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ミステリの祭典

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死時計
ギデオン・フェル博士シリーズ/別題『死の時計』

作家 ジョン・ディクスン・カー
出版日1955年04月
平均点5.18点
書評数11人

No.11 4点 文生
(2023/03/05 10:54登録)
眩惑的な雰囲気は悪くないのですが、とにかく描写や説明がわかりにくい。そのため、フェル博士の推理を聞いても全くピンときませんでした。自分の中では雰囲気だけの作品という評価。

No.10 6点 レッドキング
(2019/09/28 07:43登録)
古い時計の、狂い、よじれ、ねじけて噛み合わない歯車の様な登場人物達。誰もかれもが怪しく描かれる中で、「うさん臭さ過ぎる」キャラの一群が物語早々に容疑者リストから「お払い箱」になった後に、「いかにも容疑者らしい」キャラ群が残されるが、最後にカラクリ時計の「カラクリ返し」が待っていた。
これもカーのトリックとしては「スカ」な部類(〇〇道だの隠し〇〇〇だの、それ自体ペケだろう)の作品だが、面白かったんで点数はオマケ付き。

No.9 5点 ことは
(2019/03/07 23:51登録)
30年ぶりの再読。ゴタゴタしていた印象だけで、内容はほとんどおぼえていなかった。印象通りゴタゴタしている。
真相をきいても「え、そんな情景だったっけ?」と感じて納得感も、腑に落ちる感もなく、解決はぴんとこない。
「カーはチェスタトン風の話(なにがおきているかわからない話に説明をつける)を長編でやりたいという所がある」と書いていたのは、「新カー問答」だったかな?(間違いかも。未確認)
これもその傾向の話だなと感じた。私の中でこのくくりは「帽子収集狂」「死者はよみがえる」「アラビアンナイト」などだけど、どれもピンとこない。
フェル博士とハドリー首席警部の討論は面白かった。それがあってこの点数かな。カーの中では、中の下の位置。
miniさんの「読者は何が謎のポイントなのかを把握し難い、これでは謎が解かれても驚きを感じ得ない」は、非常に共感! そうそう!

No.8 5点 弾十六
(2018/11/03 08:11登録)
JCD/CDファン評価★★★☆☆
フェル博士第5作。1935年出版 創元文庫(1982)で読了。
三十五年ほど前に一度読んでいるのですが例によって全く内容を忘れていました。「私」の回想で始まりますが、この「私」は誰?本篇の語り手はメルスン博士(魔女の隠れ家にちょっとだけ登場) いつものJDC/CD流で絵が浮かばない描写、込み入りすぎて何がなんだかわからなくなる筋、犯人が目撃されるが偶然顔を見られないので誰だか特定されない、というお気に入りのネタなどで頭が痛くなった頃に、フェル博士(ヘッヘッヘHeh-heh-hehと笑います)が何かを企み、幕が降ります。小細工が満載で意外と楽しめる探偵小説でした。ところで冒頭に示された「亡くなった一重要人物」は誰なんでしょうか…
さて恒例の歌の時間です。(フェル博士シリーズには歌と酒がつきもの)
p213 ハドリーが歌の一節を口ずさむ。流行歌には疎いメルスンも、その歌は聞き覚えがあった。一風変わった歌詞だった。「最後の狩り込みの鐘が鳴る」(Words stood out: “-din’ for the last round up...”) : Billy Hill作 The Last Round Up(I’m headin’ for the last round up...) 試訳「最後の牛追いに出かけよう…」調べてみるとこの歌の初録音は1933年7月George Olsenで、同年11月のGene Autryなど同じ年に全部で9枚のレコードが発表されるほど流行ったようです。 でも死時計事件の時(1932年9月)には聴けるはずがない…
p217 連隊の晩餐会か何かだったのさ。『勇猛果敢な勇者たち』なんて歌ってね。(Regimental dinner or something. ‘Boys of the bulldog breed,’ and all that.) : “Sons of the Sea (Men of the Ocean)” 1914 Navy song? “But you can't beat the boys of the bulldog breed, bobbin' up and down like this.”という歌詞がある。

No.7 6点 nukkam
(2016/08/23 19:14登録)
(ネタバレなしです) 1935年発表のフェル博士シリーズ第5作の本格派推理小説で作品全体を重く暗い雰囲気が覆っています。この時期によく書いていたオカルト・ミステリーの要素は全くないのですがほとんどの登場人物が悪意を秘めているように描かれていてオカルト・ミステリー以上に息詰まるようなサスペンスを生み出しています。ボナンザさんのご講評で指摘されているように整理が上手くないとか、読者に対してアンフェア気味の箇所が目だってしまったとかの問題もありますが非常に緻密に考えられた謎解きで、中でもフェル博士とハドリー首席警部の二人法廷の場面は本書の白眉ともいうべき面白さです。できれば現場見取り図は添付してほしかったですが。

