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ミステリの祭典

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みりんさんの登録情報
平均点:6.67点 書評数:424件

プロフィール| 書評

No.404 7点 白日
月村了衛
(2025/01/18 17:51登録)
黄道学園は実在の「N高校」をモデルにしたのだろうか?バイト先の塾の生徒が通っていたが、自由な校風で楽しそうだった。やはり通信制の学校や不登校生徒に対する偏見を無くすことは難しい。黄道学園の開校プロジェクトを進め、その理念を誇りに思う秋吉ですらその偏見を完全には払拭できていなかった。そこまでの自家撞着に陥るまでの流れが上手かったが、結末はやや安直か。
月村了衛作品は初めてですが、解説によると「らしくない作品」だそうです。退屈になりかねないビジネス小説を一気読みさせる力量は前評判通り。他のスケールの大きそうな作品も読みます。

〜会社でのいじめは、学校でのいじめの比ではない〜
『七つの会議』や本作を読むと、不正問題や派閥争い、出世競争などで溢れかえる世界に40年間身を置くという現実から目を背けたくなる


No.403 7点 バイバイ、エンジェル
笠井潔
(2025/01/18 08:25登録)
笠井潔といえば、巻末の解説で小難しいことを語るおじさんというイメージがあったが、自身の小説でも小難しいことを語るおじさんというのが正解だった。矢吹駆は現象学や直観云々やたら本質めいたことを言ってたけど、解決編を読むと手がかりから論理を積み上げるフツーの名探偵と何が違ったの?とやや疑問。
それでも首切りの動機と論理は見事。物語の中核にあるのはフーダニットならぬワットダニット。真犯人が明かされたとしても真の真犯人は別の何かなのだ。それは「生物的な殺人」の具体性とは対照的な何か。人民と国家への憎悪が引き金となって人間の心に憑依する倒錯した何か。矢吹駆はそれに理解を示しつつ、それの卑小さを断罪した斬新な名探偵であった。とか分かってる風なことを言いつつ私は著者の深淵なる思想を微塵も理解はできてはいないのだろう。


No.402 7点 七つの会議
池井戸潤
(2025/01/15 03:39登録)
いやおもしろ〜!ミステリしか読まない自分にとって新種の楽しさでした。これを読んで真っ先に思い浮かんだのは、ついさいきん某自動車メーカーが認証試験の不正でリコールしたことですね。2012年あたりにもそのような事件があったのでしょうか?内部告発以外でほぼバレようがないだけで、製造業に不正はつきものなのでしょう。
特に面白かったのは、「ねじ六編」「ドーナツ編」「カスタマー室編」の3つ。クレーム対応部署に左遷されて不貞腐れてた佐野が羨ましい。超ブラックでノルマ厳しい会社の営業職より、無能気味の部下2人とぬくぬく仕事して、月に1度クレームまとめるだけでそこそこ金貰える方が嬉しくねぇか普通に。
あと就職活動が大学4回生の6月からとあってイイ時代だなーと。今や3回生(院卒なら修士の1年目)の5月からスタートしないと出遅れ組ですよ。経団連仕事しろ。あとついでに下請け潰しの消費税なくせ。
来年からちょうどメーカーの研究職に勤める身としては、営業マンや経理ばかりではなく、製造部の人間にもっと焦点が当たってほしかったかな。


No.401 7点 鬼畜の家
深木章子
(2025/01/14 06:21登録)
新人賞なのに文章は熟達の域(?)深夜に一気読み。物語全体に漂う陰鬱としたこの読み味に近いものとしては連城三紀彦『白光』や東野圭吾『悪意』が思い浮かんだ(中身は別物)。個人的には得体の知れない探偵に何かあるのだとばかり疑い、そちらの違和感には気づけなかった。かなり難易度は高いと思う。"鬼畜"が忌み嫌う人物像に首尾一貫性があり、エリート志向ほど陥りがちな優生思想に説得力があった。


No.400 9点 ポオ小説全集4
エドガー・アラン・ポー
(2025/01/12 23:06登録)
記念すべきポオの書評100件目です。海外作家で100件超えはまだ25人。これでサムネからポーのページに飛びやすくなった(^^)

