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ミステリの祭典

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キス
87分署

作家 エド・マクベイン
出版日1994年04月
平均点5.50点
書評数2人

No.2 5点 ROM大臣
(2021/07/08 14:27登録)
八七分署シリーズの四四作目。証券会社の幹部を夫に持つエマは、地下鉄のプラットホームで電車を待っていた。男が近寄ってきてエマに殴り掛かり、線路に突き落とされ、危うく電車に轢かれかけた
本シリーズの人気者、キャレラ刑事の幼少時代の思い出、家族の絆、最愛の父の非業の死、気落ちした母、公判、生活破綻に瀕した妹への思いなどに多くのページを使っているが、表面的で共感が得られない。
ストーリーは平板で終盤、若干の捻りがあるがネタは簡単に割れてしまう。本書はシリーズの標準作を下回る。

No.1 6点
(2020/08/13 11:30登録)
 地下鉄のホームから突き落とされて危うく死にかけたエマは、数日後、今度は車に追い回されて轢き殺されそうになった。心配する夫は彼女にボディガードがわりの探偵をつける。だがほどなく、エマの命を狙っていた男が射殺体で発見された。
 撃ったのは夫か、探偵か? そもそも男はなぜエマを狙ったのか? 愛憎渦巻く街で交わされるのは、愛のキスか、あるいは死の接吻か・・・・・・美しい人妻をめぐる殺人事件を鮮烈な筆致で描く。
 『寡婦』に続くシリーズ第45作。1992年、ホープ弁護士シリーズ9作目『三匹のねずみ』と同年の発表。デフ・マンもの『悪戯』の前作にあたり、メイン事件と並行して描かれるキャレラ刑事の父親、アンソニー・キャレラ射殺事件の公判審理とも、現実世界でコロナに伴いアメリカ各地で起きた黒人暴動とも部分的にリンクしています。作品中でデモ隊を指揮し差別感情を煽っているのは、アクバー・ザロウムと名乗る説教師(プリーチャー)ですが。87分署ものは全体で現代アメリカを映す鏡とも言えますが、本書及び『悪戯』を読むと暴動の兆候自体は、二十年以上前にとうに目に見える形で現れていたことが分かります。
 内容的にはモジュラーではなく人妻襲撃未遂一本勝負。途中で夫マーティン・ボウルズの雇った探偵アンドリュー・ダロウ(デンカー)がシカゴから来た殺し屋だと判明しますが(読者視点のみ)、彼の登場前に天井から吊るされた襲撃犯、ロジャー・ターナー・ティリー殺しのホシはまだ割れません。最後まで読んでも肝心な所はハッキリせず、タイムリーな割にはどうも偶発的な殺人みたいですけど。
 全体の2/3辺りでデンカーを夫側の殺し屋と見抜いたエマによる誘惑、最後の殺人に続くデンカーVSキャレラ、マイヤーの銃撃戦、その後にラストの捻りと、色々あるもののトータルではフランスミステリ風の味わい。『凍った街』並みの分厚さでちょっとこれはどうかなあ。悪くはないけどもっとコンパクトに纏まるような。
 後期にしては良い作品だと思うけど、手放しでは褒められません。そんな訳で佳作には至らず、少しオマケして6.5点。

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