No.6 5点 ボナンザ
(2016/08/20 11:12登録)
初期の一作。魔女の隠れ家に比べるとイマイチ。
アイディア自体は良いのだが、上手く整理されておらず読み物として微妙なイメージを受ける。

No.5 4点 mini
(2013/06/10 09:57登録)
* 本日10日は”時の記念日”、そこで4作限定で私的読書テーマ”時計シリーズ”で行ってみようか、第1弾はカー「死時計」だ

「死時計」は1935年の作で、この頃は「黒死荘」「白い僧院」「三つの棺」「赤後家」などが書かれており、言わばカーの最も脂が乗っていた時期の作だと言えよう、それだけに「死時計」も作者の熱気と言うのかな、文章にも気合が感じられて微笑ましい
問題はその気合が空回りしいてるんだよなぁ
私は”駄作”と”失敗作というのは分けて考えている
”駄作”と言うのは、当初の狙い自体が良くないというか、作者の技量以前に基本アイデアに拙さがあるものを指すと思う、つまりどう書いてもこのアイデアでは無理があるみたいな
一方の”失敗作”というのは、基本アイデア自体は悪くない、作者の狙いは良く分かるのだけど、作者の技量不足か、あるいはテクニックは有るんだけど惜しいところで的を外したみたいな、一歩違えば名作にも成り得たのに見事に失敗したみたいな作を言うと私的に解釈している
この「死時計」はまさに偉大な失敗作なんじゃないかなぁ
気持ちは分かるんだよね、真犯人の設定、動機、ミスディレクション等々、やろうとした事は理解出来るんだけど、やはり書き方が拙かったんじゃないかと
最大の欠点は、この謎の提示の仕方では一種の犯人の不可能性が全く効果を挙げていない点で、読者は何が謎のポイントなのかを把握し難い、これでは謎が解かれても驚きを感じ得ない
もちろん評価出来る面も有って、例えば最近起きた百貨店での盗難事件の扱いなどは流石に上手さを感じさせる
しかしメインの謎がどういう意味なのか読者に分からないのでは効果も半減だ
やはり最盛期に惜しいところでミスった失敗作以外に適切な評価が見当たらない

No.4 5点 kanamori
(2010/07/01 21:17登録)
フェル博士ものの第5作。
時計技師の家を中心にした殺人計画を描いていて、サスペンスには溢れています。
作者のやりたかったことは分かるのですが、勇み足があります。事件関係者の嘘の証言でたびたび物語を複雑にする癖があるカーでも、あの人物にそれをやらせたらだめでしょう。

No.3 5点
(2009/11/02 22:02登録)
超自然的な怪奇趣味はないのですが、覗き見のシーンなどかなり異様な雰囲気に包まれていて幻惑的なところがいかにもカーらしい作品です。
一方、フェル博士が、もしそうだったら偶然過ぎると言うところがあるのですが、そこは偶然をうまく利用することが多いカーとしては珍しいかな、という気もします。
凶器が時計の長針という意外なものであるにもかかわらず、それが結局特別重要な意味を持っていなかったのは少々不満でした。また、普通ミステリの中で使うべきではないと言われている「あるもの」が利用されているのは、まあひねくれ者のカーなのでとりあえず個人的には何とか許容範囲内かな、とは思うのですが。
Tetchyさんが指摘されているアンフェアな記述、原文ではどうなっているのか、ちと気になるところですね。

No.2 5点 Tetchy
(2008/11/18 23:01登録)
本作はカーの語り口がスムースでなく、正直きちんと整理されているような印象はない。従って読書中、頭の中に霧が立ち込めたまま、終わりまで来てしまった、そんな感じがした。
事件自体もこじんまりとしており、佳作。


以下ちくっとネタバレ。

ただ、この作品はやはりアンフェアだと思う。
一番冒頭で探偵自身で語られている、ほぼ証言に近い内容が後半になって覆され、それがそのまま犯人に繋がるのだから。

No.1 7点 ロビン
(2008/09/11 00:04登録)
カーにしては珍しい「意外な犯人」なフーダニット物。(と言いつつも、主眼はハウダニット)
終盤までは、次々に新しい証言が飛び出し、二転三転するプロットでグイグイと物語に引き込まれていった。

ただ、舞台となる家の見取り図がないため、想像を固めるのに難があるかと。
登場人物たちの身長に関する論理がアリバイトリックを見破るポイントなんだけど、あの椅子の大きさや容疑者たちの身長に関する説明は、本当にサラッとしか記されていないので、すんなりと納得はできませんでした。(自分が見逃していただけか?)

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