※↓元祖判定は何も調べずにテキトーに言ってます
『黄金虫』『黒猫』『盗まれた手紙』などポオ小説全集Ⅳは脂が乗り切ったポオの黄金期の作品が結集。『シュヘラザーデの千二夜の物語』はアラビアンナイトのすげえ捻くれたパロディ。捻くれ者でもないと批評なんてやらないか。『ミイラとの論争』はユーモア系のオチになっているが、何気に現代のSFに蔓延るコールドスリープの元祖か?『天邪鬼』は『告げ口心臓』や『黒猫』と似た犯罪小説だけど、これも乱歩『赤い部屋』に登場するプロバビリティの犯罪の元ネタか??で、1番驚いたのは『長方形の箱』ですね。これ古今東西のミステリーに蔓延る「○れ○○りトリック」の原型じゃねーの??江戸川乱歩が巻末解説でエドガー・アラン・ポーの探偵小説(広義)は『モルグ街』『マリロジェ』『黄金虫』『おま犯』『盗まれた手紙』の5編と言ってるけど『長方形の箱』も入れようぜ。『アルンハイムの地所』は前にも読んだ事あるけど、それ以外で直近で確実に読んだはず!なんだこの既視感!?と疑問に思ってたら全集Ⅲの『庭園』の完成版でした(笑) あと『パノラマ島奇談』の元ネタですね。『タール博士とフェザー教授の療法』のどんでん返しも良いよねぇ…そして奇しくもマイベストの『跳び蛙』がポオ最後の怪奇小説となっていた。あとそういえば全集のはずなのに『灯台』が載ってねえぞ!未完だからスルーしたのか?

全体的に難解で格調高い文章であったが、ポオの全作品を読む価値はあった。
ポオはキャラクターで物語を動かす作家ではないし、ドラマ性も希薄であるから退屈なのも多いけれど、人間の持つ普遍的な性質や心理に注目し、時には世界の法則を捻じ曲げるような奇想を生み出している。評点は本作の評価というよりは、探偵小説(眉唾)、密室、暗号小説、SF小説(眉唾)、怪奇小説(眉唾)など、あらゆるジャンルの小説の始祖であるポオの偉大さに敬意を表して9点とした。


No.399 7点 ポオ小説全集3
エドガー・アラン・ポー
(2025/01/10 03:14登録)
回を重ねるごとに面白くなっていくポオの全集3。 【ややネタバレ】
全集3ではついに『モルグ街の殺人』が収録。推理小説(眉唾)と密室事件(ガチ)の始祖にして、「意外な犯人ランキング」で185年連続1位の座を守り続けてきた名作。かれこれ5回以上読んだが、いまだに「たしかにあいつは背丈が低い〜」からの一連の流れを忘れていて毎度ツッコむ。
現実の事件を元にデュパンが分析能力を発揮する『マリー・ロジェの謎』。小学生の頃、TVで長年未解決の殺人事件の再現ドラマを見て、名探偵さながら被害者の身内を疑っていたことを思い出すね。そのすぐ後に犯人(外部犯)が捕まってたけど。
全集2の『ジューリアス・ロドマンの日記』もそうだったけれど、『メエルシュトレムに呑まれて』や『陥穽と振子』のようなサバイバル系の小説でポオが必ず描写するのは未知のものに対する好奇心。それは死への恐怖を超越するレベルの根源的な欲求として描かれており、生き残ったのは副次的な結果のような気がする。ポオがあらゆる奇想に長けるのもこれが原点なのだろう。
怪奇小説は有名作の『楕円形の肖像画』『赤死病の仮面』など多数。無分子の物質が心だのその運動が思想だの…カルト超えてオカルト小説『催眠術の啓示』。あと犯罪小説『告げ口心臓』はほぼ『黒猫』なんで『青目爺』に改題した方がいいぞ。
ユーモア系では『週に三度の日曜日』『眼鏡』『早まった埋葬』が良い。1800年代は日付変更線の概念ないのか?島荘もどっかで似た感じのユーモア小説書いてたっけな。『眼鏡』は何気に叙述トリックか?『早まった埋葬』は語り手の気持ちがすごくよく分かる。子供の頃、火葬が理解できなかった。まだ生き返るんじゃねえの?とか死後も痛覚だけは残ってたらどうすんの?と心配していた。
『エレオノーラ』は『モレラ』『ベレニス』『ライジーア』等を読んでいれば、話の展開がほぼ予想できるのだけれど、最後はリドル・ストーリー?生まれ変わりか?


