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ミステリの祭典

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深夜プラス1

作家 ギャビン・ライアル
出版日1967年01月
平均点7.12点
書評数17人

No.17 9点 YMY
(2024/04/19 22:22登録)
主人公は、予期せぬ方向から敵が次々と攻撃してくるので、予定通りにいかず、臨機応変に対処しなけばいけない。その度に局面は変化するし、自動車を乗り換えたり鉄道を利用したりする移動手段のバリエーションも楽しい。
こうした派手なアクションの面白さを背景に、主人公の魅力もさることながら、彼の眼を通してアル中に悩むガンマンのロヴェルの陰影に富んだキャラクターを描き出した部分が何より秀逸である。
物語の枠組みが単純なだけに、プロットのひねりにせよ男のドラマにせよ、鮮明に印象付けられる。シンプルなかたちに切り取られた設定の中で、濃密な作品世界を繰り広げた完成度の高さがこの作品の魅力である。

No.16 8点 ROM大臣
(2021/07/29 12:48登録)
ガンマン、実業家、産業スパイの黒幕など、出てくる連中が皆それぞれにプロフェッショナル。彼らは自らの定める格率に従って生きる男たちで、それゆえに苦しみ、悩み、それゆえに誇り高く行動する。この年の小説の定番スタイルと言ってしまえばそれまでだが、特に自己が堕落し、敗北を感じた時、自らの復権を求めてする彼らの闘いのいちいちは、ある種の読者にとっては間違いなく麻薬のような魅力がある。

No.15 6点
(2020/05/30 19:43登録)
名作といわれる作品なのでぜひ読んでおきたいと手にとったが・・・

筋が単純という評が多く、シンプルすぎるロードノベルを想像していたが、予想以上にプロットに変化があった。
単純なストーリーにも飽きさせない工夫が凝らしてある。
でも真相は読まなくてもわかるレベルかもしれない。

それと、主人公たち2人の男、ケインとハーヴェイの生きざまにファンは魅かれるのだろうと想像できる。たしかにケインの戦いが終わって吐く言葉は重みがある。
ただ彼ら以外の人物たちが、あまりにもパッとしない。

冒険小説なのに株の話が出てくるのもちょっと意外だった。
社会派冒険小説。いや「会社派」といったほうがいいか。
このアンマッチな感覚が読みづらくさせ停滞しがちであった。でも、何度も読めばだんだん気に入ってくるような気もする。噛めば噛むほどといった感じか。
とりあえず初読では後半の銃撃戦がいちばん楽しめた。


在宅が多くなって、ひそかな楽しみである移動時間での読書が減ってしまった。

No.14 8点 小原庄助
(2020/05/29 10:32登録)
今さら紹介するのも恥ずかしいほど、古くよりミステリ冒険小説好きの読者には名作中の名作として知られている。かつて東京・飯田橋駅前には本作にちなんだ同名の書店が存在していた。
第二次大戦中のレジスタンスの英雄だった主人公が、年齢を重ねて今は堅気の仕事に就いていたものの、突然昔の仕事仲間に誘われたことから物語は始まる。ある重要人物を護衛しつつA地点からB地点まで移動するという単純な仕事を引き受けたのだ。だがその人物は警察や謎の刺客らに追われていて、ことは簡単には運ばない。
大筋は単純だが、そこにはプロの矜持、謎と罠、アクション、銃、車、旅情、歴史、頓知と駆け引き、さらには友情と裏切り、男と女、過去の悔恨と栄光と娯楽要素がこれでもかと詰め込まれている。
初訳本巻末の田中光二氏の解説にもあったが、本作はプロの作家が嫉妬し、目標にするような作品でもあるのだ。すなわちリーダビリティーとディテールの豊かさを同時に持っている。そして再読三読に耐えられる。

No.13 7点 ◇・・
(2020/03/20 16:18登録)
銃、車、酒といった男の道具のディテールやプロの男がどこにこだわるかなどの細部を楽しむのもいい。
カーチェイス、銃撃戦といったアクションもあれば、陰謀を見抜く知的な部分もある。そして何よりも、男の生き方とはこうでなければ、というカッコ良さの見本。
ミステリの枠を超越した第一級のエンターテインメントである。

