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ミステリの祭典

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みりんさんの登録情報
平均点:6.65点 書評数:489件

プロフィール| 書評

No.129 5点 凍りのくじら
辻村深月
(2023/06/28 18:27登録)
私賢すぎて他の人が馬鹿に見えちゃう〜という冷笑系の痛い主人公でなかなかキツかったですが、別所や郁人と出会ってから色々変わっていく過程を楽しめました。個人的に好きなキャラの立川の出番がSukoshi Fuguu

ドラえもんは子供の頃にコミックス5周くらいはしたので、理帆子のドラえもん愛を語るシーンを読むと楽しい記憶が甦ってきました。そうか人生で一番初めに出会ったミステリはドラえもんの「天の川鉄道の夜」だったんだ


No.128 6点 人間動物園
連城三紀彦
(2023/06/27 22:30登録)
誘拐ものの面白さって個人的に犯人の難解な指示を遂行し、子供を助けることができるかどうかのハラハラ感だと思ってるんですが、本作は犯人との攻防がほぼなくて退屈でした。
その代わりに解決編は痛快も痛快。 
同作者の「造花の蜜」のオリジナルかそれとも発展形かはわからないがまさかそんな誘拐があったとは やはり連城三紀彦は人攫いのプロフェッショナルです。

「造花の蜜」の方が途中楽しめたのでこの点数で…


No.127 7点 invert 城塚翡翠倒叙集
相沢沙呼
(2023/06/26 22:37登録)
本作p297より
「推理小説は、推理を楽しむよりも、驚くことが目的となって読まれているんじゃないでしょうか。意外な犯人に意外な結末。推理小説といいながら、驚きの犯人や意外な結末さえ示せれば探偵の論理なんてどうでもいいのです。そんなのに夢中なのは作者と一部のマニアだけ。(中略)」
「ミステリとは、すなわち謎、そして推理小説とは、つまり推理をする小説……。だというのに、普通の人たちが求めているのは、びっくり小説、驚き小説、予測不可能小説なんですよ」

うーむなかなかグサグサ刺さるなあ 私もミステリはロジックよりトリックの方を重視してしまいますね。トリックを覚えている作品は幾つもあるけどロジックを覚えている作品はほとんどありません笑
そして「意外な結末」「驚き小説」と言えばmediumで一番評価された部分であり、作者はそこばかり評価されたのを少し不貞腐れてたり?そしてこの部分を読んで「ああ…今回のinvertではどんでん返しはないからその弁解を作中で挟んでるんだな」と邪推していたらなんとラストにちゃんとサプライズで反転してくれましたよ。素晴らしい!


No.126 6点 ツナグ
辻村深月
(2023/06/25 19:27登録)
死者と一度だけ再開できるというシンプルな設定をもとにあらゆる境遇の登場人物達が願いを叶えていく連作短編集。
本当に死者と出会って喋るだけのお話が4編収録されているのですが、マンネリしない。
中でも「親友の心得」がお気に入り。 嵐の御園に対する嫉妬心や羨望は決して大袈裟に描かれているわけではなく、思春期の親友に対する想いはこんな風に繊細で脆いものだったなあと感慨深くなった。嵐が御園に嫉妬するシーン「ああ…わかるわかる」である。辻村先生はこういう思春期の不安定な心情を描くのが本当に上手いと思う。
そしてラストは使者側から舞台裏が明かされるわけだがこれまた重い。死者の役割がテーマだから仕方ないが。


No.125 7点 少女地獄
夢野久作
(2023/06/25 12:01登録)
文学作品ほとんど読まないけど、図書館にあってドグラマグラの前に読んだこうってことで
【ネタバレあります】




大正時代の男尊女卑、男性優位主義へのアンチテーゼ。
社会進出を志した女性がこの時代に生きることの理不尽さ・空虚さはまさに地獄。そんな状況に置かれた3人の女性の男性中心社会からの現実逃避や復讐を描いた短編集。しかしどれも『少女地獄』というタイトル通りに儚く破滅的なラストを迎える。
夢野久作が性差が緩和された現代だったらどんな文学を書くのだろうと気になりますね


No.124 6点 アリアドネの声
井上真偽
(2023/06/22 22:30登録)
帯から『方舟』のような話を期待して購入すると全然違った。いや帯をよく見ると確かに全然違うタイプであることは容易に予想できるんだけどちゃんと読んでなかった笑 
本格ミステリではないのでそれをお求めの方は気をつけてください。




ここから微ネタバレ




『無理だと思ったらそこは限界なんだ』 だから諦めるのか、それとも挑戦するのか、はたまた別の道を模索するのか 一本道でわかりやすいテーマだったと思う。どんでん返しというには少し足りない気がするけど、露悪的な作品に惹かれる自分にはもったいないほどエモーショナルで良い真相だったなあ。しかし…私以外の方は気付くんじゃないでしょうか笑
他の方のレビューも楽しみです。


