外にはいずれも刀が物語に深く関わってくるということで、『少女地獄』や『瓶詰地獄』にあやかってこのようなタイトルをつけたと思われる。中身は夢野久作が生涯で書いたたった5つの時代小説を全て収録。他のアンソロには一切載ってない激レア5品。 『斬られたさに』 3回読んだがモヤモヤ。 特に若侍の最期のセリフ「女役者」はどういうこと?本当は仇討の免状を盗んだ掏摸女であるが、友川家の長女であるかのように演じていたとそのまま受け取って良いのだろうか。平馬の悟った真実の武士道とは一体何だったんだろう。決して復讐の連鎖を悔やんだわけではなさそうだが。 『名君忠之』 藩主・黒田忠之は家臣である与九郎が薩摩藩から恩寵を受け取ったことに憤慨し、処刑を命じるところから始まる。 この話は与一の動機が謎に包まれています。死んだ両親に呪いをかけられていたのか、それとも自分が助かる道はこれしかないと悟ったのか。どちらにせよ遊女を手にかける必要はなかったのでは。結果、祖父の死に感極まって泣き出し、元凶である忠之も情に絆される始末。 『名娼満月』 最上級の美貌を持つ花魁・満月を3人の男が奪い合い、その戦いに破れた商人と武士がタッグを組んで満月を貰うための金を集めるという話。1クールの感動オリジナルアニメのようなフツーすぎるオチで逆に異色作まである。 『狂歌師 赤猪国兵衛』 記憶が正しければ、夢野久作の中で唯一の探偵小説だと思われる。探偵小説アンチの夢Qなので、その造形はやはり一筋縄ではいかず、掃溜から手掛かりを習得する非人(乞食)探偵を採用。内容は王道で、蔵元の娘が胴体を真っ二つに斬られた事件を解決するというもの。この乞食探偵はロジックが強引で、どちらかというと掃き溜めで集めた情報を開示していく物知りおじさんというイメージだ。解説によると都筑道夫の砂絵センセーに近いらしい。読んでみるか。 解説によると、非人というワードが引っかかり掲載を拒否されたらしい。この探偵によるシリーズものになる噂も… |
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| No.447 | 5点 | ジョーカー・ゲーム 柳広司 |
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(2025/07/13 13:44登録) スパイ養成所であるD機関の人間は、日本帝国軍の信条とはかけ離れた考えを持ち、まるでゲームのように諜報戦を鮮やかに制していく。表題作は信念に囚われた軍人には一生見つけることはできないという日本帝国版『盗まれた手紙』だと感心しました。 何よりも魅力は何手先も読む明晰さと非情に徹する冷酷さ、その実行力を持つ結城中佐で、それが発揮された『ロビンソン』がお気に入り。 |
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| No.446 | 3点 | N・Aの扉 飛鳥部勝則 |
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(2025/07/13 02:48登録) 絶版本で困っていたが、なんと引越し先の図書館にあった…が…うーん…作者のミステリ観というかエッセイとして読めばなかなか興味深いかも。江戸川乱歩や横溝正史のお気に入り作品談義はそこそこ楽しかったし、村山槐多とかM・R・ジェイムズとか聞いたこともなかった(本サイトでも書評数1件のみ)ので、読んでみようかなとも思った。 飛鳥部作品を読んで、作家の内面が気になるレベルにまで気に入ったら本作を読むべきかな。そうじゃない方には、とにかくお勧めしない。 3作目にこれ書いたんだ… ※なんと今年に電撃復活を遂げるそうです! |
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| No.445 | 7点 | 風果つる館の殺人 加賀美雅之 |
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(2025/07/12 13:34登録) アンリ・バンコランのせいで久々にシャルル・ベルトランが読みたくなった。他にいるかは知らんが「日本のジョン・ディクスン・カー」の1人。たぶん。 ああ!!なんということだ!!悪意に満ちた酸鼻な連続殺人の真相と犯人の狡智に長けた世界に類例のない恐るべき奸計が白日の元に晒された時、[電撃にも似た/雷に打たれたような/爆弾が破裂したような]<衝撃/戦慄>が私を覆い尽くした。 加賀美雅之といえばこれよこれ。※ ↑ちなみにこんな記述は文中に一切ありません。 たまに恥ずかしくなるけど、このやたらに仰々しい文章が癖になる。 『双月城の惨劇』や『監獄島』には一歩及ばずともハウダニット作家としての矜持というか、トリック(主に物理)に対する偏執的な愛にヒジョーに好感が持てる。今作は四つの不可能犯罪とそのトリック。珍しく加点法で ①15m上空で首吊りと巨人の足跡が残された謎 +3 「品物」が分からなくてググったよね普通に(苦笑) ②迷路の中の透明人間密室 +1 先行作が脳裏をよぎる ③衆人環視の風呂密室 +2 ④38年前の迷路密室 いや〜これは… さすがに…+0 動機やその他複雑小ネタ満載で+1点 合計7点 ①がおそらく著者の自信作と思うが、③はシンプルながら館の特徴を活かしたトリックで結構感心した。 ああ、もうこの作家の長編は読めないのか…この新本格なのに古めかしく野暮で仰々しくて豪華な不可能犯罪のフルコース料理は味わえないのか(泣) 本格好きの多いこのサイトの方々が急逝を惜しんでいる理由がわかりますね。 |
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| No.444 | 6点 | 黒死館殺人事件 小栗虫太郎 |