No.398 7点 ポオ小説全集2
エドガー・アラン・ポー
(2025/01/05 03:42登録)
『ナンケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語』 7点
現代的な叙述トリックを匂わせるような冒頭から壮大な冒険譚が始まる。序盤1/3が船内での反乱、中盤1/3が漂流サバイバル、残り1/3が南極秘境冒険小説。この「漂流サバイバル編」の冷徹さは類を見ません。もう少しジャ○プ漫画のように主人公側に都合の良い展開があっても良いのではないでしょうか。物語が進むにつれてピムの精神が荒廃し、人の死に対する感傷が鈍感になっていく様も読み取れます。
ポオは話の面白さで読ませる作家ではなく、発想力や文章力で黙らせる作家という認識であったがそれは間違いで、本作に関しては話の面白さに引っ張られた。それだけに5時間も夢中にさせといてぶん投げはやめてほしかった。乱歩…夢Q…なぜ短編作家達はすぐに長編をぶん投げるのか…(n=3)
ちなみにSFを大きく発展させた記念碑的な作品でもあるらしい。ほんとか?

『沈黙』 3点
わけわからん。あれか?過ぎたるは及ばざるがごとしみたいな話か?

『ジューリアス・ロドマンの日記』 5点
こちらも冒険譚であるが『ピムの冒険』と比べると大した苦難はなく退屈。そしてこれもほぼぶん投げ。スー族への過剰なる警戒心を読むと、手記者のロドマンは南極冒険の一件を経て成長したピムのよう、その分緊張感は薄れるけどね。この冒険の根源にある動機は353pに明確に記されていて、「未知なものに対する燃えるような愛」、イイネ。

『群衆の人』 6点
趣味は人間観察。今回のターゲットは都会人の罪を背負った老人。孤独を恐れ、群衆に溶け込むことで安心を得る、まさに大いなる不幸。そんな醜悪な人間の心を読み解く方法も価値もない。
それじゃあ、他者の観察を生き甲斐とする語り手もまた罪悪の権化ではないか?
※前読んだのよりコチラの翻訳の方が良さそう

『煙に巻く』 7点
難解な書物をなんでもかんでも深読みする奴へww 残念でした!お前らの期待しているような高尚な中身なんてありませーんwwwwwww
ということか?
ポオ作品も200年の時を経て神格化され、一部が『関係ニヨル、結合ニヨル、又自身ニヨル危害』のような存在になっているような(笑)

『チビのフランス人は、なぜ手に吊繃帯をしているのか?』 7点
パトリック卿の妄想やり取りが大袈裟で面白いし、オチでも笑ってしまった。本作だけでなく、節々にレイシストの気質あるよねポオ。

全集1はイマイチでしたが全集2はポオ唯一の長編『ピムの冒険』や最後2つのユーモア小説が面白くて、満足感の高い仕上がりになっとりました。


No.397 4点 ポオ小説全集1
エドガー・アラン・ポー
(2024/12/30 21:39登録)
ポオはいままでアンソロジー(コレクション?)を中心に読んできましたが、そういうのに載らないようなマイナーな小品を拾う目的で全集に手を出しました。しかし、アンソロに載らないということにはやはりそれに値する理由があるはずで、まあ端的に言えばつまらんのが多いということです。あと古すぎて社会風刺的なお話が刺さらないことや、当時の流行文学に対する当て擦り(例:『ハンス・プファアルの無類の冒険』『エルサレムの物語』)も上手く馴染めないという欠点があります。
怪奇小説、SF風の冒険譚、ジョーク系などが幅広く収録されていますが、やはり純粋に楽しめるのはアンソロ常連の『ベレニス』『リジイア』『使い切った男』『アッシャー家の崩壊』『ウィリアム・ウィルソン』。ちなみに、『アッシャー家の崩壊』が好きな方にぜひぜひ読んでいただきたいのが平石貴樹の『だれもがポオを愛していた』。おすすめです。
『メルツェル家の将棋指し』は特に評価は変わらずイマイチ。まあ小説ではないしな。
初読で良かったのはポオお得意の美女病蘇生ものの『モレラ』、比較対象は土俵にも上がらなければ勝てるという謎の教訓を含んだジョーク小説の『名士の群れ』、対立する名家の破滅、馬と人間の主従の逆転を描いた怪奇小説の『メッツェンガーシュタイン』、誰もが一度は考える金儲け、世の中を賢く生き抜く術の詰まった『実業家』などなど。