No.123 7点 翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件
麻耶雄嵩
(2023/06/22 10:01登録)
初めての麻耶雄嵩作品、読んでいて目が滑る。蘊蓄のせいもあるがキャラクターの会話についていけないことが多くて読破に時間がかかりました。密室トリックが大変気に入りました


No.122 3点 復讐の協奏曲
中山七里
(2023/06/21 00:35登録)
ネタバレあります。
『悪徳の輪舞曲』の書評で洋子の素性について「日下部洋子=御子柴更生のきっかけとなったピアノの少女」だと予想していたので、今作で洋子が依頼人となった時に「ヤレヤレ…また当ててしまったよ」と天狗になっていたら全然違ってましたね〜 

そんなことはさておき4作目までは全部面白かったのですが、今作ちょっと微妙。残りの50ページほどでようやく裁判が始まり、まさかの第二公判で物証の瑕疵を後出しで指摘するとたちまち逆転。いつもの御子柴と検事との巧緻を極めた攻防もなし。ミステリとしてはかなりプロットが脆弱。そして見落としがなければ協奏曲という言葉が一度も出てこなかったのでそこも残念…
御子柴・倫子・洋子・宝来などキャラクターに愛着は湧いてくるのでまあ良いか


No.121 7点 神とさざなみの密室
市川憂人
(2023/06/20 12:02登録)
ネトウヨやらパヨクといった俗語が抵抗なく使われ、冒頭からかなり政治色の強い内容で本当にこの作者の作品か?と面食らってしまった。しかしこの内容に対してややミスマッチかと思われるほど本格要素の強い状況設定が出てくる。これは両方楽しめる良い作品でした。

"ひとりひとりが信条や損得を抜きにして、正しい情報を得て議論して考え抜けば、(多数決は)コイン投げより高い確率で『本当の答え』を見つけ出せる"
"神様の答えに一番近づけるのは理想の民主主義"
"気体分子を個々の市民、状態方程式を民主主義に置き換えれば民主主義が完璧に成立する条件とは市民が理想気体であること-『個々の市民が互いに縛られず自由であること』と言っていい"

メッセージというのはシンプルでわかりやすい方が私には響きますね。


No.120 8点 悪魔の手毬唄
横溝正史
(2023/06/18 20:17登録)
なんだこれ重要そうな人物がどんどん湧いてきて覚えられないぞ。 そうだ!このくらい有名な作品なら人物相関図くらいネットにあるだろう 『悪魔の手毬唄 相関図』ポチ
はい身から出た錆とは言え作品の核となるネタバレ食らいました。未読の方は気をつけましょう。

正直いうと読み終わった時は「ん?これ見立て殺人する意味あったの?」となりましたがここのレビューを見て納得いたしました。里子の心情を考えると本当に切ない…これ今のところ横溝作品ベストです。


No.119 5点 小さな異邦人
連城三紀彦
(2023/06/18 02:31登録)
指飾り 5点
無人駅 7点
蘭が枯れるまで 6点
冬薔薇 4点
風の誤算 4点
白雨 6点
さい涯てまで 5点
小さな異邦人 6点

なぜか目立つ行動をする女の謎を読み解く「無人駅」 交換殺人を持ちかけてきた女の真意が鍵となる「蘭が枯れるまで」 娘のいじめと32年前の事件がリークする「白雨」あたりが面白かったです。タイトルが秀逸なのは「風の誤算」「さい涯てまで」「小さな異邦人」あたりか


No.118 7点 悪徳の輪舞曲
中山七里
(2023/06/17 14:47登録)
今までちょくちょく描かれてはいたが今回は「加害者家族」に焦点が当てられた作品。梓や郁美の過去は少し読んでいて辛いところも…
珍しく冒頭の仕掛けにはすぐ気づけたが、当然真相は看破出来なかった。槙野のやらされた法廷でのシミュレーションはシュールでその場に居合わせたくなりましたね笑

ところでピンと来たことがあるんですよね。被害者遺族・少年院の指導官・母娘と今まで御子柴にとって超重要なポジションの人たちが依頼人となっているわけですが、未だに素性が明かされていない超重要なキャラクターがいるのです。そう、御子柴更生のきっかけとなったベートーヴェンを演奏していた少女ですね。これ御子柴の事務員の洋子さんではないか?と予想しておきますよ。


No.117 6点 怪物
佐野晶
(2023/06/15 21:51登録)
『サスペンスとは、ある状況に対して不安や緊張を抱いた不安定な心理、またそのような心理状態が続く様を描いた作品をいう(wikipediaより)。』らしいのでサスペンスに入れておきます。

