ボディ・メッセージ 被砥功児シリーズ/文庫版は大幅に改稿 |
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作家 | 安萬純一 |
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出版日 | 2010年10月 |
平均点 | 6.33点 |
書評数 | 3人 |
No.3 | 8点 | メルカトル | |
(2020/10/15 22:35登録) アメリカはメイン州・ベックフォード、ディー・デクスター探偵社に一本の電話が入る。探偵二名をある家によこしてほしい、そこで一晩泊まってくれればいいという、簡単だが奇妙な依頼。訝しみながらもその家に向かったスタンリーとケンウッドに、家人は何も説明せず、二人は酒を飲んで寝てしまう。しかし、未明に大きな物音で目覚めた二人は、一面の血の海に切断死体が転がっているのを発見。罠なのか?急ぎディーの家に行って指示を仰ぎ、警察とともに現場に戻ると、何と血の海も死体も跡形もなく消え去っていた―。事件を追う探偵社の面々の前に、日本人探偵・被砥功児が颯爽と登場する。第二十回鮎川哲也賞受賞作。 『BOOK』データベースより。 何時以来でしょうか、真相にこれほど大きな衝撃を受けたのは。 確かに選考委員の一人島荘が言っているように、裏ストーリーが弱いというか逃げているようにも感じますし、真犯人が判明しても、はあ?この人誰だっけと云う位影が薄い印象でした。これは私の記憶力の問題かもしれませんが。そして、犯人が指摘されるべき理由が端折られています。書き様がなかったとも取れます。他にも小さな瑕疵がないとは言えません。しかし、ワンアイディアをこれだけ膨らませて、首と片腕を失った四人の切断死体とその消失といった強烈で謎めいた事件を演出し、数多の謎を数え上げる事態に持って行った手腕は新人とは思えない程です。 ただ、新人らしいと言ってしまえばそれまでですが、文体がかなり堅いと感じました。舞台がアメリカの為故意にハードボイルドの様な書き方をしたのは、間違いではないかもしれませんが、手練れとは言い難く、そのタッチさえ違っていれば更なる傑作になったのではないかと、個人的には思います。それでもこの点数を献上するに吝かでなかったのは、私自身の嗜好にピッタリだったのが大きな要因だったのでしょう。だから一般常識的には7点が妥当かも知れません。 |
No.2 | 4点 | ねここねこ男爵 | |
(2020/06/19 18:38登録) 点数は低めですが、読んでいる最中はつまらなくはないといった感じです。 ある屋敷に一泊してほしい。ただし必ず二人連れで…という奇妙な依頼を受けた探偵事務所。不気味な住人たちに囲まれながら一晩過ごすと、そこには不自然に切断された四つの死体。しかし警察が駆けつけたときには死体が消失していて…という魅力的な謎の設定。 舞台はアメリカで戦後すぐくらい?そういう雰囲気と謎が楽しめれば良作かと。 以下、ほんの少しネタバレ風味で。 犯人が探偵たちに死体を目撃させた理由が意味不明。あんな手間のかかることをするのであれば秘密裏に実行したあとで手紙の一つでも送ればそれで済みます。ついでに遺品も添付すれば説得力抜群なうえ警察の介入も確実に防げるでしょうに(実際他の殺人はあったことすら誰も知らなかった)。アドレス不明ならそれこそ探偵に調査依頼すれば一発でしょう。正直、作者の都合以外の理由を見いだせない…。 犯人特定のロジックが皆無で、登場人物の中で一番怪しいからコイツが犯人です、と言っているのと同値です。 犯人も犯人で、前述の難点も合わせてわざわざ捕まりに来ているとしか思えないムーブです。 登場人物たち、特に探偵事務所の面々が個性に乏しく、(キャラ付けしようとした痕跡は見られるものの)口調などもほぼ同一なためちょっと読んでいて辛いかと。逆に主催者の二人は異常にマンガ・アニメ的でそれはそれで違和感が。 本格を期待するのではなく、ミステリ風の物語と割り切って読めば悪くはないかもしれません。 |
No.1 | 7点 | 蟷螂の斧 | |
(2014/09/12 13:35登録) 真相への伏線は、サービス過剰と思えるほど提示されていましたがたどり着けませんでした(笑)。惜しいところは、犯人の手掛かり(伏線)がほとんどないと言ってよい点でしょうか。もう少し絡んでほしかった気がします。しかし、大胆な発想で楽しめました。 |