No.396 7点 ミステリー・アリーナ
深水黎一郎
(2024/12/24 15:36登録)
笑えた。まず、プロのミステリー読みってなんやねんwみたいなトコロから、「俺みたいな玄人ミステリ読者は分かっちゃうんだよね」と自信満々な早押し解答にも、最後らへんの真相の苦しさにも笑いっぱなし。
「プロのミステリー読み」への痛烈な皮肉を混ぜたメタメタなミステリかと思いきやそれだけではなかった。その皮肉は別のジャンルの文芸にまで及ぶ。司会者の最後の方のセリフが全てでしょう。
本書の構成は面白いけれど、作中作自体に魅力的な謎、トリックがほとんどない(一応密室は拵えてあるけど解答はいずれもしょぼめ)ということが欠点かな。この辺りをしっかり多重解決に盛り込めば更なる傑作になったと思う。
いやしかし、現実のプロミステリー読者はここまで叙述に気を使いながら読むものなのでしょうか。登場するプロ達の先読みの鋭さに感心しつつ、何も考えずに読んで騙されて、多重解決ひとつひとつに驚ける私はまだまだですね。


No.395 6点 雷龍楼の殺人
新名智
(2024/12/20 00:23登録)
「犯人は外狩詩子ただひとりである」という堂々たる読者への挑戦状から始まる意欲作。Amazonレビューにも憤慨コメが多数散見され(笑)、カベホンという前評判で読み進めたので結構楽しんだ。
2つの大きな仕掛けがありますが、1つ目は前例多数のよくある奴。2つ目も前例はありそうですが、効果的な使い方がされているとは思います。真相ではないオチの方はクライマックスに引っ張るまでもなく分かってしまいますよね。まあ「完全密室」は結構好き。ところで、毒殺とかって完全密室に定義されるのでは?


No.394 7点 弁護側の証人
小泉喜美子
(2024/12/18 00:16登録)
どんでん返しの内容そのものに、ややパワー不足を感じるけれども、騙しの技巧や読み返した時の納得感は読んできたものの中でも確実に上位。雪の日さんもおっしゃっているように出版年を考慮して、諸々で7点。

朝起きるとワンペアでニヤリ
実はまさかのスリーカードv(^^)v
(シェリイ・ウォルターズ『砂の館』のレビュー参照)


No.393 6点 楽園とは探偵の不在なり
斜線堂有紀
(2024/12/14 16:49登録)
神や天使の存在意義や天国の有無がどうとか探偵の使命がどうとか、そのへんがあまり乗り切れませんでしたが、2人が死ぬと地獄に落ちる世界でいかにして連続殺人が起こるかという魅力的な特殊設定ミステリで、犯人がここまでするに至った動機などに説得力があり、トリック等も細部までよく練られています。


【以下かなり詳細なネタバレがあるので注意】



私が根本的なところを勘違いしているのかもしれないが、前半の三つの殺人で黒幕が実行犯に自殺を唆した理由がわからない。そのまま放置しておけば、実行犯が焼死して良い感じじゃないか?実行犯がアッチではなく、アッチと判明することで何か不都合があったのか…?


No.392 7点 夢野久作全集 3
夢野久作
(2024/12/13 23:43登録)
夢野久作全集3でようやく夢野久作名義の作品が並ぶ。血生臭い『猟奇歌』から始まり、有名所ではやはり『押絵の奇蹟』『鉄鎚』が素晴らしい。他の傑作選には載っていないマイナー作品ながら『卵』『霊感!』も天賦の才を爆発させており、特に後者は私的夢野久作ベスト10に入りそう。ということで、夢野久作の作家としての本領を味わいたい方には、全集1,2を飛ばしてぜひ本作からお読み下さい。

『あやかしの鼓』 7点
改めて再読すると、お得意の独白体形式ではあるものの、この時点ではまだ独特のカタカナ遣いやリズムがなくて逆に新鮮です。「あやかしの鼓」に込められた執念と憎悪が100年間持続し、聞いた者の心を狂わせていくというドラマはまるで『ドグラ・マグラ』に登場する絵巻物みたいですね。持続時間は絵巻物の10分の1ですが。
あとは江戸川乱歩が酷評したことも有名だそうです。SMの話とか如何にも好きそうなのに意外。

『押絵の奇蹟』 8点
これ大好きです。病を患った女性の半生を書簡体形式で流れるように丁寧に描写することで出生にまつわる"奇蹟"が1%でも起こり得そうと納得してしまう。男性視点の独白体だと一種の名人芸のように諧謔的になることが多いけど、女性視点の本作はその清純さに心を打たれる。女性視点の独白体はこれと『少女地獄』以外にあったかな?