話題になった映画のノベライズ版です(映画まだ見てませんが)。 3つの視点から描かれる3通りの真実といえばミステリー風味を感じますよね。私の力ではこの作品のテーマを説明しようとしても陳腐になってしまうのでやめておきます笑


ちょいネタバレ

伏見が子供の足を引っ掛けたシーン、湊が消しゴムを落としてからフリーズしたシーンなど母親視点からは不可解なシーンが全て理由が明かされるのかと思っていたらそこは謎のままなんですね。映画によくある考察の余地というやつでしょうか。
『誰でも手に入るものを、幸せというのよ。』伏見さんがMVPか


No.116 6点 恩讐の鎮魂曲
中山七里
(2023/06/15 00:34登録)
「お前の贖罪の仕方と俺の贖罪の仕方が違っていただけの話だ」

御子柴礼司シリーズ本当にハズレがないですね。
ミステリーとしてはこの点になってしまいますが、贖罪というシリーズ共通のテーマをここまでうまく物語に落とし込む作者の手腕が素晴らしいと思います。ラストに倫子が登場するサプライズも良い。

いや〜しかしモーツァルトのLacrimosaはピアノ演奏描写が今作にないのが悔やまれる程名曲だ。


No.115 8点 追憶の夜想曲
中山七里
(2023/06/13 08:47登録)
小説という媒体と法廷ミステリーがここまで相性が良いのを知らなかった。御子柴と検事の法廷でのやりとりは目に浮かぶほどイメージがしやすく、御子柴の心情の記述・優勢劣勢が入れ替わるごとに一喜一憂してしまう。

メインの事件に関しては贖罪の奏鳴曲の方が凝っていると感じたが、こちらはシリーズだからこその満足感が得られる。倫子のこれから先のことを思うと可哀想だ。

うん他の方もおっしゃっているように亜季子がハナから毒婦として世間に認識されているのには違和感がある。『時流に乗ったのを己の能力ゆえと過信して』無職になったことを受け入れないまま、3年間プライドだけが一流の引き篭もり。証券担保ローンで借金地獄、娘の教育は放棄、妻がパートで帰ると妻子に暴行を振るう。贖罪がテーマの小説を読んだ後に言うのもなんですが、正直こんな奴殺されても当然じゃないですか?

追記:同シリーズの他の作品との完成度を比較すると一律7点というのはおかしい気がするので、+1点しておきます


No.114 8点 青き犠牲
連城三紀彦
(2023/06/11 23:22登録)
230ページでこの満足感。いまのところ連城三紀彦の長編で1番好きです。(まだ長編有名作が多数未読ですが)
ギリシャ神話に登場するオイディプス王がモチーフであり、産まれた時から"罪の血"を背負った1人の青年の倒叙物語。


ネタバレあり




と思っていたらこの反転は予想外だった。アリバイトリック、"罪の血"の意味、そして母親の18年かけた策謀(と愛情)は見事という他ない。
ただ、ラストの妊娠のくだりは唐突じゃないか?


No.113 4点 ため息の時間
連城三紀彦
(2023/06/11 15:29登録)
あらすじ(amazonより)
敬愛するセンセイと奥さん―。僕は2人を同時に愛してしまった。雨の横浜、湖畔のホテル。危険な愛にはどんな結末が訪れるのか…新しい時代の、新しい恋愛小説。

これ評価に困る
連載小説やミステリに対する自己言及性を徹底している作品で毎章のラストに作者の注釈が載っている。その注釈はどこまでが作者の狙いでどこまでが虚構なのか、いわばメタメタしすぎて頭がこんがらがるのである。誰か解説して欲しいw
作中作自体は濃厚なBLストーリーです。作者曰くミステリとしては失敗作だそうな…


No.112 6点 ある閉ざされた雪の山荘で
東野圭吾
(2023/06/10 19:43登録)
東野圭吾の文章ってなぜこんなに読みやすいのでしょうか

追記:映画も見ましたが、"演技のうまさ"を文字で誤魔化せる小説の方が良いなあと思いました。


No.111 6点 わずか一しずくの血
連城三紀彦
(2023/06/10 15:26登録)
フーダニットというよりホワイダニット つまり犯人の動機を当てるタイプのミステリですが、これを当てるのはあまりにも難解すぎる・・・ 
犯人の復讐相手は果てしなく強大すぎてこんな動機は今までに見たことがない笑 


No.110 8点 白光
連城三紀彦
(2023/06/08 21:20登録)
ドロドロした人間関係で起こる一つの幼女殺人事件。ラストに畳み掛けるような当事者の独白には一文一文読み逃さないように、そして噛み締めるように読んでしまう。
そしてこの筆舌に尽くし難い読後感…どんどん連城三紀彦の沼にハマっていく。

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