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ミステリの祭典

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夢殿殺人事件
法水麟太郎シリーズ

作家 小栗虫太郎
出版日2024年11月
平均点5.00点
書評数1人

No.1 5点 みりん
(2025/02/08 23:54登録)
「つまり、1番複雑に思われるものが1番簡単なんだよ」

いや、そんなもんわかるかーい(^O^)

独特のルビと難解な文章で幻惑されながら読むと、意外にもごく普通の探偵小説の様式を纏っていた。実現可能性や論理性が微塵もないのが逆に好きだけど、過剰な装飾と奇想天外なトリックは7割が意味不明なもので、もはや誰にも到達できない域に達している。百年前の作家なのに一人だけ千年先のミステリを書いているのでは…?

これ誰かが我々一般読者にも伝わるように分かりやす〜くリライトしたら、小栗虫太郎のトリックメーカーとしての資質がバレるんじゃないかな。『後光』の心理トリック、『聖アレキセイ寺院』の鐘トリック、『夢殿』の硬直トリック、『失楽園』の膜嚢(てなんやねんw)トリックなどは普通に面白く、正直ここまでトリックを凝っている作家だとは思いも寄らなかった。個人的には『失楽園』>『後光』=『夢殿』>『聖アレキセイ』>>>『オフェリヤ』>『人魚』かなあ。まあ理解できた順ですが。
ちなみにヴァン・ダインの『ケンネル殺人事件』のネタバレがあったので未読の方は注意。

以下備忘録のためのメモ【ガッツリネタバレあり】

『後光殺○事件』
主な謎は合掌したまま無抵抗に殺された住職、足跡の謎、死亡推定時刻の後に目撃された謎など。時計のアリバイトリックは理解させる気がないだろうが、凶器とそれを可能にした心理誘導というか洗脳トリックが斬新である。

『聖アレキセイ寺院の惨劇』
共産革命後にロシア人家族がひっそりと住むアレキセイ寺院。1日に2度しか鳴らないはずの鐘が定刻ではない時刻に鳴り響き、近くに住んでいた法水麟太郎は駆けつけた。 詳細な部分は意味不明であるが、時間差で鐘を鳴らす物理トリックが本筋とはかけ離れて実に探偵小説味があって良かった。メインは観念の殺人とも言える動機と罪に問わなかった法水。戦争が被害者の心を貧しくしたのだろう。

『夢殿○人事件』
主な謎は血を抜かれた遺体、遺体に残った梵字型の傷、孔雀の足跡、そして密室。冒頭からなんとも魅力的な探偵小説。まあそうはならんやろトリックと死者蘇生にまつわる動機。日光と窓の二重の使い方good!

『失楽園○人事件』
孤島に療養所を設立した博士の真の目的は非道な人体実験を行う屍蝋研究であった。法水への依頼はその孤島で起こった連続○人の解決。主な謎は犯行時刻に見えるはずのないの怪しい白光、グーテンベルクより先に活版印刷を発明したとされるコスターの初版聖書の行方。結構読みやすくてブーメラン膜嚢トリックにも笑わせてもらった。上手いのは"紙"状胎児と活版印刷、グーテンベルクとコスターを犠牲になった双子に喩えたダブルミーニングの親父ギャグ。

『オフェリヤ○し』
今回は法水麟太郎が「ハムレット」を改変し、失踪した俳優の代わりに自らが主演を務める。その舞台で殺人が起こるという内容。法水さん、なぜか探偵や弁護士としてだけでなく劇作家・俳優としても一流というマシマシ設定が追加(笑) 主な謎は失踪者からの手紙と、亡霊が殺人に関わっているということ。ですが…これがまあやたらめったらわかりにくい。動機は結局腹違いの父親と姉への内なる憎悪ということか?

『人魚の謎お岩事件』
こちらも『オフェリヤ』と同様に舞台中における殺人を扱った話だが、今までの法水短編とはガラッと雰囲気が変わって、トリックがほぼ皆無。探偵小説味が薄れているのが残念。人形に関する手記から冒険小説に入ってくれても良かった。

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