『童貞』 5点
恋愛に疎い男性は話しかけられるだけで、相手に好意があると勘違いしやすく、相手のことを盲目的に好きになるけれども、一度拒絶されると魔法が解けるというよくあるお話か。う…はるか昔…身に覚えが…

『鉄鎚』 7点
これも地味ながら面白い。再読して印象に残ったのが、究極のニヒリズムというか傍観主義とでも呼ぶべきなのか、戦局をひたすら眺めて楽しむだけの主人公です。何気にこいつ探偵小説の愛読者なんですよね(笑) 早すぎた虚無への供物。

『怪夢』 5点
「工場」や「病院」はそこそこ好きなんですが、どういう状況なのかはよく分かりませんね。

『ビルディング』『縊死体』『月蝕』『微笑』 採点不能
どれも5ページに満たない短編。『怪夢』と同じく怪奇小説が好きな人は気にいるでしょう。月に女性が宿る『月蝕』が好き。

『人の顔』 6点
怪奇小説と見せかけたユーモア小説。これを読むたびに壁の模様や物音にビビっていた幼き自分を思い出します。

『卵』7点
卵が孵ると幻が現実になる。三太郎は現実を見届けることを放棄し、露子との甘美な幻想世界に閉じこもろうとした。ということらしい。隠れた良作と思う。

『夫人探索』 6点 
夢野久作ってこういう変なことばっかり考えてんだろうな…笑

『奥様探偵術』 5点
男の浮気性はいつの時代も変わりません。実に素晴らしい作戦です。

『霊感!』 8点
他の傑作選などには収録されているのを見たことがないけれど、私的夢野久作ベストテンに入るくらい面白い。まさに顎が外れるほどのオチを堪能あれ!

『悪魔祈祷書』6点
『押絵の奇蹟』で言っていた名人芸のような男視点の独白体はまさかの『悪魔祈祷書』が初出だったようです(笑) 夢野久作といえばコレですね。これを機に『死後の恋』や『人間腸詰』 が生まれたんだなとしみじみ… 悪魔の聖書、真偽はともかく、アイデアの使い捨てはもったいない。

『白菊』 6点
脱獄囚がメルヘンの世界に迷い込むお話。やはりまだこの作品の魅力を完全に理解するには至らないというのが正直な感想。

『髪切虫』 6点
『月蝕』と少し共通点を感じないでもない。

『煙を吐かぬ煙突』 6点
記者がスキャンダルをネタに強請りを続けていると想像を絶する巨悪に遭遇してしまうという記者ならではのお話。たしか『少女地獄』にも収録されていましたね。

『涙のアリバイ』 5点
手だけで表現した映画を文字に書き起こすというよくわからない手法でありながら、内容自体は至って普通の探偵小説。

『黒白ストーリー』 4点
「なまけものの恋」はまあまあ 他は明日には忘れてそう。


No.391 7点 盲獣
江戸川乱歩
(2024/12/07 15:01登録)
『乱歩殺人事件 悪霊ふたたび』を読んで乱歩欲が高まり、さっそくいわくつき(?)の本作を…
視覚の世界では醜悪であっても、触覚の世界では美麗に変わる。「美女と盲獣」であったものがいつの間にか「盲獣と盲獣」に変わるという触覚史上の価値観は理解し難いが、何かしら惹きつけるものはある。
『蜘蛛男』に明智小五郎が登場しないバージョンだなとか「触覚芸術論」は『人間椅子』や『芋虫』の着想に通ずるものがあるなあ…とか。本サイトの評価はすこぶる低いけれど、地味に重要作な感じがする…?ので『人間椅子』『地獄の道化師』などには及ばないとは思いつつ、同じ7点にしておく。
少年探偵団シリーズで乱歩に興味を持った当時の少年達が、親の目を盗んで読んでいたりしたのかな?


