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ミステリの祭典

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死の泉

作家 皆川博子
出版日1997年10月
平均点6.75点
書評数4人

No.4 7点 みりん
(2025/02/15 22:35登録)
先人方が素晴らしい書評をされてるので自分のは読まなくて大丈夫です

第二次世界大戦末期におけるドイツの福祉施設「生命の泉(レーベンスボルン)」で物語は幕を開ける。当時のドイツ人の優越性・純血信仰・行きすぎた優生思想…etcというよりは、芸術(音楽)に傾倒して、歪みすぎたヴェッセルマンの思想が生んだ悲劇かなと思う。。
ナチズムを描いた貴重な作品で特にレーベンスボルン編は学ぶことが多かった。ここまで純文学とエンタメを融合させた大作であるからこそ、ミステリーとしてどんでん返しは一つ目のアレだけでも良かったかなと思う。レナとアリツェの件はいったい…?
結合双生児、美少年嗜好、ヘルムートの同性愛描写、廃城での冒険活劇までサービスされると『孤島の鬼』を思い出す

No.3 7点 ぷちレコード
(2023/01/03 22:14登録)
西欧的な高貴と野蛮の相貌を備えた倒錯的存在と、同じく西欧的な高貴と野蛮の産物であるナチス優生学の悪夢と結びつけるという卓抜な着想から生み出された特異な長編ロマンである。
複雑に絡み合う愛欲恩讐の因縁の糸で、織りなされる運命悲劇である本書には、ミステリやサスペンスよりもむしろ、古色蒼然たるゴシックロマンスという呼び名こそがふさわしかろう。とりわけ作中人物が次々に甘美なる死の暗冥へと退場してゆく最終章には、悪意と惑乱のストーリーテラーたる作者の面目が、まばゆいほどに躍如としている。

No.2 7点 レッドキング
(2021/07/20 20:11登録)
ナチズム・・能天気な伊ファシズムや粗暴な日本軍国主義とは違い、また、アウシュビッツ殺戮に「薄められた」ナチでもない・・「原液」のナチズム。「優越民族の繁栄と劣性種族の絶滅」超えて、近代ヒューマニズムの善悪の概念を超越し、神と悪魔の領域に至り、永遠なる瞬間の「存在」と「時間」を夢想する、ニーチェ・ハイデガーの理想にまで至ったの真のナチズム。小説の主人公は、そんなナチズム信仰を声楽の「声」に見出したサイコな生化学者で、ナチズムに絡み取られ残酷な運命を生きた男女の、大戦末期から戦後十数年に至る、おぞましくも見事な「ピカレスク浪漫」が展開する。ミステリとしては・・・うーん、エピローグ数頁の大どんでん返しに2、3点オマケして・・・

No.1 6点 touko
(2010/02/01 21:01登録)
吉川英治文学賞を受賞し、97年の週刊文春ミステリー・ベスト10の第1位作品ということで、期待して読んだのですが……期待しすぎるともしかしたらガッカリな作品かも?

日本人作者による作品なのですが、ドイツ語を翻訳したという体裁だし、作者とされている人物と名前のかぶる「ギュンター」・グラスのドイツ文学史上における金字塔的作品「ブリキの太鼓」とナチスと成長を止めた少年のお話、というのもかぶっているので意識してるのかな? などと思ったのですが、まったく関係なかったようで、どちらかというと江戸川乱歩の「孤島の鬼」のような猟奇的見世物小屋+メロドラマに一昔前の耽美な少女漫画的エッセンスをふりかけたって感じの作品でした。
とにかく、古城にまつわる伝説、ナチの人体実験や陰謀や秘宝、カストラート、美しい双子、美少年たち、狂気の美女とベッタベタなネタがこれでもかとてんこ盛り。
しかも、語り手が変わる2部は陰鬱な1部とはうって変わって復讐活劇ドラマと化し、終盤は昔の香港映画か日活映画のようなチープなドタバタアクションに!?

重厚長大な印象に臆せず、冒頭の文学臭にも惑わされず、そして本格的なミステリも期待せず、気楽に読んでみると、サービス精神旺盛なので、意外と楽しめる作品だとは思います。
(以下ネタバレかもしれないので注意)








ある人物の入れ替えトリックは面白かったんですが、エピローグのどんでん返し(というか作品のメタ化)は、狂気も芸術への執着心も表面的にしか感じられないお約束通りの描写しかない悪役に魅力がないため、私には蛇足に感じられてしまったなあ。

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