No.12 9点 クリスティ再読
(2018/07/08 18:25登録)
一時実家に帰省するたびに、読み返してた思い出がある。スルメ本である。これだけ再読が利く作品というのも珍しいのではなかろうか。今回も何がどうなって...が完璧に頭に入っているにもかかわらず、面白く読めた。
だからね、筋立てなんてどうでもいいんだ。本作は「カッコイイ!」「憧れるぅ」な感情を刺激するファッション・カタログ雑誌みたいな作品なのだ。こういう感情は「記憶」じゃないから、何回読んでも新鮮なのである。ここらを刺激されないのならば...読む意味はなかろうよ。ファッション・カタログ雑誌のヴィジュアルは速攻で古くなるけど、小説のイメージは読むたびにアップトゥデイトされる。ましてやレジスタンスで憶えた「仕事」のやり口が「今では古いか?」と自嘲する主人公なんだから、ちょっとレトロなのも「オシャレなオヤジ」で時代に超然、のポーズが取れる。いいじゃないか。
団塊とかね「本作が好き!」とか言うと、相好を崩す連中多数な作品だけど、作品側というよりも読者側にフォーカスした作品論って必要なんだと思う。「まあいっぺん読んでみな」ってねww
(個人的にはフェイ将軍大好き!鷲巣萌えみたいな感情だ)

No.11 8点 蟷螂の斧
(2016/03/14 18:20登録)
(再読)(東西ベスト25位)本作の良さは、シンプルなストーリー、個性ある登場人物(特にアルコール依存症のガンマン)、ハードボイルド風な生きざま、男の友情、主人公ケインのなかにある元情報部員だったコードネーム「カントン」とのせめぎ合い(戦争の後遺症)など、いろいろな点をあげることができると思います。そんな中でも、やはり一番は、ラストシーンにおける”ロマンティシズム”にあると思います。非常に印象的ですね。このシーンの為に物語があると言ったら言い過ぎか?これがプラス1になっているような気がします。

No.10 7点 斎藤警部
(2015/05/18 20:11登録)
氏の作品では先に読んでいた「ちがった空」ほどの圧倒感は無かったが、やはり面白かった。冒険小説よりハードボイルドミステリの感触。主人公の相棒がアル中のガンマン(酒が切れると手が震える!)って設定が何とも言えませんが。。 さて、むふふ  先の戦争の陰も色濃く投影されている作品ですね。。
最後に明かされる真犯人(黒幕)は睨んだ通りの人物でしたが、それでも面白い結末。ただ"MIDNIGHT PLUS ONE(零時一分)"というタイトルが最後にもっと大化けするのかと思ったら。。 そうでもなかった(読みが浅いだけか?)のが残念。 

No.9 10点 salo
(2013/07/04 23:26登録)
元対独レジスタンスが金持ちを護送するために国境を越える。このあらすじだけで主人公の内面的矛盾/リアリティを感じられる読者向け。全編が酒、銃、車などのモチーフを通じた哲学的アフォリズムに満ちてますが、表現が臭くならない程度に抑制されてるのがいいです。プロット自体はシンプルなので、予想外の謎解きが好きな向きにはオススメしません。

No.8 9点 TON2
(2012/11/04 11:11登録)
男の冒険小説。ハードボイルド。
後半のロールスロイスでの国境越えはイマイチだが、それ以外は「男の美学」に貫かれ面白かった。
亡き内藤陳氏が自らの店の名にしたというのもうなずけます。

No.7 6点 E-BANKER
(2011/12/25 20:59登録)
1965年発表のサスペンス。
冒頭の「パリは4月であった。・・・」という台詞が有名な作品。

~ルイス・ケインの引き受けた仕事は、マガンハルトという男を車で定刻通りまでにリヒテンシュタインへ送り届けることだった。だがフランス警察が男を追っており、さらに彼が生きたまま目的地へ着くのを喜ばない連中もいて、名うてのガンマンを差し向けてきた。執拗な攻撃をかいくぐり、ケインの車は闇の中を疾駆する。熱気をはらんで展開する非情な男の世界を描いて、英国推理作家協会賞を受賞した冒険アクションの名作~

サスペンスフルであり、ハードボイルド的要素もある作品。
一人の男を警備しながら、フランス~スイス~リヒテンシュタインを旅し、その間あらゆる男たちに命を狙われるマガンハルトと主人公・ケインその他。
いろいろな作戦でマガンハルトの命を狙う男たちと、主人公・ケインの知恵比べ的な展開もあり、全編で緊張感を含んでいるところがGood。
そして、ラストに明らかにされる予想外の事件の構図。
というわけで、良質サスペンスの要素は詰まっているかなという感想。

ただ、訳文のせいかもしれませんが、なにかスッと頭に入ってこないような、もどかしい感じもした。
マガンハルトをめぐる裏の構図や事件全体のプロットの部分に今一つ捻りが少ないのもちょっと不満。
あと、是非とも「地図」が欲しい!
地理は割と得意な方で、大まかな方向感くらいは分かるが、フランスやスイスの細かい地名が頻繁に、しかも重要な意味を持って出てくるのだから、せめて「地図」くらいないとねぇ・・・(これは版元の問題だが)
時代背景を考えれば、まずまず水準級の作品という評価。