No.390 7点 虐殺器官
伊藤計劃
(2024/12/06 08:54登録)
罪の意識が極端に低い主人公クラヴィスが虐殺を引き起こすポールと言葉を交わし、はじめて自由意志で選んだ行動。それは決して世界を守るためなどという単純な利他精神ではなく、結局は戦場を利用した母への贖罪という究極の利己主義的選択であると思う。
人類にとって言語は生まれながらに備わっている正得的能力なのか、環境で習得する後天的な能力なのか。種の存続のために人間が得た虐殺能力は時を超えて今も眠っているのか
結末も含めて、なかなかに危うい作品を読んでしまった。こんな物凄い作家が既に亡くなっているとは…


No.389 8点 乱歩殺人事件――「悪霊」ふたたび
芦辺拓
(2024/11/30 12:57登録)
さて、先日TVで放送された某推理アニメ『乱歩邸殺人事件』を視聴した方はいますか?まあ、本サイトの方で見てるのは私くらいであろうから、【ややネタバレ】しておくと、「いや乱歩ほぼ関係ないんかい」という拍子抜けの真相でしたね。
気を取り直して『乱歩殺人事件』を読むことにしました。江戸川乱歩作品は有名作をちょこちょこ読んだ程度のにわか読者の私ですが、中絶作『悪霊』を読むと確かに『孤島の鬼』級の畢生の大作になりそうな雰囲気がありますね。当時の読者が完結を待ち望んでいたことが容易に想像できます。
序盤の密室殺人、異様な猟奇殺人、奇妙な暗号、乞食の謎、記述の不可解さなど広げすぎた風呂敷のほぼ全てに辻褄を合わせるだけでなく、乱歩の嗜好を真相の核に持ち込み、尚且つ『悪霊』の真の中断動機を荒唐無稽ながら提示しています。半端なデキでは許されなかっただろうし、恐ろしく高かったハードルを芦辺先生は見事に飛び越えたのではないかと率直に思います。
大作家の中絶作に90年の時を経て挑むという偉業と偉大なる大作家へのリスペクト精神に8点。


No.388 7点 アリス殺し
小林泰三
(2024/11/29 16:33登録)
『不思議の国のアリス』に登場するキャラを下敷きに、原作の破天荒さとナンセンスに脈絡の不明な会話などもしっかりオマージュ。半分は工学部の研究室が舞台ということも超嬉しい。これは工学系のラボ所属経験のある人が書いてるなと確信して調べたら、やっぱり著者は工学部出身なのネ(^^) メルヘンと残虐趣味を組み合わせ、ファンタジィ一歩手前の綱渡り的な本格ミステリ。力技2発にシビれた。


No.387 5点 不思議の国のアリス
ルイス・キャロル
(2024/11/29 16:28登録)
元ネタ学習のため、超有名作をいまさら読む。破天荒な少女が空想的な世界でふしぎな生き物と出会い、ふしぎな現象に見舞われ、それでも持ち前の奔放さを発揮していくメルヘンファンタジー。当時の流行歌や詩、言葉遊びは廃れても、この無邪気さが時を超えて永遠に愛される所以か。 挿絵も素敵。


No.386 7点 法廷占拠 爆弾2
呉勝浩
(2024/11/29 16:19登録)
実名を開示した前代未聞の立て篭もり犯は何を求めるのか?共犯の2人の関係性をあえて詳細に描写しないことで、ラストに劇的な効果を齎していると思う。法廷で立て籠るまでがわずか30ページとこの疾走感は前作以上であるし、サスペンス・本格・警察小説、どれも高い水準を満たしており、エンターテイメントかくあるべしというお手本のような作品でした。


No.385 7点 幽玄F
佐藤究
(2024/11/14 08:51登録)
傑作
戦闘機に魅入られて自衛隊に入隊した主人公透。透は自衛隊に入隊し、あれほど夢見た戦闘機を操縦することになるが、音速飛行における原因不明の窒息に悩まされる。
自衛隊を辞職し、観光用フライトのパイロットに転職した透。なぜ戦闘機に心を奪われたのかと改めて自問する。透は重力や地上のしがらみの束縛を断ち切り、血の補色である空を切り裂く力が欲しかった。領土の奪い合い(戦争)が水平的であれば、それを脱してはじめて垂直的。それが少年期に夢見た自由な飛翔。あの窒息は地上(水平)のしがらみにまみれた「護国の空」の息苦しさからくるものであった。フライトがただの仕事と割り切れるほどに、自分を見失っていた透は、バングラデシュで様々な人物に出会ったことで、とある転機が訪れる。結末は…まさにこれ以外ない!!!

ミステリか疑わしいが、純文学寄りのアクション系エンターテイメント作品として逸品。三島由紀夫が好きな人や戦闘機に詳しい人は更に楽しめると思われる。私は知らなくても楽しめた。

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