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ミステリの祭典

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ROM大臣さんの登録情報
平均点:6.07点 書評数:149件

プロフィール| 書評

No.9 8点 薔薇の名前
ウンベルト・エーコ
(2021/06/24 16:37登録)
異色のミステリとしてベストセラーになった本書は、記号論実践としても、また中世末期のヨーロッパの神学論争の雛型としても読むことが出来る。
ストーリーの中心をなす殺人事件の背後には、当時のキリスト教異端諸派と正統派との対立が脈々と流れ、そこにイギリス自然科学の先駆者R・ベーコンの教えを受けた主人公が絡む。
巨大な図書館が事件の鍵を握っていて、全体が「書物の書物」とも言うべき様相をなしている。


No.8 6点 キャリー
スティーヴン・キング
(2021/06/24 16:20登録)
狂言的な母親の異常な躾で育ったキャリーは、級友たちの嘲笑の中で初潮を迎えた。臆病で多感な少女が初めて、卒業前の舞踏会に晴れやかに出席した時、悪意で仕掛けられた豚の血が降り注いだ。
秘められていたキャリーのサイコキネシスは、悲しみと憎悪とともに爆発する。会場を、そして街を燃え上がらせた大惨事を、キャリーの心理と周囲の証言を織り合わせて綴る、モダンホラーの第一人者の処女作。


No.7 7点 飢えて狼
志水辰夫
(2021/06/14 15:14登録)
日本でもその名を知られた元登山家が国際謀略の渦に巻き込まれ、北方領土の択捉島に潜入することになる。
ヒーロー造形を始め、濃密な自然描写、リアルな活劇演出、陰影に富む恋愛演出など、デビュー作とは思えぬ完成度。
権力に立ち向かうストイックなヒーローの再生譚に、複雑怪奇なエスピオナージの妙を絡めた独自の活劇世界は今もって古びていない。


No.6 7点 猛き箱舟
船戸与一
(2021/06/14 15:03登録)
野心に燃えるひとりの青年の壮大なる成長譚であり、あまりに壮絶で哀しい愛情の物語であり、そして最高の復讐の物語である。
これぞ欺瞞と醜聞が吹き荒れる世で魂に火を点けたい者たちが携えるべき狂暴なる聖典だ。


No.5 8点 『吾輩は猫である』殺人事件
奥泉光
(2021/06/14 14:54登録)
一冊丸ごと夏目漱石のパロディというか文体の模写。特に感心したのは、メインプロットとは関係のない益体ない、どうでもいいような与太話がキチンと書かれているところ。
プロの読みのすごさというか、「吾輩は猫である」の作中、漱石が適当に描いたために生まれた謎を再構成してミステリに仕立てているところ。
全体の構成もうまい。漱石が、初期には「吾輩は猫である」のような精神的に安定した文章を書きながら、晩年にはなぜ「行人」のように不安を漂わせた作風になっていったのか、そういう漱石文学の全体の謎もうまく盛り込んでいて得心がいった。


No.4 4点 龍の契り
服部真澄
(2021/06/08 16:39登録)
二百ページぐらいまでは物語が全くといっていいほど進まずイライラ。状況設定のための情報をひたすら詰め込んで、しかも登場人物の八割がたは物語の行方に影響がないというひどさ。本を厚くするために登場人物を増やし、どうでもいい心理描写を加えているようにしか思えない。
はじめにドタバタありきというか、秘密をめぐって右往左往というところまでは成算があったのだろうが、どのように収束させるかのモチーフがなかった。


No.3 4点 テロリストのパラソル
藤原伊織
(2021/06/08 16:25登録)
学生運動に挫折し、さまざまな肉体労働をした末に、ボクシングをやってみたら才能があった。そのあとなぜか、アル中のバーテンダーになっている主人公。
過去にあった爆発事件にかかわった人たちが、十数年後に再びある爆発事件の現場に集まってくるのは不自然。トリックを正当化するために、過激派でもなかった学生をテロリストに仕立てるというのは無理がある。


No.2 10点 星を継ぐもの
ジェイムズ・P・ホーガン
(2021/06/08 16:15登録)
「月面で発見された真紅の宇宙服をまとった死体。だが、綿密な調査の結果、驚くべき真実が判明する。彼は五万年前に死亡していたのだ!」という内容紹介文にそそられた。
彼は異星人?それともタイムスリップした未来人?謎の答えは想像もつかない。ただ、どんな謎でも論理的に説いてほしいと思っていた。結論から言えば、感動的なほど論理的な完璧なミステリ。
いたって科学的だが、中心軸が量子力学やコンピューターでなくダーウィンの進化論というのがいい。


No.1 10点 ジャッカルの日
フレデリック・フォーサイス
(2021/05/24 17:36登録)
冷徹な男の闘いを恐怖を通して描いた作品は多いが、これはやはり白眉だろう。最後のページまで暗殺計画者と刑事の闘いはゆるがない

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