No.6 4点 isurrender
(2011/11/20 15:59登録)
フランスからスイス、オーストリアが舞台となる冒険小説
真犯人は分かりやすいし、小説自体も読みにくいです

No.5 7点 測量ボ-イ
(2011/09/09 22:12登録)
かねてより固定的支持を得ている冒険小説の秀作。
展開にテンポがあり読みやすく、最後まで飽きずに読みきる
ことができました。
本格ものではありませんが、ミステリ-ファンなら読んでお
いて損のない一遍。

(余談)
かの名作「幻の女」同様、この作品も書き出しが有名ですね。
「パリは四月である。雨も一月前ほど冷たくはない・・・」
確かに絵になる書き出しですね。

No.4 4点 mini
(2011/04/01 09:53登録)
”パリは四月である”
この印象的な書き出しから始まる、一般的にライアルの代表作と言われるCWA賞受賞作
今では人気が「深夜プラス1」に偏ってはいるが、昔は「もっとも危険なゲーム」と並んで2トップと言われていた
そこで両者の比較という点に絞って書評したい
実は私は「もっとも危険なゲーム」はず~っと以前に読んでいて、「深夜プラス1」を読んだのはつい最近
こういうのって読む順番に印象が左右されるんだよな
何でこんなに後回しにしてたのか自分でも謎、決して最初に読んだ「もっとも危険なゲーム」の印象が悪かったからではない
ライアルは寡作な作家で有名なので無意識に著作数に合わせようとしてしまう自分の悪癖が原因です、多分
「もっとも危険なゲーム」は最も盛り上がるのがラスト近くになってからだけなので、「深夜プラス1」は前評判的に全編スリルに満ちているのかと想像していた
しかし例えば魅力的な自動車を登場させる割にはカースタント的要素は殆ど無いなどジェットコースター式スリラーの類ではない
むしろ株式についての話など物語進行が停滞する部分も多い
株式の話など結構面白いのだが、ライアルは案外と物語にタメを作りたがる作家だなと感じた
昔、某評論家が、”「深夜プラス1」は超一流のスリラー小説の傑作だが、あくまでもスリラー小説の面白さであって、冒険小説としては「もっとも危険なゲーム」だ”、みたいな論旨を述べていた記憶がある
スリラー小説と冒険小説の違いは冒険精神論の有無で、つまり冒険精神にか欠けていても、物語に動きが有って読んでる間は読者を面白がらせればスリラー小説としては合格なのだ
逆に冒険小説は精神論が有れば多少は物語が動きに乏しくても許される
そういう定義で見ると、英国作家だけに冒険小説の伝統は感じられ、「深夜プラス1」はかなり冒険小説寄りである
むしろ反面、スリラー小説としてはもう一つ面白味に欠ける
結局のところ「もっとも危険なゲーム」と「深夜プラス1」、両者甲乙付け難い冒険小説の一種というのが私の結論なのだった
前者は歌舞伎、後者は現代劇という違いは感じたが

あとこれも某評論家が、”ライアルは黒幕は誰か?みたいな謎の構築は下手、最初から敵味方がはっきりしていて、その中でどうのこうのと物語るのが上手い”、みたいに言っていた
まぁたしかに、この黒幕の正体はあまりにミエミエではあるが

No.3 7点 kanamori
(2010/07/17 20:32登録)
「東西ミステリーベスト100」海外部門の第6位は、続けて冒険小説。
タイムリミット型の車による欧州横断冒険もので、単純なプロットながら、主役級の男たちの造形がよかった。車や銃に関心があればもっと楽しめたと思いますが。

No.2 6点 あびびび
(2010/02/01 15:54登録)
あまり読書に興味がないころ、話題の一冊ということは知ってた。まだ本屋に並んでいたので買って読んでみると、ミステリ的な部分より冒険小説的な色が濃い読みものだった。

依頼人が相手側から罠にかけれら、婦女暴行の罪で国際手配をされている関係上パスポートが必要な飛行機は除外され、フランスの海岸からスイス国境の隣国、リヒテンシュタインまでカーチェイスをする訳だが、元傭兵の主人公がそれまでの経験と知識を生かして難関を突破する。

最後はやはりというか、おなじみのどんでん返しがあるわけだが、物語にスピード感があり読みやすいのは確か。

No.1 6点 ElderMizuho
(2008/09/03 20:36登録)
序盤から地図とにらめっこしながら読み進めた
軽快に読み進めてよい
中盤辺りから主人公の道徳的な話が鼻につき始めるが、言うに反して仕事の方は冷酷に躊躇なくこなすのが好感触。このギャップ具合が主人公の人柄や境遇を表していてとても良い。
ただ終盤のどんでん返しはいらない。物語が根底からひっくり返るので無理があちこちに生じている。
そのくせべた過ぎるオチなので面白みもそれほど感じなかった。

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