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(2025/07/05 12:29登録) 444作目の書評に相応しい奇書をようやっと読んだ。某作家は「本格ミステリー小説の理想系は幻想的もしくは詩美性のある謎が論理的に解決される物語である」と提唱している。『夢殿』や『後光』でも感じたが、この理想の究極形は90年前に既に小栗虫太郎が構築・完成させていたのでは? まるで宇宙際タイヒミュラー理論のように(適当)、論理的とはあくまで小栗宇宙での論理であるが… 最初の100ページくらいまでは過剰な装飾物(プレンティペダントリ)を流し読み(フローリード)すれば、探偵小説の骨格(ミステリボーンステイタス)だけを追うのはさほど難しくはない。発光する遺体(シャイニングコープス)・遺体に刻まれた創紋(マーク)・黙示録の見立て殺人(ポエジーマーダ)などに興奮(ワクワク)しながら読み進めていた。しかし、中盤からプレンティペダントリがボーンステイタスになり、フローリードさせられた結果、ミステリボーンステイタスが完全にドンノウしてしまった。 ふう…疲れた 捏造もあるとはいえ、インターネットもない時代にどうやってここまで調べ上げられたか、はたまたその熱量はどこから来るのかというのが本作最大の謎である。 アンチミステリ感はなかったかな。博学で聡明な法水麟太郎だが、今作に限っては酷い時の金田一耕助よりも無能だったというのがアンチ要素?あと、法水だけでなく支倉や熊城など小栗宇宙に登場する人物がなぜかみな法水のワケワカメ衒学を理解しながら対等に会話していくのは小栗虫太郎の狙い澄ました高度なギャグですよね? 3奇書の面白かった順 ドグ>キョム>オグ ※すごく"合理的"にこの事件を解説しているブログがあって、それを読むと小栗虫太郎がまあまあちゃんと考えてるんだなあというのが分かった。このブログを読まなかったら3点とかだっただろう。 |
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| No.443 | 4点 | 四つの兇器 ジョン・ディクスン・カー |
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(2025/06/30 21:13登録) アンリ・バンコランシリーズ第五作。 人狼、蠟人形、髑髏城などで彩られていた怪奇的・退廃的な雰囲気が今作でなぜかガラッと変わった。作風だけでなくあの悪魔的な名探偵も何処へやら消えてしまったようだ。犯行現場に残された四つの凶器の謎は込み入りすぎていて難解だったが、賭博シーンは中々面白かった。 いまのところ不可能犯罪の巨匠というよりは、オカルトの他に犯人の意外性に拘っているように思える。 |
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| No.442 | 6点 | 蠟人形館の殺人 ジョン・ディクスン・カー |
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(2025/06/30 21:10登録) アンリ・バンコランシリーズ第四作。 かつてバンコランがギロチン送りにした殺人鬼が蠟人形として蘇る。サテュロスの蠟人形に抱かれて死んだ貴婦人。舞台装置のオカルト感はこれまででも圧倒的で、淫らな秘密社交クラブに潜入する展開はシリーズ随一の臨場感とリーダビリティを誇る。 『皇帝のかぎ煙草入れ』と同じく読者には明白なヒントが示されるが、真犯人には意外性があり、わかる人にはわかるトリックアートのよう。 アンリ・バンコランは悪魔(メフィストフェレス)の名にふさわしい探偵だ。 |
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| No.441 | 8点 | 髑髏城 ジョン・ディクスン・カー |
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(2025/06/30 21:08登録) アンリ・バンコランシリーズ第三作。 これは面白い!! ライン河畔に聳え立つ髑髏城。バイオリンが奏でるアマリリスと共に炎に包まれながら転落する城主。2人の探偵による推理合戦(未遂)。しかし、この怪奇雰囲気を凌駕するほどに悪魔的な真相が用意されていた。犯人の辿り着いた悲しい真実とその時の絶望、実行に至るまでの途方もない逡巡、そして、悪魔面のバンコランが垣間見せた人間性に強く惹かれた。 加賀美雅之の『双月城の惨劇』はこれに大きく影響を受けたのかな。 |
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| No.440 | 4点 | 絞首台の謎 ジョン・ディクスン・カー |
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(2025/06/30 21:06登録) アンリ・バンコランシリーズ第二作。カーはどうやらスロースターターだったようだ。 読了後は、冒頭の怪奇幻想的な雰囲気で惹きつけて、強引に辻褄を合わせた時の江戸川乱歩作品みたいだという感想を持った。しかし、謎解きの核を怪奇幻想譚の一部にする狙いがあるという解説を読んで納得。 この頃の怪奇>探偵の不等号が後年の不可能犯罪の巨匠という評価と乖離を生んでいるのかもしれない。 |
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| No.439 | 7点 | 夜歩く ジョン・ディクスン・カー |
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(2025/06/30 21:03登録) 世界各地(スウェーデン・フランス・中国)に芽吹いたジョン・ディクスン・カーの弟子達の作品がやたら面白いので、ついに本家を読んでいく。 アンリ・バンコランシリーズ第一作 。 なるほど『皇帝のかぎ煙草入れ』はイレギュラーな作品でカーの作風はこんな感じなのか。古典的なトリックの組み合わせで(というか古典か)、現代の作家がやれば無理筋になるところをこの退廃的な雰囲気で上手く演出している。エドガー・アラン・ポーの『アモンティリヤードの樽』のネタが登場するのも嬉しい。 |
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