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ミステリの祭典

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ツナグ

作家 辻村深月
出版日2010年10月
平均点5.75点
書評数4人

No.4 6点 みりん
(2023/06/25 19:27登録)
死者と一度だけ再開できるというシンプルな設定をもとにあらゆる境遇の登場人物達が願いを叶えていく連作短編集。
本当に死者と出会って喋るだけのお話が4編収録されているのですが、マンネリしない。
中でも「親友の心得」がお気に入り。 嵐の御園に対する嫉妬心や羨望は決して大袈裟に描かれているわけではなく、思春期の親友に対する想いはこんな風に繊細で脆いものだったなあと感慨深くなった。嵐が御園に嫉妬するシーン「ああ…わかるわかる」である。辻村先生はこういう思春期の不安定な心情を描くのが本当に上手いと思う。
そしてラストは使者側から舞台裏が明かされるわけだがこれまた重い。死者の役割がテーマだから仕方ないが。

No.3 6点 メルカトル
(2017/06/25 22:17登録)
第32回吉川英治文学新人賞受賞作。
一生に一度だけ死者との再会を現実のものとしてくれるという使者(ツナグ)。彼の導きによって、それぞれの事情を抱えた者たちが死者との再会を果たす連作長編。
彼らとは、人気女性タレントに一度だけ救われたことがあるOL、年老いた母にがん告知をできなかった頑固な息子、親友を嫉妬のあまり死なせてしまった女子高生、仲睦まじく暮らしていたのに突然失踪してしまった婚約者を待ち続ける会社員です。
言ってしまえば、どこにでも転がっていそうな物語ばかりではありますが、思わず主人公に感情移入してしまうのが辻村氏の腕なんでしょうねえ。また、葛藤や悩み、憎しみなど人間の負の感情を赤裸々に描きながらも、それが決して嫌悪感を抱かせない辺りはこの人の人間性が表れているのかもしれません。おそらく想像するに、優しい性格なのでしょう。そうした性格の良さを感じさせる本作は、語り口調の柔らかさも相まって、いかにも一般受けしそうな内容となっています。特に女性には広く受け入れられそうな気がしますね。
ただ一点だけ、最終章というか最終話はもう少しドラマチックであって欲しかったというのが個人的な感想です。むしろなくても良かったのではないかという気さえします。確かに、これがあってこそ完結するのだとは思いますが、だったら例えば使者の由来などを絡めて、その必然性などを説くべきだったのではないでしょうかね。まあ一読者の我儘な願望にすぎませんけれど。

No.2 5点 風桜青紫
(2015/12/20 02:00登録)
頑固親父の話がけっこういい。辻村さん、根はいい人だなって思えるのは、こういう「嫌な人」にもちゃんと目を向けて書いてあげようと思うところなのよね。嵐やキラリちゃんの話も嫌いじゃない。歩の説得シーンはいかにもすぎて興ざめしたけど、まあ、初期の名残というところか。辻村さんの作品では平均的。吉川新人って期待が大きすぎたかも。なんだかんだで楽しめはしたんだけどね。

No.1 6点 ayulifeman
(2012/02/12 17:09登録)
演劇部の章とその関連部分がとても興味深かった。女性同士の関係性の嫌な部分をうまく描きますね。怖いけど嫌いじゃない。

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